石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

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(27)第一関門突破

投稿日時:2018/11/20(火) 09:07

 関西リーグ最終戦、立命館との試合は、何とも評価が難しかった。現場で応援している時も、試合が終わってからも、喜んでいいのか、喜んでいる場合ではないのか、僕には判断がつきかねた。
 最終スコアは31-7。得点と試合経過だけを見れば、前半で先行し、後半の勝負どころで攻守がかみ合って、余裕で逃げ切ったと言っても間違いはないだろう。
 でも、現場で一つ一つのプレーを見ている限り、とてもそんな余裕はなかった。
 前半、先攻のファイターズはRB山口が魂の走りで52ヤードの独走TD。さらに第2Q半ばにはQB奥野がWR阿部に19ヤードのTDパスを決めて14-0。
 互いにディフェンスが踏ん張り、攻撃陣が非凡なプレーを見せつける中で、ファイターズがなんとか先手を取ったが、攻守ともに傑出したプレーヤーがいる相手も強い。RBにもWRにも一発タッチダウンの危険性を漂わせた選手が何人もいる。一つ流れが変われば、2本や3本のTDは立て続けに奪われそうな予感さえする。
 悪い予感はよく当たる。第2Qの終了間際、相手ゴール前7ヤードに迫り、ようやくリードと呼べるほどの差がつくかと思ったが、案の定、そこを決めきれない。短いフィールドゴールがゴールポストに当たってしまい、決定的な3点を取り損ねてしまう。やばい。勝利の女神が逃げ去ってしまうのではないかという、嫌な予感さえ浮かんだ。
 案の定、後半は立命が盛り返す。立命陣13ヤードから始まった第3Q最初のシリーズ。相手はテンポのよいラン攻撃で立て続けに3度、ダウンを更新。存分にランに注意を引きつけた上で、関学陣35ヤード付近からゴールをめがけて長いパス。ファイターズDB陣と競り合った相手のエースがそれを横取りするような形でキャッチしてTD。たちまち14-7と追い上げられる。
 相手は勢いに乗っている。前半は得点差こそついたが、見た目には互角の攻防だった。それが後半、相手は最初のシリーズでTDをもぎ取り、攻撃のリズムをつかんだ。やっかいな相手が調子づくとヤバイ。ファイターズがどう立ち向かうか。何とか、この流れを断ち切ってくれ。祈るような気持ちで応援する。
 そんな状況を切り開いたのはファイターズの誇るQBとレシーバー陣。第3Q終了間際に奥野からのミドルパスがWR松井と阿部にヒット。一気に相手ゴール前に迫る。その好機に安藤がFGを決め17-7と差を開く。
 この3点が守備陣を落ち着かせ、勇気付ける。それまでは強力なランと短いパスをかみ合わせ、テンポ良く攻め込んでくる相手に、受けて立っていた面々が俄然、攻撃的になってくる。LBの2年生コンビ、海崎と繁治が競うように相手に襲いかかり、DBが低くて強烈なタックルを決める。三笠と藤本を中心にしたDL陣も素早い動きでQBサックを連発する。
 こうなると、攻撃陣にも余裕が出る。相手ゴール前45ヤードから始まった次の攻撃シリーズ。その第1プレーでQB奥野からWR小田へパスがヒット。それを確保した小田が一気に相手ゴールまで突っ走って45ヤードのTD。さすがは元高校球児。夏の甲子園で余裕の盗塁を決めた快足と、大学4年間で習得した捕球センスは、レベルが違う。
 得点は24-7。ここで立命サイドは緊張の糸が切れたのか、それともファイターズ守備陣が自信を持ったのか。相手が起死回生を狙って投じたパスをDB畑中と横澤が立て続けに奪い取って攻撃の芽を摘み取っていく。それまで試合に出ていなかった交代メンバーのDL斎藤、春口らも低い姿勢から突き刺さるようなタックルでQBに仕事をさせない。
 最後はRB渡邊が19ヤードを走り切ってTD。終わって見れば31-7と点差は開いた。
 試合中、1プレーごとにノートに記録したメモを手元に置き、このように試合の流れを再現してみたが、ここまでに名前を挙げたメンバーの大半が4年生。奥野と併用されて相手守備陣を混乱させたQB西野と光藤も4年生だ。試合を通じて安定したパントを蹴り続けた安藤に、正確なスナップを出し続けたスナッパーの鈴木も含めて4年生が腹をくくって戦ったことがよく分かる。試合後、報道陣に囲まれた鳥内監督も「4年生は今日ぐらい頑張らな意味がない」と独特の表現で称賛していた通りである。
 けれども監督は続けて「今度はもっと大変な試合になるんとちゃいますか」と釘を刺していた。立命は強い、この日の得点差を地力の違いと勘違いしていたら、大変な目に会う、という戒めだろう。
 実際、今回はファイターズがいち早く試合の流れをつかんだが、次も同じようになる保証はどこにもない。
 逆に相手は、昨年のファイターズと同じ立場であり、必死に立ち向かってくるはずだ。途中、名城大学との試合に勝ち抜いてこそ、という条件付きだが、2週間後には、昨年と全く立場を変えて双方が戦うことになる。
 その試合にどう臨むか。残された時間は2週間足らず。その短い時間に、どこまで集中して練習するのか。未解決な課題をどのように解消していくのか。今回の決戦で、個人としてもチームとしても、相手の力量にそれなりの手応えを得たはずである。それにどのように対応し、どう突破しようというのか。
 12月2日。決戦の日は目の前だ。だからこそ、向こう10日余り。集中して練習に取り組み、死にものぐるいで勝負しようではないか。
 この試合で覚醒した4年生、それに負けじと奮闘した下級生諸君。君たちは第一関門を突破した。関西リーグの優勝者である。その自信と誇りを胸に刻み、チームの総力を挙げて次なる戦いに挑んでもらいたい。これからが本番だ。

