石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」 2017/6

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(10)収穫多いJV戦

投稿日時:2017/06/13(火) 08:40

 先週の木曜と金曜の夕方、いつも通りに第3フィールドに顔を出すと、普段の週とは全く違った光景に出合った。いつもならチームの練習が開始される1時間半も前からグラウンド中央でパスキャッチの練習をしているはずの3、4年生レシーバーやランニングバックの姿がないのだ。いや、メンバーはそこかしこにいるし、練習を見守って下さる武田建先生の姿もある。しかし、彼らはどこかゆったり構えたままで、表情も和やかだ。
 そうこうするうちに4時限の授業が終わった下級生が続々グラウンドに降り、入念な準備運動をすませて、やる気満々でパートごとの練習に取り組む。それを待ちかねたように、それまで手持ちぶさたにしていた上級生が間近で練習を見守り、1プレーごとに声を掛ける。褒めるべき点は褒め、注意すべき点は即座に注意する。
 そう、この週は普段、後方にいることが多いJVのメンバーが土曜日の北海道大学とのJV戦に備えて、練習の主役を張っていたのだ。
 JVメンバーは普段、1プレーごとにVのメンバーにチェックを入れらることはない。VのメンバーはVのメンバー同士で声を掛け合い、励まし合って練習。JVのメンバーはスカウトチームとしてそれを支えたり、自分たちに課せられた別メニューに取り組んだりしている。それが春のシーズンを締めくくる北海道大学との試合に備え、この週ばかりはどのパートもJVメンバーが主役となり、Vの上級生たちがそれを支援する役割に回っていたのである。
 その光景を眺めながら、ここまで上級生が下級生に丁寧に教えてくれるチームはそうそうないのではないか、こうした上下の垣根のない練習によってチームの総合力が高められ、歴史が受け継がれていくのだろうと、ある種の感慨にふけった。
 開けて土曜日。夕方の5時から始まった試合では、1、2年生を中心に、期待の新戦力が次々に登場した。先発メンバーを見れば、TEを含めてOLはLBから移ってきた木下を除くと全員が2年生。1年生RBの田窪(追手門)もスタメンに名を連ねている。ディフェンスでも、まだパート練習に加わって間もない1年生の春口(浪速)が先発、故障で今季はVの試合に出ていなかった期待の2年生DL今井も久々にフル出場した。
 交代メンバーに目をやると、RBは田窪とともに期待される鈴木(横浜南陵)、三宅(高等部)、鶴留(啓明学院)の3人が代わるがわる出場。1年生4人で約200ヤードを稼ぎ、TD6本を記録する活躍を見せた。後半に出場した2年生の斎藤も、久々にパワフルな走りを披露した。
 1年生のWRも多士済々。前川、高木(ともに高等部)、亀井(報徳)らがメンバー表に名を連ね、大村(啓明学院)はパントのリターナーとしても非凡な所を見せた。OLの羽土(浪速)、石川(足立学園)も出場していたが、残念ながらボールキャリアに目を奪われて、二人の動きはよく見ていない。
 一方、ディフェンスではDLの岡(高等部)、LB松永(箕面自由、彼は2年生OL、松永大誠君の弟である)、DBの中村、繁治(ともに高等部)、井上(浪速)がメンバー表に登録された。それぞれが高校時代から活躍してきた面々であり、期待されてチームに加わった選手である。終始、交代で出場し、派手な活躍を見せつけたRB4人組に比べると、地味な役回りだったが、それでも入学してまだ2カ月にしかならないこの時期に、上級生に混じって遜色のないプレーができたのだから、立派なものだ。
 鳥内監督に試合後、1年生RBの活躍に話題を振ると「田窪、鈴木、三宅は秋には出てきますよ。鶴留もパワーはある」とご機嫌だった。
 ところが、試合については「反則が多すぎる」と口調が一変。「4年生の責任や。普段から試合を想定して、厳しく注意してないから、こういうことが起きる」「こういうことをやってはいかん、ということを練習の時から意識し、4年生が注意せなあかんのに、それができていない」と続けた。
 この日の反則は12回100ヤード。その多くがスタートに関係する反則とホールディング。普段、試合に出ているメンバーならあり得ないことだが、あまり試合経験がない上級生と、チームに加わってまだ2カ月ほどの選手たちが呼吸を合わせるのに苦労した結果だろう。
 どんなにメンバーを揃えても、試合は思い通りには進行しない。不用意な反則も起きるし、思わぬ失敗も起きる。それを一つ一つつぶしていくための上級生のリーダーシップと下級生の努力。その大切さ、重要性をこの日の試合は教えてくれた。普段、試合に出る機会の少ないメンバーが主役になるJV戦は、その意味でも貴重な機会である。
 欠けた点を補い、長所を伸ばす。いうは易く行うは難しい問題だが、この日の試合は、長所とともに、欠けたところも存分に浮き彫りにしてくれた。初めてまみえる北海道大学が得点差が開いた(最終的には47-0)にも関わらず、最後まで闘志を失わず、懸命に戦ってくれたおかげだろう。
 秋のリーグ開幕まで2カ月半。途中に前期試験があり、その準備期間も含めると、グラウンドでの練習ができる日は限られている。だからこそ1日1時間が大切になる。常在戦場。上級生、下級生に関係なく、一人一人が体力を養い、考えを巡らせて、本番に備えてもらいたい。

