石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(14)フットボールの本当の魅力
先週末は、小野宏ディレクターの公開講座「アメリカンフットボールの本当の魅力」。年に一度、朝日カルチャーセンターで続けられているファンに向けた「勉強会」である。今年は「西日本代表決定戦の後半に何が起きたか」という副題で2時間、170人の参加者を前に内容の濃い解説が続いた。
講座の内容は、準備されたレジュメの目次に示されている。?代表決定戦までの状況?リーグ戦(立命戦)の振り返り?代表決定戦前半の“完勝”?後半の思わぬ展開?絶体絶命のピンチ?起死回生のロングパス?1プレーを巡る戦術の攻防?復活のドライブ?モメンタムの不思議さ。この目次に沿って、ビデオを再生し、試合がどのように進行したか、その裏に両軍ベンチがどういう決断をし、その決断の背景にどういう思考が働いたか、選手たちがその役割を果たすために、どのように準備したか、というようなことを微に入り細にわたって解説されたのである。
具体的には前半、ファイターズが2本のFGと2本のTDで20-0と引き離し、余裕で進めた試合が、後半にがらりと様相を変え、一気に20-17と追い上げられ、逆転は必至という状況に追い詰められたのはなぜか。試合の流れが立命に傾き、大逆転劇が完成しつつあるときに、ファイターズが自陣2ヤードから放った起死回生のロングパスは、どうして意図され、成功したのか。そこにはどんな決断が秘められていたのか。そのプレーに関わるQBやWRはそのプレーを成功させるためにどんな動きをしたのか。それに続く70ヤードのドライブは、どのようにしてTDに結び付けられたのか。そうしたことを一つ一つのプレーを再現しながら、フットボールというスポーツの怖さと魅力、決断と実行の背景を説明していく。
同じチーム、同じプレーヤーが戦っているのに、なぜ前半と後半では天地が逆になったような試合になったのか。立命側から言えば、前半、全く進まなかったラン(4回でマイナス2ヤード)とパス(8回で成功は4回10ヤード、逆に2本のインターセプトを喫している)が後半には一気に進む(ランは13回で106ヤード、パスは18回で150ヤード)ようになったのか。一つ一つのプレー選択から見える両軍ベンチの駆け引きと騙し合い。近年、ずっと大学王者の座を競ってきた両チームの高度な戦いの背景が次々と説き明かされていく。
そうした試合の流れを振り返りながら、小野さんをして「2016年のベストプレー」と言わしめた自陣2ヤードからの攻撃でファイターズが選択したQB伊豆からWR松井へのロングパスの解説に入る。
一つ間違えばセーフティーを奪われる危険があり、パントを蹴るにも不自由なゾーンで、なぜベンチはパスを選択したのか。そのプレーが成功するとコーチが確信した根拠は何か。その選択を選手たちはどのようにして成功につなげたのか。相手ディフェンス、とくにベストアスリートを配置しているコーナーバックとセーフティーの動きをどのように封じたのか。伊豆の動きと松井の動きを克明に説明し、ベンチからの指示を受け取った二人の心の動きにまで分け入っての解説が続く。
そこに見られるベンチと選手の信頼関係。昨年の試合で手痛いインターセプトを喫した悔しい思いを糧に技量を向上させ、相手CBを振り払った松井の動き。絶対に成功させなければならない30ヤードのパスに挑んだ伊豆の決意と、成功の伏線となったちょっとした仕草。そうした細かな所まで目を配った解説者の観察眼と取材力。長年、プレーヤー、コーチとしてチームを率い、ファイターズの頭脳とまで言われた小野さんならではの解説は、期待に違わぬ素晴らしさだった。
同時に、この解説はベンチの意図を確実に実現する細かなデザインの重要性を指摘し、そのデザインを実現する選手の強い意志と高い技量の大切さも語りかけてくれた。
そうした意志と技量を体現したのが続く70ヤード、13回のドライブである。オフェンスの11人が互いに協力し、絶対にTDに結び付ける、このシリーズで決着を付けると確信し、ひたすらランプレーで陣地を進めた「魂のフットボール」である。伊豆から松井への起死回生のパスから始まったこのシリーズは、何度見ても感動する。それに今回のような適切な解説があれば、フットボールの「本当の魅力」が堪能出来る。
幸い、この日の講演会の模様は、マネジャーが一部始終をビデオで録画してくれている。これを今春入部した1年生にはぜひ見てもらいたい。フットボールの底知れぬ魅力を知り、一つのプレーが持つ意味の重さを知ることで、必ず成長のきっかけがつかめるはずだ。
