石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
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(6)わくわくJV戦
投稿日時:2023/07/02(日) 21:30
この3週間、週末ごとに上ヶ原の第3フィールドで、ファイターズの試合があった。交流試合と銘打っているけれども、ファイターズにとってはJV戦。普段、試合に出る機会の少ないメンバーに実戦経験を積ませるための貴重な機会である。
1週目の対戦相手は中京大学。選手層は薄いが、関西の1部リーグでも活躍できそうなメンバーが好守ともにそろっている。逆に、ファイターズにとっては、好守共にキラリと光る才能を秘めた下級生が何人もいる。けがやポジションの都合で、実戦経験を積む機会に恵まれないまま3年生、4年生になった選手も少なくない。そういったメンバーがそれぞれどんな活躍をしてくれるか。手元のメンバー表にある名前と背番号を頼りに、グラウンドの戦いに目をこらす。
ファイターズの攻撃陣で最初に目に付いたのがRBの大槻。相手ゴール前13ヤード付近から3回連続でボールを託され、ダウンを更新。ゴール前までの1ヤードが残ったが、次のプレーも大槻に託され、見事TDに持ち込んだ。
大槻って誰?、そんなRBいたのか、という周囲の人たちの声を聞きながら、当日のメンバー表を見て「彼って、ひょっとしてLBをやってた子ちゃうん? 福知山共栄で野球部だった子」と思いあたり、彼がファイターズを志望した際に一度だけ会って話したことの記憶のある選手だと判明した。
彼の動きを注目していると、彼はその後も短いヤードを確保したり、相手ゴール前に迫ったりした場面にはことごとく登場。そのたびに相手を跳ね飛ばす、文字通りのパワーランで陣地を進め、終わってみれば3本のTDをもぎ取っていた。
試合終了後に、顔を合わせた香山コーチに聞くと、「面白かったでしょう。うちのRBにはいないタイプですから。まだ、RBに転向して1週間ほど。これから、RBの走り方を覚えてくれると、楽しみな存在です」と、ニコニコしながら説明してくれる。その顔を見ていると、こちらまでわくわくしてきた。
急造RB大槻は、次の桃山大戦でもファンの関心事。ファターズ最初の攻撃シリーズから、短い距離を確実に進めたい場面には必ず登場。そのたびにパワフルなランで陣地を進めていく。スタンドのファンの歓声も大きくなる。
攻撃陣だけではない。この試合では守備でも僕にはなじみのないメンバーの活躍が目立った。DBの加藤、酒井は共に東京から志願してファイターズの門を叩いた2年生。ともに意識してプレーを見るのは初めてだったが、それぞれが注意深い位置取りで備え、相手の動きが見えた瞬間に素早く反応し、容易にプレーを通させない。3戦目の日体大戦で、相手パスに素早く反応してパスをカット、浮いたボールをそのまま確保してインターセプトに成功した新井イケンナを含め、東京からファイターズを志願してくれた面々が、ようやくチームになじんくれたようで、これまた嬉しいニュースである。
嬉しいニュースといえば、JV戦の2試合で鮮やかなTDパスをキャッチしたWR川崎の成長も心強い。1年生の時から注目されている長身のレシーバーだが、けがが多く、なかなか真価が発揮出来なかったが、この3試合では要所要所でパスをキャッチ。パスの捕り方もうまくなっており、秋シーズンに期待の持てる活躍ぶりだった。
秋シーズンへの期待といえば、日体大戦で先発したQB林のプレーも見応えがあった。これまでは、素早い身のこなしで、瞬時にランナーとしての威力を見せてくれる選手だと理解していたが、先発した中京大戦では、パスQBとしても成長していることを見せつけてくれた。同じポジションにはパスを得意とする鎌田や星野がいるから、なかなか出番はないかもしれないが、あの俊敏な走りに加えてパスプレーまで警戒しなければならないとなると、相手守備陣にとって厄介な存在になるに違いない。数年前、左利きの走れるQBとして存在感があった光藤君のようなプレーヤーになってくれるのではないかと、一人、胸の内でつぶやいていた。
