石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(12)学ぶは真似ぶ
前回のコラムでは、今季のチームが直面している課題について、素人が勝手なことを書き散らしてしまった。まるで本職のフットボール解説者のような言い方であり、読み返して、少々恥ずかしくなった。王子のスタジアムで開局していた臨時のFM放送で、小野ディレクターが試合の解説をされているのに刺激されて、ついつい自分も解説者のような視点でゲームを見ていたのだろう。身のほど知らずとはこのことである。
とはいいながら、今週もまたあの話の続きである。身のほど知らずの二乗といわれるかもしれないが、我慢しておつきあいを願いたい。
というのはほかでもない。先週の文章は、一言で言えば「課題がいくつも見つかりました。これからしっかり練習して、その課題を解決してくださいね」といっているだけ。これでは、少々、無責任ではないかと思ったのである。
解説者、評論家としてはそれでいいのかもしれないが、僕は解説者でも評論家でもない。ファイターズが強くて品位のあるチームになってくれることを勝手に願っている「一人サポーター」である。同時に、現役の新聞記者であり、関西学院でささやかな講座を受け持ち、学生を相手に文章の書き方を指導している教員でもある。サポーターであり、教員の立場からすれば、課題解決の助けになるヒントの一つも出してみるのが、その責任ではないかと考えたのである。
ということで、本題に入る。「学ぶことは真似ぶこと」である。これは、人が知らない知識や技術を身に付けるには、真似することから始めるのが何より、ということを表した言葉である。
例えば、幼い子どもの成長、発達の課程を考えてみよう。幼児には、周りの人の言葉や行動をひたすら真似する時期がある。2歳か3歳の頃だろう。まるでオウムのように、上の子と同じ言葉を発し、鏡のように相手の行動を真似する。上の子が食べ物の好き嫌いを言えば、下の子も同じように好きだ、嫌いだという。自分の知らないことを知っている人(例えば兄や姉)の言葉や行動をひたすら真似ることで言葉を覚え、なすべき行動を身に付けていくのである。
これは幼児に限らない。小学校に上がっても、下級生は先生や上級生の真似をしながら、やらねばならないことと、してはいけないことを区別し、知識を身につけ、社会常識を体感していく。社会人になって、仕事を覚えるのも同様だ。「プロの仕事にマニュアルなんてない。先輩の後ろ姿を見て覚えろ」なんてことを言われながら、とにかく先輩に追いつけ追い越せと頑張る。中には頑張るのが嫌で、さっさと別の道に進む人もいるが、そんな人であっても、別の道でまた先人の真似をして技術や知識を身につけていかねばならないことに変わりはない。
独創だ、個性だ、といっても、スタートはとりあえず真似することから始まるのが、猿から進化した人間の習性である。だから、学校であれ、企業であれ、生き生きした組織には必ず真似をするに値する指導者(それは時には先輩であり、コーチであり、教員でもあろう)が存在するのである。
ファイターズにとっても、それは例外ではない。多様な専門知識や特別の技術を持ったコーチやトレーナーが複数存在し、いつもチームの全体に目を配っている。5年生コーチは、自らが4年間に身につけた技術と知識をプレーやミーティングで惜しみなく披露してくれる。4年生は、自分たちのチームを寄り強くしたい一心で、自らのライバルになる下級生にその技術と知識を惜しみなく与える。
下級生から見れば、4年生はあこがれであり、同時に打ち倒してポジションを奪わなければならないライバルである。だから上級生の持っている技術を真似し、身につけようと、常に目を光らせている。部外者から見れば、矛盾だらけのこうした関係の中から、しかし、互いに惜しみなく与え、遠慮なく奪いあって、より強力なチームを作ってきたのがファイターズである。
コーチや先輩たちのよいところを思いっきり真似し、その技を盗んで、自らを向上させてほしい。学ぶは真似ぶ。ファイターズには真似をするに値する技術や知識を持ったコーチや先輩が一杯いる。それは選手だけではない。チームに対する献身、貢献という視点で見れば、スタッフの面々もまた、後輩が目標にするに値する活動を日々続けている。
