石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

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(13)いざ! 甲子園ボウル

投稿日時:2025/12/03(水) 11:11

 11月30日、大阪市の長居陸上競技場で行われた全日本大学選手権準決勝の相手は関西大学。関西学生リーグでは、ファイターズが7点のリードを持って最終盤まで頑張ったが、最後の最後に同点に追いつかれ、引き分けに持ち込まれた相手である。
 それでも、ファイターズは関西リーグの最終戦で立命館に勝利しているから、かつてのような関西リーグと関東リーグの覇者同士が戦う仕組みなら、その時点で関西の代表として関東の代表校と大学フットボールの王者を決める甲子園ボウルへの出場権を手にしていたはずだが、今は違う。
 各地にある多様な大学リーグの覇者にも門戸を開いて戦い、最後まで勝ち抜いた二つのチームが大学選手権(甲子園ボウル)で戦う仕組みになっている。
 すでに、一方のヤマでは立命館が勝ち抜いて出場を決めており、残る一つがこの日の試合で決まる。
 関大にとっては、リーグ戦で立命館に敗れた悔しさを晴らし、甲子園でリベンジを期す絶好のチャンス。逆に、ファイターズのファンにとっては、6勝1分けながら関西リーグの優勝を決めているのに、と何となく割り切れない気持ちの残る対戦である。
 けれども、これは秋のシーズンが始まる前から決まっていたこと。外部の人間がとやかく言う問題ではない。まずは、目の前の相手に勝ち、再度、立命を相手に勝つしかない。選手諸君には、格好の目標ができた、存分に戦ってくれ、と祈るような気持ちで、長居のスタジアムに向かった。
 関大のキック、ファイターズのレシーブで試合が始まる。第1ダウンの攻撃でいきなり反則。5ヤードを後退させられたが、RB井上のラン、QB星野弟からWR小段へのパスでダウンを更新。さらにWR五十嵐へのパスなどで陣地を進め、仕上げは大西の48ヤードFG。まずは3点を確保して、選手を落ち着かせる。
 攻撃が進めば守りも落ち着く。次の相手攻撃をDLが完封。ダウンを更新できなかった相手は、滞空時間の長いパントで陣地を進める。
 次のファイターズの攻撃は進まず、攻撃権は相手に移ったが、ここでファイターズにビッグプレーが出る。ハーフライン付近からの攻撃で、相手QBが投じた短いパスをファイターズのDB永井慎太郎がインターセプト。そのままゴールまで走り込んでTDに仕上げたのだ。大西のKも決まって10ー0。
 このプレーに刺激されたのか、ファイターズの守備陣の動きが見違えるようによくなる。2年生DL、田中志門が強烈な当たりで相手を止め、4年生LBの大竹、1年生DLの武野が連続して素晴らしいタックルを相手に浴びせる。田中と武野はともに追手門高校の出身。ともに身体が大きく、動きも速い。高校時代も攻守の要とした活躍してきた二人が今後、ファイターズでコンビを組み、励まし合って成長していくのが楽しみだ。
 守備陣が勢いづくと攻撃陣も元気になる。自陣12ヤード付近から始まった次の攻撃シリーズでは、RB永井秀のランなどでダウンを更新、ハーフライン付近まで陣地を進める。相手守備陣がRBやWRへの対処に追われているのを見たQB星野弟がここで勝負。自らボールを抱えてゴールまで突っ走る。大西のキックも決まって17ー0。絵に描いたようなQBのTDに応援席は沸騰する。
 攻撃が勢いづけば、守備陣も一層元気になる。武野が187センチ、117キロの恵まれた身体を自在に操り、真っ向から相手にぶつかっていく。
 第2QにはQB星野弟からWR五十嵐に鮮やかな25ヤードTDパスが決まり、前半を24-0で折り返す。
 後半はファイターズのキック、関大のレシーブでスタート。しかし、ファイターズ守備陣は勢いづいている。相手陣18ヤードから始まった最初のプレーでDB永井が相手に強烈なタックルを浴びせ、DB東田が素早い動きで相手パスをカットする。ダウンを一度更新されたが、守備陣が踏ん張って攻撃権を奪取。
 自陣18ヤードから始まったファイターズの攻撃。まずはランプレーでダウンを2度更新。自陣34ヤードまで進んだところで、QB星野からWR小段に22ヤードのパス。それが通って相手陣に入り、仕上げはWR百田への長いパス。一瞬、オーバースローか、と思うほどの豪快なパスだったが、相手守備を抜き去って見事にキャッチ。そのままエンドゾーンに駆け込んでTDに仕上げた。大西のキックも決まって31-0。
 大きなリードを持って迎えた第4Q。関大の攻撃でスタートしたが、ファイターズ守備陣は自信をもって対応する。DB永井の素早いタックル、同じく東田のパスカットなど、それぞれのプレイヤーが自身の長所を生かした動きで相手攻撃の芽を摘んでいく。
 一方、攻撃陣はリードしていることも手伝って、自分たちのペースで試合を進めていく。時計の針を進めるのも作戦のうちというのだろう。RB井上、永井、平野を走らせて時間を稼ぎ、随所にパスを織り込んで目先を変えながら陣地を進める。その手法が功を奏したのだろう。第4QだけでもRB平野のラン、永井のランでTDを獲得。相手のパスを奪い取り、TDに結びつけた1年生DB増田の活躍もあって、最後は52ー7という大差をつけて関西の代表となり、甲子園ボウルの出場権を手にした。
 しかし、それを喜ぶのはまだ早い。甲子園ボウルは学生王者を決める戦いであり、勝ってこそ喜べる舞台である。そこで勝利を手にするために更なる取り組みを続けてもらいたい。

