石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
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(16)悔しい結末
投稿日時:2024/12/02(月) 16:01
甲子園ボウルへの出場権を目指す大学選手権準決勝の相手は法政大学。舞台は東京・江戸川区のスピアーズえどりくフィールド。恥ずかしながら初めて聞く競技場である。試合の前々日、上ケ原のグラウンドで、ファイターズの練習を見学している時、K.G.FIGHTERS CLUB(OB/OG会)前会長の竹田さんから「法政戦には当日の出発ですか」と聞かれ、「知らない場所だし、東京まで出掛けるのは、高齢者にはつらい。当日はネットの中継を見ながら応援させていただきます」と答えた。
ところが、ネットの中継を一人で見るというのも、なんか物寂しい。そんな時に、自宅から自転車で10分ほどの場所に住む友人から、ネットの中継をテレビで観戦しながら応援しないか、と声をかけてくれた。
早速、彼の自宅に押し掛け、テレビの画面に集中する。しかし、試合の状況は厳しい。立ち上がり、ファイターズはRB伊丹と澤井、それにQB星野弟による徹底したラン攻撃。途中に1本、WR小段へのパスを通して立て続けにダウンを更新する。これはいい感じ、と思った途端に相手がインターセプト。せっかくの勢いに水を差される。
しかし、その2プレー後、今度は1年生DL田中がインターセプトのお返し。素早い身のこなしで相手レシーバーの前に入ってジャンプ。見事にパスを捕らえる。さすがは高校時代、DLとTEの両面でスタメンに起用され、チームの攻守の要となっていた選手である。その力をこの舞台で発揮した度胸も満点だ。
次の攻撃シリーズもファイターズはランプレーが中心。途中、短いパスを1本盛り込んでダウンを更新し続け、K楯がFGを決めて3点を先制する。
だが、相手もスピードがあって身のこなしも軽やかなRBを駆使して一気に攻め込んでくる。途中、第4ダウンショートという場面でも果敢にプレーを選択。しっかりダウンを更新して、仕上げはFG。即座に同点に追いつく。
しかし、ファイターズの士気は高い。OL近藤が強烈なブロックで走路を開き、RBが陣地を稼ぐ。QB星野弟がWR五十嵐へ短いパスを通して陣地を稼ぎ、相手がパスを警戒すると今度は澤井や伊丹を走らせる。RB陣に警戒の目が集まると、再びパスアタック。ランとパスをうまく噛み合わせて陣地を稼ぎ、仕上げはWR坂口への短いパスでTD。キックも決めて10-3とリードする。
相手も負けてはいない。次の攻撃シリーズで即座にやり返す。それもファイターズと同様、パスとランをうまく使い分けた攻撃だから、守備陣が対応しきれない。あっという間にTD。キックも決めて即座に同点に追いつく。
前半が終了し、第3Qが終わっても、両者の均衡が保たれたまま。
均衡を破ったのは法政。身のこなしの軽快なRBを駆使して陣地を進め、4Qに入ってすぐに短いパスでTD。キックも決めて17-10と引き離す。
「これはやばいぞ」という気持ちと、「いや、この試合は1Qが15分。時間はたっぷりある。じっくり自分たちのペースで攻めてくれ」という気持ちが交錯する中で試合は進む。そうした中で反撃のチャンスを切り開いたのがファイターズ守備陣。第4Qが始まって間もなくの自軍の攻撃が不発に終わった後の相手の攻撃をしっかり食い止め、再び攻撃陣にボールを渡す。
その最初のプレーで、星野が同じ1年生のWR立花に8ヤードのパスを決め、「うちはランばかりではない、パスもあるぞ」と相手を警戒させたうえで、伊丹と澤井を走らせる。相手の目がランプレーに向いたと見極めると再び立花へのパス。そういう形で陣地を進める。一度、攻撃権が相手に移ったが、守備陣がしっかり押さえ、再びファイターズの攻撃。そこからもパスとランを絶妙に使い分けて陣地を進めて相手に追いつき、17-17で延長戦に入った。
迎えたタイブレーク。守備陣は法政の攻撃をFGによる3点に抑えたが、後攻のファイターズのキックは外れ、勝敗が分かれた。
選手や関係者の無念を思うと、言葉もない。チームの柱と期待されながら、けがで出場がかなわなかったメンバーの胸中を想像するだけでもつらくなる。このコラムを書くこと自体を遠慮したい気持ちになる。
