石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」 2011/5

<<前へ 次へ>>
rss

(7)教える力と学ぶ力

投稿日時:2011/05/19(木) 18:41

 15日のJV戦、近大との試合が終わった後、鳥内監督が4年生だけをフィールドに集めて話をされた。5分が過ぎ、10分たっても終わらない。普段なら、その日の試合で気になったポイントを手短に話して解散、という段取りだが、この日は違った。何より口調が厳しい。声こそ荒げないが、時には特定の部員を名指しして、その行動に「ダメ出し」をされる。
 ようやく話が終わった後、憮然とした表情の監督に「何を注意されていたのですか」と聞いてみた。
 「下級生に対する指導について、です」「4年生が普段、下級生に何を教えているのか。どんな教え方をしているのか。試合の中でも教えられることはいっぱいあるのに、なぜ、その場で指導しないのか。そういうことについて注意しただけです」という話だった。
 答えは抽象的だったが、その日の試合を見ていた僕には、監督が言おうとされることが痛いほど分かった。それほど、反省点というか、教訓というか、ある意味では見どころの多い試合だった。
 この日のスタメンで、1週間前の関大戦に先発したメンバーはDLの岸君一人。パンターに大西君の名前が入っていたが、キッカーは2年生の上仲君。実質的には、普段試合に出場する機会の少ないJVのメンバーが主役の試合だった。
 相手は昨年まで、関西リーグの1部で戦っていた近大。昨年から活躍していたメンバーもいるし、個々の能力ではファイターズの1軍にも引けを取らないような選手が何人もいる。試合経験の少ないJVのメンバーにとっては、ハードな相手だった。
 案の定、試合は最初から互いに決め手を欠き、互いにパントを蹴りあう膠着状態。ようやく2Q中盤、ファイターズはQBが2年生の橘君から1年生の斎藤君(中央大付属)に交代、そこからRB坪谷君と雑賀君のランで活路を開く。最後はゴール前12ヤード、雑賀君が中央を走り抜けてTD。上仲君のキックも決まって7-0で前半を折り返した。
 後半に入ると、試合慣れしたメンバーの多い近大のペース。ファイターズは次々と1年生を含む新しいメンバーを投入したこともあって、じりじりと陣地を奪われていく。挙句に自陣11ヤードから1年生QB前田君(高等部)の投じたパスが相手DBに奪われ、そのままTD。7-7の同点で試合を終えた。
 最初に言った通り、この日出場した選手たちは、試合経験の少ない選手ばかり。そのせいか、攻めてはスタート時の反則が多発したし、守っては相手QBの多彩な動きに振り回される場面が続出した。パスカバーも甘く、同じルート、同じ選手への短いパスを何度も通された。パントやキックオフの目測を誤ってボールを受け損なう場面も再三あった。フィールドゴールも決まらなかった。
 普段の試合で、1軍のメンバーが当たり前のように決めているプレー、あるいは高校時代には簡単に決めていたプレーが、彼らにはとてつもなく難しかったのである。
 当然である。同じアメフットといっても、高校と大学ではレベルが違う。練習と試合とでは内容が違う。練習ではできても、試合では思い通りにならないことは、よくあること。まして、今春入学したばかりの1年生や昨年1年間は体を作ることに専念してきた2年生に、経験豊富な1軍メンバーのようなパフォーマンスを求めること自体、無理がある。
 逆にいうと、この日の試合に出た選手たちにとっては、大学「1部リーグ」のレベルの高さを実感できただけでも、意味がある。活躍できた選手、不本意な結果に終わった選手、それぞれがこの日の試合を糧にし、あらためて朝鍛夕錬、しっかり練習に取り組んでいけばそれでよいのである。
 問題は、その取り組み方である。下級生は日々、目標を持った練習をしているのか。決められたメニューをこなすだけで満足してはいないか。上級生は適切な指導をしているのか。マニュアル通りの指導で良しとしてはいないか。あるいは、メニューを提示しただけで、責任を果たした気にはなっていないか。そういうことをしっかり見ていかなければならない。あの日、試合後に監督が注意し、4年生に猛省を促されたのも、多分、そういうことだったであろう。
 最近読んだ植物生態学者、稲垣栄洋さんの「身近な雑草の愉快な生き方」(ちくま文庫)に、こんなことが書かれたいた。
 「あるものは、踏みにじられてぼろぼろになりながらも、小さな花をしっかり咲かせている。あるものは、コンクリートの隙間で乾ききったわずかな土に根付いてそれでも太い茎を伸ばしている。またあるものは、木枯らし吹きすさぶ凍った大地で光を求めて青々と葉を広げている。たかが雑草とさげすむ人もいるだろう。しかし、名もなき小さな雑草たちでさえ、こんなにも生命の炎を燃やしているのだ」
 「雑草ばかりではない。動物も、鳥も、昆虫も、肉眼では見えない微生物も、すべて生命あるものは、より強くいきたいというエネルギーを持っている。すべての生命が強く生き抜こうと力の限りのエネルギーを振り絞っている。向上心のない生命はないのだ」
 こういう話である。向上心のない生命はない。あの日、JV戦で悔しい思いをした選手たち、その選手たちをしっかり指導できなかった上級生諸君。どうか、向上心を持ち、工夫を重ねて目標に向かってほしい。

