石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(18)夏合宿レポート
東鉢伏高原で行われていたファイターズの合宿の模様を報告したい。
と大げさにいっても、練習を見たのは12日と16日の2日間だけ。ともに早朝、西宮を出発し、その夜に戻ってくる駆け足の見学だったから、微に入り細ををうがった報告はできない。表面をなぞっただけのことになる。けれども、そこはそれ、日ごろ上ヶ原のグラウンドで彼らの様子を見続けているから、多少は報告の材料もある。
これまでの合宿と比べて一番の違いは、かねいちやのグラウンドが人工芝に改装されたこと。ファイターズのホームページでも写真が紹介されているが、これまでの土のグラウンドとは文字通り雲底の差だ。雨が降れば泥だらけ、晴れればパンパンに乾いたグラウンドは、その整備作業が大変だった。練習開始の前からトンボを持って整地し、バケツを持って水を逃がした。主に整備を担当するのはマネジャーだが、練習が始まると監督やコーチもトンボを持ち、水道からホースを延ばしてグラウンド整備に汗を流した。
そんな作業が今年からは一切なし。昼間ににわか雨が降ろうが、夕方、夕立が来ようが、グラウンドの状態はいつだって完璧。まだ張り替えたばかりだから、芝の状態もよく、いつだってスケジュール通りの練習が保証されている。
そうなると、練習内容も変わってくる。これまでは、練習が始まっても「グラウンド整備」や「ラインの引き直し」を名目に、多少は休憩できる時間があったけど、今年からはそんな時間は一切なし。すべて決められた通りのタイムテーブルに沿って進行していく。つまり、練習の密度が例年よりより濃くなっているということだ。
もう一つは、味方同士の練習でありながら「がちんこ」の当たりが増えたこと。これは2、3年前から目立ってきたことだが、今年はいつも以上に気合いの入った当たり合いが多かった。とりわけ副将川端が率いるラインバッカーと突破力抜群の望月が率いるランニングバックのぶつかり合いは、味方同士とは思えないほどの真剣勝負。そのぶつかり合いや掛け声一つをとっても、互いに互いを意識し、刺激しあっていることが、見る者にひしひしと伝わってくる。
ぶつかり合いといえば、ランニングバックやレシーバー陣の当たりも強くなっている。練習台になったOBたちが「○○の当たりは受けたくない」「ダミーを持って構えているだけでも肋骨が折れそう」などと、うれしい悲鳴を上げているのも聞いた。
春のシーズンは、故障を癒やすことに専念し、ほとんど試合に出ていなかった昨年の主力メンバーも、大半が練習に復帰している。オフェンスではQBの畑やTEの副将金本がフル稼働で引っ張っているし、ディフェンスでは主将、梶原が先頭に立って練習している。ラインの前川、岸、朝倉、池永ら、春にはほとんど姿を見せなかった昨年のライスボウル戦士たちも元気に復帰し、さすがという動きを見せている。
下級生も成長している。春のシーズンを主力として戦った2、3年生は夏に入って、一段と成長した。オフェンスではQB斎藤、RB鷺野、米田、飯田、WRの木戸や大園、樋之下は先発に名を連ねてもおかしくないし、3年生で占める大型ラインも健在だ。OLのリーダー和田も練習に復帰しているし、WR、RB、QBと一人で三つのポジションをこなす松岡弟も元気一杯だ。
ディフェンスも、春のシーズンを先発で戦った2年生メンバーが成長し、層が厚くなった。DLの梶原弟、岡部、LBの小野、DBの国吉らは、故障から復帰してきた上級生とスタメンを争うことになるだろうが、その行方が注目される。
上級生も黙ってはいない。昨年の甲子園ボウル、ライスボウルを戦ったDBの保宗、高、大森、鳥内弟、LBの池田らは、言葉よりもプレーでチームを盛り上げている。
これに、将来有望な1年生が、すでに何人もVメンバーに加わっている。まだ顔と名前が一致しない選手もいるが、秋には何人かが交代出場という形で試合に出てくるはずだ。
という次第で、今年のファイターズは例年になく、選手層が厚くなっている。先発メンバーが倒れたら、次がいないという状況だった数年前と比較すると、これが決定的に異なる点だ。
では、本当にファイターズは強くなったのか。そう問えば、まだまだイエスとは答えられない。矛盾した言い方に思われるかもしれないが、現時点ではそうとしかいえない。
アメフットは総合力の戦いである。個々のポジションの層がどれだけ厚くなっても、試合でそれが有機的に結合し、相乗効果を上げていかないと成果は出ない。練習の成果を試合結果につなげるためには、攻守蹴、そのすべてが互いに信頼し、高めあってもう一段上の境地を目指す必要がある。
夏合宿の成果を成果とできるかどうかは、これからの取り組みにかかっている。それが秋の試合の結果につながり、試合の結果がさらなる成長の糧になっていく。その意味で、ファイターズは永遠に発展途上である。「層が厚くなった」「合宿でしっかり練習した」と満足した瞬間に、その成長が止まってしまうのである。上ヶ原に戻ってからのさらなる取り組みに期待したい。
