石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
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(6)ファイターズ・ファミリー
投稿日時:2010/05/06(木) 22:50
連休の第3フィールドは、先客万来。普段は仕事で顔の出せないOB連が次々と顔を見せ、防具を付けて後輩たちの練習台になっている。社会人リーグの現役で活躍しているメンバーもおり、日本を代表するプレーを披露してくれる選手もいる。
5日の「子どもの日」も、2001年度卒業の石田力哉氏や08年度卒の早川悠真氏らが顔を見せ、練習に入って、軽快な動きを見せていた。富士通で現役選手としてプレーしている08年度卒の藤本浩貴氏の元気な顔にも出会い、少しばかり言葉を交わした。
こうした懐かしいメンバーと顔を会わせて近況を聞き、現役選手の「手応え」について質問できるのは、このコラムを書いている筆者のささやかな特権。スポーツ推薦に備えて一緒に勉強してきた「塾長」と「塾生」ならではの深いつながりである。
石田氏は勤務先が大阪で、自宅が御影ということで、今季は休みのたびにグラウンドに顔を出している。かつて森栄市氏が務めていたサンデーコーチの役割を、自らが練習台になって務めているのである。この日はディフェンスのラインだけでなく、オフェンスのラインにも入って、後輩たちの当たりを受け止めていた。
その感想を聞く。
――ユニットとしては、そこそこ動けますけど、1対1の当たりがまだまだですね。当たって相手を崩す、そこで主導権を握るというのがアメフットの基本。その点で、まだ物足りないものがあります。そこそこ動けるメンバーがそろっているので、これからが楽しみですね。
――下級生に楽しみな子が多いですね。当たれる子もいますし。しっかり鍛えていけば、ぐんと成長しますよ。
――今年は1年生がいいですね。体がデカい子が大いし、動けます。まだまだ未熟ですけど、これから体を作り、鍛えていけば、楽しみです。
今年、社会人になって東京で勤務している早川氏とは、帰りの新幹線の時間を気にしながらの立ち話。近況を聞き、新チームについての論評を聞く。
――昨年も5年生コーチとして、練習を見てきましたが、今年は下級生が楽しみですね。体に恵まれた選手が多く、動きもよい。秋には何人かがスタメンで出てくるでしょう。
――4年生がもっと存在感を出さないと。うかうかしていたら、後輩に追い抜かれてしまいますよ。
二人とも、防具を着用して、実際にプレーした結果の発言である。口をそろえて下級生を評価していたが、逆にいえば上級生のプレーにもどかしさを感じ、さらなる奮起を促していたのかもしれない。
OBの指導について、小野コーチがこんな話をしてくれた。連休中に指導にきてくれた02年度卒のQB、尾崎陽介氏の話である。彼は、ファイターズがライスボウルで勝ったときの3年生エースQB。いまも鹿島で現役のプレーヤーとして活躍している。
彼が50ヤードの距離からレシーバーに向かってパスを投げると、いつも正確に目標に到達する。ところがファイターズの現役選手が投げると、距離は十分だが、コントロールにばらつきが出る。50ヤードのパスといえば、ある程度はコントロールが乱れても仕方がない、それは誤差の内、と思っていた現役選手たちにとっては、目の前でしっかりコントロールされたパスを投げ続けるQBがいること自体が驚きだったのだろう。
小野コーチは「尾崎の高いレベルを目の当たりにして、QBが一気に覚醒しました。自分たちの到達しなければならない目標が、尾崎というプレーヤーを通して具体的に見えたことで、目の色が違ってきたのです。こういうプレーを見せてもらえただけでも、OBがきてくれる効果があります」と喜ぶ。
ファイターズについて、ファミリーという言葉がよく使われる。それは卒業生を含めて先輩と後輩の垣根が低く、家庭的な雰囲気があるという意味で使われることが多い。後輩の就職活動に対するOBの方々の「面倒見のよさ」一つとっても、それはいまも連綿として受け継がれている。
けれどももう一つ。僕は卒業生の方々が現役選手に気軽に自らのプレーヤーとして手にした資産・技術を惜しげもなく伝授してくれるその雰囲気のよさに「ファミリー」と呼ばれる由縁があるのではないかと考える。グラウンドに気軽に顔を出し、後輩たちに胸を貸している先輩たちと、それを快く受け入れて上達の糧にしている監督やコーチ、選手たちの姿を見て、そんな感想を持った。