このコラムを書かせていただくようになったのは、たしか2006年。朝日新聞社を退職して間もないころだった。以来、関西で開かれる公式戦はすべて試合会場に出向いて応援し、プレーヤーとしても、スタッフとしても活動したことのない素人の目に映る場面を記録し、文章にしてきたが、横着した報いだろうか。試合は17-17で延長戦に入り、最後は先攻の法政がFGを決め、それに失敗したファイターズが敗れた。関西リーグでの立命戦の敗北を加えると悔しさはさらに募る。
攻守の中心になる選手が何人もけがや特別な事情で戦列を離れざるを得なかったことを勘案すれば、ここまで勝ち進んできたことをもっと高く評価する人がいてもおかしくないし、逆に、つまらん言い訳はするな、今ある力で勝ち切るのがファイターズだ、これまで勝ち続けてきたチームもそれぞれに事情をかかえていたが、それを克服して勝ち続けてきた。だからこそ称賛されているのだ、という人もいるだろう。
そういう環境にあって、ここまで頑張ってきた今季のチームを僕は高く評価したい。関西リーグの立命戦で悔しい思いをし、東京での法政戦でまたも涙を飲む。それもまた人生の一里塚、勝ち続けてきたからこそ味わえる貴重な体験であると受け止め、明日への扉を開いてもらいたい。悔しい体験があってこそ、人は頑張れる。僕はその言葉をかみしめて生きてきた。
ところが、ネットの中継を一人で見るというのも、なんか物寂しい。そんな時に、自宅から自転車で10分ほどの場所に住む友人から、ネットの中継をテレビで観戦しながら応援しないか、と声をかけてくれた。
早速、彼の自宅に押し掛け、テレビの画面に集中する。しかし、試合の状況は厳しい。立ち上がり、ファイターズはRB伊丹と澤井、それにQB星野弟による徹底したラン攻撃。途中に1本、WR小段へのパスを通して立て続けにダウンを更新する。これはいい感じ、と思った途端に相手がインターセプト。せっかくの勢いに水を差される。
しかし、その2プレー後、今度は1年生DL田中がインターセプトのお返し。素早い身のこなしで相手レシーバーの前に入ってジャンプ。見事にパスを捕らえる。さすがは高校時代、DLとTEの両面でスタメンに起用され、チームの攻守の要となっていた選手である。その力をこの舞台で発揮した度胸も満点だ。
次の攻撃シリーズもファイターズはランプレーが中心。途中、短いパスを1本盛り込んでダウンを更新し続け、K楯がFGを決めて3点を先制する。
だが、相手もスピードがあって身のこなしも軽やかなRBを駆使して一気に攻め込んでくる。途中、第4ダウンショートという場面でも果敢にプレーを選択。しっかりダウンを更新して、仕上げはFG。即座に同点に追いつく。
しかし、ファイターズの士気は高い。OL近藤が強烈なブロックで走路を開き、RBが陣地を稼ぐ。QB星野弟がWR五十嵐へ短いパスを通して陣地を稼ぎ、相手がパスを警戒すると今度は澤井や伊丹を走らせる。RB陣に警戒の目が集まると、再びパスアタック。ランとパスをうまく噛み合わせて陣地を稼ぎ、仕上げはWR坂口への短いパスでTD。キックも決めて10-3とリードする。
相手も負けてはいない。次の攻撃シリーズで即座にやり返す。それもファイターズと同様、パスとランをうまく使い分けた攻撃だから、守備陣が対応しきれない。あっという間にTD。キックも決めて即座に同点に追いつく。
前半が終了し、第3Qが終わっても、両者の均衡が保たれたまま。
均衡を破ったのは法政。身のこなしの軽快なRBを駆使して陣地を進め、4Qに入ってすぐに短いパスでTD。キックも決めて17-10と引き離す。
「これはやばいぞ」という気持ちと、「いや、この試合は1Qが15分。時間はたっぷりある。じっくり自分たちのペースで攻めてくれ」という気持ちが交錯する中で試合は進む。そうした中で反撃のチャンスを切り開いたのがファイターズ守備陣。第4Qが始まって間もなくの自軍の攻撃が不発に終わった後の相手の攻撃をしっかり食い止め、再び攻撃陣にボールを渡す。
その最初のプレーで、星野が同じ1年生のWR立花に8ヤードのパスを決め、「うちはランばかりではない、パスもあるぞ」と相手を警戒させたうえで、伊丹と澤井を走らせる。相手の目がランプレーに向いたと見極めると再び立花へのパス。そういう形で陣地を進める。一度、攻撃権が相手に移ったが、守備陣がしっかり押さえ、再びファイターズの攻撃。そこからもパスとランを絶妙に使い分けて陣地を進めて相手に追いつき、17-17で延長戦に入った。
迎えたタイブレーク。守備陣は法政の攻撃をFGによる3点に抑えたが、後攻のファイターズのキックは外れ、勝敗が分かれた。
