石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(2)出発の時
19日からJVとVのメンバーがグラウンドの全面を使って練習できるようになった。彼らがグラウンドに出る前には、今年入部したフレッシュマンが合同で体幹作りのトレーニングをしているから、やっとフルに近い状態で練習できる環境が整ったのである。
長い空白である。今年の9月19日は、例年なら4月1日に相当すると言ってもよいほどだ。単にグラウンドでの練習が許されなかっただけでなく、春の交流試合やJVメンバーによる新人戦はすべて中止。そして8月の鉢伏高原での夏合宿も中止になった。部員は登校もできず、実家に帰ったまま就職活動に集中する4年生も少なくなかった。
ようやく6月後半から少しずつ、メンバーを20人に限って暑熱順化訓練程度の練習が始まったが、その内容も「合同準備運動」の延長という程度の軽い内容。選手同士のコンタクトもボールを使った練習もできなかったから、とても試合に向けて内実を高めていくような段階までは進めなかった。
しかし、9月になり関西大会の日程が固まってくるに応じて、練習に対する大学側の規制も徐々に緩和され、ようやく19日から例年に近い状態で練習がスタートした。
その意味では、今年の9月19日は記念すべき日であり、ファイターズの新しいシーズンがスタートする日でもあった。
その練習をスタンドからずっと目をこらして眺めていると、それなりに感想はあった。しかし、たかだか週末だけの練習を見て、あれがよかった、ここが悪かったということにはためらいがある。
代わりに動かぬ事実だけを書いておきたい。一つは、今季加入したばかりのフレッシュマンがこの日から攻守合わせて10人近く、JV・Vのメンバーに抜擢され、先輩たちに交じって元気よくプレーしていたこと。俊敏な動きで、とても新人とは思えないようなWRやRBがいたし、彼らを止めに回るDBにも動きのよい選手がいた。身体が大きくて動きのよいラインメンがいるし、肩の強さが先輩QBを凌駕するようなQBもいる。初めての試合形式の練習にも戸惑いを見せず、元気に振る舞う彼らの姿を見て、大いに希望が見えたことは特筆される。
もちろん、上級生も久しぶりのチーム練習で生き生きと身体を動かせていた。幸い、軽いけがをしている選手は少数ながらいるが、大きなけがで休んでいる選手はおらず、今後練習を積んでいくにつれて、試合の感覚を取り戻してくれることは間違いなさそうだ。
驚いたのは、チーム練習が一段落した時にチームのディレクター、小野宏氏が訓示されたこととその内容だ。僕はグラウンドに降りられないので、スタンドから耳を澄ませていたのだが、その内容はほとんど聞き取れない。ただ、ものすごく熱心に、熱を込めて部員に語りかけられているのを見て、一体、何が起きたのかと気になった。
訓示の後、スタンドに上がってこられたのを待ち構えて聞くと、話の内容は新型コロナ禍の中での試合に臨む心得。その趣旨は、以下のようなことだった。
今季は新型コロナウイルスの感染が広がってる中での試合であり、感染者が出ればチームは試合に出場できなくなる可能性がある。今季はリーグ戦ではなくトーナメント戦であり、出場がかなわなくなれば、それでチームは敗退が決まる。絶対に感染者を出さないという気持ちで日々の行動を慎み、学生生活を送ろう。
23日からは大学は秋学期が始まり、一部の科目では対面授業が始まる。キャンパスへの学生の入構制限も解除される。そうすると、級友と食事などに出かける機会も増えるだろう。しかし、飲食をともにすることは、それだけ感染リスクが高まること。今の日本の感染者の比率から考えると、ファイターズから数人の感染者が出てもおかしくない。けれどもチームが試合に出るためには、それをゼロにしなければならない。部員全員が改めて日常生活に細心の注意を払う必要がある。ファイターズの諸君が関学生のモデルとなるような行動を心掛けていこう。
以上のような話だった。この話を聞いて、本当に今季のメンバーは大変だなと改めて思った。けれども、そういう歴史的なシーズンに巡り合わせたのも何かの縁である。とにかく個人ができること、チームとしてできること、双方ともに、細心の注意を払い、最善の努力をして来たるべき開幕に備えようではないか。前途が見えないシーズン。だからこそ中途半端な行動は許されない。公私ともに、日々全力を挙げて取り組もう。
