石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」 2011/6

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(13)「ひたむき」ということ

投稿日時:2011/06/28(火) 20:52

 先週土曜日は、上ヶ原の第3フィールドでJV戦。相手は、はるばる九州から遠征してきた西南学院。シーズンオフに、何人かの選手が練習に見えたことはあったように記憶しているが、JV戦としてこの時期に試合が組まれたのは実に10数年ぶりだそうだ。
 その意気込みがすごかった。試合は午後4時開始というのに、正午過ぎには監督やコーチ、選手やスタッフが次々に到着。全員、元気がよい。ちょっとした振る舞いを見ても好感がもてる。たまたま、午前中に行われたファイターズのキッキング練習を見学していた僕にまで、選手やスタッフは丁寧に声をかけ、挨拶をしてくれた。
 聞けば、アメフット部の部長でもある西南学院の学長まで、わざわざこの日の試合を応援に来られたそうだ。若い頃は選手として活躍されたそうで、アメフットを見る目も肥えているそうだ。前日、その情報を聞き込んだ鳥内監督が練習後「JV戦とはいえ、明日は無様な試合はできないぞ」とファイターズの選手たちに檄を飛ばしたという話も聞いた。
 試合開始は午後4時。梅雨の晴れ間とあって気温は30度を超すかんかん照り。グラウンドに降りると、人工芝の照り返しで、立っているだけでもクラクラしそうだ。日陰を遮るものもない場所で眺めている方も汗だくだったが、選手たちはもっと大変だったろう。
 西南学院のレシーブで試合開始。前半は、JVの試合とはいえ、伸び盛りの下級生と故障から回復途上の上級生で固めたファイターズのペース。QB糟谷の再三のキーププレーを中心に、RB松岡弟や林のランプレー、WR梅本や松下、押谷、岸本らへのパスを織り交ぜて、4回の攻撃シリーズをことごとくTDに結びつけた。堀本のキックもすべて決まり、前半だけで28-0。
 ところが、西南学院の士気はいっこうに衰えない。この日は、西南学院のベンチが観客席の目の前に設定されていたので、相手ベンチの動向が手に取るように分かったのだが、とにかく元気がいい。試合開始前から、異様に盛り上がり、キャプテンや監督、コーチが次々に檄を飛ばしていたが、大量の得点差がついても、次々に負傷者が出ても、いっこうにひるむところがない。とにかくグラウンドに出ている選手全員がやる気満々、ひたむきにプレーしていた。
 その結果が、後半の見事なフィールドゴールブロックや、立て続けのパスキャッチなどに表れた。スコアこそ44-0と大差がついたが、最後まで全力を尽くしてプレーする彼らの姿に胸を打たれた。「ひたむき」という言葉がぴったりする戦いぶりだった。
 それでも、選手たちはこの日の試合内容には納得できなかったのだろう。試合終了後、泣きながら応援席に向かって挨拶しているキャプテンの姿に、彼らの悔しい胸の内が表れていた。自分たちの何が足りなかったのか、相手のどこに圧倒されたのか、今後どんな練習、どんな取り組みをすれば、こういうチームと戦えるのか。そんなことを考えると、気が遠くなるような思いだったに違いない。ひたむきに戦ったからこそ、見えてきた現実。目の前の巨大な壁。
 九州で活動する西南学院は、練習相手にも恵まれず、競う相手も少ない。指導者も少ないし、切磋琢磨するライバルも少ない。年に一度の試合、その中のたった一つのプレーのために、1年間を費やすというような試練にさらされたこともないだろう。ないないづくしの環境にあって、それでも強くなりたい、もっと上達したいと思って臨んだこの日の試合。ファイターズにとっては、5試合あるJV戦の1試合だったかもしれないが、彼らにとっては「今季の総決算」ともいえるほどの覚悟があったに違いない。それがあのひたむきなプレーとして表れ、交代選手を送り出すたびにベンチからかけられる叱咤激励として形になったのだ。
 そういうチームの試合を観戦し、僕は思わず胸が熱くなった。どんなに強い相手であっても、全員が結束し、ひるまず臆せず、ひたむきにプレーすること。アメフットに限らず、それがチームスポーツの原点である。創部70年の歴史を持つファイターズも、草創期は多分、この日の西南学院のようなチームだったのではないか。そんなことを思いながら、スポーツの原点を教えてくれた西南学院に感謝し、このことだけはどうしてもこのコラムに書いておきたいと思った。