選手や関係者の無念を思うと、言葉もない。チームの柱と期待されながら、けがで出場がかなわなかったメンバーの胸中を想像するだけでもつらくなる。このコラムを書くこと自体を遠慮したい気持ちになる。
このコラムを書かせていただくようになったのは、たしか2006年。朝日新聞社を退職して間もないころだった。以来、関西で開かれる公式戦はすべて試合会場に出向いて応援し、プレーヤーとしても、スタッフとしても活動したことのない素人の目に映る場面を記録し、文章にしてきたが、横着した報いだろうか。試合は17-17で延長戦に入り、最後は先攻の法政がFGを決め、それに失敗したファイターズが敗れた。関西リーグでの立命戦の敗北を加えると悔しさはさらに募る。
攻守の中心になる選手が何人もけがや特別な事情で戦列を離れざるを得なかったことを勘案すれば、ここまで勝ち進んできたことをもっと高く評価する人がいてもおかしくないし、逆に、つまらん言い訳はするな、今ある力で勝ち切るのがファイターズだ、これまで勝ち続けてきたチームもそれぞれに事情をかかえていたが、それを克服して勝ち続けてきた。だからこそ称賛されているのだ、という人もいるだろう。
そういう環境にあって、ここまで頑張ってきた今季のチームを僕は高く評価したい。関西リーグの立命戦で悔しい思いをし、東京での法政戦でまたも涙を飲む。それもまた人生の一里塚、勝ち続けてきたからこそ味わえる貴重な体験であると受け止め、明日への扉を開いてもらいたい。悔しい体験があってこそ、人は頑張れる。僕はその言葉をかみしめて生きてきた。
(15)4年生の頑張りと1年生の奮闘
投稿日時:2024/11/24(日) 22:17
23日は、甲子園ボウルの出場権をかけて東西の上位チームが競う一日。関西代表の関大は早稲田と、ファイターズは慶応との試合が組まれた。
試合会場は神戸ユニバー記念競技場。神戸市の西端に近い山地を切り開いて建設された素晴らしい施設である。しかしながら、私の住んでいる西宮市からは距離があり、電車の乗り換えなどに戸惑うことも予想されるので、キックオフ(13時)のはるか前から自宅を出た。関東代表との戦いに気持ちが弾んでいたせいかもしれない。
ファイターズのレシーブで試合開始。リターナーとして起用されたのは1年生WRの立花。今春入部したばかりだが、レシーバーとして随時起用され、その才能の一端を披露している。どんな走りをしてくれるかと期待したが、相手の蹴ったボールがそこまで届かず、その前に構えていた伊丹がキャッチ。RBのエースでもある彼が相手陣48ヤードまでリターンした。そこから伊丹の時間が始まる。まずは左の密集を突いて5ヤードのラン。QB星野弟がWR小段に短いパスを通してダウンを更新すると、そこからは伊丹のワンマンショー。途中、WR五十嵐に短いパスを一つ通しただけで、あとはひたすら伊丹が走り続けてTDまでもっていく。大西のキックも決まって7ー0。
対する相手は徹底したパス攻撃。能力の高いQBが10ヤード前後のパスを投げ続けてダウンを2度更新。ぐいぐいと陣地を進めてくる。その攻勢を受け止めるのがファイターズの守備陣。けがから復帰したばかりの1年生DE田中志門の奮闘もあって、決定的なチャンスは与えない。1Qの終盤から2Qに移っても、パス中心の慶応、伊丹のランを中心とした関学という状況は変わらない。その流れを切ったのがDB杉本。相手が投じたハーフライン近くのパスを奪って攻守交代。ファイターズはそこから伊丹のラン、星野からWR百田へのパス、再び伊丹のラン、さらには再度WR百田へのパスなどで着実に陣地を進め、伊丹のランでTD。13ー0とリードを広げる。
後半になってもパスの慶応、ランとパスの関学という構図は変わらない。
慶応の攻撃で始まった第3Q最初のシリーズ。相手のパスが思い通りに通らず、わずか4プレーで攻守交代。ハーフライン近くから始まったファイターズの攻撃は星野弟からWR五十嵐へのパス、RB伊丹のラン、TE安藤へのパスなどで陣地を進める。相手ゴール前20ヤード付近まで到達すると、そこから7回連続でボールを伊丹に託す。その期待に応えた伊丹が残り2ヤードをジャンプして相手ゴールにボールを運びTD。大西のキックも決まって20ー0。
その後、第4Qに相手のパスで7点を返されたが、20ー7で試合は終了。ファイターズの堅い守りと、思い切った攻めが功を奏した。
