石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」 2012/5

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(9)ピンチをチャンスに

投稿日時:2012/05/31(木) 23:17

 ファイターズに血をたぎらせている友人から電話があった。先日の関大戦を観戦していて、チームの現状に居ても立ってもいられない気持ちになったという。
 「あれが今年の実力か? 攻守ともなんだかちぐはぐで、心配になるんだけど」
 「昨年活躍した梶原や畑は、いまどんな状態なん? 秋には出てこられるの? 彼らが活躍してくれないとヤバイんと違う?」
 こんな彼の質問は、あの日、王子スタジアムで観戦されていた多くのファンに共通する疑問だと思う。実際、攻守ともミスというか不本意なプレーがいくつもあった。立ち上がり、ファンブルという形で相手が与えてくれた2度のチャンスを攻めあぐね、フィールドゴールの3点しか取れなかった攻撃。相手にはここ一番というプレーをびしばしと決められたのに、自分たちはせっかくのインターセプトの機会を2度も失敗した守備。
 キッキングチームも精彩を欠いた。前半、短いフィールドゴールは外すし、パントも不安定。終盤、WR木戸の好リターンからつかんだ好機にRB陣が奮起、最後はRB鷺野が11ヤードを走り切ってTD。K堀本もキックを決めて同点に追いついたのに、その直後に、95ヤードのキックオフリターンTDを許して、再び追いかける展開を強いられた。
 試合終了まで残り3分ほどという状況で、ようやくQB斎藤からWR梅本へのTDパスが決まって1点差。しかし、勝ち越しを狙った2点コンバージョンは、相手の反則でゴール前1.5ヤードからの攻撃となったのに、それが決められなかった。
 いわばこのプレーが、春シーズンの象徴。絶対に決めなければならないところで決められない。ここをしのげば明かりが見えるという場面で、しのぎきれない。歯がゆい気持ちばかりが募っていく。古い友人が心配して、わざわざ電話をかけてきた気持ちがよく分かる。
 だが、現状を憂い、悲観するだけでは、年寄りの繰り言。チームは生きている。適当な水分を与え、新たな養分を注ぎ込まなければ成長しない。時には剪定や間引きも必要だろう。失敗は失敗、できなかったことはできなかったことと現実を直視し、そこから対策を立て、次の手を打っていかなければ、話は前に進まない。
 あのような不本意な試合になったことをどう受け止めるのか。そこから何を学び、何を成長の糧にしていくのか。そういう方向で話を進めて行かないと、チームとして脱皮することも成長することもできない。
 この世には2種類の人間がいるという。物事を悲観的な側面から見る人と、楽観的な側面から見る人である。何かの行動を起こし、判断をするとき、もしもの場合を考えて、あらゆる注意を怠らない人と、あえて渦中に飛び込み、浮かぶ瀬を探し出す人。走る前に考える人と、走り出してから考える人といってもいいだろう。
 それぞれに、いい面、悪い面がある。どちらの生き方が正しい、とは言い切れない。はっきりしているのは、僕が明らかに楽観的な側面から眺める人間であるということだ。物事を突き詰めて考えることが苦手で、いつも「ぐじゃぐじゃいう前にやれ」「とにかく走れ、理屈は後からついてくる」という生き方を選択してきた。「くよくよするのは今夜だけ。明日は明日の風が吹く」という信条で、この60数年を生きてきた。
 なんせ、新聞記者だ。抜いた抜かれたは世の習い。いちいち抜かれたことにくよくよしたり、落ち込んでいたりしたら、その日の新聞が作れない。「抜かれたのは昨日のこと。明日はまた別の日が始まる」。そう思って、日々、心を新たにしないとやっていける仕事ではない。
 ファイターズの諸君にとっても同じこと。最長でもわずか4年しかない競技人生だ。昨日の失敗を引きずっている時間はない。たとえ失敗があったとしても、不本意なことがあったとしても、それを乗り越え、糧にして、新たな一歩を踏み出すことが大切だ。
 幸い、あの日の試合で関大はたぐいまれな戦力があり、いろんな戦い方ができることを見せてくれた。個人として傑出した能力を持った選手が何人もいること、途中から出場した1年生QBが、とてつもない可能性を持った選手であることも分かった。
 収穫である。あのような傑出した選手たちとどのように戦うのか、そのためにはどんな練習が必要なのか、そのためにチームのリーダーである4年生はどのように振る舞えばよいのか。具体的な課題がいくつも与えられた。いまこの時期に、そのような課題が与えられたというのは、幸運というしかない。
 この幸運を生かしたい。チームが一丸となって対策を立て、取り組みを深める。その取り組みができるように心身を鍛える。足らざるを補い、長所をさらに伸ばしていく。そういう機会とすれば、あの不本意な試合も、笑顔で振り返えれる日がくるに違いない。
 落ち込んでいる時間はない。他人を責めている暇もない。いまは、ひたすら練習に取り組むしかないのである。

