石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」 2009/4

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(3)ワクワクする季節

投稿日時:2009/04/13(月) 23:16

 先週末は金、土、日曜の3日間、連続して上ケ原に通った。仕事、散策、そしてファイターズの練習が目当てである。
 土曜日。幼稚園に通う孫と日本庭園のベンチに座って昼飯を食っていると、一瞬の風にあおられて、桜の花びらが無数に舞い降りてきた。それはもう、誰もが吹雪と形容するしかない光景。孫も「ワーッ、雪みたい」といいいながら、花びらを受け止めようと両手を開いて走り回る。まるで、雪の降るのを喜んで駆け回る犬ころみたいだ。
 上ケ原は、まさに春爛漫(らんまん)。構内のあちこちにあるクスノキやケヤキも鮮やかな新芽を出している。中央芝生の周囲にある植え込みは、日に日に緑を増しているし、正面玄関右手の駐車場にあるユリノキの新芽はことに美しい。芽吹いたばかりの淡い緑が、空に向かってそびえる大木を彩っている。第3フィールドでは、平郡君の記念碑の背後にあるヤマモモの木がすっかり大きくなり、記念碑を覆い尽くすように枝を伸ばしている。
 記念碑に刻まれた碑文に目を通した後、グラウンドに目をやると、そこにも春がある。大勢のフレッシュマンがグラウンドのあちこちで、練習を始めているのだ。
 今春入部した1年生は13日現在で53人。いま、このホームページに名前が記されているのは38人だが、その後も志願者が相次ぎ、これだけの人数に上ったそうだ。大変な数である。その中にはスポーツ推薦やAO入試で入った13人がいるし、高校では野球やラグビーの選手として活躍していたアスリートが何人もいる。体力と素質に恵まれた、文字通り期待の星である。
 鳥内監督の口を借りれば「いいですよ、今年の1年は。即戦力になりそうな子もいるし、すぐに上の練習に参加させたい子もいます。未経験者にも、期待できる子が何人もいますよ。これだけいい子が入ってくれたら、チーム内の競争も激しくなるでしょう」。
 QBとWRの練習につきあっておられた武田建先生も同様の感想を口にされる。「いいですね、今年の新人は。レシーバーにも、すぐに使えそうな子が何人もいますよ」
 確かに、体のデカい子が多い。185センチ級が何人もいるし、体重も100キロを越す選手がいる。ただデカいだけでなく、運動能力も高そうだ。僕のような素人が見ても、ワクワクする選手が何人もいる。
 例えば、練習の仕上げに20分間、グラウンドの外周を走る取り組み。それぞれのペースで淡々と走っているのだが、手を抜いている選手は一人もいない。中には、軽々と周回遅れの選手を抜き去り、さらにスピードを上げる選手もいる。監督に名前を聞けば、僕の高校の後輩だという。よけいにうれしくなってくる。
 気持ちもしっかりしているようだ。先日、東京地区からきた5人の新人と話をする機会があったが、それぞれに期待通りの人材だとの印象を受けた。スポーツ推薦で入ってきた関西地区の新人は全員、昨年夏に小論文の勉強会を続けてきたから、その性格についても、ある程度は分かっている。この面々も元気な子ばかりだから心配はない。
 桜は散っても、上ケ原では新しい芽がいっせいに芽吹いてきたのである。この芽をどう伸ばすか。
 その点でも、今年は心配なさそうだ。新しくフルタイムのコーチとして大村和輝氏が就任され、連日グラウンドに降りて指導をされているから、昨年までとは様子が違う。もちろん、チーム全体を見るのが仕事で、新人の練習にまで目を配るゆとりはないだろうが、それでも、練習の空気が変わり、チームの雰囲気が変わってきたから、それが1年生の取り組みにも、いい影響を及ぼすことは間違いない。
 期待の持てる春。ワクワクする春である。今度の土曜日、日体大との開幕戦が待ち遠しい。

