石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(2)人が育ち、育てる環境
ファイターズの活動は、今年もコロナ禍で大きな制約を受けている。春から夏、大阪府や兵庫県で感染者が激増したときは、そのあおりで大学の授業も制約を受け、一時は学内施設の利用も停止された。課外活動に起因していなくても、感染者が出て活動の一時停止を余儀なくされた団体もあると聞いている。
フィターズもその余波は免れず、夏休み中の活動が一時、制約され、夏の合宿も全員参加ではなく、参加者をしぼって広島県内の施設で行われた。
施設の利用時間も、大学当局から定められており、早朝の涼しい時間帯の個人・パート練習と、夕方涼しくなってからのチーム練習という形もなかなか実施できていない。コロナ禍の前までは、特定の部員を選んで合同練習前の練習をするのは普通だったが、いまはグラウンドを使用する時間自体に制限がかかっている。
いざ、練習となっても、入場前には検温と手指の消毒をトレーナーが管理し、練習が始まっても、30分ごとに「クリーンタイム」を設け、全員に手指の消毒とうがいを励行させている。
そうした制約があっても、身体能力を鍛え、チームとしてのプレーの精度を上達させるためには、チーム練習は欠かせない。1、2年生の時から、こうしたファイターズの流儀に馴染んでいる上級生にとっては、それもみな想定の範囲に入っており、独自の練習で補うこともできるが、全国的にコロナウイルスの感染者が拡大してからファイターズに加わった1、2年生にとっては、部活動のすべてが「非日常」。練習への取り組み、事前の準備、短い時間での集中的な練習など、自ら自覚して学ばなければならないことはいくつもある。
しかしながら、先日の同志社戦では、1、2年生が先発メンバーや交代要員として何人も活躍した。高校時代までは他の競技に取り組み、アメフットは未経験だった3、4年生の活躍もめざましかった。
前者では、先発メンバーに名を連ねた2年生のQB鎌田、WR鈴木、RT鞍谷、LB海崎、1年生のRG森永、DB永井がいる。交代メンバーとして鮮やかなキックオフリターンTDを決めたRB池田も2年生だ。
高校時代は別の競技に励んでいたメンバーでは、先発メンバーとしてめざましい働きをしたLB都賀やOL田中は、ともに高等部時代は野球部。DB永嶋はテニス部、DB?橋はサッカー部で活躍した選手だ。交代メンバーとして出場し、軽快な動きを見せたDB西脇は野球部、ゴール前まで46ヤードのパスをキャッチしたWR衣笠はサッカー部のゴールキーパーだった。
そういう面々が限られた練習時間、なにかと制約の多い部活動の中で、どうして成長し、公式戦でも通用する技術を身につけてきたのか。僕が時々、第3フィールドにある「平郡君の記念碑」近くから見学させてもらっている練習風景からその一端を紹介したい。
一つは、上級生が下級生に、足の運び方や腕の振り方、身の交わし方などを、自身のプレーを見せながら懇切丁寧に教えていること。例えばRBでは、常時、副将の前田やスピードランナーの斎藤が自ら見本を見せながら1、2年生にプレーの急所を伝授している。レシーバーも同様だ。いいプレーには上級生が惜しみなく拍手を贈って未経験者に自信を付けさせ、コース取りや相手デフェンスを抜き去る呼吸を指導している。
監督やコーチが注意する前に、上級生が自分で模範を見せる。タイミングの取り方、足の運び方、手や腕の使い方など、プレーヤー同士だからわかり合える細かい部分中心にした教えであり、その教えを身につけた瞬間、下級生が生き生きと動き出す現場を、僕はしばしば目撃した。
残念ながら、守備陣の個別練習の動きは、遠すぎて細かいところは全く見えない。けれども、チーム練習時には、サイドラインにいるメンバーが逐一、よかった点、改良すべき点をその都度、指導している。
もちろん、監督やコーチも現場の一番近いところで選手の動きを見ており、急所急所で当の選手を呼んで、自ら動きの見本を見せながら足の運びや腕や身体の使い方を指導されている。
3人のプロコーチはもちろん、大学職員として働きながらコーチの役割を担っておられる面々も、熟練者ばかり。学生時代からファイターズの流儀を身につけてこられたこの道の専門家ばかりだから、教え方もポイントを突いている。自分で動きの見本を示し、急所となる点を惜しみなく伝授されている。
教える環境と学ぶ環境。それが相まって、選手が技術を磨き、自らの運動能力を開発していくファイターズという組織。
僕は新聞記者として、高校野球の指導者らとは長く付き合ってきたし、その中には広く名の知られた方も少なくない。けれども、そういう有名人たちの指導と比べても、ファイターズの指導者のたたずまいは1段も2段も上に見える。現場を知り、選手たちに任せるところは任せて、全体としてチームのレベルアップを図る。長年の蓄積に基づくそういうやり方が自然に行われているのも、ファイターズの文化というのだろう。
