石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
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(3)知らないうちに有名人
投稿日時:2014/04/18(金) 18:05
今日、学生会館にある東京庵に昼飯を食べに行った。だし巻き定食+冷や奴-小飯。代金650円を支払おうとしたら、レジを守るお姉さんから「いつもコラム読ませていただいてます。ファイターズの……」と声を掛けられた。
「イヤイヤどうも……ありがとうございます」。どぎまぎしながらお礼を述べたが、最近、大学周辺でこんなことがよくある。試合会場で学生部の職員さんから「コラムの大ファンです」と言われ、ツーショットに収まったことがあるし、保健館で担当の看護師さんから「いつも愛読しています」と言われて驚いたこともある。
大学の正門前にあるスパゲッティー屋のオーナーシェフやチョコレート専門店の経営者、それに仁川駅前の西村接骨院の院長らとも、コラムが縁で挨拶を交わすようになった。そしてついに、今季の授業には「あのコラムを書かれている先生に教えてもらいたいと思って」という学生まで現れた。
えらいこっちゃ。かねがね「文章を書くことは、自分の恥をさらすこと」と、自分に言い聞かせているが、それにしてもなあ。コラムを読んでいただけるのはうれしいけど、そしてちょっぴり誇らしいことではありますが、ここまで世間が狭くなると……。
もう本屋さんで立ち読みをすることも出来ないし、もちろん若い女の子と歩くなんて、とてもとても。有名人の不自由さがよく分かる、というほどのことはないか。
まあ、これまで通りぼちぼちやりますわ。せっせとグラウンドに足を運び、練習を見て選手の動向をチェックし、試合の観戦記を書いていきます。
さて、あす19日は待望の今季初戦。慶応との戦いである。見所はひとつ。どんな選手が今季の新戦力として活躍してくれるか、である。
正直に言って、これは先週の紅白戦を見ていた感想でもあるが、春先の練習を見てきた限りでは、昨年の立命戦から甲子園ボウル、ライスボウルへと続く過酷な試合を戦った選手と、それ以外のメンバーには、明らかに違いがある。これは4年間と限られている大学の課外活動の宿命でもあるが、いつの年でも、卒業生の抜けた穴は大きい。ことしは攻守ともラインの多くが卒業しただけに、余計にそのことを感じる。
加えて昨年は、甲子園ボウルやライスボウルで多くの主力選手が傷ついた。その面々の多くがまだ調整途上にあるから、シーズン当初は満足のいくメンバーが組めない可能性がある。それは半面、新しい戦力が続々と飛び出してくる可能性があると言うことだが、そうは楽観できない。昨年までスカウトチームの仕事に徹して、ほとんど出場機会のなかった選手が、学年がひとつ上がったからといって、昨年の先発選手と同様の活躍が出来るほどこの世界は甘くない。
残念ながら、先日の紅白戦をみても活躍が目立ったのは、昨年も試合に出ていたメンバーばかり。なかでただ一人、2年生QBの伊豆が物怖じしない試合運びで可能性を感じさせてくれたが、肝心のパスを受ける方が今一つ。まだまだ練習が必要なことを見せつけただけに終わっている。
だからこそ、新しい選手の台頭が待たれるのである。初戦の慶応大戦では、その一点に絞って観戦したい。幸いなことに楽しみな選手はいっぱいいる。攻撃のラインは全員が要注目だし、RBにも生きのよい走りをする2年生が二人いる。大柄な方が橋本、小柄な方が松本だ。体形では二人の中間に位置する伊豆も、経験豊富なレシーバーが出場してくれば、その真価を発揮してくれるだろう。
ディフェンスではラインの松本、浜の巨漢コンビが要注目。スピードのある大野、パング、岩田の2年生トリオの動きからも目が離せない。2列目にはまとめ役の3年生作道のほか、とてつもない選手になりそうな予感のする山岸、西田という2年生コンビがいる。そしてDBには、梅本弟や小池、伊藤ら動きの素早い面々が控えている。
これらの新しい顔が昨年までの1本目のメンバーとそん色のない動きをしてくれるかどうか。
僕の目には、まだ昨年の甲子園や東京ドームの試合の残像が残っている。その残像を吹っ飛ばしてくれる新メンバーの活躍を期待したい。試合は午後2時キックオフ。さあ、何をおいても王子スタジアムに集合しようぜ。