(26)4年生の覚醒

投稿日時:2018/11/12(月) 08:44

 シーズンが押し詰まってくると、古い友人たちから電話やメールが届く。
 「先日の関大戦、なんであんなに苦しんだんや。あれが今季の実力か」「振り返ってみれば、京大戦ももう一つしっくりいってなかったな」。大体がこんな風に、連絡をしてきた人が自分の見解を披露し、あれやこれやと話して落ち着く先は「立命戦、大丈夫ですかね」。
 これがファン心理というのか、ひいきのチームに寄せる愛情なのか。僕自身も似たようなことを考えているけれども、もっぱら熱心な友人たちの聞き役に回っている。多少はチームの内情にも通じ、選手やスタッフと話すことはあるけれども、チームのことを部外者があれこれいうのは好みではない。せいぜい紀州・田辺の篤農家が栽培した美味しいミカンを差し入れ、練習後の疲労回復に役立ててもらうことぐらいしかできない。
 それでも時には、これだけは読者の方々にもお伝えしたい、ということがある。例えば、先週末の練習で見掛けたこんな光景である。
 木曜日の夕方、練習前恒例の自主練をパートごとにやっていた時のことである。4年生のスタッフが一人、にこにこして僕に話しかけてきた。
 「明日は防具を着けて練習に参加します。背番号はもちろん42です」
 「ええっ。体は動くんか。張り切ってけがしたらしゃれにならんぞ」
 「大丈夫です。いまはスタッフに転向していますが、元はOL。体は鍛えているので、何とかやれるでしょう。相手のエースになりきって、うちのDBに思いっきり当たります」
 その言葉は嘘ではなかった。翌日の練習前の自主連では、彼が立命館カラーのジャージ姿で練習台を務めた。背番号はもちろん相手エースの42番。よく見れば、その場には大柄な2年生スタッフも防具を着けて参加し、二人とも一切の手抜きなしで練習台を務めていた。
 がつんとぶつかる音、それに勢いよくタックルする守備選手。その姿を見ながら、こういう部員が出てくると本物だ。こういう場面が自発的に生まれることからファイターズの魂が鍛えられる。そう思うと、その練習が終わるまで、その場を離れることはできなかった。
 練習後、思わず声を掛けた。「けがはせんかったか」。「大丈夫です。でも、明日の朝はあちこちが痛いでしょうね」。彼はそういって日焼けした顔をほころばせた。
 プレーの話は書けなくても、こういう話ならいくらでも書きたい。
 例えば練習中、ここ1、2週間で急に存在感が大きくなった4年生が何人かいる。よく見れば、それぞれ長い間、けがで苦しんできた選手たちである。
 例えば、攻撃の中心を担う二人の選手。けがで練習もままならない時期は、遠慮があったのか、練習もままならない体をもてあましていたように見えたが、いまは違う。自分にできることをひたすら続けていた春先からシーズン序盤にかけてとは打って変わって、いまは100%の力で練習に取り組み、超人的なプレーを見せている。もちろんハドルの中でも常に声を張り上げ「全員、オレについてこい」とばかりに周囲を鼓舞している。
 守備の最前列にいる二人の4年生も同様だ。二人とも長い間けがで戦列を離れていたが、いまは常に練習の先頭に立ち、体を張って下級生に見本を見せている。この二人はどちらかと言えば口数は少ない方だが、その分、ともに自らのスピード、体のこなし方を身をもって下級生に体感させている。
 これまで、どちらかと言えば、物静かな紳士が多かった今年の4年生だが、ここまでくると変わらざるを得ないということだろう。選手にもスタッフにも、彼らのように自らが先頭に立ち、実践で見せるメンバーが少しでも多く出てほしい。そしてそれがファイターズのスタンダードになれば、結果は自ずからついてくるはずだ。
 決戦は日曜日。その日までチームの全員が高いモラルを持って練習に取り組み、悔いなく戦ってもらいたい。
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