石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(12)勇者への伝言
ファイターズはいま、春のシーズンが終わり、夏から秋に向けて、ある種の充電期間に入っている。ニューエラボウルに選ばれた選手はそのための練習があるし、それ以外の部員はパートごとに詳細な日程を組んでファンダメンタルを中心にした練習に取り組んでいる。
目の前には、前期試験も迫っている。そのための準備も欠かせない。堅実に単位を修得している上級生はともかく、下級生にとっては、1、2年生の間が勝負である。ここで手を抜いたら、上級生になってからの部活動にも支障をきたす。監督やコーチが単位の修得状況に厳しく目を光らせているのも、理由があってのことである。
試合もない。チーム練習もない。そういう期間を利用して、今春卒業したメンバーの文集から、いくつかのことばを紹介したい。2度にわたる立命との勝負に勝って関西リーグのてっぺんに立ち、入念に策を凝らして立ち向かってきた早稲田にも勝って甲子園ボウルを制した4年生がどんな気持ちで日々の活動に取り組み、どんな感慨を持って卒業していったのか。それを知ることは、新たな頂きに挑戦する後輩にとっても、大きな励みになり、目標にもなるはずだ。
しかしながら、この文集は広く世間に公表する目的で編集されてはいない。卒業生がファイターズで4年間、どのように取り組んできたか、それを自身が回顧した魂の告白であり、後輩たちへの切なる伝言である。卒業生が長い将来にわたって、ファイターズでの活動を振り返るための拠り所である。
それを僕が勝手に紹介することは許されない。卒業生から承諾が得られた部分、あるいは「後輩への伝言」の部分に限って、要旨だけを紹介させていただく。文集はあいうえお順に編集されているので、引用もその順序である。
「在籍しているだけでは何も起こらない。自分を邪魔するしょうもないプライドは捨てて、逃げることをやめてほしい。そうすると何か違うものが見えてくる」(WR池永君)
「人に言われて、ハッとなった言葉は、意外といつまでも残っている。同期や先輩、後輩関係なく、正直に言いたいことを言い合って、お互いを高めあえる、そんな関係ならそこらの学生相手には負けない」(HLD石井君)
「一人前の男になるには、自分の立てた目標を自分に嘘をつかず、1日1日やりきること。目の前の相手に意地でも負けないこと」(QB伊豆君)
「引退して素直に思えることが一つある。それは、俺が最後の砦だ、全部タックルしたる、と本気で考え、行動し続けたやつにしか分からない」「ファイターズが勝つか、負けるかはDB、SF次第。タックルするか、抜かれるか。だからこそ俺が全部タックルする。シンプルだけど、そこにとことん向き合って本気で行動するから面白い」(DB岡本)
「アメフトの実力もない。リーダーシップもない。そんな4年生がチームが日本1になるために何で貢献できるのだろうかと考えました。私が導いた答えは全体練習前にする練習のスペを一番早くにグラウンドに降りてすることでした。私がグラウンドに早く降りて練習してる姿を見た選手たちが「俺も、細川みたいに早くスペ上がろ」と、自然と早くグラウンドに来て練習するのではないかと思ったからです」(WR細川君)
「『このチーム』と『うちのチーム』の言い方の違いはどこにあるか。それは勝ち負けに関わっている実感があるかどうか。この実感がなければ勝って泣くことも、負けて泣くこともできない。後悔しないのは『うちのチーム』と言える人間だと思う」(DB松嶋君)
「一番に考えてほしいことは、勝つために自分はどうしたいか、とい自分の行動に自分なりの考えと信念があるかどうかが一番大切です。もしその行動が間違っていれば、仲間が指摘してくれます。そこで会話が生まれ、自分の思いを仲間に伝える場ができ、信頼関係が生まれていきます」(DL安田君)
「人間本気で考えて、やったんねんと気持ちを固めれば、いままで見えなかったものが自然と見えてくる。たくさんのことを考え、迷い、どうすればもっとよくなるかと試行錯誤するうちに腹から出てくる言葉が変わり、行動も変わる。気付けばそれを毎日繰り返すうちに習慣になっていき、性格になる。そんなことを1年間信じて貫いた時に初めて運命を変えることができるのではないか」「大切なことは、正しいか間違っているかではない。自分と自分たちで決めたことを信じてやり通せるかだ。後輩には、そのことだけを伝えたい。自分で、自分たちで道を切り拓き、運命を変えてほしい」(LB山岸君)
以上、後輩への伝言に限定し、ほんの数人の言葉からさわりの部分だけを並べてみた。それでも気持ちは伝わってくる。これらの言葉がすべて、ファイターズで過ごした4年間の汗と涙に裏付けられた魂の伝言であるからだろう。
その真実は、同じ状況に身を置き、同じ悩みを共有し、もがき苦しみ、そこから一筋の光明を見つけた人間のみに理解できるのではないか。あえてこの文集を「勇者への伝言」と僕が呼ぶのは、そこに理由がある。