5日の「子どもの日」も、2001年度卒業の石田力哉氏や08年度卒の早川悠真氏らが顔を見せ、練習に入って、軽快な動きを見せていた。富士通で現役選手としてプレーしている08年度卒の藤本浩貴氏の元気な顔にも出会い、少しばかり言葉を交わした。
こうした懐かしいメンバーと顔を会わせて近況を聞き、現役選手の「手応え」について質問できるのは、このコラムを書いている筆者のささやかな特権。スポーツ推薦に備えて一緒に勉強してきた「塾長」と「塾生」ならではの深いつながりである。
石田氏は勤務先が大阪で、自宅が御影ということで、今季は休みのたびにグラウンドに顔を出している。かつて森栄市氏が務めていたサンデーコーチの役割を、自らが練習台になって務めているのである。この日はディフェンスのラインだけでなく、オフェンスのラインにも入って、後輩たちの当たりを受け止めていた。
その感想を聞く。
――ユニットとしては、そこそこ動けますけど、1対1の当たりがまだまだですね。当たって相手を崩す、そこで主導権を握るというのがアメフットの基本。その点で、まだ物足りないものがあります。そこそこ動けるメンバーがそろっているので、これからが楽しみですね。
――下級生に楽しみな子が多いですね。当たれる子もいますし。しっかり鍛えていけば、ぐんと成長しますよ。
――今年は1年生がいいですね。体がデカい子が大いし、動けます。まだまだ未熟ですけど、これから体を作り、鍛えていけば、楽しみです。
今年、社会人になって東京で勤務している早川氏とは、帰りの新幹線の時間を気にしながらの立ち話。近況を聞き、新チームについての論評を聞く。
――昨年も5年生コーチとして、練習を見てきましたが、今年は下級生が楽しみですね。体に恵まれた選手が多く、動きもよい。秋には何人かがスタメンで出てくるでしょう。
――4年生がもっと存在感を出さないと。うかうかしていたら、後輩に追い抜かれてしまいますよ。
二人とも、防具を着用して、実際にプレーした結果の発言である。口をそろえて下級生を評価していたが、逆にいえば上級生のプレーにもどかしさを感じ、さらなる奮起を促していたのかもしれない。
OBの指導について、小野コーチがこんな話をしてくれた。連休中に指導にきてくれた02年度卒のQB、尾崎陽介氏の話である。彼は、ファイターズがライスボウルで勝ったときの3年生エースQB。いまも鹿島で現役のプレーヤーとして活躍している。
彼が50ヤードの距離からレシーバーに向かってパスを投げると、いつも正確に目標に到達する。ところがファイターズの現役選手が投げると、距離は十分だが、コントロールにばらつきが出る。50ヤードのパスといえば、ある程度はコントロールが乱れても仕方がない、それは誤差の内、と思っていた現役選手たちにとっては、目の前でしっかりコントロールされたパスを投げ続けるQBがいること自体が驚きだったのだろう。
小野コーチは「尾崎の高いレベルを目の当たりにして、QBが一気に覚醒しました。自分たちの到達しなければならない目標が、尾崎というプレーヤーを通して具体的に見えたことで、目の色が違ってきたのです。こういうプレーを見せてもらえただけでも、OBがきてくれる効果があります」と喜ぶ。
ファイターズについて、ファミリーという言葉がよく使われる。それは卒業生を含めて先輩と後輩の垣根が低く、家庭的な雰囲気があるという意味で使われることが多い。後輩の就職活動に対するOBの方々の「面倒見のよさ」一つとっても、それはいまも連綿として受け継がれている。
けれどももう一つ。僕は卒業生の方々が現役選手に気軽に自らのプレーヤーとして手にした資産・技術を惜しげもなく伝授してくれるその雰囲気のよさに「ファミリー」と呼ばれる由縁があるのではないかと考える。グラウンドに気軽に顔を出し、後輩たちに胸を貸している先輩たちと、それを快く受け入れて上達の糧にしている監督やコーチ、選手たちの姿を見て、そんな感想を持った。
(5)JV戦の話をしよう
投稿日時:2010/04/28(水) 12:34
少々遅くなったが、18日に上ケ原の第3フィールドで行われたJV戦の話をしたい。