さらに、関西学院の学生諸君にも、学内限定の「フットボール講座」としてビデオ鑑賞会を開けばどうだろう。このビデオを通じて、フットボールの魅力にふれた学生がどんどんスタジアムに足を運んでくれれば、選手たちの励みにもなるに違いない。
講座の内容は、準備されたレジュメの目次に示されている。?代表決定戦までの状況?リーグ戦(立命戦)の振り返り?代表決定戦前半の“完勝”?後半の思わぬ展開?絶体絶命のピンチ?起死回生のロングパス?1プレーを巡る戦術の攻防?復活のドライブ?モメンタムの不思議さ。この目次に沿って、ビデオを再生し、試合がどのように進行したか、その裏に両軍ベンチがどういう決断をし、その決断の背景にどういう思考が働いたか、選手たちがその役割を果たすために、どのように準備したか、というようなことを微に入り細にわたって解説されたのである。
具体的には前半、ファイターズが2本のFGと2本のTDで20-0と引き離し、余裕で進めた試合が、後半にがらりと様相を変え、一気に20-17と追い上げられ、逆転は必至という状況に追い詰められたのはなぜか。試合の流れが立命に傾き、大逆転劇が完成しつつあるときに、ファイターズが自陣2ヤードから放った起死回生のロングパスは、どうして意図され、成功したのか。そこにはどんな決断が秘められていたのか。そのプレーに関わるQBやWRはそのプレーを成功させるためにどんな動きをしたのか。それに続く70ヤードのドライブは、どのようにしてTDに結び付けられたのか。そうしたことを一つ一つのプレーを再現しながら、フットボールというスポーツの怖さと魅力、決断と実行の背景を説明していく。
同じチーム、同じプレーヤーが戦っているのに、なぜ前半と後半では天地が逆になったような試合になったのか。立命側から言えば、前半、全く進まなかったラン(4回でマイナス2ヤード)とパス(8回で成功は4回10ヤード、逆に2本のインターセプトを喫している)が後半には一気に進む(ランは13回で106ヤード、パスは18回で150ヤード)ようになったのか。一つ一つのプレー選択から見える両軍ベンチの駆け引きと騙し合い。近年、ずっと大学王者の座を競ってきた両チームの高度な戦いの背景が次々と説き明かされていく。
そうした試合の流れを振り返りながら、小野さんをして「2016年のベストプレー」と言わしめた自陣2ヤードからの攻撃でファイターズが選択したQB伊豆からWR松井へのロングパスの解説に入る。
一つ間違えばセーフティーを奪われる危険があり、パントを蹴るにも不自由なゾーンで、なぜベンチはパスを選択したのか。そのプレーが成功するとコーチが確信した根拠は何か。その選択を選手たちはどのようにして成功につなげたのか。相手ディフェンス、とくにベストアスリートを配置しているコーナーバックとセーフティーの動きをどのように封じたのか。伊豆の動きと松井の動きを克明に説明し、ベンチからの指示を受け取った二人の心の動きにまで分け入っての解説が続く。
そこに見られるベンチと選手の信頼関係。昨年の試合で手痛いインターセプトを喫した悔しい思いを糧に技量を向上させ、相手CBを振り払った松井の動き。絶対に成功させなければならない30ヤードのパスに挑んだ伊豆の決意と、成功の伏線となったちょっとした仕草。そうした細かな所まで目を配った解説者の観察眼と取材力。長年、プレーヤー、コーチとしてチームを率い、ファイターズの頭脳とまで言われた小野さんならではの解説は、期待に違わぬ素晴らしさだった。
同時に、この解説はベンチの意図を確実に実現する細かなデザインの重要性を指摘し、そのデザインを実現する選手の強い意志と高い技量の大切さも語りかけてくれた。
そうした意志と技量を体現したのが続く70ヤード、13回のドライブである。オフェンスの11人が互いに協力し、絶対にTDに結び付ける、このシリーズで決着を付けると確信し、ひたすらランプレーで陣地を進めた「魂のフットボール」である。伊豆から松井への起死回生のパスから始まったこのシリーズは、何度見ても感動する。それに今回のような適切な解説があれば、フットボールの「本当の魅力」が堪能出来る。
幸い、この日の講演会の模様は、マネジャーが一部始終をビデオで録画してくれている。これを今春入部した1年生にはぜひ見てもらいたい。フットボールの底知れぬ魅力を知り、一つのプレーが持つ意味の重さを知ることで、必ず成長のきっかけがつかめるはずだ。
さらに、関西学院の学生諸君にも、学内限定の「フットボール講座」としてビデオ鑑賞会を開けばどうだろう。このビデオを通じて、フットボールの魅力にふれた学生がどんどんスタジアムに足を運んでくれれば、選手たちの励みにもなるに違いない。
この記事は外部ブログを参照しています。すべて見るには下のリンクをクリックしてください。
記事タイトル:(14)フットボールの本当の魅力
