石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

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(11)さあ、ここからが勝負!

投稿日時:2024/10/15(火) 08:11

 13日は京大との対戦。かつては「宿命のライバル」と呼ばれ、何度も痛い目にあわされたチームである。僕は、朝日新聞大阪本社の社会部で「遊軍記者」として働いていたころに水野弥一監督(当時)にインタビューし、その「チーム作りの哲学」の一端を紙面で紹介したことがある。
 例えばこんな言葉を覚えている。「僕は常々、選手に言うんです。1升瓶に1升の水を詰めることはだれにもできる。では、1升瓶に1升2合の水をどうしたら詰められるか」。もちろん選手は「それは無理です」と答える。「当然のことでしょう。でも、そこでまたいうんです。当然のことです、と言っている限り、初めから無理と言っている限り、関学には勝てない。何か方法はないかと考え、知恵を絞り、何とか突破口を見つけ、その壁を突破する手段、方法を考える。これまで関学に勝った先輩たちは、そういうことをやってきた。君らもそれをやらない限り関学には勝てんぞ」。
 さすが「カリスマ」と呼ばれていた人の言葉である。恐ろしく乱暴な表現だが、選手を鼓舞し、やる気にさせる力があったのだろう。当時の京大は本当に強かった。
 これは大昔の話ではあるが、13日、王子競技場で戦った京大の士気の高さを眼前に見て、思わずこの言葉と水野さんの魂が今もこのチームに宿っているのではないかと思ったことは確かである。
 例えば立ち上がりの攻撃。彼らは能力の高いQBの力を最大限に発揮させるプレーを次々に選択。最初の攻撃シリーズでFGを決めて先制。守備陣もそれに応えてファイターズの攻撃を完封。2度目の攻撃もFGを狙える位置まで攻め込んできた。
 そんな嫌な流れを変えたのがエースRB伊丹のランとQB星野弟からWR百田へのパス。それで落ち着いたのか、ハーフラインを超えたあたりから星野弟がWR五十嵐へ長いパス。それを確実にキャッチしてTD。7-3と逆転する。
 しかし、相手の士気は衰えない。前半残り5分を切ったところでFGを決め、7-6と追いすがる。
 それでもなんとか踏ん張るのが、今年のファイターズ。QB星野弟がWR小段や百田、五十嵐らに次々とミドルパスを通し、最後はK大西のFG。10ー6で前半を折り返す。
 後半に入ると、QBが星野兄に交代。今季はけがで出遅れていたが、ようやく回復。満を持しての出場である。「大丈夫か、無理するなよ」と祈るような気持ちで見ていたが、本人は意気軒高。RB伊丹のラン、WR百田へのパスなどで陣地を進め、仕上げはRB伊丹。中央を突破してTD。
 攻撃のエースが帰ってくると、チームは落ち着く。守備陣も余裕ができたのか、対応が的確になって、相手に陣地を進めさせない。
 4Qに入ってすぐの攻撃シリーズも1年生WR立花へのパス、QBのスクランブル、伊丹のランなどで陣地を進める。仕上げも伊丹のランで24-6と引き離す。その後、TDを1本返されたが、相手の粘りもそこまで。ファイターズは攻守ともに次々と新しいメンバーを繰り出し、そのメンバーが期待に応える。RB井上、深村がTDを重ね、締めくくりは4年生QB柴原から3年生WR辻へのTDパス。この日、すべてのキックを決めている大西が最後のTFPも決めて45-12。前半の苦しい戦いが嘘のような結末になった。
 しかし、リーグ戦はここからが勝負。続く関大、立命館には昨シーズン、苦しい戦いを強いられている。チームの真価が問われるのはここからである。気持ちを引き締め、反省すべきは反省し、一段と高いレベルを目指して励んでいただきたい。

(10)ヒーローインタビュー余話

投稿日時:2024/10/01(火) 21:59

 29日午後、王子スタジアムで開かれた関西リーグの4戦目。近畿大学との試合は44-14でファイターズの勝利。先週の神戸大学との試合と同様、能力の高い相手QBの個人技に幻惑されたが、攻撃陣が常に先手を取り、守備陣も次第に対応できるようになって、終わってみれば44―14。攻守蹴を合わせた地力の差を見せつけるような形で勝利した。
 その原動力がQBの先発、星野弟とRB、WR陣。RBではリーダーの伊丹が切れ味の良い走りと強い当たりで陣地を稼ぎ、TDも決める。レシーバー陣では、ともに2年生WRの小段と百田がそれぞれ長いパスを受けてTD。28-14で前半を折り返す。
 後半も似たような展開。相手の工夫を凝らした攻撃にファイターズのLB、DB陣が適切に対応。DB加藤のインターセプトやK大西の見事なFGも勝利に貢献した。
 試合後、グラウンドに降りると、何人もの選手がインタビューを受けている。それを聞きながら、終わった後でそれぞれの選手にひとこと声をかける。公式インタビューが終わった後だから、ヒーローたちもほっとしているのだろう。みんな本音で答えてくれる。例えば次のようなやりとりである。
「すごくいい走りの連発やったな。当たりが強くなって少々のことでは止められなくなっているのがスタンドからでも分かるわ」
「ええ。パワーで勝負。もっと走れ、もっと当たれと思って頑張りました。次も頑張ります」(以上、1Q後半から2Qの初めにかけて、立て続けにランでゲインを重ね、2本のTDを決めたRB伊丹君)
「走って、投げて、よく頑張ったな。1年生とは全く思えないプレーに毎回驚いてるよ。小段君へのTDパス、百田君へのTDパス。それぞれ距離はあったけど、見事に決めたのがすごかった」
「お二人は確実に捕ってくださるので、思い切り投げています。百田さんの時は、一気にゴールまで、と祈るような気持でした」
 隣に、けがで欠場が続いている兄の秀太君が来たので
「兄貴の留守を弟がしっかり守っている。ええ兄弟や」
 そういうと、
「僕ももうすぐ復帰します。兄弟で張り合って頑張ります」という。
 それを聞いた弟が、すかさず「僕も頑張ります」と声をそろえる。思わず記念写真を撮りたいような二人の笑顔だった。
 その後、小段君や百田君にも声をかける機会があったが忙しそうだったので今回は省略。それでも、小段君は「けがはすっかり回復しました。出遅れた分、これから頑張ります」と宣言してくれた。
 今回は、たまたまオフェンスに偏った取材をしたため、守備陣の話題を取り上げられなかったが、守備陣を含めこういう部員が日々、課題をもって練習に取り組み、心身を鍛え、どんな時、どんな相手にも、全力でプレーする。それがファイターズの魅力である。
 そういえば、身近に見たRB伊丹君の体形が下級生のころとは比較にならないほど強靭になっていた。こういう4年生に接するだけでも、ファイターズというチームに出会えてよかったと思える。
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