石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

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(16)悔しい試合を糧に

投稿日時:2023/11/28(火) 19:59

 26日、吹田市の万博記念競技場で開かれた関西学生アメリカンフットボールの最終戦、関西大との決戦は、16-13で関西大に軍配が上がった。スタンドから応援している限り、両者ともに気力・体力・思考力、そしてチームの結束力の限りを尽くした戦いだと思えたが、そのいずれかで相手がわずかに上回っていたのだろう。相手にとっては歓喜の勝利、ファイターズにとっては悔やんでも悔やみきれぬ結果に終わった。
 ちなみに、ファイターズのホームページにアップされている数字を関学サイドから見てみよう。タッチダウンは1本-2本、PATは1本-1本、フィールドゴールは2本、1本。ファーストダウンを成功させた回数は17回-11回、総獲得ヤードは332ヤード-250ヤード、インターセプトをされた回数は0-1。攻撃時間は関学が31分40秒で関大は16分20秒。
 すべての記録でファイターズが優っているのに、肝心の得点は13-16。
 一体、どういうことだろう。なぜこうした結末を迎えたのだろう。
 13-16で迎えた4Q終盤。相手がフィールドゴールを決めて3点をリードした場面から以降の展開を振り返ってみよう。ファイターズの攻撃はRB澤井の好リターンで自陣37ヤード付近から。まずはエースRB伊丹が立て続けに走ってハーフライン付近まで陣地を進める。次はパスで前進かと思ったところでQB鎌田のキーププレー。これが決まって相手陣に進出。次のプレーはTE安藤へのパス。それも決まってダウン更新。さらにRB澤井が相手陣21ヤードまで走り、フィールドゴールを狙える位置までたどり着く。
 しかし、相手守備陣も必死である。次のパスプレーで起死回生のタックルを決めてQB鎌田の腕の中からボールをはじき出す。こぼれたボールにファイターズのオフェンス陣が食いつき、なんとか攻撃権を維持するが、このプレーで相手の守備陣が一気に燃え上がった。LBやDBが素早い上がりでファイターズのボールキャリアに向かい、陣地を押し戻す。
 残り時間が1分を切って迎えた。第4ダウンの攻撃。相手ゴールは遠く、同点につながるフィールドゴールを決めるには、あまりにもリスクが高い。最後は遠投力のあるQB鎌田から彼が一番信頼するWR鈴木への長いパスしかないという場面。だが、相手もそれを十分に警戒し、二人のDBが連携して守っている。
 さて、勝負はいかに、という場面。期待通りゴール中央付近に走り込んだ鈴木にパスが投じられたが、横合いから飛び込んできた相手DBに阻まれ、敗北が事実上、確定した。
 両チームともに守備陣が見せ場を作り、攻撃陣が一瞬の隙を突いて陣地を進める。互いに譲らぬ戦いだった。しかしながら、すでに立命館との試合に敗れ、失うモノが何もないという状況でこの試合に臨んだ相手と、立命に勝ち、6勝を挙げて優勝を決めていたファイターズの面々との間には、勝敗にこだわる気持ちの持ちようが微妙に違っていたのかもしれない。その微妙な差異が勝負の明暗を分けたのではないか。
 それはこの日、フィールドで戦った選手たち全員が身に染みて感じたことだろう。それこそがチームの財産である。
 勝負事は天の時、地の利、人の和によって決まるという。この日は幸い、試合後の抽選会で海崎主将が当たりくじを引き、甲子園ボウルにつながる試合への出場権を獲得してくれた。
 確かにこの日の敗戦は悔しい。けれども、再度、学生フットボール界の頂点に挑める機会は与えられた。それは「諸君、もっともっと頑張ってみなさい。自分たちの力で新しいページを開きなさい」という勝負の神様からのお告げであろう。
 16-13という結果を胸に刻み、チームに属する全ての人間が協力し、鍛えあって、甲子園ボウル6連覇を目指す。それはファイターズの諸君だけに与えられたチャンスである。このギフトを生かそうではないか。