(ブログタイトル:石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」)
アーカイブ
- 2024年12月(1)
- 2024年11月(3)
- 2024年10月(3)
- 2024年9月(3)
- 2024年6月(2)
- 2024年5月(3)
- 2024年4月(1)
- 2023年12月(3)
- 2023年11月(3)
- 2023年10月(4)
- 2023年9月(3)
- 2023年7月(1)
- 2023年6月(1)
- 2023年5月(3)
- 2023年4月(1)
- 2022年12月(2)
- 2022年11月(3)
- 2022年10月(3)
- 2022年9月(2)
- 2022年8月(1)
- 2022年7月(1)
- 2022年6月(2)
- 2022年5月(3)
- 2021年12月(3)
- 2021年11月(3)
- 2021年10月(4)
- 2021年1月(2)
- 2020年12月(3)
- 2020年11月(4)
- 2020年10月(4)
- 2020年9月(2)
- 2020年1月(3)
- 2019年12月(3)
- 2019年11月(3)
- 2019年10月(5)
- 2019年9月(4)
- 2019年8月(3)
- 2019年7月(2)
- 2019年6月(4)
- 2019年5月(4)
- 2019年4月(4)
- 2019年1月(1)
- 2018年12月(4)
- 2018年11月(4)
- 2018年10月(5)
- 2018年9月(3)
- 2018年8月(4)
- 2018年7月(2)
- 2018年6月(3)
- 2018年5月(4)
- 2018年4月(3)
- 2017年12月(3)
- 2017年11月(4)
- 2017年10月(3)
- 2017年9月(4)
- 2017年8月(4)
- 2017年7月(3)
- 2017年6月(4)
- 2017年5月(4)
- 2017年4月(4)
- 2017年1月(2)
- 2016年12月(4)
- 2016年11月(5)
- 2016年10月(3)
- 2016年9月(4)
- 2016年8月(4)
- 2016年7月(3)
- 2016年6月(2)
- 2016年5月(4)
- 2016年4月(4)
- 2015年12月(1)
- 2015年11月(4)
- 2015年10月(3)
- 2015年9月(5)
- 2015年8月(3)
- 2015年7月(5)
- 2015年6月(4)
- 2015年5月(2)
- 2015年4月(3)
- 2015年3月(3)
- 2015年1月(2)
- 2014年12月(4)
- 2014年11月(4)
- 2014年10月(4)
- 2014年9月(4)
- 2014年8月(4)
- 2014年7月(4)
- 2014年6月(4)
- 2014年5月(5)
- 2014年4月(4)
- 2014年1月(1)
- 2013年12月(5)
- 2013年11月(4)
- 2013年10月(5)
- 2013年9月(3)
- 2013年8月(3)
- 2013年7月(4)
- 2013年6月(4)
- 2013年5月(5)
- 2013年4月(4)
- 2013年1月(1)
- 2012年12月(4)
- 2012年11月(5)
- 2012年10月(4)
- 2012年9月(5)
- 2012年8月(4)
- 2012年7月(3)
- 2012年6月(3)
- 2012年5月(5)
- 2012年4月(4)
- 2012年1月(1)
- 2011年12月(5)
- 2011年11月(5)
- 2011年10月(4)
- 2011年9月(4)
- 2011年8月(3)
- 2011年7月(3)
- 2011年6月(4)
- 2011年5月(5)
- 2011年4月(4)
- 2010年12月(1)
- 2010年11月(4)
- 2010年10月(4)
- 2010年9月(4)
- 2010年8月(3)
- 2010年7月(2)
- 2010年6月(5)
- 2010年5月(3)
- 2010年4月(4)
- 2010年3月(1)
- 2009年11月(4)
- 2009年10月(4)
- 2009年9月(3)
- 2009年8月(4)
- 2009年7月(3)
- 2009年6月(4)
- 2009年5月(3)
- 2009年4月(4)
- 2009年3月(1)
- 2008年12月(1)
- 2008年11月(4)
- 2008年10月(3)
- 2008年9月(5)
- 2008年8月(2)
- 2008年4月(1)
コメント