(2)昨日とは違う風景

投稿日時:2009/04/06(月) 23:56

 たまにしか練習を見ていない人間がいうのもなんだが、3月と4月とでは、上ケ原の第3フィールドの風景がガラリと変わった。
 一言でいえば、練習の密度が濃くなったのである。練習のための練習ではなく、試合を想定した練習。試合に向かうための練習になりつあるといってもいいだろう。
 もちろん、まだ春先である。夏の合宿に見られるようなガチンコの練習ではない。試合に向けての細かいプレーをチェックしているわけでもない。すべての基本になるような内容を練習計画に沿ってひとつひとつこなしているだけである。連日のように、他の大学から多くの選手が練習に参加していることもあって、特別なことは何一つしていない。地味な練習である。
 けれども、グラウンドの空気はガラリと変わった。選手たちの取り組みも変わった。
 例えば、パスのコース取りの練習で、レシーバーが当たりにきたDBを仰向けに突き倒す場面があった。それを悔しがったDBたちが、レシーバー陣により厳しいチェックをする場面も目撃した。オフェンスラインとディフェンスラインの攻防でも、これまでなら当たりあった瞬間、台になる選手が力を抜いていたのに、いまはきちんと当たりあっている。全体の練習から見れば、ほんの些細な違い、局地的なやりとりではあるが、いわば、シャドーボクシングからスパーリングへの変化。「寸止め空手」から「実戦空手」への発展と見られるような練習をしているのである。
 理由はいくつか考えられる。4月1日から、全体練習が始まったこと、監督をはじめコーチも全員が顔をそろえてグラウンドに降りて練習を見ておられること、新しくフルタイムのコーチとして社会人のコーチとして実績を積んでこられた大村和輝氏が加わったこと。それらが相乗効果を及ぼして、グラウンドの空気を引き締めているのだろう。
 もちろん新谷主将以下、選手やスタッフが今季にかける熱い思いを持っているからこそ、練習も熱くなるのだろう。「馬を岸辺に連れて行くことはできても、(馬が飲む気にならないと)水を飲ませることはできない」という言葉がある。選手の気持ちが高まって初めて、コーチも腕を発揮できるし、全体練習も効果が上がるのである。
 さらに、もう一つ。僕の「岡目八目」では、練習の取り組みをほんの少しばかり変更したことが、想像以上にチームの雰囲気を変えているように思える。どういうことか。
 一言でいうと、これまではパートの自主性を優先し、それぞれのリーダーに任せていた練習の進行を、チームの練習を優先させるようにしたことである。もちろん、パートごとの練習はそれぞれのリーダーを中心にしっかりやっているのだが、それに少しばかりチームとしての練習を繰り入れることで、グラウンドの風景が変わってしまったのだ。少なくとも昨年の春とは違うし、ほんの1週間前とも様子が違う。
 まだほんの数日のことだが、その変化が練習に活気をもたらせ、チームとしてより高い次元に到達したいという願望を具体化しているように、僕には感じられる。外見的には、ほんの些細な変化だが、質的には大きな変化であり、極めて好ましい変化であると、僕には思えるのである。
 この光景から、数年前、武術家の甲野善紀さんが上ケ原のグラウンドを訪れ、練習中の部員に、古武術に想を得た体の使い方を披露されたときのことを思い出す。そのとき甲野さんはファイターズの部員やOBの山田晋三氏らを相手にタックルを受けられたのだが、ヘルメットを装着したときにはまったくタックルをかわせなかったのに、ヘルメットを外した途端にすべてのタックルをかわしてしまわれた。甲野さんに聞くと、ヘルメットを着けていたときは、ガードの部分で瞬間的に目が切れるので体が思い通りに動かなかったけれども、外してみると相手の動きが「スローモーションのように見えて」すべてタックルを外すことができたとのことだった。
 当事者以外には、まったく気付かない些細なことだが、その些細なことが技の切れに直接影響していたのである。この話を聞いたときに、技とは、そういう微細な部分の積み重ねで成り立っている、そういう細部を丁寧に追求するからこそ、技と呼ぶに値する体の使い方ができるのだと感心した。
 ファイターズの練習も同様である。「ほんの少しのゆるみ」であっても、そこにメスを入れるのと、入れないまま漫然と前例通りの練習法を踏襲しているのでは大違いである。ちょっとした工夫が、効果を発揮し、グラウンドの風景を変えたのだと僕は思った。
 これを一過性の変化に終わらせてはならない。昨年の悔しさをかみしめるだけではなく、反省を教訓として、小さくてもいい、新たな手を打ち続けてほしい。監督もコーチも、選手もスタッフも、全員が営々と「細心の注意」を払って練習に取り組み、昨年、ライバルチームが到達したレベルを超える次元にチームを作り上げてほしい。
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