「イヤイヤどうも……ありがとうございます」。どぎまぎしながらお礼を述べたが、最近、大学周辺でこんなことがよくある。試合会場で学生部の職員さんから「コラムの大ファンです」と言われ、ツーショットに収まったことがあるし、保健館で担当の看護師さんから「いつも愛読しています」と言われて驚いたこともある。
大学の正門前にあるスパゲッティー屋のオーナーシェフやチョコレート専門店の経営者、それに仁川駅前の西村接骨院の院長らとも、コラムが縁で挨拶を交わすようになった。そしてついに、今季の授業には「あのコラムを書かれている先生に教えてもらいたいと思って」という学生まで現れた。
えらいこっちゃ。かねがね「文章を書くことは、自分の恥をさらすこと」と、自分に言い聞かせているが、それにしてもなあ。コラムを読んでいただけるのはうれしいけど、そしてちょっぴり誇らしいことではありますが、ここまで世間が狭くなると……。
もう本屋さんで立ち読みをすることも出来ないし、もちろん若い女の子と歩くなんて、とてもとても。有名人の不自由さがよく分かる、というほどのことはないか。
まあ、これまで通りぼちぼちやりますわ。せっせとグラウンドに足を運び、練習を見て選手の動向をチェックし、試合の観戦記を書いていきます。
さて、あす19日は待望の今季初戦。慶応との戦いである。見所はひとつ。どんな選手が今季の新戦力として活躍してくれるか、である。
正直に言って、これは先週の紅白戦を見ていた感想でもあるが、春先の練習を見てきた限りでは、昨年の立命戦から甲子園ボウル、ライスボウルへと続く過酷な試合を戦った選手と、それ以外のメンバーには、明らかに違いがある。これは4年間と限られている大学の課外活動の宿命でもあるが、いつの年でも、卒業生の抜けた穴は大きい。ことしは攻守ともラインの多くが卒業しただけに、余計にそのことを感じる。
加えて昨年は、甲子園ボウルやライスボウルで多くの主力選手が傷ついた。その面々の多くがまだ調整途上にあるから、シーズン当初は満足のいくメンバーが組めない可能性がある。それは半面、新しい戦力が続々と飛び出してくる可能性があると言うことだが、そうは楽観できない。昨年までスカウトチームの仕事に徹して、ほとんど出場機会のなかった選手が、学年がひとつ上がったからといって、昨年の先発選手と同様の活躍が出来るほどこの世界は甘くない。
残念ながら、先日の紅白戦をみても活躍が目立ったのは、昨年も試合に出ていたメンバーばかり。なかでただ一人、2年生QBの伊豆が物怖じしない試合運びで可能性を感じさせてくれたが、肝心のパスを受ける方が今一つ。まだまだ練習が必要なことを見せつけただけに終わっている。
だからこそ、新しい選手の台頭が待たれるのである。初戦の慶応大戦では、その一点に絞って観戦したい。幸いなことに楽しみな選手はいっぱいいる。攻撃のラインは全員が要注目だし、RBにも生きのよい走りをする2年生が二人いる。大柄な方が橋本、小柄な方が松本だ。体形では二人の中間に位置する伊豆も、経験豊富なレシーバーが出場してくれば、その真価を発揮してくれるだろう。
ディフェンスではラインの松本、浜の巨漢コンビが要注目。スピードのある大野、パング、岩田の2年生トリオの動きからも目が離せない。2列目にはまとめ役の3年生作道のほか、とてつもない選手になりそうな予感のする山岸、西田という2年生コンビがいる。そしてDBには、梅本弟や小池、伊藤ら動きの素早い面々が控えている。
これらの新しい顔が昨年までの1本目のメンバーとそん色のない動きをしてくれるかどうか。
僕の目には、まだ昨年の甲子園や東京ドームの試合の残像が残っている。その残像を吹っ飛ばしてくれる新メンバーの活躍を期待したい。試合は午後2時キックオフ。さあ、何をおいても王子スタジアムに集合しようぜ。
(2)先輩たちの胸と背中
投稿日時:2014/04/12(土) 21:36
先週末は2日連続、上ヶ原のグラウンドが外部チームにも開かれた。
土曜日には、第1回世界大学選手権の代表に選抜されたチームとパナソニックの合同練習。日曜日にエレコムファイニーズとファイターズの合同練習があった。
とくに土曜日は、普段、僕たちがその素顔を目にする機会のない立命館や日大、関大など大学フットボール界を代表する選手と、毎シーズン、社会人トップの座を競っている選手たちの練習である。興味津々で眺めた。
