石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」 2014/6

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(13)新戦力の見本市

投稿日時:2014/06/25(水) 18:43

 ファイターズホームページの写真集が面白い。今日アップされた写真では、大阪学院との試合で目の覚めるようなプレーをした新しいメンバーが顔を揃えている。
 登場順に並べて行くと、DB小椋(1年、箕面自由)、DB杉本(2年、足立学園)、QB百田(1年、高槻)、TE蔵野(岸根)、WR芝山(2年、市西宮)、RB高松(1年、箕面自由)、RB山本智(1年、立教新座)、LB石川(1年、啓明)、RB西村(1年、啓明)、QB木村(1年、高等部)、DB山本泰(2年、高等部)、DL三木(1年、高等部)の12人。全員、ファイターズの試合をずっと追いかけているプロ写真家の目に留まったプレーをこの日の試合で披露した選手ばかりである。
 小椋はDBとして、相手チームで一番能力の高そうな選手に再三、厳しいタックルを見舞い、ビッグゲインを一度も許さなかった。杉本は登場機会は少なかったが、それでもこの試合唯一のインターセプトを決めた。百田は、186センチの長身から繰り出す長いパスで再三、スタンドを沸かせた。17回投げて12回成功。パスだけで212ヤードを獲得し、4本のTDパスを通している。1年生のデビュー戦としては上々だろう。
 TE蔵野も187センチ96キロ。4年生のWR樋之本やTE松島にも引けを取らない体格で、身のこなしも軽い。いかにもアスリートという動きを見せ、27ヤードのTDパスを含む3本のパスをキャッチ。1年生の時はけがで出遅れており、この日が事実上のデビュー戦だったが、ずっと試合に出ている選手のような動きに驚かされた。
 彼ら以上に驚愕の動きを見せたのが先発したRB二人。高松と山本智である。高松は166センチ、68キロ。小柄だが、恐ろしく俊敏な動きで10回走って129ヤード。TDこそなかったが、50ヤードを超す独走もあって、大いにスタンドを沸かせた。山本智は171センチ、81キロ。スピードがあって当たりが強い。まっすぐ突進するだけではなく、相手守備の動きを見ながら、手薄なところを一気につく判断力もあって、大いに頼りになる選手である。この日は11回走って70ヤードを獲得したが、何と言っても4回のTDランが光る。残り5ヤードくらいならいつだって涼しい顔で走り切ってしまうのだから、相手にとっては厄介な選手だろう。
 写真集には紹介されていなかったが、WRの前田泰はこの試合でも2本のTDパスをキャッチしたし、キッキングチームのリターナーとしても登場した。昨年夏、アシュランド高校との試合では、関西選抜のメンバーとして小椋とコンビを組み、強力な2枚看板で相手を困らせていたが、その二人が今度は同じファイターズで一緒にリターナーを務める。共にスピードがあって身のこなしも軽いから、今後4年間、リターンチームにとっても強力な武器になりそうだ。
 目立たないラインでも期待の面々が登場した。OLでは井若(1年、箕面自由)がスタメンで出場、交代で出た中井(1年、関西大倉)とともにタフなところを見せた。DLでは関大戦などにも出場している三木が素早い動きを披露。一足先にVのメンバーとして活躍している藤木(1年、高等部)とともに、秋には先発陣の一角に食い込むのでは、という予感さえ抱かせた。
 そしてもう一人、僕のような素人が見ても的確な動きをしていたのがLBの松本和(1年、関西大倉)。ボールキャリアのいるところには必ずといっていいほど寄り付き、相手を確実に仕留めていた。いつも冷静な動きをしていたDBの横山(1年、大阪学芸)とともに、今後の成長が大いに期待できる新人である。
 こんな風に、今回のJV戦で活躍した選手を挙げていけばきりがない。2年生にも試合経験は少ないが、期待の持てる選手がいっぱいいる。キッカーの西岡(足立学園)やDBの真砂(高等部)らはその代表。西岡はキックに確実性と安定感が出てきたし、真砂はタックルが強い。試合途中、相手リターナーを一発で仕留めたと思ったら、その直後、3プレー連続でボールキャリアにタックルを決めた。都合、4回連続のタックルなんて、見た記憶がない。
 ここに挙げたのはしかし、大阪学院戦で活躍したメンバーばかり。今週末の甲南大戦では、彼らを含め、さらに多くの選手が活躍してくれるだろう。チーム内の競争が激化してくると、若い素材はどんどん伸びる。そうなると、いまは試合に出ていない上級生を脅かすような選手も出てくるだろう。楽しいこと限りない。こういう新戦力の見本市のような試合が、関西学院の第3フィールドで無料で観戦できる。本当にありがたいことだ。
 追記
 先日のJV戦では、ファイターズのOBを中心に構成する審判団が前半、後半ともに、しばしば「ウオータータイム」を告げ、選手にヘルメットを脱いで水分補給するよう促していた。午後4時の試合開始とはいえ、梅雨時は蒸し暑い。熱中症に注意を払い、健康管理を促す審判団の判断は、選手にとっても観客にとっても、とても大切なことを教えてくれた。感謝の気持ちを込めて特別に記しておきたい。