見所の多かったJV戦3試合。好守のラインを含め、ここで名前を挙げきれなかった選手を含め、今後の成長に期待したい。前期試験が終わり、夏休みになれば、夏季の厳しいトレーニングが待っている。JV戦には出場しなかったレギュラー陣はもちろん、まだ大学の練習に耐えるための基礎的なトレーニングに打ち込んでいる新入生を含め、体力を養い、向上心を持った取り組みを続けて、秋にはさらに1段アップした勇姿を見せてもらいたい。
以上がスタンドから眺めた「交流戦という名のJV3試合」の感想である。今季もファイターズには、大いに期待が持てる。
1週目の対戦相手は中京大学。選手層は薄いが、関西の1部リーグでも活躍できそうなメンバーが好守ともにそろっている。逆に、ファイターズにとっては、好守共にキラリと光る才能を秘めた下級生が何人もいる。けがやポジションの都合で、実戦経験を積む機会に恵まれないまま3年生、4年生になった選手も少なくない。そういったメンバーがそれぞれどんな活躍をしてくれるか。手元のメンバー表にある名前と背番号を頼りに、グラウンドの戦いに目をこらす。
ファイターズの攻撃陣で最初に目に付いたのがRBの大槻。相手ゴール前13ヤード付近から3回連続でボールを託され、ダウンを更新。ゴール前までの1ヤードが残ったが、次のプレーも大槻に託され、見事TDに持ち込んだ。
大槻って誰?、そんなRBいたのか、という周囲の人たちの声を聞きながら、当日のメンバー表を見て「彼って、ひょっとしてLBをやってた子ちゃうん? 福知山共栄で野球部だった子」と思いあたり、彼がファイターズを志望した際に一度だけ会って話したことの記憶のある選手だと判明した。
彼の動きを注目していると、彼はその後も短いヤードを確保したり、相手ゴール前に迫ったりした場面にはことごとく登場。そのたびに相手を跳ね飛ばす、文字通りのパワーランで陣地を進め、終わってみれば3本のTDをもぎ取っていた。
試合終了後に、顔を合わせた香山コーチに聞くと、「面白かったでしょう。うちのRBにはいないタイプですから。まだ、RBに転向して1週間ほど。これから、RBの走り方を覚えてくれると、楽しみな存在です」と、ニコニコしながら説明してくれる。その顔を見ていると、こちらまでわくわくしてきた。
急造RB大槻は、次の桃山大戦でもファンの関心事。ファターズ最初の攻撃シリーズから、短い距離を確実に進めたい場面には必ず登場。そのたびにパワフルなランで陣地を進めていく。スタンドのファンの歓声も大きくなる。
攻撃陣だけではない。この試合では守備でも僕にはなじみのないメンバーの活躍が目立った。DBの加藤、酒井は共に東京から志願してファイターズの門を叩いた2年生。ともに意識してプレーを見るのは初めてだったが、それぞれが注意深い位置取りで備え、相手の動きが見えた瞬間に素早く反応し、容易にプレーを通させない。3戦目の日体大戦で、相手パスに素早く反応してパスをカット、浮いたボールをそのまま確保してインターセプトに成功した新井イケンナを含め、東京からファイターズを志願してくれた面々が、ようやくチームになじんくれたようで、これまた嬉しいニュースである。
嬉しいニュースといえば、JV戦の2試合で鮮やかなTDパスをキャッチしたWR川崎の成長も心強い。1年生の時から注目されている長身のレシーバーだが、けがが多く、なかなか真価が発揮出来なかったが、この3試合では要所要所でパスをキャッチ。パスの捕り方もうまくなっており、秋シーズンに期待の持てる活躍ぶりだった。
秋シーズンへの期待といえば、日体大戦で先発したQB林のプレーも見応えがあった。これまでは、素早い身のこなしで、瞬時にランナーとしての威力を見せてくれる選手だと理解していたが、先発した中京大戦では、パスQBとしても成長していることを見せつけてくれた。同じポジションにはパスを得意とする鎌田や星野がいるから、なかなか出番はないかもしれないが、あの俊敏な走りに加えてパスプレーまで警戒しなければならないとなると、相手守備陣にとって厄介な存在になるに違いない。数年前、左利きの走れるQBとして存在感があった光藤君のようなプレーヤーになってくれるのではないかと、一人、胸の内でつぶやいていた。