相手は追手門大学。関西学生リーグの2部に所属する伝統校だ。対するファイターズの主力は2年生。それに、普段、あまり試合に出る機会に恵まれない4年生や3年生がスタメンに名前を連ねている。いわば1軍半から2軍のメンバーといってよいだろう。
いつもの年なら、6月の後半になってから組まれるJV戦だが、今年は控え選手に少しでも試合経験を積ませたいということで、まだ甲山おろしが冷たい4月早々からスケジュールに組み込まれた。
立ち上がり、レシーブを選択したファイターズに対し、追手門はいきなりオンサイドキック。これが成功して攻撃権を奪取する。浮足立つところだが、ここはDL岸、LB高吹、LB望月の2年生トリオが落ち着いて相手のランを封じ、すぐに攻撃権を奪い返す。
自陣46ヤードから始まったファイターズ最初の攻撃。QB糟谷(3年)からハンドオフされたボールを抱えたRB林(3年)が中央を抜けて一気にTD。前日の日体大戦で、兄貴分のQB加藤、RB松岡のコンビが第1プレーでTDを決めたのと同様、一発TDで試合の主導権を握った。
ところが二の矢が続かない。もたもたした攻撃をしている内に相手がパスとランを織り交ぜた多彩な攻撃でファイターズ守備陣を揺さぶる。1Q8分30秒、相手QBのキーププレーで同点に追いつかれる。
この日の試合は1Q10分だったので、あっという間に第2Q。しばらく一進一退が続いたが、ようやく終了間際にファイターズの攻撃が決まる。相手陣41ヤードから始まったこのシリーズは、糟谷のスクランブル、TEの金本(2年)、榎(2年)、WR大森(3年)へのパスなどでなんとか敵陣に迫り、仕上げは糟谷から榎への5ヤードTDパス。前半を14-7で折り返した。
ところが、後半になると、またまた攻撃が進まない。QBは遠藤(2年)に交代したが、パスがつながらず、ラン攻撃も進まない。逆に3Qに相手の反撃を許し、同点に追いつかれる。
第4Q終盤、ようやく遠藤から大森へのTDパスがヒットしてリードを奪ったが、相手も懸命に反撃。得意のランプレーで陣地を稼ぎ、急所でパスを決めて、残り8秒で3本目のTD。最後は2点を狙ったパスプレーを決め、ついに逆転。ファイターズは22-21で敗れた。
JV戦とはいえ、ファイターズを相手に多彩なプレーを繰り出し、必死に攻め込んだ追手門。その懸命さに浮足立ち、立ちすくんでしまったように見えたファイターズの面々。最後は、試合経験の差が勝負を分けたように見えた。
新しいシーズンがスタートしてまもない時期の試合。まだユニットの練習も、複雑な作戦もないままに、試合経験の少ないメンバーで戦ったという条件はあったが、それでも、いつもの年のJV戦に比べ、いささか物足りない内容だった。
一つは、今春入部した1年生が一人も登場しなかったこと。もう一つは、日ごろから試合に出ている主力選手と2枚目以下の選手の間に、大きな断層があることを見せつけられたからである。
思い返せば3年前。現在の4年生が初めて団体で出場した神戸学院大とのJV戦は見ごたえがあった。2007年7月9日のこのコラムに「宝の山の物語」と題して紹介しているので、それを読み返しながら、記憶をたどりたい。
最初に目に付いたのはWR松原。50ヤードのTDパスを決めて、噂通りの才能を見せてくれた。RB久司は、ボールを持つたびに独走TD。32ヤード、14ヤード、56ヤードをぶっちぎりで走り切り、格の違いを見せつけた。DB善元は逆サイドから一気に走り込んでボールキャリアにタックル。その強い当たりを見て、必ず守りの主力になると確信した。
守りではラインの平澤と村上の素早い動きが出色だった。相手を完封するその動きを見て「これで4年間、DLは安泰」と気分をよくしたことを覚えている。
そして、なんといってもすごかったのはQB加藤。12回パスを投げて9回成功、222ヤードを獲得している。そのうち3本はTDパスだった。
こうした面々が順調に育って、いまはチームの大黒柱。そういう意味では、たとえJV戦であっても、その試合内容、選手の活躍ぶりはチームの将来に直結するといってよいだろう。
振り返って今年のJV戦。将来を担って立つと確信させてくれる選手が少々、少なかったような気がする。6月に再度、JV戦が組まれているので、次の機会には、大勢の1年生にも登場してもらい、ワクワクする選手を捜してみたい。
