石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」 2017/8

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(19)強いのか、弱いのか

投稿日時:2017/08/30(水) 07:22

 2017年シーズンの初戦、同志社との試合は、何とも評価の難しい結果に終わった。
 スコアは28-0。これだけを見れば、守備が踏ん張り、攻撃もそこそこ頑張ったと評価する人もいるだろう。逆に、下位チーム相手に28点しか獲得できなかったのか、という人がいてもおかしくない。相手が思いの外強かったのか、それともファイターズの仕上がり状況に問題があったのか。
 ちなみに過去5年間、秋の初戦のスコアと対戦相手を見てみよう。16年度は同志社を相手に35-7、15年度は桃山学院大に50-0、14年度は同志社に54-0、13年度は大阪教育大に77-3、12年度は近大に55-6で勝っている。毎年、試合の行方が見えてきた段階でどんどん新しいメンバーを投入しているから、最終的な得点を比べても、チームの本当の強弱は分からない。けれども、秋の初戦、前年の下位チーム相手に、前半、1タッチダウンしかとれなかったということ近年、記憶にない。
 もちろん、相手があってこその試合である。ファイターズの状態に関係なく、相手が想像以上に強かったとか、手の内がつかめなかったとかの事情はあるだろう。実際、前半は同志社がパスとランを組合わせて果敢な攻撃を仕掛けてきた。第3ダウンロングという状況でも、びしびしとパスを決め、パスを警戒すればランで中央を突破してきた。
 逆にファイターズの攻撃は、立ち上がりこそQB西野からのオプションピッチを受けたRB山口が66ヤードを独走してゴール前6ヤードに迫り、最後はRB富永が4ヤードを走り切ってTDに持ち込んだが、それ以降は鳴かず飛ばず。攻撃は相手守備陣に上手く立ち回られて突破口が開けないし、守ってもどこかにほころびが出る。
 そうこうしているうちに、攻守ともにのびのびとプレーする相手にペースをつかまれ、2Qの後半は完全に受け身に回ってしまった。何度もダウンを更新され、2Q終了間際にはゴール前3ヤードにまで追い込まれた。相手の攻撃は第2ダウン。ランプレーが進んでいたので、真っ向から3度続けて攻められてら、どうにもならない局面だ。ところが、相手は意表をついてパス。それを1年生LB海崎がインターセプトして何とか窮地を脱した。
 もしも、この場面で相手に押し込まれていたら前半は7-7。勝負は後半にもつれ込む。交代メンバーを出すゆとりもなく、先発メンバーを中心に必死のパッチで立ち向かわなければならない状況に追い込まれているところだった。
 ハーフタイムで気持ちを締め直したのか、第3Qに入るとファイターズが覚醒する。自陣33ヤードから始まった最初の攻撃で、西野からWR松井へのパスが続けて決まり、簡単にハーフラインを超える。そこで西野が山口へショベルパス。キャッチした山口が巧みに相手守備陣を突破して一気に47ヤードを駆け抜けTD。K小川のキックも決まって14-0。ようやくファイターズが主導権を握る。
 次の攻撃シリーズではQB西野が2度の独走で64ヤードを稼いでゴール前に迫り、最後はRB高松が4ヤードを走り切ってTD。続くシリーズも西野から松井へのパスなどでゴール前8ヤードに迫り、そこから再び高松が走ってTD。あっという間に28-0と引き離した。
 点差が開いたところで、ファイターズは攻守とも次々に交代メンバーを起用。ようやくいつもの開幕戦らしい姿になってきた。相手も点差を詰めようと、結構思い切ったプレーコールをしてきたが、それが思い通りに進まず、逆に交代メンバーとして出場したDBの森下と渡部に立て続けにインターセプトを喫した。
 もしも、第3Qの途中まで、前半と同様の緊迫した試合が続いていたら勝負はどうなっていたか。もしも山口の独走TDがなかったら、西野の2度に渡る独走がなかったら、と考えると、いまでも背筋が寒くなる。
 そう考えるのは、僕だけではない。鳥内監督は試合後、「オフェンスもディフェンスもかみ合っていない。このままやったら、桃山戦も危ない、京大には絶対に勝てない」と記者団のインタビューに答えていた。場内で放送を担当していた小野ディレクターらも同志社の健闘を称えつつ「京大戦は厳しい試合になりそうですね」と放送していた。スタジアムで観戦されていたファンの方々も似たような感想を持たれたのではないか。
 そういう状況を受け止めたのか、試合後の選手たちの表情が暗かった。こんなはずじゃない、という思いもあっただろうし、自分のプレーに納得がいかなかったのかもしれない。グラウンドのあちこちで深刻な表情で話し込む選手たちの姿が、思い通りに運ばなかった試合の結末を象徴しているように思えた。
 しかし、反省は必要だが、落ち込んでいる場合ではない。自分たちのチームの現在地が確認できたことがこの日の収穫である。その現在地は、自分たちが予測していた場所とはかけ離れているかもしれないが、まだまだ時間はある。1日、1時間を有効に使って、必死懸命で取り組めば、可能性は無限に広がる。
 この日の試合で明らかになった問題点を一つ一つ解消し、ライバルたちを上回る知恵と工夫を重ねていこう。そうして、道を切り開こうではないか。頑張ろう!