(12)ゴールデンルーキー続々登場

投稿日時:2011/06/23(木) 09:22

 「ゴールデンルーキー続々登場」「誰も彼もが大活躍」「上ヶ原に驚異の金脈」「金塊続々発掘」
 例えば、こんな見出しを全部並べても、なお足りないほどの活躍だった。19日、上ヶ原の第3フィールドで行われた桃山学院との試合に出場したルーキーたちのことである。
 この試合は、今春入部した新人たちが本格的に出場する今季「初めて」のJV戦。4月に大産大、5月に近大とのJV戦が組まれたが、そのときはまだ入学したばかりで、試合に出られる状況ではなかった1年生にとっては、実質的には初戦といってもいい試合だった。
 もちろん、これまでの試合でもQB斉藤(中央大付属)、前田(高等部)やWR木戸(高等部)、大園(箕面自由)、RB鷺野(高等部)、米田(箕面)、松岡弟(関大一)、守備ではDL松島(池田)、梶原弟(高等部)DB西山(箕面自由)らが交代メンバーとして、ちょこちょこ出場し、非凡な才能を見せていた。
 だが、スタメンあるいはそれに準じた扱いでルーキーが大量に出場したのは初めてである。その選手たちが誰も彼も、目を見張るような活躍をしてくれた。その一端を順不同で紹介してみよう。
 まずはオフェンスから。WR大園は3度投じられたパスを3度とも確保、それをすべてTDに結びつけるという離れ業を演じた。1本目が5ヤード、2本目が46ヤード、3本目が26ヤード。ボールを手にするたびにTDという、魔術師のようなプレーだった。
 同じWRの木戸も負けてはいない。第3QにQB糟谷から長いパスを受けそのままゴールに走り込んで57ヤードのTDパス。さらにQB斉藤から52ヤードのパスをキャッチして2本目のTD。これまたど派手な活躍だった。
 RB鷺野も目を見張るようなプレーを連発。第1Q糟谷から短いパスを受け、そのまま絶妙なカットバックで26ヤードを走り切ってTDを挙げたのを皮切りに、小気味よいラッシュを連発。相手ディフェンスを翻弄した。キッキングチームのリターナーとしても活躍、3度のリターンで計90ヤードを獲得する好走を見せた。
 QB斉藤の落ち着いたプレーも光った。第3Q半ばから登場し、パスで3本、ランで3本のTDを演出した。投げてよし、走ってよし。物怖じせず、落ち着いたプレーぶりはさらによし。毎年のように能力の高いQBが輩出するファイターズにあっても、出色の才能を感じさせる選手である。
 守備も負けてはいない。まずは記録に名前を刻んだ選手から。グラウンドに登場した直後にインターセプトを決めたのがDB西山。同じDBの村岡(足立学園)は、この日が初めての出場だったが、その最初のプレーでインターセプトを決め、26ヤードをリターンした。ともに、身のこなしが軽やかなアスリート。将来のディフェンスを引っ張っていく存在だろう。
 同じくDLの松島は187センチ、105キロの巨体と突破力を生かしていきなりQBサック。ここまでの派手さはなかったが、DL陣では岡部、梶原弟の高等部コンビに国安(足立学園)が元気のよいプレーを見せた。DBの国吉、林の高等部コンビの動きも目についた。
 こうして、この日活躍した選手の名前を挙げていくだけでも、今回のコラムは分量を超過してしまいそうだ。だが、ほかにもまだベールを脱いでいない有望なルーキーがいる。「もう、上のレベルでやれることは分かっているから」(鳥内監督)という理由で、この日は試合の準備をせず、筋力トレーニングに専念していたRBの松岡弟や米田らのことである。次週以降のJV戦には、順次登場するそうなので乞うご期待というところだ。
 ファイターズは毎年、関西だけでなく東京地区にまで目を向けて、有望な新人をリクルートしている。その選手たちが学年を重ねるたびに成長し、チームの主力となっていくのだが、それにしても今年は将来性を感じさせる選手が多い。まるで宝の山である。
 これだけの選手を集めることができたのは、長年、全国に目を向けて、地道にリクルート活動を続けてきた宮本ディレクター補佐や、それを助けるリクルート担当マネジャーらの努力のたまものである。コーチや監督もあらゆるつてをたどり、機会あるごとに高校に足を運んで高校の指導者との関係を深め、選手の発掘に努めている。こういう努力が実を結んで、ゴールデンルーキーたちがファイターズの門を叩いてくれたのだ。
 そのリクルート活動の苦労の一端を知っている僕としては、この選手たちの華やかなデビューを見ながら、それを喜び、同時に「どうかこのまま順調に育ってほしい」と心から祈っていたのである。
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