(12)強豪相手に見事な勝利

投稿日時:2025/11/11(火) 08:43

 関西学生リーグの最終戦は、立命館大が相手。今季、リーグで戦ったすべてのチームに余裕で勝ち抜いてきた強豪である。先々週、ファイターズの試合が終わった後、関西大と戦っている姿を観戦したが、ファイターズが苦しんだ関大を相手に、悠々と戦い、大差で勝利した姿に「次戦はこのチームが相手。ファイターズも、難しい戦いを強いられるだろうな」と考えながら帰宅したことを覚えている。
 けれども、試合の朝。日課としている散歩の途中にひらめいた。「強いチームに勝ってこそファイターズ。これまでも、厄介な相手に勝つための作戦を練り、チームが一丸になって戦い、勝利への道を切り開いてきた。今季のチームもそういう強い気持ちで戦ってくれるに違いない」「あとは選手に託すのみ。僕は余計なことを考えず、しっかり応援しよう」。そう考えながら、試合会場の大阪・万博記念競技場に向かった。
 会場に到着。広い立派なグラウンドだが、小雨が降り続いている。傘の用意はしてきたが、それだけでは心もとない。ファイターズの応援席で販売されている簡易雨具を購入して頭からすっぽりとかぶり、万全の備えで席に着く。
 ファイターズのキックで試合開始。先攻の相手は手堅くラン攻撃に出るが、ファイターズDLの反応がよく、的確に対応するため、陣地は進まない。4プレーで攻守交代。しかし、ファイターズの攻撃も似たようなものだ。ランプレーを中心に陣地を進めようとするが、相手は一歩も譲らない。互いに守り合っているうちに前半が終わりかける。
 前半終了間際。センターラインを越えたあたりで攻撃権を手にしたファイターズが勝負に出た。QB星野太吾がWRリンスコットと百田に連続でパスを決め、FG圏内まで陣地を進める。そこからK大西が42ヤードFGを決め、3ー0で前半終了。
 これで緊張が解けたのか、3Qに入ると攻守ともに動きがよくなる。まずは攻撃陣。
 RB井上と永井が立て続けに走ってダウンを更新。QB星野太吾のラン、WRリンスコットへのパスなどで、あれよあれよという間に相手ゴールに迫る。残りは11ヤード。QB星野がパスと見せかけたドローで中央を駆け抜けてTD。10-0とリードを広げて勢いづく。
 攻撃が勢いに乗ると、守備陣も元気になる。DLの田中志門らが素早い動きで即座に攻撃権を取り戻すと、攻撃陣がそれに呼応する。2年生ながらエース級の活躍をしているRB永井が立て続けに走って36ヤードのTDランに結び付けた。大西のキックも決まって17ー0。
 点差は開いたが、相手の士気はくじけない。第3Qの後半、自陣24ヤード付近から始まった攻撃で陣地を進め、第4Qに入った最初のプレーでFGを決める。
 得点は17ー3。ファイターズがリードしているが、相手には底力がある。どうしても勢いを止めたい。ファイターズのラインが踏ん張ってRBやQBを走らせ、時間を消費しながら陣地を進める。仕上げは星野が走ってTD。キックも決まって24ー3。ファイターズが関西の覇者となった。
 ともに負けられない、と意識して戦ったこの試合。互いに収穫は多かったと思われるし、観戦している方も楽しかった。
 しかし、観客の数が一向に増えないのはどういうことだろう。
 大阪モノレールから阪急宝塚線に乗り換え、今津線に乗って帰宅するまでの間、一人で考え込んでいた。
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