(18)実戦が人を育てる

投稿日時:2017/08/23(水) 09:43

 いよいよ今週末から2017年のシーズンが始まる。ファイターズ初戦の相手は同志社。27日午後5時、王子スタジアムでキックオフ。校歌にある「いざ いざ いざ いざ 上ヶ原ふるえ」の時期到来である。
 夏の合宿が終わり、いよいよシーズンが始まるこの時期になると、自分がグラウンドに立つわけでもないし、チームの指揮を執る立場でもないのに、やたらと気持ちが高ぶってくる。そして、無性に昔の武人に関係する本が読みたくなる。宮本武蔵の「五輪書」、勝海舟の「氷川清話」、西郷隆盛の「西郷南洲遺訓」。山岡鉄舟の伝記も読むし、通俗的な中里介山の「日本武術神妙記」も読む。いまや古書店でも手に入らないといわれる山田次朗吉の「剣道集義」というマニアックな本も手元に置いて、時に応じて目を通している。
 この手の本は何度読んでもワクワクする。時には自分に喝を入れてくれる文章に出会えるし、背筋を伸ばして生きるためのヒントもあちこちに転がっている。何よりもその昔、武士が天下を握っていた時代の彼らの心情、息づかいが感じられるのが興味深い。
 一体お前は何者か、と言われそうだが、何者でもない。ただの新聞記者である。もう少し詳しく言えば、読書とアメフットの観戦、そしてファイターズの諸君の成長に特別の関心を持っている新聞記者である。
 そういう素性だから、シーズンが始まるとなれば「出陣」に当たっての準備として、歴史に名を残す武人の妙技や心構えに、活字を通して触れてみたくなるのである。
 そうした書物の中で、今季、一番ピリッときたのが山岡鉄舟が明治の初年、三島の龍澤寺に参禅していたとき、住職の星定禅師から与えられた「動中の工夫は静中に勝ること百千万億倍」という言葉である。
 蛇足ながら紹介しておけば、山岡鉄舟とは幕末から明治の初期に活躍した下級幕臣。「ぼろ鉄」と呼ばれた暴れん坊で剣の達人。幕府が江戸城を無血開城する際、急きょ駿府まで走り、攻め寄せる薩長軍の参謀、西郷隆盛と談判して15代将軍、徳川慶喜の意向を伝え、勝海舟と西郷隆盛の「江戸無血開城」の会談を成功に導いた影の立役者である。禅の修行にも傾倒し、明治新政府では西郷隆盛から乞われて明治天皇の侍従となり、教育係を務めた。書にも堪能で各地の寺院などにその雄渾な書が伝えられている。
 本題に戻る。「動中の工夫は静中に勝ること百千万億倍」とは、佐藤寛氏の「山岡鉄舟 幕末維新の仕事人」(光文社新書)によると、臨済宗中興の祖と言われる白隠禅師の言葉であり、日常のなか、現場の荒波にもまれてこそ、座って禅をする以上の意味があるとする言葉だという。
 アメフットに置き換えて言えば「実戦という場での工夫は、練習中に勝ること百千万億倍」ということではなかろうか。さらに言えば、練習をしっかり積んで実戦に臨めば、百千万億倍の意味があるという風にもとれるのではないか。
 試合が人を育てる。練習のための練習ではなく、試合でこそ生きる練習を積め。そうして実戦に臨めば、突然、覚醒することがある。実戦で互いに骨と骨をぶつけ合い、魂を完全燃焼させる中から見えて来る世界がある。そのとき諸君のステージは、もう一段も二段も上がっているはずだ……そのように僕は理解し、この言葉をファイターズの諸君に贈ろうとしている。
 考えてみればよい。昨年度の大学王者といっても、ヘルメットをとった素顔を見れば、それぞれ20歳前後の大学生である。体は十分に鍛えられているが、それでもまだまだ発展途上。技術も精神力も完成形にはほど遠い。これからなお3カ月、4カ月と鍛錬を重ね、試合での経験の一つ一つを成長へのステップとしてさらなる高みに登っていかなければ、目標の日本一には到達し得ない。
 アメフットは、チームスポーツである。個々の選手が成長するだけでは、究極の成果にはつながらない。試合に出る選手全員、それを支えるスタッフ全員が昨日よりも今日、今日よりも明日へと成長曲線を描いていかなければ、当初の目的は達成できないのである。
 逆に、チームで活動するすべての面々がその役割を完全に果たせるようになれば、昨年以上に充実したチームができあがる。そうなれば、例えライバルが例年以上に戦力を整えてきたとしても、十分に戦える態勢が整う。
 そういうチームをどのように構築していくか。そう考えたとき「動中の工夫は静中に勝ること百千万億倍」という言葉が意味を持ってくる。「実戦で鍛えなさい、実戦は覚醒する好機」と説く白隠禅師の言葉が、胸に突き刺さってくる。
 2017年シーズンの開幕に当たり、この言葉をファイターズの諸君にお贈りしたい。
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