身近なところに「先輩のようなプレーヤーになりたい」「先輩の行動を自分も心掛けたい」と思える人材が豊富に存在するのが、ファイターズならではの特別な資産である。その資産を生かそうではないか。「学ぶは真似ぶ」である。
とはいいながら、今週もまたあの話の続きである。身のほど知らずの二乗といわれるかもしれないが、我慢しておつきあいを願いたい。
というのはほかでもない。先週の文章は、一言で言えば「課題がいくつも見つかりました。これからしっかり練習して、その課題を解決してくださいね」といっているだけ。これでは、少々、無責任ではないかと思ったのである。
解説者、評論家としてはそれでいいのかもしれないが、僕は解説者でも評論家でもない。ファイターズが強くて品位のあるチームになってくれることを勝手に願っている「一人サポーター」である。同時に、現役の新聞記者であり、関西学院でささやかな講座を受け持ち、学生を相手に文章の書き方を指導している教員でもある。サポーターであり、教員の立場からすれば、課題解決の助けになるヒントの一つも出してみるのが、その責任ではないかと考えたのである。
ということで、本題に入る。「学ぶことは真似ぶこと」である。これは、人が知らない知識や技術を身に付けるには、真似することから始めるのが何より、ということを表した言葉である。
例えば、幼い子どもの成長、発達の課程を考えてみよう。幼児には、周りの人の言葉や行動をひたすら真似する時期がある。2歳か3歳の頃だろう。まるでオウムのように、上の子と同じ言葉を発し、鏡のように相手の行動を真似する。上の子が食べ物の好き嫌いを言えば、下の子も同じように好きだ、嫌いだという。自分の知らないことを知っている人(例えば兄や姉)の言葉や行動をひたすら真似ることで言葉を覚え、なすべき行動を身に付けていくのである。
これは幼児に限らない。小学校に上がっても、下級生は先生や上級生の真似をしながら、やらねばならないことと、してはいけないことを区別し、知識を身につけ、社会常識を体感していく。社会人になって、仕事を覚えるのも同様だ。「プロの仕事にマニュアルなんてない。先輩の後ろ姿を見て覚えろ」なんてことを言われながら、とにかく先輩に追いつけ追い越せと頑張る。中には頑張るのが嫌で、さっさと別の道に進む人もいるが、そんな人であっても、別の道でまた先人の真似をして技術や知識を身につけていかねばならないことに変わりはない。
独創だ、個性だ、といっても、スタートはとりあえず真似することから始まるのが、猿から進化した人間の習性である。だから、学校であれ、企業であれ、生き生きした組織には必ず真似をするに値する指導者(それは時には先輩であり、コーチであり、教員でもあろう)が存在するのである。
ファイターズにとっても、それは例外ではない。多様な専門知識や特別の技術を持ったコーチやトレーナーが複数存在し、いつもチームの全体に目を配っている。5年生コーチは、自らが4年間に身につけた技術と知識をプレーやミーティングで惜しみなく披露してくれる。4年生は、自分たちのチームを寄り強くしたい一心で、自らのライバルになる下級生にその技術と知識を惜しみなく与える。
下級生から見れば、4年生はあこがれであり、同時に打ち倒してポジションを奪わなければならないライバルである。だから上級生の持っている技術を真似し、身につけようと、常に目を光らせている。部外者から見れば、矛盾だらけのこうした関係の中から、しかし、互いに惜しみなく与え、遠慮なく奪いあって、より強力なチームを作ってきたのがファイターズである。
コーチや先輩たちのよいところを思いっきり真似し、その技を盗んで、自らを向上させてほしい。学ぶは真似ぶ。ファイターズには真似をするに値する技術や知識を持ったコーチや先輩が一杯いる。それは選手だけではない。チームに対する献身、貢献という視点で見れば、スタッフの面々もまた、後輩が目標にするに値する活動を日々続けている。
身近なところに「先輩のようなプレーヤーになりたい」「先輩の行動を自分も心掛けたい」と思える人材が豊富に存在するのが、ファイターズならではの特別な資産である。その資産を生かそうではないか。「学ぶは真似ぶ」である。
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