代表チームは、今春、各大学を卒業したメンバーを中心に選抜されており、ファイターズからも昨年度の主将池永、副将池田、鳥内、友國君のほか、梅本君、上沢君、大森君、そして1昨年の主将梶原君と今度4年生になった弟の隆平君が選ばれている。他チームのことはうろ覚えだが、立命館から13人、関大と日大からも10人前後が選ばれていたと記憶している。
文字通り日本大学界のスターが勢揃いし、目の前でパナソニックを相手に実戦を想定した練習を展開してくれた。「敵情を知る」格好の機会である。ファイターズの諸君は行儀よくスタンドに陣取り、それぞれのポジションごとにライバルチームの選手たちの動きに目を見張らせていた。
僕もその片隅でレベルの高い選手たちの動きを目で追った。練習とは言いながら、目の前で展開されているのは実戦を想定したプレーである。受けて立つパナソニックチームも全日本代表クラスのメンバーを揃えている。ガチンコの当たりこそ抑えているが、それでも手抜きはない。主要な大学から選ばれた監督やコーチも目を光らせている。何より「本番」での先発を目指して、各選手とも真剣に取り組んでいる。
そういう練習が2時間近く行われた。キッカーをはじめいくつかのパートではアフター練習にも入念に取り組んでいた。
そこで、感想というか、いくつか思うことがあった。この場で書いても問題なさそうなことを二つ紹介する。
一つは、立命や日大の選手の個人的な能力の高さに目を見張ったこと。個別の名前は分かる選手もいれば分からない選手もいるのだが、立命と日大のヘルメットをかぶった選手の動きがやたらと目についた。とりわけ立命の守備陣の動きがすごかった。よくまあ、あんな能力の高い選手を揃えたチームに「負けない試合ができたことよ」というのが正直な感想だった。
そして、その「負けない試合」が実現できたのは、ファイターズに関係する全員が結束し、対策を練り、一瞬の怯みも隙も見せずに戦い抜いた結果だと改めて感じ入ったことである。
もう一つは昨年、5年生コーチとして、もっぱらチームの練習台を務めてくれた梶原元主将の動きの速さである。後輩を相手に練習台を勤めていた時と、選抜チームの一員として試合で活躍することを前提にしたこの日の動きは全く違った。プレーの機会はそんなに多くはなかったが、それでも何度もパナソニックのOL陣を抜き去り、相手QBをサックする場面があった。当日の「練習MVP」を選ぶとすれば、満場一致で選ばれるほどの素晴らしさだった。
練習後、梶原君に聞くと「ライバル校の選手たちの前で無様なプレーはできないし、パナソニックでは今季からプレーする。しっかり動けることを見せておかなければと思いました」ということだった。しかし、それは謙遜だろう。ファイターズを率いた主将として、ライバルチームの選手たちには絶対に負けられないという闘争心に火が付いたからに違いない。
その動きを見ながら、僕は「こういう化け物のような選手に鍛えられたから、昨年のチームは立命や日大と正面から戦えるチームに成長したのだ」とつくづく感じ入った。そして、5年生が本気でチームに関わり、自分を捨てて「仮想立命」「仮想日大」の練習台に入ってくれることのありがたさに感謝した。
今季も、希望の会社から内定を獲得し、早々に就職活動を終えた5年生がグラウンドに顔を見せ、後輩たちに胸を貸している。僕が顔を合わせただけでも、前主将の池永君をはじめ梅本君や上沢君、友國君の4人がいる。
それぞれ攻守の柱として、昨年のチームを引っ張ってきた面々である。彼らが連日のように練習台を務め、後輩たちに動きの速さ、当たりの強さを体感させている。踏み込みの強さ、姿勢、周囲を見る目配り……。ほんの100日前まで、日本1の座をかけたチームの先頭に立って戦ってきたメンバーばかりだから、2年生や3年生はもちろん4年生を相手にしても、プレーの格が違う。
甲子園ボウルを3連覇した喜びとライスボウルで3連敗した悔しさを身にしみて感じている彼らがこれから9カ月、5年生コーチとして練習台を務め、精神的なバックアップをしてくれる。うれしいことだ。後輩たちが大学選手権の日本代表選手として戦う先輩たちの胸を借り、背中を見て、そのすべてを吸収しながら成長してくれることを心から願っている。
土曜日には、第1回世界大学選手権の代表に選抜されたチームとパナソニックの合同練習。日曜日にエレコムファイニーズとファイターズの合同練習があった。
とくに土曜日は、普段、僕たちがその素顔を目にする機会のない立命館や日大、関大など大学フットボール界を代表する選手と、毎シーズン、社会人トップの座を競っている選手たちの練習である。興味津々で眺めた。