相手は追手門大学。関西学生リーグの2部に所属する伝統校だ。対するファイターズの主力は2年生。それに、普段、あまり試合に出る機会に恵まれない4年生や3年生がスタメンに名前を連ねている。いわば1軍半から2軍のメンバーといってよいだろう。
いつもの年なら、6月の後半になってから組まれるJV戦だが、今年は控え選手に少しでも試合経験を積ませたいということで、まだ甲山おろしが冷たい4月早々からスケジュールに組み込まれた。
立ち上がり、レシーブを選択したファイターズに対し、追手門はいきなりオンサイドキック。これが成功して攻撃権を奪取する。浮足立つところだが、ここはDL岸、LB高吹、LB望月の2年生トリオが落ち着いて相手のランを封じ、すぐに攻撃権を奪い返す。
自陣46ヤードから始まったファイターズ最初の攻撃。QB糟谷(3年)からハンドオフされたボールを抱えたRB林(3年)が中央を抜けて一気にTD。前日の日体大戦で、兄貴分のQB加藤、RB松岡のコンビが第1プレーでTDを決めたのと同様、一発TDで試合の主導権を握った。
ところが二の矢が続かない。もたもたした攻撃をしている内に相手がパスとランを織り交ぜた多彩な攻撃でファイターズ守備陣を揺さぶる。1Q8分30秒、相手QBのキーププレーで同点に追いつかれる。
この日の試合は1Q10分だったので、あっという間に第2Q。しばらく一進一退が続いたが、ようやく終了間際にファイターズの攻撃が決まる。相手陣41ヤードから始まったこのシリーズは、糟谷のスクランブル、TEの金本(2年)、榎(2年)、WR大森(3年)へのパスなどでなんとか敵陣に迫り、仕上げは糟谷から榎への5ヤードTDパス。前半を14-7で折り返した。
ところが、後半になると、またまた攻撃が進まない。QBは遠藤(2年)に交代したが、パスがつながらず、ラン攻撃も進まない。逆に3Qに相手の反撃を許し、同点に追いつかれる。
第4Q終盤、ようやく遠藤から大森へのTDパスがヒットしてリードを奪ったが、相手も懸命に反撃。得意のランプレーで陣地を稼ぎ、急所でパスを決めて、残り8秒で3本目のTD。最後は2点を狙ったパスプレーを決め、ついに逆転。ファイターズは22-21で敗れた。
JV戦とはいえ、ファイターズを相手に多彩なプレーを繰り出し、必死に攻め込んだ追手門。その懸命さに浮足立ち、立ちすくんでしまったように見えたファイターズの面々。最後は、試合経験の差が勝負を分けたように見えた。
新しいシーズンがスタートしてまもない時期の試合。まだユニットの練習も、複雑な作戦もないままに、試合経験の少ないメンバーで戦ったという条件はあったが、それでも、いつもの年のJV戦に比べ、いささか物足りない内容だった。
一つは、今春入部した1年生が一人も登場しなかったこと。もう一つは、日ごろから試合に出ている主力選手と2枚目以下の選手の間に、大きな断層があることを見せつけられたからである。
思い返せば3年前。現在の4年生が初めて団体で出場した神戸学院大とのJV戦は見ごたえがあった。2007年7月9日のこのコラムに「宝の山の物語」と題して紹介しているので、それを読み返しながら、記憶をたどりたい。
最初に目に付いたのはWR松原。50ヤードのTDパスを決めて、噂通りの才能を見せてくれた。RB久司は、ボールを持つたびに独走TD。32ヤード、14ヤード、56ヤードをぶっちぎりで走り切り、格の違いを見せつけた。DB善元は逆サイドから一気に走り込んでボールキャリアにタックル。その強い当たりを見て、必ず守りの主力になると確信した。
守りではラインの平澤と村上の素早い動きが出色だった。相手を完封するその動きを見て「これで4年間、DLは安泰」と気分をよくしたことを覚えている。
そして、なんといってもすごかったのはQB加藤。12回パスを投げて9回成功、222ヤードを獲得している。そのうち3本はTDパスだった。
こうした面々が順調に育って、いまはチームの大黒柱。そういう意味では、たとえJV戦であっても、その試合内容、選手の活躍ぶりはチームの将来に直結するといってよいだろう。
振り返って今年のJV戦。将来を担って立つと確信させてくれる選手が少々、少なかったような気がする。6月に再度、JV戦が組まれているので、次の機会には、大勢の1年生にも登場してもらい、ワクワクする選手を捜してみたい。
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