石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(5)ファミリーの断面
Xリーグのエレコム・ファイニーズは、かつての湖北ファイニーズ、その後はサンスターファイニーズという名前で知られた由緒あるチームである。いまはパソコンの周辺機器を販売するエレコムから全面的な支援を受け、西地区で活躍している。
このチームには、ひとかたならぬ思い入れがある。10数年前、サンスターがスポンサーから撤退し、チームが存亡の危機に立ったときに、少々関わりを持ったことがあるからだ。「日本のアメフット界にも市民球団を」と選手やコーチが立ち上がり、自らお金を出し合ってチームを運営しているのに共鳴し、当時働いていた朝日新聞に紹介記事を書いたり、サポーターになったりして、少しばかりの支援をしてきた。チームのホームページでは、いまファイターズで書いているのと同じようなスタンスで応援コラムも書いていた。
当時の選手兼ヘッドコーチがいま龍谷大のヘッドコーチをしている村田氏、コーチが神戸大の監督をしている万谷氏。その後輩の井場氏は当時、関西を代表するパワフルRBとして活躍していた。ファイターズOBでは、LB浜田氏がチームの支柱だったし、QB埜下氏はもう現役を引退していたが、チームの催しには必ず顔を出していた。
そのチームが今春から、ファイターズOBを大量に受け入れている。チームのゼネラルマネジャーに2009年度卒のQB浅海氏(4年生の時、最終の立命戦でワンポイントQBとして4回出場、そのたびにトリッキーなパスを成功させて31-7の勝利に貢献した選手といえば、覚えておられるファンも多いだろう)が就任し、精力的にリクルート活動をしているからだ。
すでに、このチームに参加しているOBには、僕が知り得ただけでも、QB糟谷氏、WR松原、勝本、寺元の各氏。ラインには東元、岸君という今春卒業のメンバーがおり、1昨年の甲子園ボウルで大活躍したDB香山君も来春から入社が内定している。さらに、まだ名前は公表できないが、最近の2連覇に貢献した複数の若手OBにも声をかけているそうだ。
浅海氏に聞くと、アメフットに対する取り組みがしっかりしているファイターズOBを積極的に補強してチームを強化し、同時に若手OBの活動の場を広げて、交流を図るのが狙いという。ゆくゆくはファイターズに社会人チームのノウハウを提供して行くことも視野に入れているそうだ。
近年、ファイターズの選手層が厚くなったのに比例してXリーグで活躍するファイターズ卒業生が増えている。関西ではパナソニックやアサヒ飲料、西宮ブルーインズ。関東では富士通や鹿島、IBM、アサヒビールなどで多くの卒業生が活躍。あのオービックにもOL松本氏がいるし、今季からはRB望月君が参加する。
そのエレコムとファイターズの合同練習があると聞いて、この前の日曜日、第3フィールドに出掛けた。僕がファイニーズを支援していた当時からのなじみの選手やコーチが何人もあいさつに来てくれる。それはそれで懐かしかったが、それ以上に驚いたのは、久しぶりで顔を合わせたOBたちがことのほか懐かしかったことだ。
卒業以来、初めて出会う松原君は相変わらず男前だったし、寺元君は学生時代と少しも変わっていなかった。岸君は、祝勝会以来の顔合わせだったが、すっかり社会人の顔になっていた。つい数ヶ月前まで、ディフェンスの最前線で相手を圧倒していた「キン肉マン」がジミー大西に変身してしまったような印象だった。
練習が始まる。さすがに松原君の華やかなプレーが目立つ。ハワイ大出身の能力の高いQBが素早く繰り出すパスを確実にキャッチし、どんどん陣地を進めていく。こんなQBやレシーバーが目の前で模範プレーを見せてくれるのだから、現役の選手たちも大いに励みになったに違いない。
昨年のシーズン終盤もそうだったが、これまでは、折りにふれてパナソニックの選手たちがグラウンドに顔を見せ、後輩の練習台を務めてくれた。それに今季からはエレコムが加わる。さらに、多くのOBが活動している西宮ブルーインズなども来てくれるかも知れない。
このように卒業生がフィールドに戻って、気軽に後輩を指導し、目の前で水際だったプレーを見せてくれることの意味は大きい。彼らのプレーをヒントに現役の諸君が技術を磨き、社会人に対抗できる体力を養う。そういう循環が生まれてくると、チームはますます強くなる。手の内を知り尽くしている内輪の練習では得られない「なにか」を手にすることも可能になる。