松嶋君のいう、ファイターズを「うちのチーム」と考えることのできる全員に、この伝言を受け取ってもらいたい。
目の前には、前期試験も迫っている。そのための準備も欠かせない。堅実に単位を修得している上級生はともかく、下級生にとっては、1、2年生の間が勝負である。ここで手を抜いたら、上級生になってからの部活動にも支障をきたす。監督やコーチが単位の修得状況に厳しく目を光らせているのも、理由があってのことである。
試合もない。チーム練習もない。そういう期間を利用して、今春卒業したメンバーの文集から、いくつかのことばを紹介したい。2度にわたる立命との勝負に勝って関西リーグのてっぺんに立ち、入念に策を凝らして立ち向かってきた早稲田にも勝って甲子園ボウルを制した4年生がどんな気持ちで日々の活動に取り組み、どんな感慨を持って卒業していったのか。それを知ることは、新たな頂きに挑戦する後輩にとっても、大きな励みになり、目標にもなるはずだ。
しかしながら、この文集は広く世間に公表する目的で編集されてはいない。卒業生がファイターズで4年間、どのように取り組んできたか、それを自身が回顧した魂の告白であり、後輩たちへの切なる伝言である。卒業生が長い将来にわたって、ファイターズでの活動を振り返るための拠り所である。
それを僕が勝手に紹介することは許されない。卒業生から承諾が得られた部分、あるいは「後輩への伝言」の部分に限って、要旨だけを紹介させていただく。文集はあいうえお順に編集されているので、引用もその順序である。
「在籍しているだけでは何も起こらない。自分を邪魔するしょうもないプライドは捨てて、逃げることをやめてほしい。そうすると何か違うものが見えてくる」(WR池永君)
「人に言われて、ハッとなった言葉は、意外といつまでも残っている。同期や先輩、後輩関係なく、正直に言いたいことを言い合って、お互いを高めあえる、そんな関係ならそこらの学生相手には負けない」(HLD石井君)
「一人前の男になるには、自分の立てた目標を自分に嘘をつかず、1日1日やりきること。目の前の相手に意地でも負けないこと」(QB伊豆君)
「引退して素直に思えることが一つある。それは、俺が最後の砦だ、全部タックルしたる、と本気で考え、行動し続けたやつにしか分からない」「ファイターズが勝つか、負けるかはDB、SF次第。タックルするか、抜かれるか。だからこそ俺が全部タックルする。シンプルだけど、そこにとことん向き合って本気で行動するから面白い」(DB岡本)
「アメフトの実力もない。リーダーシップもない。そんな4年生がチームが日本1になるために何で貢献できるのだろうかと考えました。私が導いた答えは全体練習前にする練習のスペを一番早くにグラウンドに降りてすることでした。私がグラウンドに早く降りて練習してる姿を見た選手たちが「俺も、細川みたいに早くスペ上がろ」と、自然と早くグラウンドに来て練習するのではないかと思ったからです」(WR細川君)
「『このチーム』と『うちのチーム』の言い方の違いはどこにあるか。それは勝ち負けに関わっている実感があるかどうか。この実感がなければ勝って泣くことも、負けて泣くこともできない。後悔しないのは『うちのチーム』と言える人間だと思う」(DB松嶋君)
「一番に考えてほしいことは、勝つために自分はどうしたいか、とい自分の行動に自分なりの考えと信念があるかどうかが一番大切です。もしその行動が間違っていれば、仲間が指摘してくれます。そこで会話が生まれ、自分の思いを仲間に伝える場ができ、信頼関係が生まれていきます」(DL安田君)
「人間本気で考えて、やったんねんと気持ちを固めれば、いままで見えなかったものが自然と見えてくる。たくさんのことを考え、迷い、どうすればもっとよくなるかと試行錯誤するうちに腹から出てくる言葉が変わり、行動も変わる。気付けばそれを毎日繰り返すうちに習慣になっていき、性格になる。そんなことを1年間信じて貫いた時に初めて運命を変えることができるのではないか」「大切なことは、正しいか間違っているかではない。自分と自分たちで決めたことを信じてやり通せるかだ。後輩には、そのことだけを伝えたい。自分で、自分たちで道を切り拓き、運命を変えてほしい」(LB山岸君)
以上、後輩への伝言に限定し、ほんの数人の言葉からさわりの部分だけを並べてみた。それでも気持ちは伝わってくる。これらの言葉がすべて、ファイターズで過ごした4年間の汗と涙に裏付けられた魂の伝言であるからだろう。
その真実は、同じ状況に身を置き、同じ悩みを共有し、もがき苦しみ、そこから一筋の光明を見つけた人間のみに理解できるのではないか。あえてこの文集を「勇者への伝言」と僕が呼ぶのは、そこに理由がある。
松嶋君のいう、ファイターズを「うちのチーム」と考えることのできる全員に、この伝言を受け取ってもらいたい。
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