チームの柱となる4年生が力を発揮し、今春入学したばかりの1年生がそれに張り合って力を発揮し始める。この日は1年生のQB星野弟、WR立花、DB小暮が先発で起用され期待に応えた。春のシーズンにいち早くデビューしたDL田中志門もけがから回復、元気に戻ってきた。LBの永井弟も、試合の立ち上がりで素晴らしいタックルを決めている。
1年生の彼らが大学フットボールの経験を積み、さらに成長してくれれば、関西リーグで立命に敗れ、悔しい思いをしたチームの雰囲気にも影響するだろう。その悔しさをかみしめ、それを起爆剤にして奮闘している4年生と、大学生の試合に出られること、チームに貢献できることを励みにして日々成長を続けるフレッシュマン。双方の努力がかみ合えば、チームはさらに成長する。そこから甲子園ボウルへの道が開ける。
上級生、下級生関係なく力を発揮できる環境が整っているのがファイターズの最大の強みである。その強みを生かすべく更なる鍛錬を続け、残る2試合を勝ち続けてもらいたい。
試合会場は神戸ユニバー記念競技場。神戸市の西端に近い山地を切り開いて建設された素晴らしい施設である。しかしながら、私の住んでいる西宮市からは距離があり、電車の乗り換えなどに戸惑うことも予想されるので、キックオフ(13時)のはるか前から自宅を出た。関東代表との戦いに気持ちが弾んでいたせいかもしれない。
ファイターズのレシーブで試合開始。リターナーとして起用されたのは1年生WRの立花。今春入部したばかりだが、レシーバーとして随時起用され、その才能の一端を披露している。どんな走りをしてくれるかと期待したが、相手の蹴ったボールがそこまで届かず、その前に構えていた伊丹がキャッチ。RBのエースでもある彼が相手陣48ヤードまでリターンした。そこから伊丹の時間が始まる。まずは左の密集を突いて5ヤードのラン。QB星野弟がWR小段に短いパスを通してダウンを更新すると、そこからは伊丹のワンマンショー。途中、WR五十嵐に短いパスを一つ通しただけで、あとはひたすら伊丹が走り続けてTDまでもっていく。大西のキックも決まって7ー0。
対する相手は徹底したパス攻撃。能力の高いQBが10ヤード前後のパスを投げ続けてダウンを2度更新。ぐいぐいと陣地を進めてくる。その攻勢を受け止めるのがファイターズの守備陣。けがから復帰したばかりの1年生DE田中志門の奮闘もあって、決定的なチャンスは与えない。1Qの終盤から2Qに移っても、パス中心の慶応、伊丹のランを中心とした関学という状況は変わらない。その流れを切ったのがDB杉本。相手が投じたハーフライン近くのパスを奪って攻守交代。ファイターズはそこから伊丹のラン、星野からWR百田へのパス、再び伊丹のラン、さらには再度WR百田へのパスなどで着実に陣地を進め、伊丹のランでTD。13ー0とリードを広げる。
後半になってもパスの慶応、ランとパスの関学という構図は変わらない。
慶応の攻撃で始まった第3Q最初のシリーズ。相手のパスが思い通りに通らず、わずか4プレーで攻守交代。ハーフライン近くから始まったファイターズの攻撃は星野弟からWR五十嵐へのパス、RB伊丹のラン、TE安藤へのパスなどで陣地を進める。相手ゴール前20ヤード付近まで到達すると、そこから7回連続でボールを伊丹に託す。その期待に応えた伊丹が残り2ヤードをジャンプして相手ゴールにボールを運びTD。大西のキックも決まって20ー0。
その後、第4Qに相手のパスで7点を返されたが、20ー7で試合は終了。ファイターズの堅い守りと、思い切った攻めが功を奏した。
チームの柱となる4年生が力を発揮し、今春入学したばかりの1年生がそれに張り合って力を発揮し始める。この日は1年生のQB星野弟、WR立花、DB小暮が先発で起用され期待に応えた。春のシーズンにいち早くデビューしたDL田中志門もけがから回復、元気に戻ってきた。LBの永井弟も、試合の立ち上がりで素晴らしいタックルを決めている。
1年生の彼らが大学フットボールの経験を積み、さらに成長してくれれば、関西リーグで立命に敗れ、悔しい思いをしたチームの雰囲気にも影響するだろう。その悔しさをかみしめ、それを起爆剤にして奮闘している4年生と、大学生の試合に出られること、チームに貢献できることを励みにして日々成長を続けるフレッシュマン。双方の努力がかみ合えば、チームはさらに成長する。そこから甲子園ボウルへの道が開ける。
上級生、下級生関係なく力を発揮できる環境が整っているのがファイターズの最大の強みである。その強みを生かすべく更なる鍛錬を続け、残る2試合を勝ち続けてもらいたい。
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