石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

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(15)ある指導者からのメール

投稿日時:2011/07/12(火) 22:21

 コラムを書いていると、いろんな方から励ましの言葉を頂く。試合会場でもときおり、見知らぬ方から「楽しみにしてますよ」と声を掛けられる。「僕が筆者です」と宣伝しているわけでもないし、恥ずかしいから顔写真も出さず、似顔絵でごまかしているのに、どこで僕とコラムが結びつくのだろう。不思議だ。
 先日は、なんと西南学院大学の桑原監督から、ホームページの管理者経由でメールが届いた。先々週、この欄で「ひたむきということ」というタイトルで書いた文章に対する礼状である。心にしみる文面だった。それを読んだファイターズのコーチからも「人を育てる、チームをつくるという点で、教えられることの多い内容でした。ぜひコラムで紹介してください」という話があった。
 そこで、桑原監督に連絡を取り、了解を得た上で全文を転載させてもらうことにした。次のような内容である。
  ◇   ◇
 西南学院大学アメリカンフットボール部の監督をしております桑原直樹と申します。突然メールを送らせていただく非礼をお許しください。
 昨日、石井様の手になるコラムを拝読し、どうしても一言お礼を申し述べたくメールをさせていただきました。
 先日の試合では大変ぶざまな試合をお目にかけたにもかかわらず、大変温かいお言葉をいただき、面映い思いと同時に、あのような見方をしていただいたことは感謝の念に耐えません。
 実は今回、KGファイターズ様との試合を組んでいただく際に私の中で一つの葛藤がありました。毎年のように当部のOB会から「関西に試合に行って来い」との声が上がります。ですが、私自身は練習試合とはお互いのメリットがあってこそであるとの考えから、いつも躊躇していました。
 もちろん実力差もあり、本当に得るものがあるのか?費用対効果は?他に方法はないか?果たして相手の進歩に寄与できるのか?など、踏ん切りがつかない要素が山ほどあったためです。
 今回もOB会の後押しもあり、学生側から関西遠征をして一部校と試合をしたいとの要望が出されました。目的を問うと、自分たちの実力を試したいと同時に、プレーやボールに対する執着とか最後までやりきる姿勢を学びたいとのことでした。
 私は即座に「だめだ」と答えました。「最初から学ぶ姿勢で試合をするのは相手に対して失礼なことである。学ぶのではなく、試合を組んでもらう以上は相手チームの進歩に寄与しないといけない。相手以上に諦めない姿勢や最後までやりきる姿勢を見せること、また、試合に勝つことが最大のお礼である」と答え、チーム一丸となって勝ちに行く気持ちが固まったら、もう一度来るようにと伝えました。
 数日後、彼らから絶対に勝ちにこだわります、との打ち返しがあった時には、即座に貴チームへの申し込みを決めておりました。ただ、それは私にとっても非常にプレッシャーのかかる決断でした。不甲斐ない戦いをしてファイターズ様から「何しに来たんだ?もう来なくていいよ」と言われることが私へのプレッシャーでした。
 試合が6月25日に決定し、おっしゃる通り春のシーズンの最終目標に掲げることができました。それからというものは、関学JVには必ず勝つこと、少なくとも1軍を引っ張り出すことを目標に練習に臨むことができました。
 ただ、試合の数週間前に攻守の大黒柱を含む主力4名が怪我で欠場を余儀なくされ、私自身目の前が真っ暗になりました。
 それが残念でならないのですが、残されたメンバーで勝利を誓う姿を見て、今回の遠征は西南学院にとっては無駄にはならないと思いました。
 しかし、目標には遠く及ばず、44-0の大敗を喫してしまいました。そんなチームに対し、あのような温かい目で見ていただいたことについて、改めて御礼を申し上げます。心より感謝いたします。
 調子に乗って、もう一つ話をさせてください。実は6月25日は当部の創立者で(米軍を除き)九州に初めて楕円のボールを持ち込んだ末松文隆という、43歳で亡くなったOBの13回目の命日でした。学生達も知っており、試合の前日にはキャプテンを含む数人が私の知らない間に墓参りに訪れたと聞きました。初めて九州の空を飛んだボールは形見としてチームが保管しており、あの日もチームエリアのテーブルの上で後輩たちの戦いを見ていました。
 その日に石井様に褒めていただけるような試合ができたことは、チームとして、OB達にとっても非常に意味のあることでした。
 もちろん試合後のキャプテンの涙も石井様のおっしゃる通りです。
 勝負の厳しさ、今後の取り組み、見てくださる方は見てくださっていることを教えていただいたことに対し、KGファイターズ様、関係の皆様、石井様に再度感謝しつつ筆を置きます。

