石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

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(3)ホームで披露「新しい力」

投稿日時:2025/05/13(火) 18:15

 11日は、龍谷大学とのJV戦。会場は上ヶ原の第3フィールド。入場料は無料。事前の広報が少なかったせいもあってか、グラウンドに顔を出すと、見知らぬ人から「今日はJV戦ですか」と声をかけられた。
 JV戦であろうとなかろうと、私にとってはさしたる区別はない。この季節になると、今春、入部したばかりの新入生がぼつぼつ起用されるようになるから、彼らの動きを見るのが何よりも楽しい。
 折も折、アシスタントディレクターの宮本さんから声が掛かる。「今日の試合、1年生RBの森下に注目して下さい。きっと、驚かれると思いますよ」。「確かスポーツ選抜入試の勉強会に出ていた生徒ですね。近年は対面ではなくインターネットを通じた勉強会だから、顔と名前がすぐに合わないけど、背番号を頼りにチェックして応援します」。そんな会話をしているうちに試合が始まる。
 先攻はファイターズ。自陣30ヤード付近から攻撃を開始。まずは先発のQB星野弟が立て続けにWRに短いパスを通して陣地を進める。相手守備陣がパスを警戒すると、今度はRB深村のランで相手ゴール前28ヤード。仕上げは星野からWRリンスコットへのパスでTD。キックも決まって7―0。精度の高いパスとランを織り交ぜた攻撃で試合の主導権を握った。
 けれども、快調にスタートしても、試合経験の少ないメンバーが出てくると、様子が変わる。立ち上がりは攻守ともに、ちぐはぐな動きが出て、逆に相手は勢いづく。
 そういう膠着状況の中で目を引いたのが、宮本さんの話にあったRB森下。第3Q早々、相手のFGで7-6と追い上げられた場面である。自陣24ヤード付近から始まったファイターズの攻撃で2回続けて走り、あっと間に相手陣38ヤード。勢いづいたチームはそこからランとパスを織り交ぜて陣地を進める。途中、短いパスを通して、仕上げは3年生RB松村の19ヤードラン。14―6とリードを広げる。
 守備陣が頑張って、相手攻撃を抑えて迎えたファイターズの次の攻撃は、センターライン付近から。ここでも森下が走って即座にダウンを更新。勢いに乗ったQB片境がWR川崎へのパスを通して相手ゴール前。途中、ランプレーで時計を進め、最後の5ヤードは川崎へのTDパス。それが通って試合終了。
 このように、メンバーは次々と交代したが、守備陣が踏ん張り、攻撃陣もそれに呼応して頑張った。攻守ともに工夫を凝らしてファイターズに挑んできた龍谷大学の戦いも素晴らしかったが、それを若いメンバーを積極的に起用したファイターズが破った。両チームにとって、思った以上に収穫があった試合ではないか。こんな試合なら、これからもどんどんやってほしい。そんなことを考えながら家路についた。

(2)新戦力が次々と

投稿日時:2025/05/06(火) 08:27

 春シーズン2試合目の相手は京大。かつてはともに、学生アメフット界のトップを目指して闘い続けた相手である。近年は組織が強化され、練習環境も整ったファイターズが有利な戦いを続けているが、それでも「宿命のライバル」意識は存在し、秋のリーグ戦では毎年のように厳しい戦いを続けている。
 以下は余談だが、そんな京大の全盛期に、朝日新聞社会部の記者をしていた僕は、当時の水野監督に単独インタビューを敢行。「ギャングスターズはなぜ勝てるのか、その強さの秘密は」と聞いたことがある。
 その質問に対する答えは「僕は毎年、新しいシーズンが始まる前に新4年生全員と個人面談をしますが、その時に必ず聞くのが『1升瓶に1升2合の水をどうしたら入れられるか』ということです。
 もちろん、そんなことは物理的に不可能です。けれども『それは不可能です』とするようではダメです。ダメと分かっていても、なにか方法はないかと考えること、そこから道は開けると僕は考えているのです」というような話だった。
 「強力な相手に勝つためには工夫が必要。そのためには、考えて考えて考えよ、というようなことですかね」と僕が応じると「まあ、そんなことですかね」と笑っておられた。その余裕のある表情が今も忘れられない。
 スタートしたばかりの今季のファイターズがそんな遺伝子を引き継ぐ京大を相手にどんな闘いをするのか。相手はどんな仕掛けをしてくるのか。あれこれ考えているうちにキックオフ。
 立ち上がり、相手のキックがサイドラインを割り、ファイターズは自陣35ヤードからの攻撃。QB星野弟がいきなり10ヤード走ってダウンを更新。続けて今度はWR五十嵐への短いパス。さらにランとパス、QBキープを織り交ぜて攻め続け、仕上げはRB井上の中央突破でTD。大西のキックも決まって7―0。
 続く京大の攻撃を4プレーで防ぎ、再びファイターズの攻撃。パスとランを組み合わせて陣地を進めるが、相手の守備も堅く、追加点は遠い。
 守備が堅いのはファイターズも同様だ。DB城島が鋭い出足で立て続けに相手の動きを止め、陣地の回復を許さない。双方が守りあう展開で前半終了。
 後半に入ると、ファイターズの攻守がかみ合ってくる。
 まずは最初の相手攻撃を守備陣が完封。それを受けて攻撃陣はTEへのパス、RBの中央突破、QBのキープなどで陣地を進める。小段への長いパスが相手の反則を誘発したこともあって、あっという間にゴール前10ヤード。ここからRB井上が5ヤード、深村が残り5ヤードを走ってTD。13―0とリードを広げる。
 勢いづいた攻撃に守備陣が応え、次の京大の攻撃を完封。それを受けた攻撃陣はQB星野弟がWR五十嵐に30ヤードのパスを通してTD。PATも決めて20―0。4Qに入っても攻撃の手を緩めず、FGで3点、星野からWRリンスコットへのTDパスとPATで7点。30―0で試合を締めくくった。
 このように試合経過だけを紹介していくと、ファイターズの圧勝のように受け止められる方も多いだろう。けれども、勝負はそんなに甘くはない。この展開のどこかでミスがあれば、相手に流れが移っていた可能性もある。そういう意味では、後半になって投入されたメンバーを含め、全員が最後まで手を緩めることなく戦ったこの試合の意義は大きい。この日の収穫と反省を上ヶ原での練習に生かし、よりたくましい集団になるべく励んでもらいたい。
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