見所の多かったJV戦3試合。好守のラインを含め、ここで名前を挙げきれなかった選手を含め、今後の成長に期待したい。前期試験が終わり、夏休みになれば、夏季の厳しいトレーニングが待っている。JV戦には出場しなかったレギュラー陣はもちろん、まだ大学の練習に耐えるための基礎的なトレーニングに打ち込んでいる新入生を含め、体力を養い、向上心を持った取り組みを続けて、秋にはさらに1段アップした勇姿を見せてもらいたい。
以上がスタンドから眺めた「交流戦という名のJV3試合」の感想である。今季もファイターズには、大いに期待が持てる。
(5)爽やかな試合
投稿日時:2023/06/12(月) 23:08
雨上がりの日曜日。11日の王子スタジアムは厚い雲に覆われていたが、目の前で展開される試合は爽やかそのもの。両軍メンバーのメリハリの効いた動きが心地よく、久々にフットボールの魅力を堪能させてもらった。
迎える相手は立教大学。過去の記録を見ると、ファターズとは戦後間もなくから互いに勝ったり負けたりの好勝負を繰り広げてきたライバル校である。僕がフットボールに興味を持ったその昔、今は亡き米田先生からファイターズの歴史や草創期のエピソードの中に登場したチームだが、目の前で両校の対戦を見るのは初めてだ。
試合前の練習を眺めながら、場内のFM放送を担当されている小野ディレクターから立教大の話を聞き、相手QBらの動きを見ているうちに「今日はなんだか、爽やかな好勝負になりそう」との予感がわいてきた。
ファイターズのキック、立教のレシーブで試合開始。試合前の練習で予想した通り、相手QBの動きがよく、レシーバーとの呼吸も合っている。ランとパスを織り交ぜて立て続けにダウンを更新する。
けれども、ファイターズ守備陣も負けてはいない。DL浅浦の力強い動きとLB永井の鋭いタックルで、相手の勢いを食い止める。
好守交代。今度はファイターズがテンポのよい攻撃を展開する。起点になるのはQB星野。今季、力強さを増した伊丹や澤井らのRB陣を走らせ、合間に1年生の小段や4年生の鈴木らWR陣へ短いパスを投じる。そのテンポがよいから、反応の早い相手守備陣も対応が難しい。
あっという間に第2Q。RB伊丹や澤井らが次々と走り、仕上げはK大西。30ヤードのFGをスパッと決めて先制する。
それでも相手はくじけない。攻めてはQBが鋭いパスを投じ、守ってはDB陣がパスを奪い取る。ファイターズの守備陣もまた、少々攻め込まれても動じない。DL浅浦が素早い動きで相手キャリアを食い止め、漏れたところはLB海崎や永井が確実に仕留める。
双方ともに守備陣が健闘し、互いに相手の長所を消し合って前半終了。
後半になっても、双方共に果敢なプレーが続く。互いに相手の長所を潰し合い、双方共になかなか得点機会をつかめない。
膠着した場面を打ち破ったのはQB星野の思い切りの良いラッシュ。ハーフライン付近から一気に20ヤードを走って陣地を挽回。続けて今度はWR鈴木へ29ヤードのパス。それが見事に決まって待望のTD。投げた方の思い切りが良かったし、キャッチした方の技術も素晴らしかった。日頃、上ヶ原のグラウンドで互いに会話を交わし、技術的なことも含めて意思疎通を重ねているからこそ、ここぞという場面で「あうんの呼吸TD」を決めることが出来たのだろう。
似たような場面は、第4Qの半ばにも訪れる。DB山村のインターセプトでめぐってきたファイターズの攻撃。今度は星野が相手陣45ヤード付近からWR小段に5ヤードのパスを投じて陣地を進める。続くプレーも標的は小段。相手ゴールまでは40ヤードもあったが、ここで投じた星野の長いパスを小段がキャッチ。決定的な2本目のTDに仕上げた。
これを「あうんの呼吸」というのだろう。星野と鈴木との関係にもいえることだが、普段の練習時からプレーごとに会話を重ね、互いに求め合い、気持ちを交わし合ってきたからこそ、本番でも絶妙のパスが投じられ、それを確実にキャッチできる。投げる方は2年生。受ける方は4年生と1年生。学年の違いを感じさせない双方の濃密な関係が生み出したTDといってもいい。
それは守備陣にもいえる。この日の試合ではDLのメンバーが相手に襲いかかり、漏れてきたランナーはLBとDBが仕留める、という場面が何度も見られた。その結果としての零封である。素早い動きが持ち味の相手QBやRBに、あわや、という場面を何度も作られながら、相手を無得点に封じることが出来たのも、1列目、2列目、3列目の連携がうまく機能し続けたからだろう。