(9)「完敗」と「最高」

投稿日時:2017/06/06(火) 08:41

 日曜日の「神戸ボウル」、パナソニックとの試合は24-10。スコアだけでなく内容的にも完敗だった。当日、会場で応援していたファイターズファンに聞けば、10人が10人ともそのように答えられるだろう。
 関学スポーツが伝えてくれる「試合後のコメント」を見ても、鳥内監督は「レベルに差があった。ライスボウルで勝負しょうと思うんやったら今のままではあかん」と発言されている。
 実際に戦った選手の言葉はさらに厳しい。井若主将は「よい点も悪い点もあったが、全体的にめちゃくちゃ悪い。1対1でも負けている。レベルが低いと感じた」、松本副将は「実力の足りなさを痛感した」、QBの光藤君は「相手のスピードについて行けない。想定以上の速さに対応できなかった」といっている。それぞれが本音であろう。
 けれども、僕はへそ曲がりである。試合は完敗だったと認めることはやぶさかではないが、それでもあえて「最高の試合だった」と主張したい。賛同は得られないだろうし、そんな甘ったれたことを言っているからダメなんだ、と叱られるかもしれない。けれども、たとえ負けゲームであったとしても、そこに光明を見つけるのが僕の役割だと思っているから、あえて自説を書かせていただく。ただの強がりといわれるかもしれないが、お読みいただければ幸いである。
 1、随所に素晴らしいプレーがあった。
 例えば、0-0で迎えた1Qの終盤、自陣21ヤード付近からの攻撃である。まずは光藤がWR松井に20ヤードのパスをヒット、次はRB山口が見事なカットで相手DBを抜き去り、25ヤード前進。次は光藤がランニングバックにボールを渡すと見せかけながら、そのままボールをキープして16ヤード前進。わずか3プレーで相手ゴール前20ヤードまで迫った。
 残念ながら、この場面は最後の詰めが甘くFGの3点にとどまったが、社会人選抜といってよいほどの強力なメンバーを揃えた相手を驚かせるに値する攻撃だった。その主役がそれぞれ3年生。まだ大学では実質2年、けがなどで戦列を離れていた期間を考慮すれば、それ以下の経験しかない。そんなメンバーが経験豊富なスター軍団を相手に一歩もひけをとらないプレーを続けたことに、僕は大きな手応えを感じた。
 2、オフェンスの下級生が踏ん張った。
 この日の先発に名を連ねたOLは左から井若、森田、光岡、松永、村田。4年生は井若、3年生は光岡、残る3人は2年生である。これまた大学でプレーしたのは実質1年かそれ未満という顔ぶれだったが、それが強力な相手ディフェンスに立ち向かった。もちろんずたずたに切り裂かれ、QBがサックを受ける場面が何度もあったが、逆に味方のRBのために走路を空ける場面もあった。3Qの終盤、自陣23ヤードからRB高松が77ヤードを独走してTDに持ち込んだのがその一つである。真ん中のレーンがきれいに開いていたから高松のスピードが生かされ、独走TDに結びついた。いくら相手が強くても、ラインがやるべきことを完遂すれば、道は開けることを実証した場面であり、下級生は大きな手応えを掴んだはずだ。
 3、レシーバー陣のブロックが素晴らしかった。
 例えば、上記、高松が独走TDを決めた時のWR松井のブロック。独走する高松に左から追いすがろうとする相手DBを追いかけ、走路をふさいでいたが、もう一人のDBが右から俊足を飛ばして追いかけて来るのに気付いた瞬間、右にコースを変え、即座に横からの強力なブロックで相手を仕留めた。そのスピード、判断力、そして強力なブロック。その場面をrtvの画面で再確認したが、何度見てもしびれる。昨年の立命館との試合でWR池永君がTDを挙げた時にも、似たような場面があったが、今度は競り合う相手が信じられないようなスピードを持った外国人DBだっただけに、余計に彼のポテンシャルの高さが光った。ファイターズ史上、最高のレシーバーになると監督が期待している通りの活躍であり、このプレーを見ただけで溜飲が下がる思いをしたのは、僕だけではあるまい。
 以上、3つの例を見ただけでも、このチームが可能性に満ちていることが理解してもらえるだろう。さらにいえば、この日は主力をけがで欠き、どちらかといえば交代メンバーで揃えたDL陣の健闘も素晴らしかった。最後は相手の個人的な能力に対抗しきれなかったが、彼らが着実に力を付ければ選手層が厚くなる。秋のシーズンが深まるにつれて、選手層の厚さが勝敗を分けることを考えれば、これもまたうれしい知らせである。
 問題は、試合の所々で垣間見たそうした素晴らしいプレーを、一つ一つの点で終わらせず、線にし、面にしていくことである。1対1でも勝ち、チームとしても勝つ。それをどのように実現していくか。チームの現在位置を明らかにし、これから進むべき道を明らかにしてもらえたと考えれば、「完敗」にも大きな意味がある。
 何度もいうが、ファイターズは発展途上にある学生チームである。完成形に近い社会人チームに悔しい敗戦を喫したとしても、そこに光明が見つかれば、それは負けではない。その一筋、二筋の光明を手掛かりに、今後、チームをどのように鍛えて行くか、個人個人の能力をどう高めていくか。勝負はそこにかかっている。めげている余裕ない。
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