石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」 2010/5

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(8)歳々年々人不同

投稿日時:2010/05/22(土) 16:07

 先日、プロ野球のナイター中継を見ていたら、解説の有田修三さんが日米野球の違いについて、こんな意味のことを言っていた。
 「アメリカは人を集めてチームを作るが、日本は人を育ててチームを作る」。つまり、アメリカは豊富な資金力によって、各地から有能な選手を集めてチームを強化する。ところが、日本ではすぐに使える人材が限られているから、その少ない人材を懸命に育ててチームを作っていくというような意味だった。 日本高校野球連盟に加盟している硬式野球チームは4132校。それに大学や社会人、独立リーグまである野球にして「少ない人材を育ててチームをつくらなければならない」というのだから、競技人口が野球よりはるかに少ないアメフットの場合はどうなるか。
 まずは選手を確保することである。高校の試合に足を運び、数少ない選手の中から有望な人材をリクルートしなければならない。能力の高い選手は限られているから、ライバルチームと奪い合いになる。同時に他のスポーツをしている選手にも目を向け、アメフットは未経験でも運動能力が高く、体力的にも優れた選手を捜し出さなければならない。ファイターズでは毎年、他の競技経験者の中から先発メンバーに名を連ねる部員が出てくるが、こうした選手がいないと、選手層はますます薄くなる。
 選手が確保できれば、次は練習である。体を鍛え、技を教え、セオリーを学ばせなければならない。頭と体の鍛錬あるのみだ。しかし、ミーティングを重ね、練習量を増やしても、実戦で経験を積まなければ、なかなか身につかないことが多い。いわゆる経験知。成功して自信を付け、失敗して学ぶことの大切さである。
 しかし、その試合数が限られている。今季のファイターズでいえば、春は6試合。JV戦2試合を入れても8試合しか組まれていない。前期試験の関係から6月下旬になると練習試合ができなくなるので、春のシーズンは4月後半から実質2カ月。激しいコンタクトスポーツであり、必然的に体力を消耗するアメフットというスポーツの特性から、毎週試合日程をくむのは無理であり、これで限界という。
 9月から始まる秋のリーグ戦は7試合。ボウルゲームに出場しなかったら、これでシーズンは終わりである。つまり、「育てながらチームを作っていく」といっても、その経験を積ませる舞台は年に春と秋あわせて13試合しかないのである。
 大学は4年間。この短い期間、数少ない試合で、多くの選手に経験知を積ませ、なおかつ勝利も獲得していくというのは、並大抵のことではない。下級生はアメフット選手としての体力が付くまでは試合に出してもらえないし、せっかく先発メンバーに名を連ねても、けがで出られないことも少なくない。
 だから、選手にとっては、毎試合が真剣勝負。与えられたチャンスは何があってもつかまなければならない。試合で経験を積み、次に飛躍する足場を固めなければならない。
 15日にエキスポフラッシュフィールドで行われた同志社戦が、その象徴のような試合だった。
 その前の週に、川崎で日大との試合があったばかりとあって、この試合はエースQBの加藤とエースレシーバーの松原がお休み。エースランナーの松岡も、前半早々にベンチに引っ込んだ。代わりにQBは2年生の遠藤が前半を、第3Qは糟谷(3年)、第4Qは畑(2年)が出て、試合を牽引した。
 彼らはこれまで、試合の大勢が決まってから出場したことはあったが、オフェンスラインを先発メンバーで固めたときに試合に出た経験はほとんどない。どんなプレーをし、どんな失敗をし、何を学んでくれるか、ドキドキしながら見ていた。
 3人とも、恵まれた才能の一端をそれぞれ披露してくれた。同時に、まだまだ発展途上、加藤との距離は開いているという現実も見せつけられた。
 今後、経験を積んでいくことで克服できそうな課題もあれば、よほど覚悟を決めて取り組まなければならない課題もあった。それは3人のQBだけではない。この日、とっかえひっかえしてグラウンドに出た選手のすべてにいえること。試合で相手と対面し、相手の当たりやスピードを体感して初めて分かる課題がどっさり見つかったことと思う。日ごろの仲間内での練習では気がつかない、スタメンで出場している選手たちとの力の差も実感できただろう。
 そういう実感が経験知になり、飛躍するためのステップになるのである。
 年々歳々花相似 歳々年々人不同
 という。毎年、毎年卒業生を送り出し、新しいメンバーを迎えて、また新しいチームとして発展する。グラウンドを取り巻く環境は同じでも、そこで活動する選手は同じではない。日々の鍛錬で成長し、新たな課題を見つけて発展していく。それが、自発的、自覚的に行われていくチームが強いチームであり、勝つ資格のあるチームということだろう。