(15)決戦!ヤンマースタジアム

投稿日時:2023/11/13(月) 08:34

 11日は立命館との決戦。関西リーグの試合を克明に追っている観戦仲間によれば、今季の学生フットボール界では、実力No.1ではないかという強敵である。
 彼の言葉を借りれば「2年生のQBが素晴らしい。パスも一流だし、自分でも走れる。RBにはスピードでぶっちぎれるメンバーがいるので、一発TDの怖さが常にある」という。
 そんな相手にファイターズはどう対応するか。攻撃では自分たちの長所を最大限に発揮し、守備では相手の長所を無効化できればベストだが、そうは問屋が卸さない。ベンチが知恵を絞って作戦を練り、それを全ての選手が完璧に実行する。そこから道が開ける。さて、その作戦は?と、メンバー表をチェックしながらキックオフを待った。
 ファイターズのレシーブで試合開始。しかし、最初の攻撃シリーズはダウンを更新できず、簡単に攻撃権が相手に移る。これはしんどい試合になるぞ、と思った瞬間、相手RBが最初のプレーでファンブル。相手ゴール前12ヤードという絶好の位置でファイターズに攻撃権が移る。
 よっしゃ、行け!と、周囲の応援席から声が上がる。その声が届く前に、グラウンドではQB星野が相手ゴールに駆け込んだTE安藤にふわっとしたパス。それが見事に通ってTD。相手のミスを逃さずに先制点につなげた。
 立命の次の攻撃は、相手陣30ヤード付近から。スピードのある相手リターナーの独走を防ぐため、あえて奥深くまでは蹴らなかったのでしょう、とスタンドの放送席でファイターズファンに向けた放送をされていたディレクターの小野宏さんが解説されている。
 なるほど、と頷きながら見つめた立命の攻撃。その第1プレーで相手QBが投じたパスをDB中野がインターセプト、一気に相手ゴール前まで走り込む。
 わずか1プレーで好守交代。それも相手ゴール前10数ヤードの好位置。この好機に体重90?、突破力抜群のRB大槻がボールを託された。期待に違わず、2度のランで相手ゴールに突入。チームとして2本目のTDに仕上げ、K大西のキックも決まって14-0とリードを広げる。
 しかし立命の攻撃陣には突破力がある。スピードのあるRB、どこへでも自在にパスを投じるQB。双方の威力を見せつけながら攻め込むから、守備陣は大変だ。なんとかその攻撃をファイターズ守備陣が食い止め、フィールドゴールの3点を与えただけでしのぐ。
 立命は第2Qの次のシリーズも強力なランであっという間に関学のゴール前に迫る。一気にエンドゾーンを落とされるかと覚悟したが、ここからファイターズ守備陣が粘って、最後は4thダウンのギャンブルプレーをロスタックルで阻止した。
 守備陣の頑張りに応えたのがQBの星野。直後の自陣6ヤードからの攻撃で、ロングパスをヒットさせて敵陣に侵入し、その後はランプレーで陣地を進め、残る12ヤードを自身が走りきってTD。21-3と突き放す。今季はけがや病気のため、練習もままならない状態が続いていたが、ようやく回復。自在にフィールドを駆け巡った。その姿を見ながら、決戦を前に、よくぞ戻ってきてくれたと胸をなで下ろす。
 胸をなで下ろすといえば、ディフェンスのキーマン、ショーンも今季初めてフィールドに立ってくれた。ほんの短い時間の出場にとどまったが、その長身を生かしたセンスあふれるプレーは健在。大事な場面で相手のパスをカットするなど期待に違わぬプレーを見せてくれた。難敵・立命が相手だけに、完全回復近しというプレーに、ファンの一人としてほっとした。
 そうこうしているうちに前半は終了。あっという間に後半に入ったが、双方の我慢比べは続く。立命はQBを中心にランとパスを組み合わせた堂々たる攻めを繰り返すが、ファイターズ守備陣が的確に反応し、なかなか陣地を進めさせない。ファイターズもまたランとパスを組み合わせたプレーで陣地を進めるが、TDを奪うところまでは攻めきれない。
 第3Qも半ば近くなったところでファイターズがFGを決め24-3。ようやく優位に立ったと思った瞬間、今度は立命が反撃。ランとパスをたくみに組み合わせて陣地を進め、残り2分を切ったところでTD、14点差に迫る。
 並の相手なら14点の差があれば、そんなに心配することはない。けれども、目の前で切れの良いプレーを展開する相手のオフェンスを見ていると、とても安全圏とは思えない。
 そんな流れを断ち切ったのがDB中野。相手QBがサイドライン際に投じたショートパスを奪い取り、そのまゴールまで64ヤードを駆け込んでTD。31-10と引き離す。彼自身、この日2本目のインターセプトが、そのまま相手の息の根を止めた。
 けれども、スタンドから見ている限り、双方の実力に、この得点差ほどの差はなかったように思える。攻守ともに決定力を持ったライバルを相手に攻守蹴がかみ合ったからこその勝利であろう。
 2年生QBを守り切ったオフェンスライン、たぐいまれな能力を有する相手オフェンスの勢いを1列目、2列目、3列目が互いにカバーし、助け合ってそいだ守備陣。数少ない得点チャンスを確実に得点に結びつけたQB星野とRB、WR陣。さらに言えば、普段の練習時から彼らの長所、短所を掌握し、それぞれの長所が生きるような選手起用、プレー選択を続けた監督、コーチ陣。まさに総力を挙げてつかんだ勝利である。
 リーグ戦も残り1試合。しかし、相手の関大には昨シーズン、悔しい思いをさせられている。この日、活躍の場がなかったメンバーを含め、チームが一丸となってその雪辱を期し、完全優勝を目指してさらなる努力を重ねてもらいたい。
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