(14)競争はこれからだ

投稿日時:2011/07/07(木) 18:04

 先週日曜日は、大阪学院大学とのJV戦。これで3週連続、この春では5戦目のJV戦である。これだけ試合が続くと、書く内容までが似たようなことになるのではという懸念もあったが、今年のチームは層が厚い。これまで出番に恵まれなかった2、3年生や新人が次々に出場して、それはそれで見応えのある試合となった。
 層の厚さは、例えばRBの1年生を見れば分かる。6月末から7月初めまで続いた3戦の1試合目は鷺野(高等部)、2試合目は松岡弟(関大一)、3試合目は米田(箕面)を柱に据えて戦った。それぞれに高い能力を持った新人が実戦でどれだけのパフォーマンスを見せてくれるのか。それを見極めるために、交代要員として出場させるのではなく、その試合を任せる立場において登用したのである。それが見事に当たり、3人が3人とも期待に応える素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。
 上級生も指をくわえて見ているだけではなかった。けがから回復途上の林(4年)、後藤(3年)は3試合とも彼らをフォローして余りある活躍だったし、しばらく故障で大事をとっていた2年生の成長株、雑賀も最後の試合に登場。出番は少なかったが、鮮やかなタッチダウンを奪った。
 これに、今春の試合で急成長を見せた坪谷や望月、野々垣、それに大事をとって出場しなかった主将の松岡兄や尾嶋が戻ってくれば、末恐ろしいRB陣ができあがる。層が厚いというしかない。
 WRも同様である。1軍メンバーの和田や小山は出場しなかったが、3年生以下の面々が競うように出場。3年生の押谷、岸本、森本、2年生の梅本、松下らが成長した姿を見せつけた。活躍が期待されていた2年生のロモンドも、最後にTDパスをキャッチし、拍手を浴びた。これにこの日は出場機会のなかったゴールデンルーキー、大園や木戸が出てくれば、これまた大変な競争になる。
 QBのスターター争いも忙しい。春先は畑が不動のエースだったが、糟谷が故障から回復、順調に仕上がりつつある。この日先発してパスとランに非凡なところを見せた1年生の斉藤も、試合で経験を積むたびに成長している。
 オフェンスラインの競争も激しい。とりわけ2年生の大型ラインが成長のまっただ中にある。友国、木村はすでに一軍の試合でも先発を務めているが、故障から回復した長森や上沢、それに田淵、油谷という巨漢コンビが並べば、2年生だけでも試合ができそうだ。出場経験豊富な4年生の谷山、浜本、小林、3年生の和田もうかうかしていられないだろう。ここも層の厚さが際立っている。
 ディフェンスも多士済々。JV戦で目立った活躍をした選手の名前を挙げていくだけでも、紙数が尽きそうだ。1列目からいえば3年生の朝倉、岸。2年生の吉田はこの日、怪力を生かして2本のQBサックを決め、眠っていた素質が開花しつつある。同じ2年生中前もQBサックを決めた。1年生は岡部、梶原弟の高等部コンビが活躍、足立学園から来た国安、吉沢も、元気のよい動きを見せた。
 2列目、3列目も成長株がどっさり。LBの鳥内兄は試合のたびに動きがよくなっているし、2年生の藤田も目につく動きをしている。1年生の小野(高等部)も使えるめどが立った。DBでは野球部から転身してきた3年生保宗、2年生鳥内弟が競うようにインターセプトを量産している。1年生では西山(箕面自由)、村岡(足立学園)のスポーツ推薦コンビに、高等部で活躍した市川、国吉、林の動きが目立つ。中でも村岡は、出場機会がほとんどなかったのに、その少ない機会を生かして3戦ともインターセプトを記録。アスリートとしての能力の高さを見せつけた。
 こうした面々のほかにVの試合で実力を見せつけ、Jの試合には出ていないメンバーが何人もいるのだから、本当に層が厚くなったということだ。
 けれども、ファンの立場ではなく監督やコーチになったつもりでメンバー表を眺めていると、まだまだ人材が足りないという気にもなってくる。正直いって、現段階で「不動のスタメン」といえるのは、攻守蹴あわせてせいぜい11人。残りはすべてこれからの競争である。
 来週からの前期試験期間をはさみ、夏の合宿までにどれだけの準備ができるのか。合宿を越えて、秋のシーズンまでにどれほど成長できるのか。そして、シーズン中、試合経験を積んでいく中で、どれだけの上積みができるか。すべてはこれからの努力にかかかっている。ここで名前を挙げなかった選手を含め、JVの試合を戦ったメンバーがVの面々に追いつき追い越すことで、ファイターズの本当の力が見えてくるのである。暑さにめげず、存分に鍛えてほしい。
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