石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」 2009/9

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(22)「もう一丁、やったろかい」

投稿日時:2009/09/28(月) 08:36

 負けました。秋のリーグ戦、3試合目の関大に、もろくも負けてしまいました。13-17。僅差ですが、負けは負けです。
 何から書いたらいいのか分からない。どう書いたらいいのかも分からない。
 このコラムがスタートして4シーズン目。関西リーグで、立命以外のチームに敗れたのは初めてである。9月のこんなに早い時期に敗れたことも、もちろんない。
 最初の年、柏木主将の代は関西リーグを全勝で乗り切り、甲子園ボウルまで進んだ。次の年、岡田主将の代は三原君の大活躍で甲子園ボウルに進出し、そこで日大を倒し、ライスボウルでも松下電工相手に史上最高のパスゲームを繰り広げた。3年目、早川主将の代は、最終戦で立命館に敗れたけれど、それまでは全勝でリーグ戦を乗り切った。
 なのに今年は、9月のこんなに早い時期に敗戦を振り返らなければならない。思いもよらないことだし、書く用意もない。どうしよう。
 試合の前日、練習を見た帰りに、自宅まで鳥内監督の車に便乗させてもらった。別れ際、監督は「明日は楽には勝たしてくれませんよ。でも、がんばります」といわれた。関大は強い、厄介な相手だとは、監督以外のスタッフからも何度も聞かされてきた。6月に第3フィールドで行われた関々戦も、最後の攻撃シリーズを必死につなげ、最後の最後で逆転に結びつけたが、それまでは完全な負けゲーム。そのときから、この日の結果は予想されていたことだろうか。
 もちろん、相手がどれほど強くても、負けることを予測して試合に臨んだ人はいないはずだ。強ければ強いほど、周到な準備をし、万全の策を持って臨んだに違いない。けれども勝てなかった。相手の方がこちらの準備を上回り、より深く戦術を研究してきたからだろう。
 例えば、ファイターズの攻撃陣にあって、抜群の切れとスピードを持ったRB松岡君やQB浅海君がほとんど走らせてもらえなかったことに、それが表れている。相手ディフェンスは、二人が登場した場面に限ってはランプレー1本にしぼって、守りを固めてきた。パスを通されたら仕方がない、それよりまずは二人に走らせないことだと思い定めた守備である。
 攻撃でも、ファイターズのLB陣の背後とDBの間を狙ったパスを盛んに投げ、それを再三成功させた。これもファイターズの守備陣の傾向を徹底的に分析し、それに対抗する戦術を研究してきた成果だろう。
 逆にファイターズは、得点に結びつけるための最後の決め手に欠けた。相手ゴールまで20ヤードの圏内に進んだのが5回。しかし、その好機をタッチダウンで締めくくったのは1回きりである。あとはフィールドゴールが2回、ピッチの連携ミスによるファンブルで攻撃権を失ったのが1回、そして第4ダウン、残り2ヤードがとれず、攻撃権を失ったのが1回。結局、5回の好機を得ながら、得点は13点に終わった。
 逆に相手の得点は67ヤードの独走TDと第3ダウン残り8ヤード、ゴールまで28ヤードという状況で投じられたロングパスによるTD、そして44ヤードのフィールドゴールである。20ヤード以内から攻撃する場面が一度もないまま、効率よく得点を重ねた。
 この違いが勝敗を分けた。得点に結びつけるため、あの手この手で陣地を進めながら、結局は最後の詰めが決まらなかったファイターズと、陣地を進めることが目的ではなく得点することが目的と割り切った攻めに徹した関大と。陣地を進められるのは仕方がない、けれどもTDされるのだけは防ごうと割り切って守った相手の思い切りが、結果的にはファイターズの攻撃を食い止めた。
 相手がここまで思い切った試合運びをしてきたのは、この試合が最後という、チーム全員の決意があったからではないか。リーグ戦は7試合だが、この試合に勝たないとすべてが終わるという、必死懸命の気持ちが全員に浸透していたからではないか。その決意があって初めて、自分たちの長所を生かすことだけに集中して試合に臨めたのではないかと僕は思っている。
 対するファイターズは、最終戦の立命戦を意識する余り、この試合にかける思いの深さが相手チームほどではなかったのではないか。相手は強敵である。けれども、もっと強い相手が最後に控えているという気持ちがチームにあったから、この試合にかける集中力に微妙な差が生まれてきたのではないか。
 悔しい敗戦である。手痛い負けである。けれども、これで今年のリーグが終わったわけではない。戦いは続く。捲土重来。まだまだ巻き返しのチャンスは残されている。立命を倒して日本1という目標に向かって、全力を尽くしてほしい。
 試合が終わった後、全員が意気消沈していた。新谷主将、亀井副将をはじめ、これまで懸命に練習に取り組んできた選手ほど、悔しさが大きかったようだ。試合後、スタンドに向かって整列し、深々と頭を下げたままの姿に、それは表れていた。
 けれども、チームはすべてを失ったわけではない。この悔しい気持ちが残されている限り、まだ望みはある。悔し涙をエネルギーに代え、試練に立ち向かってほしい。
 「もう一丁、やったろかい」

