石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(29)練習また練習
毎年、この季節になると、週末の上ヶ原の第3フィールドには若手OBが顔を出し、練習台を務めてくれる。今年はなかなか姿が見えないなと思っていたら、先週末には東京からXリーグのリクシルで活躍しているQBの加藤翔平君、DLの平澤徹君(ともに2011年卒)、地元からエレコムのLB池田雄紀君(2014年卒)が来てくれた。
3人とも社会人チームで日本代表クラスの活躍をしているバリバリの現役。防具を着けてグラウンドに降り、スカウトチームに混じってVチームの練習相手を務めてくれた。それぞれがつい先日まで、チームの主力メンバーとしてXリーグで激戦を繰り広げていただけに、見ていてもほれぼれするような動きである。
ディフェンスエンドに入った平澤君は簡単にVチームのOL陣を突破し、平然とQBの目の前に立っている。池田君はJVチームの要として、VチームのRBを自由に走らせない。加藤君になると、まるで異次元のQBである。体がデカイし遠投力がある。ランプレーで発進すれば、一気にTDまで持っていく突進力もある。JVチームのQBとは3段階から5段階上のレベルである。
3人が3人とも、今季対戦したどのチームにもいないレベルの選手であり、Vチームのメンバーにとっては、上には上がいる、というのが正直な感想だったのではないか。
3人だけではない。昨年度の主将でアシスタントコーチを務めている橋本君は毎日、グラウンドに顔を出し、OLの練習台を務めている。自身が昨年まで引っ張ってきたチームだから、相手になる選手が成長しているかどうかの手応えは、体感で判断できる。その折々に気付いたことを身を以て指導し、1センチ単位で足の運びを注意する。
同じくOLの江川君、FBの山崎君、WRの宮崎君、DBの瀧上君、MGRの重田君も連日のようにグラウンドに顔を出し、練習の補助を務めてくれる。それぞれが先輩風を吹かして威張るのではなく、丁寧に後輩たちを指導してくれるのが、ファイターズのよき伝統である。
そういう練習を重ねて、甲子園ボウルまであと一歩の所までこぎ着けた。いよいよ今度の日曜日はその成果を発揮する立命戦である。
先日の試合は、立ち上がりに見事なパス攻撃で先制し、相手の反撃を強力な守備陣がぎりぎりのところで抑えて勝つことができた。
しかし、互いに一度、手の内をさらし、力量を見極めたうえで迎えるのが今度の試合である。それぞれが相手の弱点を突き、自分たちの強みを磨いて戦うことは目に見えている。その意味では、前回の戦い以降の2週間をどのように過ごしたか、試合までの残り時間をどう生かすかで勝敗の行方が決まる。11月20日の勝利は、その日限り。12月4日までの取り組みで、本当の勝敗が決する。
そのための準備はできているか。傑出した先輩たちの胸を借りるのもその一つの方法だし、仲間内で互いに指摘し合い、厳しく求め合ってレベルアップを図るのも、重要である。何より大切なのは、自分自身の意識を高く持ち、目の前の相手に必ず勝つ、必ず倒すという責任感をもってことに当たることだ。
そのためには、目の前の練習に全力を挙げて取り組むしかない。たとえ下級生のスカウトチームが相手でも、百発百中のプレーを自らに義務づけ、それを完遂する。たとえオールジャパン級の先輩が相手でも、一歩も引かない。自分たちのQBには一指も触れさせない。そういう強い気持ちをもって自らを奮い立たせるしかないのである。
練習また練習。今この時季に、本気で勝つための練習をしている大学チームはほんの数校である。そういう練習が大切な仲間とともに続けられることの幸せに思いをはせよう。たとえハードな練習であっても、目の前に具体的な目標を描いて取り組めば、それは喜びに変わる。その喜びが人を成長させる。そういう練習ができる時間がまだ残されている。その時間を有効に使い、プレーの精度を高め、気力を充実させてもらいたい。
締めくくりに、先週、練習相手を務めてくれた池田君に確かめた話を一つ披露したい。彼は今季、学生時代から慣れ親しんだ1番の背番号に代え、14番を背負ってプレーした。どうしてか、と思った瞬間、思い当たることがあった。14番は、同期の大森君が学生時代に背負っていた番号である。
「そうか。がんとの戦いに挑んでいる病床の友人を励ますために、その14番を背負ったのか」と思い当たった僕は、池田君の顔を見たときにまずそのことを確かめた。
「そうです。同期の大森が苦しい戦いをしている。ならば僕も、その戦いを背負ってやる。そう思って背番号を変更したのです」
その返事を聞いた時、何とも表現しようのない感動が走った。これがファイターズだ、同じ釜の飯を食い、同じグラウンドで汗を流し、死にものぐるいの練習をした仲間だ、そう思うと、思わず涙がにじんできた。
