石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」 2012/12

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(35)タフであること

投稿日時:2012/12/13(木) 15:12

 寒い。南国・紀州。黒潮の洗う田辺市でさえ、夜は凍えそうになるくらい寒い。夕食後の1時間、日課としている散歩に出るのも、フリースの手袋、毛糸の帽子、ファイターズのネックウオーマー、そしてダウンジャケットという重装備である。
 けれども、先週末の上ヶ原、第3フィールドの寒さに比べたら、まだまだ暖かい。それほど金曜、土曜のグラウンドは寒かった。同じ関西学院のキャンパスといいながら、中央芝生付近に比べると、体感温度は確実に3度は低い。学生会館の裏まで行けばマイナス1度、上ヶ原の八幡神社の角を曲がるとマイナス1度、グラウンドに出れば、甲山からの寒風が吹き付けてさらにマイナス1度。都合マイナス3度である。吹きさらしのベンチに腰かけて、練習を眺めていると、寒さが全身に襲いかかってくる。足はしびれて感覚がないし、ほっぺたは凍り付く。
 それでも、選手たちはいつも通り、平然と練習に取り組んでいる。レシーバーにいたっては、長袖にするとボールを扱う感覚が狂うからだろう。大半が半袖だ。太い腕をむき出しにしてボールをキャッチしている。
 小山君に「寒くないか」と声を掛ける。
 「寒いです。でも練習しているときは集中しているから大丈夫です」
 元気な答えが返ってくる。
 甲子園ボウルは目の前。寒いの、痛いのなんていってる場合じゃないのだろう。
 土曜日は、5年生コーチや留年生、社会人チームで活動している若手OBが何人も来て、練習台を務めてくれた。パナソニックの生田君、アサヒ飲料の平澤君らである。日本IBMで監督を務めている山田氏も顔を見せ、鳥内監督と熱心に話し込んでおられた。
 さすがに社会人のトップチームの主力選手たちである。練習台に入っても動きが違う。あっという間にラインを突破して、ボールキャリアに襲いかかる。QBも、普段と勝手が違うのか、パスを投げるタイミングがつかみにくそうに見えた。
 でも、これから戦う相手を想定すれば、こうした一線級の選手の動きは、すべてが参考になる。より素早い相手、より強力な相手にどう対応するか。プレーが崩れた時の対応までを含め、すべてが得難い練習になる。
 実際、練習でできていないことが試合でできるはずがない。今季、印象に残ったオフェンスのプレーはすべて、日ごろから練習を重ねてきた成果である。例えば、WR木戸君から梅本君へのロングパス、QB畑君からWR南本君、RB鷺野君へとパスが渡ったスペシャルプレーも、普段から何度も何度もタイミングを合わせ、磨きに磨いてきたプレーだった。
 デフェンスやキッキングカバーのパフォーマンスも同様だ。細かいところを何度も何度もチェックし、タイミングを合わせ、ここしかないというポイントを突いてファインプレーを生み出している。観客には偶然が味方したように見えるパントのブロックも、ファンブルボールのカバーも、もちろんインターセプトも、すべて緻密な計算と、1プレーごとに結果をチェックし、微妙な修正を繰り返す濃密な練習によってもたらされた果実である。
 そういう練習を営々と続けてきた1年間の成果が試されるのが、これからの試合である。京大、関大、立命館に勝って、一息入れている場合ではない。これからは1試合、1試合、肉体的、精神的に、どれだけタフな戦いができるかによって勝敗が決まる。現役OBたちがスカウトチームに入った練習が熱を帯びてくるのも当然である。寒いとか、痛いとかいってる場合ではない。
 タフといえば、先日読んだロバート・B・パーカーの小説「春嵐」に、こんな台詞があった。
 「喧嘩に勝つというのは、たんに喧嘩がうまいということ」「タフというのは、困難なものを正面から見据えて『これは困難だ。対処法を考えなければならない』といい、現実に対処すること」
 聖書にある「狭き門より入れ」という言葉にも通じる台詞である。
 タフになるチャンスは誰にでもある。しかし、実際にタフな人は少ない。困難な問題にぶつかったとき、それと向き合い、その壁を突破する対処法を考え、実行することから逃げてしまう人が大半だ。人は、そういう人間をチキンと呼び、弱虫という。
 ファイターズの諸君には全員、チキンではなく、タフな人間になってもらいたい。甲子園ボウルからライスボウルへと続く試合が、そのチャンスである。

