石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

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(13)春の決算、その2

投稿日時:2012/07/05(木) 06:40

 6月30日のJV戦、大阪学院大学との試合で、春のシーズンは終了。これから前期試験を挟んで、勝負の夏が巡ってくる。甲山での走り込み、鉢伏高原での長期合宿。存分に体を鍛え、技術を習得して、秋本番に備えなければならない。
 その前に、今年のチームは春のシーズンをどう過ごしたのか。個々の選手はどこまで技量を向上させたのか。どんな収穫があり、どんな課題が残ったのか。そういうことについて書いてみたい。
 まずは最終JV戦の収穫から。
 一番目立ったのは、DB鳥内弟。立ち上がり、ファイターズのキックをレシーブした大阪学院の攻撃を一人で封じた。第一プレーから立て続けに相手RBに強烈なタックルを見舞ってパントに追いやったかと思うと、さらには相手のスナップが乱れた隙をついてパンターに襲いかかりゴール前6ヤードで押さえつけた。
 この好機に、RB野々垣が6ヤードを走り切り、ファイターズは最初の攻撃でいきなりTD。ゲームの主導権を握った。
 鳥内はその後も、思い切りのよい動きで再三相手のボールキャリアにタックル。それは昨シーズン、立命戦で相手QBを一発で仕留めたDB香山を彷彿させるような当たりであり、迷いとか逡巡とかいう言葉とは無縁の動きだった。「オレが仕留める」という気持ちがそのまま表現された「魂のタックル」といってもよい。
 それが第4Q早々、29ヤードのインターセプトTDに結びついた。試合が13-3のまま膠着状態になっていたのを打破したというだけでなく、グラウンドでプレーしているすべての人間に「喝」を入れるプレーでもあった。迷いを吹っ切り、何かをつかんだ、一段上のステージに上がったということを、スタンドからでも確信させてくれるパフォーマンスだった。
 彼は昨年後半のビッグゲームでも、先発に名を連ね、2年生とは思えないほどの活躍をした。同時に、ライスボウルでは、日本1のレシーバーと自他共に許すオービックの木下選手に子どものようにあしらわれ、悔しい体験もしている。日本を代表するプレーヤーととの間に横たわる深い溝を見せつけられ、どうすればその溝を越せるかと迷い、苦しみ、悩みながら、この半年間、練習を続けてきたに違いない。本来なら、JV戦は出なくてもいいほどの経験があるのに、あえて出場したのには、それなりの思いと覚悟があったに違いない。その覚悟が一つ一つのプレー、タックルとして表現された。一番目立った選手として、とくに名を挙げるゆえんである。
 もう一人、何かをつかみかけている、と思わせるパフォーマンスを見せた選手がいる。LBの控え、キッキングのカバーチームの先発として出場した雑賀である。彼も鳥内と同様、高等部では野球部で活躍し、大学に入ってからアメフットに転向した選手である。チームでも1、2を争うスピードを持ちながら、タックルするのが苦手で、Vの試合ではなかなか出場機会がなかった。
 けれども、キッキングチームの練習などを見ていると、いつも誰よりも早く相手パンターの近くに到達、あわやパントブロックか、と思えるようなパフォーマンスを何度も見せていた。何かきっかけをつかむと、ファイターズの守りには欠かせない「スピードスターになる」という予感がいつもしていた。
 ようやくこの日、春のJVの最終戦になって、その予感が形になって見え始めた。LBでも、パントカバーでも、相手選手にタックルする場面が何度か見えたのである。あれだけのスピードスターがタックルすることを覚えたら、えげつないプレーヤーになるのに、という期待が実現しそうな動きが見え始めたのである。これも収穫だった。
 二人だけではない。この日、登場した1年生にも、才能を感じさせるパフォーマンスを見せてくれた選手が何人かいる。LBとロングスナッパーとして登場した作道、先輩に見劣りしない動きを見せたOL鈴木、落ち着いたプレーをしていたDL岡村、長いパスを1本、確実にキャッチしたWR西山らである。U19の世界大会に出場しているDL橋本、WR田中、木下を含め、この夏にどれほど鍛えることができるか。楽しみでならない。
 多分、いま名前を挙げた1年生のうち、何人かは秋のリーグ戦でも出場機会をつかみ、期待に応える働きをしてくれるのではないか。この日のJV戦で活躍した2、3年生を含め、彼らの成長を首を長くして待つことにしよう。
 付記
 最終のJV戦を含め、この数試合を見て、早急に取り組まなければならない課題がいくつか見えている。それについても書きたいところだが、気が重い。書き始めると個々の選手の批判になりかねないし、チームの運営に口出しするような結果になるかもしれない。しばらくは、一人で勝手に悩んでいるしかないだろう。

