石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」 2016/4

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(4)JVメンバー躍動

投稿日時:2016/04/27(水) 08:41

 24日は今季初めてのJV戦。相手は京都産業大。毎年のように2部の上位に食い込んでいる実力校である。メンバー表をみても、関西大倉、箕面自由、立命館宇治、大阪産業大高校など、高校フットボール界では指折りの実力校出身者が多い。
 そういう相手に、ファイターズの新鮮なメンバーがどんな試合を展開するか。何があっても見届けなければと試合開始の2時間前から第3フィールドに向かった。
 まずはメンバー表のチェック。先発メンバーには、下級生の頃、けがなどで出場機会の少なかった4年生4人が名前を連ねている。OLの清村、TE西田、DL堀川、LB岩田である。自身のプレーでアピールすると同時に、試合経験の少ない下級生を束ね、若手に力を発揮させる役割が期待されているのだろう。
 3年生はOLの池田、WR清水、久物、RB山本、K泉山。ディフェンスではLB石川、鳥内、DB片山、脇田、塩田、折田。あとは全員2年生である。日ごろから努めて第3フィールドに顔を出していても、顔と名前が一致しないメンバーが少なくない。とりわけ2年生になったばかりのメンバーは、普段の練習では自分の背番号を付けていないから、名前を覚えている選手の方が少ない。
 そういう選手が背番号を付け、入れ替わり立ち替わり出場してくれる。試合前の練習が始まる前から声を掛け、練習がスタートすれば、それぞれの動きをチェックしたくなる。そう思うと、居ても立ってもいられない。ママチャリに乗って、いそいそと出掛けた。
 ファイターズのリターンで試合開始。まずはRB山本のランをキーに陣地を進める。1年生の時から期待され、大きな試合にも出場経験があるだけに、パワーが違う。今季は故障で出遅れていたが、それを感じさせない走りで陣地を進める。
 このシリーズは、ファイターズのファンブルで攻守交代となったが、相手攻撃を守備陣が完封し、自陣23ヤードから再びファイターズの攻撃。山本のランなどで簡単にダウンを更新した後、先発QB西野がビッグプレーを披露する。右オープンを一気に駆け上がった63ヤードのTDランである。直線のスピードではQB陣でもトップの力をファンの目に焼き付けた。
 2Qに入ると、RB陣が見せ場を作る。山本と木村悠が交互に走り、仕上げは木村悠の20ヤードTDラン。パスがなかなか通らない展開をOLの奮闘で打開し、走るスピードを買われてQBから転向した木村悠が駆け抜けた。
 3QからはQBが百田に交代。立ち上がりこそもたついたが、今度は2年生RB中村行を中心にしたランプレーが機能し、自身のキーププレーもあって、あっという間にゴール前2ヤード。ここで意表をつくパスをRB田村に決めてTD。21-3となり、試合の趨勢が決まった。
 4Qになると、再び中村行と木村悠のランを交互に繰り出し、早々にTD。パスが持ち味の百田がランプレーを中心に試合を進めたから、相手が戸惑ったのかも知れないが、それにしてもファイターズRB陣の元気の良さが目に付く。これが2軍、3軍のメンバーというのだから、1軍のメンバーもおちおちしておれないだろう。先週に書いた「レベルの低い選手の奮闘があって初めて勝てるチームができる」という話を地で行くJV選手の活躍だった。
 この後も、百田からWR小田への30ヤードTDパス、西野からWR中原へのTDパスなどで得点を重ね、終わって見れば56-3。 試合後、鳥内監督が関学スポーツのインタビューに答えている「チャンスを与えた中でアピールしてくれた選手がいたことはよかった。評価が高くなかったLB泉やRB中村行がその筆頭」という言葉通りの試合だった。
 JV戦はこの後、まだ2試合が残されている。そのうち1試合は昨年までリーグ戦で活躍していた近畿大学が相手。そこで今度はどんなメンバーがアピールしてくれるか。仕上がりの早い1年生にも出場の機会があるのか。その前に、この日の活躍を足がかりに、Vメンバーとして奮闘してくれる選手がどれだけ出てくるか。さらには、JVメンバーの活躍に刺激され、覚醒してくれるVメンバーは誰と誰だろうか。
 今度の日曜日、王子スタジアムで開かれる日大との試合は、それを測る格好の舞台である。チームとして、初戦の日体大戦で出た反省点を総括し、昇華して戦ってもらいたい。今度の試合も、早くから出掛けよう。