(7)卒業記念文集を紹介する

投稿日時:2010/05/14(金) 06:44

 今春、卒業したメンバーの卒業記念文集を読ませていただいた。選手、マネジャー(MGR)、トレーナー(TR)、アナライジングスタッフ(AS)、中学・高校のコーチなどをしていた35人と、5年生コーチだった前年の主将、早川君がそれぞれ800字から1600字ほどの文章を寄せている。
 いただいたその日に読み終えた。それぞれに気持ちのこもった文章だった。けれども、取り上げる機会がなく、すっかり遅くなってしまった。春のシーズンたけなわなのに、いまごろ何を寝ぼけたことをと叱られるのを覚悟で、紹介しておきたい。
 「私たちを立命に勝たしていただいてありがとうございます」と、最初に後輩やコーチ、応援していただいた方々に感謝の言葉を述べたのはQB浅海君。3年生の時は、みんなと同じ気持ちで練習することができず、チームを負けさせてしまったことが申し訳ないと告白し、「立命戦では少し恩を返せたと思います」と書いている。
 「後輩たちへ」というタイトルでLB池田君は「チームを良くも悪くもするのは4回生次第」と書いた上で「チームが強くなるには絶対に下級生の力が必要。特に3回生には4回生と同じ気持ちでやってもらいたいし、自分たちがチームを引っ張るという気持ちを持ってもらいたい」と言い残している。
 ASの遠藤君は、選手からASに転向したときの悔しい気持ちを振り返りながら「努力をしてかなわないことと、努力をせずにかなわなかったことでは、全然違う。なぜ入部してきたのか、なぜハードな大学生活をわざわざ選んでいるのかを、いま一度よく考え直してほしい」と後輩に伝言している。
 WRの勝本君は「振り返って見ると、ろくな4回生ではなかったと思う。ただ最後に伝えたいことがある。今回、本当にチームが一つにならないと勝てないことが分かった。だから、もっといろんなことをお互いに本音で話してほしい。相手を理解するには話すことが一番重要だ」とこれまた、後輩に言い残している。
 副将のOL亀井君は「私はこのチームで、大きな目標、そして最大のライバルの存在によっても自分の限界を超えることができるということを知った」と断言。「自分はどこを目指したいのか、何を目指したいのか、このことをまず考える必要がある」と、自分との対話の必要性を説く。
 「先の見えないその先」と書いたのはRB河原君。関大に敗れ、日本1への希望が限りなく小さくなっても「先の見えないものに全力を注ぎ続けた」苦しい時間を振り返りながら「目の前のことに全力で取り組んだその先に、何かがあるということを信じてファイターズの生活を充実させてほしい」という言葉を贈っている。
 WR柴田君は「本気」という題で、自らの「取り返しのつかない過ち」を告白。その苦い体験を基に「人は本当に追い込まれた時、とてつもないプレッシャーに襲われた時、どれだけ真面目に練習してきたかという事実ではなく、どれだけ本気で取り組んだかという気持ちを持って、初めて腹をくくれる。その気持ちが迷いを振り切る。真面目に練習することが悪いのではなく、その練習に気持ちがこもっていなければ意味がないということだ」とまとめている。
 主将の新谷君は「リーグ戦途中でやっと本気になり出した私を、4回生たちを、下級生が支え続けてくれた。もっと早く本気のチーム作りをしていれば結果は変わっていたかもしれない。引退して少し時間がたったいまではそういう思いがこみ上げてくる」と後悔の気持ちを綴っている。
 同じようにWRの萬代君は「負けに不思議の負けなし」という題で、自分の取り組みの甘さを悔やんでいる。「私に足りなかったのは、オレがチームを勝たせるんだ、という確固たる決意だった」と書き、後輩たちに「ファイターズは勝たせてくれない、監督コーチも勝たせてくれない。結局は、自分がやらないと勝てないのである。このチームは『お前ら』のそして『お前』のチームなのだ」と檄を飛ばしている。
 チームのまとめ役を務めたMGRの三井君は「私は最後まで学年を一つにまとめることができなかった。仲間同士で腹を割って話す時間が極端に少なかったからである」と書き、「本音で対話することでしか、真の仲間関係を構築することはできない。衝突を恐れてはいけない。我々は仲間であり、家族である。衝突しても必ず、衝突前以上の関係を築けるに違いない」とまとめた。
 それぞれ、気持ちのこもった文章である。新聞記者の仕事を40年以上続け、いまも大学で文章論を講義している「専門家」の立場で読んでも、ファイターズという集団で、何かを学び、何かをつかんだ人間だからこそ書ける内容だと断言できる。
 文集に掲載されている文章のごく一部しか紹介できないのは残念だが、こうした断片的な引用文を見ても、ファイターズというチームの素顔が見えてくる。この組織が「人を育てる集団である」ということが納得できる。どうしても、みなさまに紹介したかった由縁である。
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