石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

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(11)新しい芽

投稿日時:2019/06/19(水) 20:33

 世の中には2種類の人間がいる。
 例えば、半分近くになった一升瓶を前において酒を飲んでいるときに「もう半分しかない。大変だ」と思う人間と、「まだ半分あるじゃないか。じっくりやろう」と考える人間だ。物事を考える時、常に最悪の事態を想定して考えを進める人間と、なんとか明るい面を見て、それを明日への活力にしようと考える人間と言ってもよい。
 僕は間違いなく後者である。小心者のくせに、目の前に問題が山積していても「まずは寝よう。ややこしい事はまた明日」と考えてしまうし、職場で嫌なことがあっても、「しゃーない。今日のことは今日のこと。明日はきっといい風が吹く」と根拠もなく思ってしまえる人間だ。大学を卒業してから52年目の記者生活。それは波瀾万丈であり、他人さまから見たら、なんという不条理な世界と思われるかも知れないが、そんな仕事をいまだに機嫌良く続けていられるのも、生まれつきその性格を持っているからだろう。
 そういう人間だから、フットボールではJV戦が大好きだ。公式戦で手に汗を握るような場面に遭遇すると、思わず立ち上がったり、くそったれと悪態をついたりもするが、まだまだ未熟なメンバーが必死懸命にプレーするJV戦の魅力もまた別の意味で捨てがたい。ファイターズの明日を担う新星が次々に登場し、力いっぱいのプレーを見せてくれるからだ。
 16日、上ヶ原の第3フィールドであった名古屋大との試合も存分に楽しませてもらった。
 まずは、秋のシーズンが楽しみな1年生から紹介しよう。この日の出場メンバーで一番目についたのはWR河原林(高等部)。絶妙のコース取りで長短取り混ぜて5本のパスをキャッチし、85ヤードを稼いだ。先週末の練習を見学したときも、難しいパスをこともなげにキャッチしていたから注目していたのだが、期待は裏切られなかった。どんなパスでもゆとりを持って確保し、TDパスもキャッチした。身長179センチ、76キロと体格的にも恵まれており、一足先にデビューしたWR糸川(箕面自由)とともに、秋シーズンには先発争いに加わってくるのでは、という期待さえ抱かせてくれた。
 この日、TEに入った小林陸(大産大高)の動きも素晴らしかった。身長185センチ、体重96キロと公表されているが、筋肉の付き方から考えたら、すでに100キロは超えているのではないか。ライン並みの体型だが、走るスピードはWRにもひけをとらず、球際にも強い。同じポジションには、今季急成長した3年生の亀井兄がいるので、二人を同時に起用すれば、プレーの選択肢も破壊力も一気に増加する。大いに期待したい。
 期待したいと言えば、すでに前の試合でも起用されているDL山本大地(大阪学芸)、DB小林龍斗(日大三高)の才能にも注目したい。山本は1年生とは思えないほどのパワーがあり、小林龍斗のプレーセンスの良さは、スタンドからでもよく分かる。今後、試合に出場する時間に比例して、活躍する場面が増えると期待できる。
 ほかにこの日、メンバー表に登録された1年生には、WRの福田彦馬(池田)と高野一馬(佼成学園)がいる。福田は体格に恵まれており、高野にはキャッチングに非凡なところがある。この日は終盤から登場し、TDを1本決めた。
 2年生に目をやると、この日もQBは山中と平尾が務め、ともに活躍した。平尾には高いパス能力、山中には素早く状況を俯瞰し、決断できる能力がある。現状ではどちらが先行しているかは流動的だろうが、双方が刺激しあってプレーの精度を高めていくと、コーチ陣にとってはどちらを優先して起用するのか悩ましいことにもなるだろう。
 けがでしばらく練習を見合わせていたWR戸田も元気に復帰し、パスキャッチのうまさを何度も披露した。同じくけがから戻ってきたWR鳩谷も独走TDを決めた。
 独走と言えば、すでにVのメンバーに混じって活躍している2年生RB斎藤の走りにも注目が必要だ。この日も中盤、鮮やかに独走TDを決めた(ように見えた)場面があったが、残念なことにラインの反則で取り消し。ファンにとっては悔しい一幕だった。
 このように「新しい芽」を数えあげていくだけで、予定していた分量を超えてしまう。でも幸いなことに、春学期の終了までにまだもう1試合、JV戦が予定されている。29日の中京大戦だ。この試合を楽しみに、今回のコラムは終わりにしたい。