(34)1年生の見本市

投稿日時:2012/12/04(火) 22:26

 2日、王子スタジアムで「全日本大学選手権西日本地区代表決定戦」が行われた。絶対に落とせない重要な試合であり、ファイターズにとっては、この試合にたどり着くまでが険しい道のりだったが、正直に言って、僕の興味は「どんな新戦力が登場するか」「先発メンバーが退いた後、交代メンバーがどれだけ活躍してくれるか」という点にあった。
 なんせ、ファイターズのメンバー表には、欠番になっているあの平郡君の5番を除いて、1番から99番までの番号と名前がびっしりと並んでいる。つまりこの日、出場可能な選手は98人。いくら大所帯のチームといえども、近年では記憶にないほど多くの選手が登録されていたのである。
 けがをして、今季はほとんど出場機会のなかった4年生、2番手、3番手の控えメンバーとして、これまたサイドラインから出場機会をアピールするのが主な役割だった3年生や2年生。そして、恵まれた才能を持ちながら、今季はもっぱら体力作りに明け暮れていた1年生。それぞれ固有の事情を抱えていた控えのメンバーが競うように出場してくれるというのだから、勝敗の行方よりも、誰がどんな場面で登場し、どんな役割を果たすのか、という方に興味が向かった。
 実際、勝敗としての興味は、第1Qまでだった。立ち上がり、WR大園の好リターンで敵陣39ヤードから始まったファイターズの最初の攻撃では、RB鷺野が左オフタックルを抜けると、そのまま加速して一気にTD。たった1プレーで先制点をもぎ取った。
 次の攻撃シリーズも、QB斎藤がTE金本、WR南本にポンポンとパスを決め、最後はK三輪が34ヤードのFG。続く攻撃シリーズも相手陣38ヤードの地点から、オプションピッチを受けた鷺野が再び38ヤードを駆け抜けてTD。さらに4度目のシリーズは大園の45ヤードパントリターンで相手ゴール前6ヤードからの攻撃。ここでも第1プレーでRB野々垣が右オフタックルを駆け上がってTD。4度の攻撃機会をすべて得点に結びつけ23-0。
 それでも攻撃の手はゆるめない。第1Q残り14秒で、キッキングチームが仕掛ける。三輪の蹴ったオンサイドキックをWR田中が確保してハーフライン付近から攻撃開始。ここでも斎藤がWR梅本への49ヤードのパスを決め、相手ゴール前3ヤード。RB後藤が確実に中央のダイブを決めてTD。第2Qが始まった早々の時点で得点は30-0に開く。
 これだけ点差が開けば、安心して控えの戦力、新しいメンバーをつぎ込める。僕の期待していた「新戦力見本市」の始まりだ。
 どんな1年生が登場したのか。チェックできただけの名前を並べてみよう。巨漢のOL橋本、DL岡村、小川、WR田中、木下、RB三好、リターナー宮原、DB奥田、菊山、高、LB作道。TE山本、OL鈴木も出ていたように思うが、自分の目では確認できていない。
 この中で、一番目立ったのが田中。オンサイドキックのカバーから始まり、第2Q終了間際には斎藤からの34ヤードTDパスをキャッチ。第3Q残り6分10秒には、自陣4ヤードから斎藤が投じた短いパスを受け、そのまま相手DBを置き去りにしてTD。なんと96ヤードのTDパスキャッチという離れ業を演じた。
 三好も負けてはいない。田中のような派手さはなかったが、当たりに強いタフな走りで確実にゲインを重ねた。これに秋のリーグ戦に何度も出場し活躍している木下を加えると、今年も攻撃のスキルポジションには人材が豊富だ。
 守備では、ラインの小川が堅実なプレーを見せた。DBでは、才能を感じさせる菊山、高、奥田がそろって登場。菊山は失敗もあったが、見事なインターセプトも決めた。高校時代、ラグビー部で活躍した奥田は、未経験者とは思えないほどの冴えた動きを見せ、将来に期待を抱かせた。
 1年生だけではない。2年生にも期待の星がいる。けがから回復したRB飯田は、再三スピードに乗った走りを見せたし、春から活躍しているDL陣も健在だ。何よりも、QB斎藤が落ち着いて試合をリードできたのがこの日の収穫。同じ2年生QBの前田も、終盤に少しだけ登場し、的確なパスを決めた。
 このように見ていくと「見本市」に登場した控えの下級生には、将来のファイターズを担っていく選手が何人もいる。心強い。この中から、一人でも二人でも、これからの甲子園ボウル、ライスボウルと続く厳しい試合で活躍してくれるようになれば、ファイターズの選手層は厚くなる。彼らがバックアップに回れるようになれば、いま先発メンバーとして活躍している選手たちのプレーも、なお一層思い切りがよくなるなるはずだ。期待している。
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