卒業生が気軽に顔を見せてくれることは、チームにとって心強い。卒業生にとっても、心温まる時間になるに違いない。そういう関係が構築できるのがファイターズであり、このチームがファミリーと呼ばれる由縁である。
このチームには、ひとかたならぬ思い入れがある。10数年前、サンスターがスポンサーから撤退し、チームが存亡の危機に立ったときに、少々関わりを持ったことがあるからだ。「日本のアメフット界にも市民球団を」と選手やコーチが立ち上がり、自らお金を出し合ってチームを運営しているのに共鳴し、当時働いていた朝日新聞に紹介記事を書いたり、サポーターになったりして、少しばかりの支援をしてきた。チームのホームページでは、いまファイターズで書いているのと同じようなスタンスで応援コラムも書いていた。
当時の選手兼ヘッドコーチがいま龍谷大のヘッドコーチをしている村田氏、コーチが神戸大の監督をしている万谷氏。その後輩の井場氏は当時、関西を代表するパワフルRBとして活躍していた。ファイターズOBでは、LB浜田氏がチームの支柱だったし、QB埜下氏はもう現役を引退していたが、チームの催しには必ず顔を出していた。
そのチームが今春から、ファイターズOBを大量に受け入れている。チームのゼネラルマネジャーに2009年度卒のQB浅海氏(4年生の時、最終の立命戦でワンポイントQBとして4回出場、そのたびにトリッキーなパスを成功させて31-7の勝利に貢献した選手といえば、覚えておられるファンも多いだろう)が就任し、精力的にリクルート活動をしているからだ。
すでに、このチームに参加しているOBには、僕が知り得ただけでも、QB糟谷氏、WR松原、勝本、寺元の各氏。ラインには東元、岸君という今春卒業のメンバーがおり、1昨年の甲子園ボウルで大活躍したDB香山君も来春から入社が内定している。さらに、まだ名前は公表できないが、最近の2連覇に貢献した複数の若手OBにも声をかけているそうだ。
浅海氏に聞くと、アメフットに対する取り組みがしっかりしているファイターズOBを積極的に補強してチームを強化し、同時に若手OBの活動の場を広げて、交流を図るのが狙いという。ゆくゆくはファイターズに社会人チームのノウハウを提供して行くことも視野に入れているそうだ。
近年、ファイターズの選手層が厚くなったのに比例してXリーグで活躍するファイターズ卒業生が増えている。関西ではパナソニックやアサヒ飲料、西宮ブルーインズ。関東では富士通や鹿島、IBM、アサヒビールなどで多くの卒業生が活躍。あのオービックにもOL松本氏がいるし、今季からはRB望月君が参加する。
そのエレコムとファイターズの合同練習があると聞いて、この前の日曜日、第3フィールドに出掛けた。僕がファイニーズを支援していた当時からのなじみの選手やコーチが何人もあいさつに来てくれる。それはそれで懐かしかったが、それ以上に驚いたのは、久しぶりで顔を合わせたOBたちがことのほか懐かしかったことだ。
卒業以来、初めて出会う松原君は相変わらず男前だったし、寺元君は学生時代と少しも変わっていなかった。岸君は、祝勝会以来の顔合わせだったが、すっかり社会人の顔になっていた。つい数ヶ月前まで、ディフェンスの最前線で相手を圧倒していた「キン肉マン」がジミー大西に変身してしまったような印象だった。
練習が始まる。さすがに松原君の華やかなプレーが目立つ。ハワイ大出身の能力の高いQBが素早く繰り出すパスを確実にキャッチし、どんどん陣地を進めていく。こんなQBやレシーバーが目の前で模範プレーを見せてくれるのだから、現役の選手たちも大いに励みになったに違いない。
昨年のシーズン終盤もそうだったが、これまでは、折りにふれてパナソニックの選手たちがグラウンドに顔を見せ、後輩の練習台を務めてくれた。それに今季からはエレコムが加わる。さらに、多くのOBが活動している西宮ブルーインズなども来てくれるかも知れない。
このように卒業生がフィールドに戻って、気軽に後輩を指導し、目の前で水際だったプレーを見せてくれることの意味は大きい。彼らのプレーをヒントに現役の諸君が技術を磨き、社会人に対抗できる体力を養う。そういう循環が生まれてくると、チームはますます強くなる。手の内を知り尽くしている内輪の練習では得られない「なにか」を手にすることも可能になる。
卒業生が気軽に顔を見せてくれることは、チームにとって心強い。卒業生にとっても、心温まる時間になるに違いない。そういう関係が構築できるのがファイターズであり、このチームがファミリーと呼ばれる由縁である。
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