アメフトは、攻守ともグラウンドに出ている11人全員が、それぞれ助け合い、励まし合って戦うスポーツだということが改めて確認できた。空は曇っても心は快晴。爽快な気持ちで帰路についた。
迎える相手は立教大学。過去の記録を見ると、ファターズとは戦後間もなくから互いに勝ったり負けたりの好勝負を繰り広げてきたライバル校である。僕がフットボールに興味を持ったその昔、今は亡き米田先生からファイターズの歴史や草創期のエピソードの中に登場したチームだが、目の前で両校の対戦を見るのは初めてだ。
試合前の練習を眺めながら、場内のFM放送を担当されている小野ディレクターから立教大の話を聞き、相手QBらの動きを見ているうちに「今日はなんだか、爽やかな好勝負になりそう」との予感がわいてきた。
ファイターズのキック、立教のレシーブで試合開始。試合前の練習で予想した通り、相手QBの動きがよく、レシーバーとの呼吸も合っている。ランとパスを織り交ぜて立て続けにダウンを更新する。
けれども、ファイターズ守備陣も負けてはいない。DL浅浦の力強い動きとLB永井の鋭いタックルで、相手の勢いを食い止める。
好守交代。今度はファイターズがテンポのよい攻撃を展開する。起点になるのはQB星野。今季、力強さを増した伊丹や澤井らのRB陣を走らせ、合間に1年生の小段や4年生の鈴木らWR陣へ短いパスを投じる。そのテンポがよいから、反応の早い相手守備陣も対応が難しい。
あっという間に第2Q。RB伊丹や澤井らが次々と走り、仕上げはK大西。30ヤードのFGをスパッと決めて先制する。
それでも相手はくじけない。攻めてはQBが鋭いパスを投じ、守ってはDB陣がパスを奪い取る。ファイターズの守備陣もまた、少々攻め込まれても動じない。DL浅浦が素早い動きで相手キャリアを食い止め、漏れたところはLB海崎や永井が確実に仕留める。
双方ともに守備陣が健闘し、互いに相手の長所を消し合って前半終了。
後半になっても、双方共に果敢なプレーが続く。互いに相手の長所を潰し合い、双方共になかなか得点機会をつかめない。
膠着した場面を打ち破ったのはQB星野の思い切りの良いラッシュ。ハーフライン付近から一気に20ヤードを走って陣地を挽回。続けて今度はWR鈴木へ29ヤードのパス。それが見事に決まって待望のTD。投げた方の思い切りが良かったし、キャッチした方の技術も素晴らしかった。日頃、上ヶ原のグラウンドで互いに会話を交わし、技術的なことも含めて意思疎通を重ねているからこそ、ここぞという場面で「あうんの呼吸TD」を決めることが出来たのだろう。
似たような場面は、第4Qの半ばにも訪れる。DB山村のインターセプトでめぐってきたファイターズの攻撃。今度は星野が相手陣45ヤード付近からWR小段に5ヤードのパスを投じて陣地を進める。続くプレーも標的は小段。相手ゴールまでは40ヤードもあったが、ここで投じた星野の長いパスを小段がキャッチ。決定的な2本目のTDに仕上げた。
これを「あうんの呼吸」というのだろう。星野と鈴木との関係にもいえることだが、普段の練習時からプレーごとに会話を重ね、互いに求め合い、気持ちを交わし合ってきたからこそ、本番でも絶妙のパスが投じられ、それを確実にキャッチできる。投げる方は2年生。受ける方は4年生と1年生。学年の違いを感じさせない双方の濃密な関係が生み出したTDといってもいい。
それは守備陣にもいえる。この日の試合ではDLのメンバーが相手に襲いかかり、漏れてきたランナーはLBとDBが仕留める、という場面が何度も見られた。その結果としての零封である。素早い動きが持ち味の相手QBやRBに、あわや、という場面を何度も作られながら、相手を無得点に封じることが出来たのも、1列目、2列目、3列目の連携がうまく機能し続けたからだろう。
アメフトは、攻守ともグラウンドに出ている11人全員が、それぞれ助け合い、励まし合って戦うスポーツだということが改めて確認できた。空は曇っても心は快晴。爽快な気持ちで帰路についた。
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