(21)「まだまだようなりますよ」

投稿日時:2009/09/15(火) 12:30

 試合が終わった直後、新聞やテレビの記者がグラウンドに降りて、監督や選手から取材をする。業界用語で「囲み」とか「ぶら下がり」とかいわれる取材である。
 取材対象と1対1になって向き合うインタビューではなく、大勢が取り囲んで、次々と質問するから、話は拡散し、底は浅くなりがちだ。取材慣れしている監督やコーチは、そういう場では当たり障りのないことしか話さないことも多い。逆に、話の内容が選手やこれから対戦するチームに伝わることを計算に入れて発言する「食えないオヤジ」もいる。楽天の野村監督などはその代表だろう。
 けれども、試合が終わった直後は、まだ戦いの熱気がグラウンドに残っていることもあって、注意深く聞いていれば、思わず本音が漏れることもある。そういう一言を聞きたくて、僕はいつも試合終了後、大勢の記者が鳥内監督を囲んで取材している外側から、聞き耳を立てている。
 例えば、13日の同志社戦の後の「囲み」取材の最後に、監督はこんな一言をぽろっと漏らした。「まだまだようなりますよ」
 多分、記者のみなさんにとっては、監督が試合を振り返って解説した言葉の方が「記事になる」内容だったと思うけれども、僕にとっては、この一言が一番値打ちがあった。
 解説しよう。
 この日の先発メンバーを学年別に見ると、オフェンスは4年生5人、3年生4人、2年生2人。ディフェンスは4年生4人、3年生4人、2年生2人、1年生1人。攻守とも4年生より3年生以下のメンバーの方が多いのである。
 その下級生が活躍した。これまでから試合に出ている3年生は当然としても、2年生や1年生が素晴らしいセンスを披露したのである。オフェンスラインの右側を固める2年生コンビ、谷山、濱本は素晴らしいセンスを感じさせるプレーぶりだったし、交代メンバーで出場した2年生のRB松岡、QB糟谷、WR和田は先発メンバーと遜色のない動きを披露した。42ヤードの難しいフィールドゴールをあっさりと決めた大西も2年生だ。終盤に登場し、立て続けに難しいロングパスをキャッチして観客の度肝を抜いたWR小山は1年生だし、同じ1年生のTE榎、C和田も非凡な所を見せた。
 ディフェンスでも下級生が活躍した。試合開始直後に相手パスをインターセプトした2年生DB香山は、今春卒業した徳井君を思わせるような突き刺すタックルも披露した。初戦から先発で出場している1年生DL梶原がはつらつと動き回れば、後半から出てきた同じ1年生DLの金本や岸も、彼に刺激されたように元気なプレーを見せてくれた。
 もちろん、2年生の交代要員も負けてはいない。DLの長島や好川、DB重田らが元気なプレーを披露してくれた。
 ファイターズは4年生が中心になって運営するチーム。4年生の取り組みがその年の成績を決めてきたともいわれている。その通りである。
 けれども、チームは4年生だけでは成り立たない。3年生、2年生の力強い突き上げと協力があって、ようやく動き始めるのである。「2年生が活躍するチームは強い」という言葉も、昔からある。
 今年のチームは、交代要員も含めて学年間のバランスがよくなった。3年生以下の4人が最前列を守り、その後ろに経験豊富な4年生3人がLBとして立ちはだかるディフェンスはその典型である。ここに名前を挙げなかった選手も含め、将来が期待される多くの1年生がこれにからんで、攻守ともチーム内の競争が激化している。
 鳥内監督が「まだまだようなりますよ」と漏らしたのは、そういうチーム事情を背景にしている。下級生が突き上げてチーム内の競争が激化し、それがチーム力を向上させているという手応えを感じたからこそ、監督の口から思わず「ようなりますよ」という本音が漏れたのである。
 この信頼を裏切ってはならない。
 次週の関大をはじめ、これから厳しい相手が次々と立ちはだかってくる。「立命に勝って日本1」という目標を達成するためには、一瞬の遅滞も許されない。厳しい相手との対戦を肥やしにして自らの技量を磨き、チームとしての力を向上させることだ。一層の奮励努力を求めたい。
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