代表チームは、今春、各大学を卒業したメンバーを中心に選抜されており、ファイターズからも昨年度の主将池永、副将池田、鳥内、友國君のほか、梅本君、上沢君、大森君、そして1昨年の主将梶原君と今度4年生になった弟の隆平君が選ばれている。他チームのことはうろ覚えだが、立命館から13人、関大と日大からも10人前後が選ばれていたと記憶している。
文字通り日本大学界のスターが勢揃いし、目の前でパナソニックを相手に実戦を想定した練習を展開してくれた。「敵情を知る」格好の機会である。ファイターズの諸君は行儀よくスタンドに陣取り、それぞれのポジションごとにライバルチームの選手たちの動きに目を見張らせていた。
僕もその片隅でレベルの高い選手たちの動きを目で追った。練習とは言いながら、目の前で展開されているのは実戦を想定したプレーである。受けて立つパナソニックチームも全日本代表クラスのメンバーを揃えている。ガチンコの当たりこそ抑えているが、それでも手抜きはない。主要な大学から選ばれた監督やコーチも目を光らせている。何より「本番」での先発を目指して、各選手とも真剣に取り組んでいる。
そういう練習が2時間近く行われた。キッカーをはじめいくつかのパートではアフター練習にも入念に取り組んでいた。
そこで、感想というか、いくつか思うことがあった。この場で書いても問題なさそうなことを二つ紹介する。
一つは、立命や日大の選手の個人的な能力の高さに目を見張ったこと。個別の名前は分かる選手もいれば分からない選手もいるのだが、立命と日大のヘルメットをかぶった選手の動きがやたらと目についた。とりわけ立命の守備陣の動きがすごかった。よくまあ、あんな能力の高い選手を揃えたチームに「負けない試合ができたことよ」というのが正直な感想だった。
そして、その「負けない試合」が実現できたのは、ファイターズに関係する全員が結束し、対策を練り、一瞬の怯みも隙も見せずに戦い抜いた結果だと改めて感じ入ったことである。
もう一つは昨年、5年生コーチとして、もっぱらチームの練習台を務めてくれた梶原元主将の動きの速さである。後輩を相手に練習台を勤めていた時と、選抜チームの一員として試合で活躍することを前提にしたこの日の動きは全く違った。プレーの機会はそんなに多くはなかったが、それでも何度もパナソニックのOL陣を抜き去り、相手QBをサックする場面があった。当日の「練習MVP」を選ぶとすれば、満場一致で選ばれるほどの素晴らしさだった。
練習後、梶原君に聞くと「ライバル校の選手たちの前で無様なプレーはできないし、パナソニックでは今季からプレーする。しっかり動けることを見せておかなければと思いました」ということだった。しかし、それは謙遜だろう。ファイターズを率いた主将として、ライバルチームの選手たちには絶対に負けられないという闘争心に火が付いたからに違いない。
その動きを見ながら、僕は「こういう化け物のような選手に鍛えられたから、昨年のチームは立命や日大と正面から戦えるチームに成長したのだ」とつくづく感じ入った。そして、5年生が本気でチームに関わり、自分を捨てて「仮想立命」「仮想日大」の練習台に入ってくれることのありがたさに感謝した。
今季も、希望の会社から内定を獲得し、早々に就職活動を終えた5年生がグラウンドに顔を見せ、後輩たちに胸を貸している。僕が顔を合わせただけでも、前主将の池永君をはじめ梅本君や上沢君、友國君の4人がいる。
それぞれ攻守の柱として、昨年のチームを引っ張ってきた面々である。彼らが連日のように練習台を務め、後輩たちに動きの速さ、当たりの強さを体感させている。踏み込みの強さ、姿勢、周囲を見る目配り……。ほんの100日前まで、日本1の座をかけたチームの先頭に立って戦ってきたメンバーばかりだから、2年生や3年生はもちろん4年生を相手にしても、プレーの格が違う。
甲子園ボウルを3連覇した喜びとライスボウルで3連敗した悔しさを身にしみて感じている彼らがこれから9カ月、5年生コーチとして練習台を務め、精神的なバックアップをしてくれる。うれしいことだ。後輩たちが大学選手権の日本代表選手として戦う先輩たちの胸を借り、背中を見て、そのすべてを吸収しながら成長してくれることを心から願っている。
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