(6)栄養剤は試合経験

投稿日時:2011/05/12(木) 07:05

 8日の関大戦は31-7でファイターズの勝利。ファイターズは終始主導権を握り、存分に戦ったように見えた。
 だが、ほぼフルメンバーを並べたファイターズに対し、相手は主力選手が何人も欠場していたようだし、まだまだ調整途上のように見えた。昨年秋、甲子園ボウル出場決定戦で手痛い敗北を喫した相手だけに、大差で勝ったのはうれしいが、シーズンはまだ始まったばかり。調整途上の段階で、彼我の戦力を比べてみても、あまり参考にならないだろう。
 それより僕は、ファイターズの諸君が冬を越してどれほど成長したか、新しいメンバーがどんなプレーを見せてくれるか、という点に注目して観戦した。
 結論から言えば、うれしい内容と、不安を覚える内容が交錯していた。
 まずはうれしい話から並べてみよう。
 オフェンスでは、何といってもRB陣が目についた。LBからコンバートされた望月(3年)は、中央を突破していく力強いラッシュが魅力。先日の日大戦の活躍に続き、この日も11回のキャリーで57ヤードを獲得した。相手が彼のランを警戒している状況で、なおかつ確実に5ヤード前後を獲得できる突破力が素晴らしい。このまましっかり練習を積み、もう一段上の速さを身につければ、秋には恐ろしいランナーになるだろう。
 スピードのある野々垣と雑賀の2年生コンビにも期待が持てる。野々垣はカットバック、雑賀は加速力と、それぞれ違う分野で素晴らしい能力を持っており、これまた成長が楽しみだ。ともにまだまだ発展途上。物足りない点はいくつもあるが、しっかり練習に取り組み、試合で経験を積んでいけば、まだまだ成長するはずだ。
 タイトエンド(TE)を含めたレシーバー人も人材豊富。4年生の和田は第1Q11分21秒、QB畑からの長くて難しいパスを見事にキャッチし、体勢を崩しながら一気に20ヤード近くを走り切ってタッチダウンまで持ち込んだ(記録は59ヤードのパスキャッチ)。日大戦で到底キャッチできないようなパスを身を挺してキャッチした(この写真はいまトップページに掲載されている)3年生の小山とともに、球際の強さを見せつけた。3年生の大型TE金本も成長しており、昨年以上に多彩なパス攻撃が期待できそうだ。
 ラインも発展途上。関大戦で先発した4年生は谷山、小林の2人。あとは3年生の和田、2年生の友国、木村がスタメンに名を連ねた。2年生には、ほかにも先発争いをしている大型選手が何人もおり、そのうち何人かはこの試合でも交代要員として出場した。2年生が今後、試合で経験を積んでいけば、例年になく層の厚いラインが完成するだろう。
 守備でも下級生が活躍した。第2Q1分29秒、ファンブルリターンTDを決めた池田、再三鋭いタックルを見せた阪本の2年生LBコンビがその代表。高等部のサンデーコーチをしていた朝日新聞記者、大西史恭氏が「二人とも高校時代から突出した動きをしていました」という通り、目を見張るような鋭い動きを見せた。
 DB陣では、この日2本のインターセプトを奪った3年生の保宗と2年生の大森に注目。ともに、今春のJV戦から3試合連続の先発だが、試合を重ねるたびに動きが軽快になっており、これからの伸びしろに期待が持てる。
 一方、いまひとつ物足りなかったのが4年生の糟谷が欠場したままのQB陣。日大戦に続いて、この日も3年生の畑が試合をリードしたが、RBやWRへの短いパスのタイミングが微妙にずれて、いまひとつ攻撃のリズムに乗り切れなかった。関大を相手に4本のTDを奪ったのだから、不足をいうのは失礼かもしれないが、立命に勝つ、という目標を考えると、さらなる精進が必要だろう。
 もちろん、シーズンはまだ始まったばかりだ。いま名前を挙げた選手の大半は、昨年まで交代要員で出場することはあっても、試合を任されたことのない選手たちである。練習ではうまくできても試合ではできないこともある。逆に、試合経験を積まなければ覚えられないこともいっぱいある。
 相手のスピード、当たりの強さ、反応の速さ。そういう事柄は、実際に強敵と対戦しないと実感できない。カバーする相手のちょっとしたしぐさから次のプレーを予測したり、相手の反応を逆用したりすることも、経験を積んで初めて可能になる。自分の動きに生かすことができる。
 そういう意味で、下級生にとっては試合に出て経験を積むこと、いろんなチャレンジをすること、それが成長のための栄養剤になるのである。失敗を恐れず、前のめりのプレーを続けてほしい。
«前へ 次へ»

<< 2011年5月 >>

MONTUEWEDTHUFRISATSUN
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

ブログテーマ