終生、忘れることのできないシーズンが間もなく始まる。今はすべてを賭して旅立つときだ。
長い空白である。今年の9月19日は、例年なら4月1日に相当すると言ってもよいほどだ。単にグラウンドでの練習が許されなかっただけでなく、春の交流試合やJVメンバーによる新人戦はすべて中止。そして8月の鉢伏高原での夏合宿も中止になった。部員は登校もできず、実家に帰ったまま就職活動に集中する4年生も少なくなかった。
ようやく6月後半から少しずつ、メンバーを20人に限って暑熱順化訓練程度の練習が始まったが、その内容も「合同準備運動」の延長という程度の軽い内容。選手同士のコンタクトもボールを使った練習もできなかったから、とても試合に向けて内実を高めていくような段階までは進めなかった。
しかし、9月になり関西大会の日程が固まってくるに応じて、練習に対する大学側の規制も徐々に緩和され、ようやく19日から例年に近い状態で練習がスタートした。
その意味では、今年の9月19日は記念すべき日であり、ファイターズの新しいシーズンがスタートする日でもあった。
その練習をスタンドからずっと目をこらして眺めていると、それなりに感想はあった。しかし、たかだか週末だけの練習を見て、あれがよかった、ここが悪かったということにはためらいがある。
代わりに動かぬ事実だけを書いておきたい。一つは、今季加入したばかりのフレッシュマンがこの日から攻守合わせて10人近く、JV・Vのメンバーに抜擢され、先輩たちに交じって元気よくプレーしていたこと。俊敏な動きで、とても新人とは思えないようなWRやRBがいたし、彼らを止めに回るDBにも動きのよい選手がいた。身体が大きくて動きのよいラインメンがいるし、肩の強さが先輩QBを凌駕するようなQBもいる。初めての試合形式の練習にも戸惑いを見せず、元気に振る舞う彼らの姿を見て、大いに希望が見えたことは特筆される。
もちろん、上級生も久しぶりのチーム練習で生き生きと身体を動かせていた。幸い、軽いけがをしている選手は少数ながらいるが、大きなけがで休んでいる選手はおらず、今後練習を積んでいくにつれて、試合の感覚を取り戻してくれることは間違いなさそうだ。
驚いたのは、チーム練習が一段落した時にチームのディレクター、小野宏氏が訓示されたこととその内容だ。僕はグラウンドに降りられないので、スタンドから耳を澄ませていたのだが、その内容はほとんど聞き取れない。ただ、ものすごく熱心に、熱を込めて部員に語りかけられているのを見て、一体、何が起きたのかと気になった。
訓示の後、スタンドに上がってこられたのを待ち構えて聞くと、話の内容は新型コロナ禍の中での試合に臨む心得。その趣旨は、以下のようなことだった。
今季は新型コロナウイルスの感染が広がってる中での試合であり、感染者が出ればチームは試合に出場できなくなる可能性がある。今季はリーグ戦ではなくトーナメント戦であり、出場がかなわなくなれば、それでチームは敗退が決まる。絶対に感染者を出さないという気持ちで日々の行動を慎み、学生生活を送ろう。
23日からは大学は秋学期が始まり、一部の科目では対面授業が始まる。キャンパスへの学生の入構制限も解除される。そうすると、級友と食事などに出かける機会も増えるだろう。しかし、飲食をともにすることは、それだけ感染リスクが高まること。今の日本の感染者の比率から考えると、ファイターズから数人の感染者が出てもおかしくない。けれどもチームが試合に出るためには、それをゼロにしなければならない。部員全員が改めて日常生活に細心の注意を払う必要がある。ファイターズの諸君が関学生のモデルとなるような行動を心掛けていこう。
以上のような話だった。この話を聞いて、本当に今季のメンバーは大変だなと改めて思った。けれども、そういう歴史的なシーズンに巡り合わせたのも何かの縁である。とにかく個人ができること、チームとしてできること、双方ともに、細心の注意を払い、最善の努力をして来たるべき開幕に備えようではないか。前途が見えないシーズン。だからこそ中途半端な行動は許されない。公私ともに、日々全力を挙げて取り組もう。
終生、忘れることのできないシーズンが間もなく始まる。今はすべてを賭して旅立つときだ。
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記事タイトル:(2)出発の時
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