(8)春の決算、その1

投稿日時:2012/05/25(金) 22:27

 26日は、王子スタジアムで関西大学との対戦。毎年、この時期に厳しい戦いを繰り広げているライバルとの試合である。この春、試合経験を積んできた若い選手たちが、どんな戦いぶりをするか、強敵を相手にその力が存分に発揮できるか。例年、春シーズンの仕上げとして、特別の思いを持っ戦ってくれる相手だけに、見所は一杯だ。
 なんせ関西大学には、攻守とも恐ろしいほどの才能を持った選手が何人もいる。オフェンスの前田、高崎らはオールジャパン級の選手だし、デフェンスバックを中心にした守りも堅い。そんな選手がライバル意識をむき出しに戦ってくれるのだから、これ以上の舞台はない。
 この春、明治、日大、日体大と関東勢との対戦を終え、秋の関西リーグで戦う龍谷大とも手合わせをした。しかし、それぞれの試合で登用されたのは、伸び盛りの若手が中心。昨年秋のシーズンから甲子園ボウル、ライスボウルへと続くタフな試合に出場し、試合ごとに力をつけていった選手たちの多くは、ベンチを温めることが多かった。
 オフェンスではQB畑、RB望月、鷺野、WR小山らがほとんど登場しなかったし、ラインの和田も一度も試合に出なかった。
 デフェンスも同様。昨年、スタメンで出場したラインの梶原、前川、岸、池永らはこの春、一度も試合に出ていない。LB池田、小野、DB大森、鳥内将らも前半だけは出るが、後半からは若手に出場機会を譲ることが多かった。
 その分、下級生を中心に、これまで出場機会のあまりなかった選手たちがスタメンで登場。試合を任される形で出場を続けた。QBの斎藤、前田、RBの飯田、米田、WRの木戸、梅本、ラインの木村、上沢、長森、月山らである。守備ではラインの中前、植屋、岡部、梶原弟、LBの坂本、雑賀、片桐、DBの国吉、市川、森岡らである。先日の日体大戦では、フレッシュマンのDL橋本、WR田中、木下らも登場、才能の片鱗を見せた。
 試合では、その恵まれた能力を発揮した選手もいたし、思わぬミスをしたり、思い通りにプレーできなかった選手もいた。大村コーチが「掘り出し物」と目を細めた選手もいるし「まだしばらく時間がかかりますね」と首をかしげる選手もいる。いま、素晴らしいプレーをしたと思っても、次にはそれを帳消しにするようなミスをした選手もいる。
 間違いなくいえることは、全員がまだまだ発展途上、ということ。昨シーズンの終盤、試合に出るたびに力をつけていった上級生と同様、試合を経験することで、どんどん伸びる余地があるということである。
 その成果を試す絶好の機会が今度の関大戦である。何しろ、能力の高い選手が多い。とりわけオフェンスには昨年RBで活躍した前田やWR、QBとしてスピード感あふれるプレーを連発した高崎らがいる。昨秋のリーグ戦では、それをDB香山や重田の魂のタックルが防いだが、二人はもう5年生。試合には出られない。
 果たしてLB、DBに彼らのような活躍をしてくれる選手がいるのかどうか。ラインは関大勢のスピードにどこまで対抗できるのか。見所が多いというのは、この点である。もちろん、能力の高い相手守備陣は、ファイターズの攻撃を宗やすやすとは通してくれないだろう。その警戒網をくぐってパスを通し、ランで突破するのは誰か。QBにとってもWRにとっても、もちろんRBにとっても、挑戦しがいのある相手である。
 こうして攻守とも、春のシーズンにどれだけ仕上がったのか、冬から続けてきた取り組みは間違っていなかったのか。そういう問いにも答えが出るだろう。楽しみである。ファンのみなさまも、ぜひ王子スタジアムに足を運び、自分の目で選手たちの成長ぶりを確かめていただきたい。

 さて、ファイターズファンだけでなく、日本のフットボールを愛する方々にご案内が一つあります。ファイターズのキッキング担当コーチ、小野宏氏の講演会のお知らせです。
 講演会は7月28日夜、大阪市北区中之島3丁目の朝日新聞社ビル内にある朝日カルチャーセンター中之島教室で開かれます。演題は「アメリカンフットボールの本当の魅力」。昨年、驚異的な成功を収め、日本アメフット界の話題を呼んだファイターズのキッキングゲームについて、裏話を盛り込んだ興味深い話を「ファイターズの頭脳」と呼ばれる小野氏が明快に解説し、フットボールの奥の深さと本当の魅力を教えてくれます。希望者が殺到する可能性がありますので、申し込みはお早めに。
 詳細はこちらからご覧下さい。
http://www.asahiculture.com/LES/detail.asp?CNO=166532&userflg=0
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