(12)大ブレークの予感

投稿日時:2012/06/27(水) 08:36

 先週末のJV戦は、追手門大学との対戦。期待の新戦力が大挙して出場し、わくわくするようなプレーを見せてくれた。試合経過を追いながら、順を追って紹介すればよいのだが、それでは焦点がぼやけてしまう。今回はあえて、2年生の新戦力に絞って紹介させていただく。
 先発に名を連ねた2年生は、攻撃ではラインの武内、TE松島、WR松岡、QB斎藤、RB米田。守備がラインの岡部、梶原弟、LB西山、森岡、DB村岡、国吉、林。これに主な交代要員として、WR樋之本、片岡、RB吉澤、DL国安、北本、DB吉原らがフィールドを駆け巡った。
 中でも目についたのは、身長が186、7センチもある樋之本、松島、片岡の巨漢レシーバー陣。記録を見ると、片岡が4回98ヤード、松島が4回55ヤード、樋之本が3回64ヤードを獲得。陣地を進める原動力になった。それぞれが相手守備陣より一回り背が高く、QBが安心してパスを投げられる。松島はブロック力に優れ、樋之本はキャッチがうまい。片岡は高校時代、バスケットボールをしていたということで、パスを受けてからの身のこなしが素早く、確実におまけのヤードを稼げる。
 こうした特徴を持った巨漢が代わる代わるにパスを受け、相手守備陣を崩していくのだから、見ている方はわくわくする。
 パスが通ると、必然的にラン攻撃も進む。前半は斎藤、後半は松岡がQBを務めたが、特段、難しい攻撃を組み立てなくても、ランとパス、そしてQBキープという単純な組み合わせだけで都合540ヤードを稼いだ。
 3本のTDを決めたRB米田、QB、WRというよりランナーとして活躍した松岡、それに1年生とは思えないほど「人に強い」ラッシュを見せたRB三好の活躍も特筆される。それぞれに持ち味は異なるが、潜在能力の高さを感じさせる活躍だった。
 もう一人。彼らの派手な活躍の陰に隠れているが、忘れてならないのがFB吉澤。昨年、FBとして強烈なタックルをほしいままにし、相手守備陣を悩ませた兵田君とそっくりの体型で、当たりの強さも兵田君ばり。加えてボールを扱うセンスもよく、ここ一番という場面で頼りになるプレーヤーになりそうな予感を抱かせてくれた。
 守備陣も多士済々。ラインの岡部と梶原弟は今春、Vのメンバーとして経験を積んだことが自信になったのだろう。ラインとは思えないほど素早い動きと強い当たりで、相手のオフェンスを切り裂いた。
 LBの要として守備陣をリードした西山はボールキャリアへの寄りが速く、笛が鳴ったときには大抵、キャリアに絡む形を作っていた。高校時代、アメフットは未経験というLB森岡も動きがスムーズになり、いつかその身体能力の高さを生かして大化けしそうな予感を与えてくれた。
 DBもまた人材が多い。国吉と村岡は、ともに動きが素早く、鮮やかなインターセプトを決めた。守備陣の最後の砦としての役割を果たしながら、積極的にキャリアに当たる決断もできる。昨年のDBを引っ張ってくれた香山君、重田君の穴を埋めるのは、この二人かな、という予感すら感じるほどだった。
 このように、目についた2年生に限って名前を挙げていくだけでも、今年は多士済々。新チームになってからずっと、目先の勝敗、試合にこだわらず、ひたすら体を鍛え、試合のできる体づくりに徹してきたチームの方針が実り始めているのだろう。春季はひたすら若手に経験を積ませ、試合の中で成長を促すという試みが、JV戦とはいえ、形に表れてきたのだろう。
 これだけの能力を持った選手たちが春学期の試験を終えて走り込み、夏合宿で鍛えていけば、秋の試合でブレークするのは必至である。その日が来るのが楽しみでならない。今からわくわくする。

付記
 もちろん、2年生以外にも成長途上にあるメンバーは大勢いる。1年生にも有望なメンバーが並んでいる。その辺の話は、次回、春の最終戦となる大阪学院大学との試合でチェックを入れたい。
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