そういう仲間を作れるのも、グラウンドでは互いに厳しく求め合い、試合では結束して強敵に立ち向かってきた場面を共有しているからである。ファイターズの諸君も、残る試合でそういう場面を共有し、仲間との絆を固くして巣立ってほしい。そのための時間はまだ残されている。練習また練習である。
3人とも社会人チームで日本代表クラスの活躍をしているバリバリの現役。防具を着けてグラウンドに降り、スカウトチームに混じってVチームの練習相手を務めてくれた。それぞれがつい先日まで、チームの主力メンバーとしてXリーグで激戦を繰り広げていただけに、見ていてもほれぼれするような動きである。
ディフェンスエンドに入った平澤君は簡単にVチームのOL陣を突破し、平然とQBの目の前に立っている。池田君はJVチームの要として、VチームのRBを自由に走らせない。加藤君になると、まるで異次元のQBである。体がデカイし遠投力がある。ランプレーで発進すれば、一気にTDまで持っていく突進力もある。JVチームのQBとは3段階から5段階上のレベルである。
3人が3人とも、今季対戦したどのチームにもいないレベルの選手であり、Vチームのメンバーにとっては、上には上がいる、というのが正直な感想だったのではないか。
3人だけではない。昨年度の主将でアシスタントコーチを務めている橋本君は毎日、グラウンドに顔を出し、OLの練習台を務めている。自身が昨年まで引っ張ってきたチームだから、相手になる選手が成長しているかどうかの手応えは、体感で判断できる。その折々に気付いたことを身を以て指導し、1センチ単位で足の運びを注意する。
同じくOLの江川君、FBの山崎君、WRの宮崎君、DBの瀧上君、MGRの重田君も連日のようにグラウンドに顔を出し、練習の補助を務めてくれる。それぞれが先輩風を吹かして威張るのではなく、丁寧に後輩たちを指導してくれるのが、ファイターズのよき伝統である。
そういう練習を重ねて、甲子園ボウルまであと一歩の所までこぎ着けた。いよいよ今度の日曜日はその成果を発揮する立命戦である。
先日の試合は、立ち上がりに見事なパス攻撃で先制し、相手の反撃を強力な守備陣がぎりぎりのところで抑えて勝つことができた。
しかし、互いに一度、手の内をさらし、力量を見極めたうえで迎えるのが今度の試合である。それぞれが相手の弱点を突き、自分たちの強みを磨いて戦うことは目に見えている。その意味では、前回の戦い以降の2週間をどのように過ごしたか、試合までの残り時間をどう生かすかで勝敗の行方が決まる。11月20日の勝利は、その日限り。12月4日までの取り組みで、本当の勝敗が決する。
そのための準備はできているか。傑出した先輩たちの胸を借りるのもその一つの方法だし、仲間内で互いに指摘し合い、厳しく求め合ってレベルアップを図るのも、重要である。何より大切なのは、自分自身の意識を高く持ち、目の前の相手に必ず勝つ、必ず倒すという責任感をもってことに当たることだ。
そのためには、目の前の練習に全力を挙げて取り組むしかない。たとえ下級生のスカウトチームが相手でも、百発百中のプレーを自らに義務づけ、それを完遂する。たとえオールジャパン級の先輩が相手でも、一歩も引かない。自分たちのQBには一指も触れさせない。そういう強い気持ちをもって自らを奮い立たせるしかないのである。
練習また練習。今この時季に、本気で勝つための練習をしている大学チームはほんの数校である。そういう練習が大切な仲間とともに続けられることの幸せに思いをはせよう。たとえハードな練習であっても、目の前に具体的な目標を描いて取り組めば、それは喜びに変わる。その喜びが人を成長させる。そういう練習ができる時間がまだ残されている。その時間を有効に使い、プレーの精度を高め、気力を充実させてもらいたい。
締めくくりに、先週、練習相手を務めてくれた池田君に確かめた話を一つ披露したい。彼は今季、学生時代から慣れ親しんだ1番の背番号に代え、14番を背負ってプレーした。どうしてか、と思った瞬間、思い当たることがあった。14番は、同期の大森君が学生時代に背負っていた番号である。
「そうか。がんとの戦いに挑んでいる病床の友人を励ますために、その14番を背負ったのか」と思い当たった僕は、池田君の顔を見たときにまずそのことを確かめた。
「そうです。同期の大森が苦しい戦いをしている。ならば僕も、その戦いを背負ってやる。そう思って背番号を変更したのです」
その返事を聞いた時、何とも表現しようのない感動が走った。これがファイターズだ、同じ釜の飯を食い、同じグラウンドで汗を流し、死にものぐるいの練習をした仲間だ、そう思うと、思わず涙がにじんできた。
そういう仲間を作れるのも、グラウンドでは互いに厳しく求め合い、試合では結束して強敵に立ち向かってきた場面を共有しているからである。ファイターズの諸君も、残る試合でそういう場面を共有し、仲間との絆を固くして巣立ってほしい。そのための時間はまだ残されている。練習また練習である。
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