(12)今年の漢字

投稿日時:2014/06/18(水) 20:08

 今日は2カ月ぶりに眼科の診察日。夕方、早めに勤務を終えて病院に向かい、順番を待つ。待合室のベンチから雨にけぶる山並みを眺め、考えるのはファイターズのこと。まだJVの試合が二つ残っているが、自分なりに春のシーズンを振り返ってみた。
 さて、今年はどんな漢字が象徴するチームになるのだろうか。これを思案していると、近年、甲子園ボウルで勝ったチームのことが次々と浮かんできた。
 2007年、岡田主将が率い、QB三原君が最高のパスゲームを展開した時は、4年生が懸命の努力を続けた。選手層はお世辞にも厚いとは言えなかったけど「ラインは家族や。一心同体や」といって結束を固めたオフェンスライン。QBとレシーバー陣はいつも、練習が始まる2時間以上前からグラウンドの中央を独占してパスキャッチの練習。三原君の投げるパスをレシーバーの秋山、榊原、岸、萬代君らがひたすら追いかける。シーズンが深まるにつれて、ほとんど落とす場面はなくなったが、それでも失敗した時は自発的に腕立て伏せ10回。彼らの求道者のような練習ぶりは、見ている方まで背筋が伸びるような気がしたことを思い出す。
 この年のチームを漢字一文字で表すとすれば、努力の「努」であろう。
 2011年、松岡主将が率いたチームはどうか。彼らは3年連続、甲子園ボウル出場がかなわなかった学年だったが、主将の松岡君と副将の長島君を中心とした幹部の統率力でチームを牽引した。その統率力は、練習や試合の時はもちろん、日常の取り組みの中でも存分に発揮された。
 チームに貢献した部員にプライズシールを与えて、その功績を顕彰し始めたのはこの学年からだし、下宿生の栄養補給を目的に朝食会が定例化されたのも、この年からだ。大学職員の昼休み時間にコーチの部屋を訪ね、そこでミーティングをするようになったのもこの年からだし、単位の取得が滞っている部員を対象に補習授業を始めたのもこの年だった。僕もちょこっと協力させてもらったから、その一端を承知しているが、学習面で自信をつけたことで、プレーヤーとしても飛躍的に伸びた選手が間違いなく存在した。
 もちろん、練習や試合でのリーダーシップも異彩を放っていた。練習中、グラウンドの真ん中で、松岡君と長島君が本気で殴り合いそうになった場面を目撃した僕は、そのとき「彼らは本気だ。絶対に甲子園に行く。日本1になる」と確信した。
 そういう統率力のあるリーダーたちが率いたチームである。この年の漢字は「統率」しか考えられない。一字で表現すれば「統」である。
 2012年、梶原主将が率いたチームは、梶原君の存在感が圧倒的だった。率先垂範。主将がいつも先頭に立って戦い、士気を高めた。チーム浮沈のカギを握るDLの柱として、常に戦いの先頭に立ち、闘志をむき出しにして相手に襲い掛かった。味方にすればこれほど頼もしい選手はいないが、相手にすれば、これほど厄介なやつもいない。それは先日、パナソニックのDLとして、QB斎藤君に襲い掛かった姿を見た人はすべてが思い知ったことだろう。
 実は、梶原君だけではない。この年のRBには、望月君という突貫小僧がいた。闘志むき出しで相手に当たり、跳ね飛ばすことに快感を覚えるという、これまた相手にとっては厄介な選手だった。そう思ってこの年のメンバーを思い浮かべてみると、WRの小山君、和田君、QBの畑君、TEの金本君、LBの川端君、DLの岸君や前川君。相手を飲んでかかった選手の名前が次々に思い出される。
 そういう意味では、この年の漢字は闘志の「闘」で決まりだろう。
 そして昨年、池永主将が率いたチームはどうか。努力もリーダーシップも闘志も、それぞれ素晴らしかった。けれども、それがこれまでに挙げた3年のチームをさらに上回るかといえば、そうでもない。
 主将池永君、副将の池田君、友国君、鳥内君の顔を思い浮かべながら、彼らに似合う言葉を探してみると「信頼」という言葉がふさわしいように思えてきた。関西リーグ最終の立命戦を思い浮かべてみると、それは理解してもらえるだろう。
 相手の守備力と当方の攻撃力、当方の守備力と相手の攻撃力。決定的な決め手を持っている相手のキッキングチーム。そして当方は全勝で迎え、相手は1敗しているという条件を冷静に把握すれば、戦い方もおのずから決まってくる。「相手に点をやらなければ勝てる」「勝つためには、相手をFG圏内にも進めてはいけない」。そういうミッションをもって守備陣は懸命に踏ん張った。
 その象徴的な場面が第2Q終盤、自陣ゴール前23ヤードで相手にボールを奪われた局面で表れた。相手の第一プレーはパス。ジャンプしたLB池田君が指先でちょこっと触れ、少しコースが変わったところをLB吉原君がカット。大きく跳ね上がったボールをDB大森君がすっぽりと腕に抱え込んでターンオーバー。もし、最初のプレーでFGを狙われていたら確実に3点を奪われた場面を、守備の3人の連携で見事に断ち切ったのだ。
 オフェンスもまた、少しでも守備の負担を少なくするようにとラインが結束。陣地を進めた。4年生レシーバーは3年生QBをとことん信頼し、困ったときは俺に投げてこいといい続けた。QBもそれに応えて果敢に攻め続けた。その結果が0-0の引き分け。負けなかったファイターズは堂々と甲子園に歩を進めた。
 こういうチームである。仲間を徹底的に信じて戦った彼らには「信頼」、一字で表せば「信」の字が一番似合うのではないか。
 あの場面、この場面と回想しながら、あれこれ考えていると、病院の長い待ち時間はあっという間に過ぎ去った。
 さて、鷺野主将率いる今年のチームには、どんな漢字が当てはまるだろうか。それはこれからの彼らの取り組みにかかっている。夏に鍛え、木枯らしが吹く時期になっても、全員が自らを高め続けることができれば、その答えは出る。
 僕はひたすら、後々まで語り継がれるようなチームを創造してくれることを願っている。
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