(3)シーズン初戦

投稿日時:2016/04/19(火) 09:25

 16日午後2時8分、神戸市の王子スタジアムで2016年度ファイターズの初戦が「KGボウル」と銘打って始まった。対する相手は日本体育大学。新入生歓迎プログラムの一つとして開催された大学の行事である。
 昨年11月22日、立命館大学に敗れ、そのまま長いオフを過ごしたチームがどんな戦い方を見せるのか。新たに戦力になりそうなメンバーは育っているか。思わぬけがをして長期のリハビリを続けてきた選手はどこまで回復しているか。昨季の悔しい戦いを経験した上級生たちは、その戦いを糧にリーダーシップを発揮しているか。見所は満載である。
 シーズンが始まるまでの雌伏の期間、機会あるごとに第3フィールドを訪ね、寒風の中でチームの鍛錬を見守ってきた僕のような人間にとっても、初戦ともなれば気持ちが高ぶる。新しくチームを引っ張る立場になった4年生、それを補佐する3年生、さらには今年こそ1本目のメンバーになってやると気持ちを込めている2年生。それぞれに気合いの入ったキックオフになったに違いない。
 ファイターズのキックで試合開始。K泉山の蹴ったボールはそのまま相手ゴールに飛び込み、タッチバックとなって相手陣25ヤードから日体大の攻撃。その第一プレーでDB小椋のビッグプレーが出る。まずはボールキャリアーに強烈なタックルを浴びせ、たまらずファンブルしたボールを拾い上げてそのまま20ヤードあまりをリターンする。いきなりのターンオーバーである。
 思いがけずに巡ってきたファイターズ最初の攻撃はゴール前4ヤードから。RB山口がいとも簡単に中央を突破して先制点を挙げる。試合開始からわずか18秒の出来事である。
 ファイターズの次の攻撃シリーズはパントに終わったが、そこで再び守備陣が見せ場を作る。自陣10ヤードから始まった日体大の攻撃は第3ダウン残り7ヤード。ここで相手QBが投じたパスをLB鳥内が絵に描いたようなインターセプト。再び相手ゴール前29ヤードという好位置で攻撃権を手にする。ここから山口のラン、WR松井、前田泰へのパスでゴール前9ヤード。ここは1年4カ月振りにグラウンドに戻ってきた4年生RB加藤が鮮やかなカットで中央を突破してTD。リードを広げる。
 1Q終了間際、相手陣42ヤードから始まった次の攻撃シリーズも、RB山口がQB伊豆からのタイミングの乱れたパスをワンハンドキャッチ、そのまま40ヤードを独走して再びゴール前12ヤード。ここで伊豆がゴール左隅に浮かせたパスをWR松井が相手ディフェンス2人に競り勝って確保しTD。身長185センチ、バスケットボールを経験した選手ならではの見事なプレーだった。
 勢いに乗るファイターズは第2Q中盤、RB高松の切れ切れのカットでTD。次の攻撃シリーズでも松井と小田の2年生WRが相次いでスーパーキャッチを見せて陣地を進め、残り4ヤードをRB北村が走り込んでTD。前半を33-0で折り返した。
 しかし後半、攻守とも交代メンバーを投入するようになると、攻守ともにリズムが乱れる。両チームとも一進一退の攻撃を続け、互いに1本ずつTDを決めただけで試合終了。例年の初戦と同様、先発メンバーと交代メンバーの力の差をまざまざと見せられた試合となった。
 試合後の監督や主力選手の談話がその間の事情を表現している。関学スポーツの記者たちによるインタビューからその言葉を拾ってみよう。
 鳥内監督「いろいろな選手を試して見たくてチャンスを与えたが、収穫はゼロ。淡々と練習をやっているということだけは分かった。考えることがまだ全然できていない」
 山岸主将「細かい部分にこだわってきたが、全然できていない。日ごろの練習で詰め切れていないからだ。ただ、下級生はよかった。去年試合に出ていないメンバーが結果を残したのは収穫」
 石井主務「一番痛感したのは、リーダーが少ないこと。いまは言っているだけだし、やっているだけ」
 岡本副将「今までの甘さが出た。すべてが準備不足。チームとして気持ちがゆるい」
 松井副将「練習がそのまま出た。スキル面にも雰囲気にも課題が残る」
 安田副将「準備不足が露呈した」
 みんな辛口。まるで試合に負けた時のようなコメントである。表に現れた得点差とは関係なく、そこに至るプレーに納得がいかなかったのだろう。QB伊豆君の「まだまだ若い選手に試合の怖さを伝えられていない」という言葉にも、昨年、厳しい試合を戦い、一敗地にまみれた悔しさを体験した選手ならではの気持ちが現れている。
 ではどうするのか。僕が20年近く懇意にしてもらってきた高校野球界でも知られた名監督は常々「チームの中でも一番レベルの低い部員が頑張った年は、いい成績を残してきた。例外はない」といっておられた。
 試合に出るメンバーは9人でも、残りの30人、50人がそれぞれの役割を持ち、その役割を懸命に果たした時、チームの結束力は強くなり、結果として勝負にも勝てる。どうせ背番号はもらえない、試合にも出してもらえない、といって手抜きをするような部員が一人でもいたら、チームは内から崩れていく。そういう意味だった。
 ファイターズに限って、そういうことはないと信じたい。けれども200人以上の部員がいる集団である。200人が200人の居場所を持ち、全員がその持ち場、役割を果たすことは容易ではない。その前に、全員のベクトルを「すべては勝利のために」と向けていく役割を誰が引き受けるのか。主将にお任せ、幹部にお任せでは済むはずがない。
 高校野球界では、その名を知られた監督の言う「チームで一番レベルの低い部員」の出番である。
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