と大げさにいっても、練習を見たのは12日と16日の2日間だけ。ともに早朝、西宮を出発し、その夜に戻ってくる駆け足の見学だったから、微に入り細ををうがった報告はできない。表面をなぞっただけのことになる。けれども、そこはそれ、日ごろ上ヶ原のグラウンドで彼らの様子を見続けているから、多少は報告の材料もある。
これまでの合宿と比べて一番の違いは、かねいちやのグラウンドが人工芝に改装されたこと。ファイターズのホームページでも写真が紹介されているが、これまでの土のグラウンドとは文字通り雲底の差だ。雨が降れば泥だらけ、晴れればパンパンに乾いたグラウンドは、その整備作業が大変だった。練習開始の前からトンボを持って整地し、バケツを持って水を逃がした。主に整備を担当するのはマネジャーだが、練習が始まると監督やコーチもトンボを持ち、水道からホースを延ばしてグラウンド整備に汗を流した。
そんな作業が今年からは一切なし。昼間ににわか雨が降ろうが、夕方、夕立が来ようが、グラウンドの状態はいつだって完璧。まだ張り替えたばかりだから、芝の状態もよく、いつだってスケジュール通りの練習が保証されている。
そうなると、練習内容も変わってくる。これまでは、練習が始まっても「グラウンド整備」や「ラインの引き直し」を名目に、多少は休憩できる時間があったけど、今年からはそんな時間は一切なし。すべて決められた通りのタイムテーブルに沿って進行していく。つまり、練習の密度が例年よりより濃くなっているということだ。
もう一つは、味方同士の練習でありながら「がちんこ」の当たりが増えたこと。これは2、3年前から目立ってきたことだが、今年はいつも以上に気合いの入った当たり合いが多かった。とりわけ副将川端が率いるラインバッカーと突破力抜群の望月が率いるランニングバックのぶつかり合いは、味方同士とは思えないほどの真剣勝負。そのぶつかり合いや掛け声一つをとっても、互いに互いを意識し、刺激しあっていることが、見る者にひしひしと伝わってくる。
ぶつかり合いといえば、ランニングバックやレシーバー陣の当たりも強くなっている。練習台になったOBたちが「○○の当たりは受けたくない」「ダミーを持って構えているだけでも肋骨が折れそう」などと、うれしい悲鳴を上げているのも聞いた。
春のシーズンは、故障を癒やすことに専念し、ほとんど試合に出ていなかった昨年の主力メンバーも、大半が練習に復帰している。オフェンスではQBの畑やTEの副将金本がフル稼働で引っ張っているし、ディフェンスでは主将、梶原が先頭に立って練習している。ラインの前川、岸、朝倉、池永ら、春にはほとんど姿を見せなかった昨年のライスボウル戦士たちも元気に復帰し、さすがという動きを見せている。
下級生も成長している。春のシーズンを主力として戦った2、3年生は夏に入って、一段と成長した。オフェンスではQB斎藤、RB鷺野、米田、飯田、WRの木戸や大園、樋之下は先発に名を連ねてもおかしくないし、3年生で占める大型ラインも健在だ。OLのリーダー和田も練習に復帰しているし、WR、RB、QBと一人で三つのポジションをこなす松岡弟も元気一杯だ。
ディフェンスも、春のシーズンを先発で戦った2年生メンバーが成長し、層が厚くなった。DLの梶原弟、岡部、LBの小野、DBの国吉らは、故障から復帰してきた上級生とスタメンを争うことになるだろうが、その行方が注目される。
上級生も黙ってはいない。昨年の甲子園ボウル、ライスボウルを戦ったDBの保宗、高、大森、鳥内弟、LBの池田らは、言葉よりもプレーでチームを盛り上げている。
これに、将来有望な1年生が、すでに何人もVメンバーに加わっている。まだ顔と名前が一致しない選手もいるが、秋には何人かが交代出場という形で試合に出てくるはずだ。
という次第で、今年のファイターズは例年になく、選手層が厚くなっている。先発メンバーが倒れたら、次がいないという状況だった数年前と比較すると、これが決定的に異なる点だ。
では、本当にファイターズは強くなったのか。そう問えば、まだまだイエスとは答えられない。矛盾した言い方に思われるかもしれないが、現時点ではそうとしかいえない。
アメフットは総合力の戦いである。個々のポジションの層がどれだけ厚くなっても、試合でそれが有機的に結合し、相乗効果を上げていかないと成果は出ない。練習の成果を試合結果につなげるためには、攻守蹴、そのすべてが互いに信頼し、高めあってもう一段上の境地を目指す必要がある。
夏合宿の成果を成果とできるかどうかは、これからの取り組みにかかっている。それが秋の試合の結果につながり、試合の結果がさらなる成長の糧になっていく。その意味で、ファイターズは永遠に発展途上である。「層が厚くなった」「合宿でしっかり練習した」と満足した瞬間に、その成長が止まってしまうのである。上ヶ原に戻ってからのさらなる取り組みに期待したい。
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