(10)勝ちきれない

投稿日時:2019/06/11(火) 08:34

 9日、炎天下の王子スタジアムで行われたエレコム神戸との戦いは、ファイターズのいいところと悪いところをともにさらけ出した。
 まずは、いいところから。一つは想定内のプレーにはしっかり対応できたこと。とりわけ現時点でのベストメンバーを組んだディフェンスは、1列目、2列目がきちんと役割を分担し、積極的に相手ラインを押し込むプレーを展開。スピードと思い切りの良さで、相手ランナーを思い通りに進ませなかった。
 社会人の実力チームと戦う経験を十分に積んだ相手も、自分よりずっと経験値の少ない「学生さん」に、あそこまで押し込まれるとは想定外だったのではないか。
 オフェンスも渡邊、三宅、前田、鶴留とそれぞれ特徴を持ったランナーが活躍。先発QB山中の判断の速いプレー、阿部、鈴木、糸川と揃えたレシーバー陣の奮起もあって、経験豊富な相手と対等以上に渡り合った。
 まずはスタッツを見てみよう。総獲得ヤードはエレコムが263ヤード、ファイターズが322ヤード。パスは相手が211ヤード、ファイターズは173ヤードで相手が上回っているが、ランでは相手の52ヤードに対してファイターズは149ヤードを獲得している。ランプレーが進むから、攻撃時間も相手の20分57秒に対し、ファイターズは27分3秒。この数字を見てもファイターズが優位に試合を進めていたことがよく分かる。
 それでいて、最終のスコアは14-14。ひいき目で見ると勝ち切れたはずの試合だったが、結果は引き分け。鳥内監督が試合後の囲み取材で開口一番「勝てとったな」といわれたのもよく分かる。寺岡主将が関学スポーツの取材に「勝てる試合を引き分けた」と残念がっていた気持ちもよく分かる。
 それでもスコアはスコア。たとえ途中までは「よく頑張っている」と評価できても、相手QBが一度ファンブルしたボールを拾い上げ、それを18ヤードのTDパスに仕上げた相手にとってはラッキー、ファイターズにとってはアンラッキーなプレーがあったとしても、さらにいえば、終了間際、安藤君なら確実に決められる距離と思えたFGが相手にブロックされる不運があったとしても、それらをすべて含めての14-14。引き分けである。
 現場で応援している僕が見ても「勝てる試合」であり「勝ちきらなければならない試合」だった。
 もちろん「想定外」のことはいくつもあった。相手がファンブルし、大きく後方にそらしたボールをQBが拾い上げ、それを18ヤードのTDパスに仕上げるという芸当は、フットボールを観戦して半世紀近くになる僕でも、初めて目にした。ファイターズのレシーバーが素早い動きでTDパスを捕球する態勢に入っているのに、それをはるか上空でカットしてしまう長身DBのプレーもそうそうお目にかかれる動きではない。
 それぞれが想定外、あるいは規格外れの動きであり、攻守ともに緻密に練り上げた作戦で勝負を挑むのが得意なファイターズの辞書には書き込まれていないプレーだった。
 そうした規格外のプレーに、チームとしてどう対応し、個人としてどのような動きをすればよいのか。そのヒントはこの日の試合の中に埋もれている。
 1枚目、2枚目関係なく、埋もれているヒントを掘り起こし、目の前のプレーヤーを圧倒するための力を身に付けよう。
 並行して、そうした相手にどう対処すればよいのかと考える。さらには、チームを勝たせるために一人一人のプレーヤーがどう動けばよいのか。試合展開や残り時間、ボールの位置から相手選手のほんのちょっとした仕草に至るまですべてを観察し、それを記憶し、対処法を磨いていこう。
 そういうことをチームの全員が考えていかなければならない。そのきっかけとしてこの日の「悔しい引き分け」試合があった。そう位置付けると、今後、ファイターズに身を置く部員たちの取り組まなければならない課題がいくつも見えて来るはずだ。
 その課題に、チームの全員が取り組もう。幹部だけ、4年生だけに任せるのではなく、ファイターズで活動する全員が「わがこと」として取り組もう。選手もスタッフも、上級生も未経験者も関係ない。最善を求め、最高のパフォーマンスをすることだけを目標に頑張ろう。その取り組みが勝利につながる。「学生圧倒」という言葉が嘘ではないことも証明されるだろう。
 春の試合は、今回のエレコム戦で終わり、後はJV戦が2試合残っているだけだ。考える時間もあるし、相手の動きや自分たちの動きを分析するための素材もある。しっかり自分たちのチーム、あるいはパート、はたまた個々の部員同士で本音を交わし、勝つための努力を続けてもらいたい。
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