フィターズもその余波は免れず、夏休み中の活動が一時、制約され、夏の合宿も全員参加ではなく、参加者をしぼって広島県内の施設で行われた。
施設の利用時間も、大学当局から定められており、早朝の涼しい時間帯の個人・パート練習と、夕方涼しくなってからのチーム練習という形もなかなか実施できていない。コロナ禍の前までは、特定の部員を選んで合同練習前の練習をするのは普通だったが、いまはグラウンドを使用する時間自体に制限がかかっている。
いざ、練習となっても、入場前には検温と手指の消毒をトレーナーが管理し、練習が始まっても、30分ごとに「クリーンタイム」を設け、全員に手指の消毒とうがいを励行させている。
そうした制約があっても、身体能力を鍛え、チームとしてのプレーの精度を上達させるためには、チーム練習は欠かせない。1、2年生の時から、こうしたファイターズの流儀に馴染んでいる上級生にとっては、それもみな想定の範囲に入っており、独自の練習で補うこともできるが、全国的にコロナウイルスの感染者が拡大してからファイターズに加わった1、2年生にとっては、部活動のすべてが「非日常」。練習への取り組み、事前の準備、短い時間での集中的な練習など、自ら自覚して学ばなければならないことはいくつもある。
しかしながら、先日の同志社戦では、1、2年生が先発メンバーや交代要員として何人も活躍した。高校時代までは他の競技に取り組み、アメフットは未経験だった3、4年生の活躍もめざましかった。
前者では、先発メンバーに名を連ねた2年生のQB鎌田、WR鈴木、RT鞍谷、LB海崎、1年生のRG森永、DB永井がいる。交代メンバーとして鮮やかなキックオフリターンTDを決めたRB池田も2年生だ。
高校時代は別の競技に励んでいたメンバーでは、先発メンバーとしてめざましい働きをしたLB都賀やOL田中は、ともに高等部時代は野球部。DB永嶋はテニス部、DB?橋はサッカー部で活躍した選手だ。交代メンバーとして出場し、軽快な動きを見せたDB西脇は野球部、ゴール前まで46ヤードのパスをキャッチしたWR衣笠はサッカー部のゴールキーパーだった。
そういう面々が限られた練習時間、なにかと制約の多い部活動の中で、どうして成長し、公式戦でも通用する技術を身につけてきたのか。僕が時々、第3フィールドにある「平郡君の記念碑」近くから見学させてもらっている練習風景からその一端を紹介したい。
一つは、上級生が下級生に、足の運び方や腕の振り方、身の交わし方などを、自身のプレーを見せながら懇切丁寧に教えていること。例えばRBでは、常時、副将の前田やスピードランナーの斎藤が自ら見本を見せながら1、2年生にプレーの急所を伝授している。レシーバーも同様だ。いいプレーには上級生が惜しみなく拍手を贈って未経験者に自信を付けさせ、コース取りや相手デフェンスを抜き去る呼吸を指導している。
監督やコーチが注意する前に、上級生が自分で模範を見せる。タイミングの取り方、足の運び方、手や腕の使い方など、プレーヤー同士だからわかり合える細かい部分中心にした教えであり、その教えを身につけた瞬間、下級生が生き生きと動き出す現場を、僕はしばしば目撃した。
残念ながら、守備陣の個別練習の動きは、遠すぎて細かいところは全く見えない。けれども、チーム練習時には、サイドラインにいるメンバーが逐一、よかった点、改良すべき点をその都度、指導している。
もちろん、監督やコーチも現場の一番近いところで選手の動きを見ており、急所急所で当の選手を呼んで、自ら動きの見本を見せながら足の運びや腕や身体の使い方を指導されている。
3人のプロコーチはもちろん、大学職員として働きながらコーチの役割を担っておられる面々も、熟練者ばかり。学生時代からファイターズの流儀を身につけてこられたこの道の専門家ばかりだから、教え方もポイントを突いている。自分で動きの見本を示し、急所となる点を惜しみなく伝授されている。
教える環境と学ぶ環境。それが相まって、選手が技術を磨き、自らの運動能力を開発していくファイターズという組織。
僕は新聞記者として、高校野球の指導者らとは長く付き合ってきたし、その中には広く名の知られた方も少なくない。けれども、そういう有名人たちの指導と比べても、ファイターズの指導者のたたずまいは1段も2段も上に見える。現場を知り、選手たちに任せるところは任せて、全体としてチームのレベルアップを図る。長年の蓄積に基づくそういうやり方が自然に行われているのも、ファイターズの文化というのだろう。
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