石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

<<前へ 次へ>>
rss

(16)夏の勉強会

投稿日時:2017/08/02(水) 12:56

 8月1日。前期の試験も、試験後の短いオフも終わり、勝負の夏がスタートした。
 例年通り、顧問の前島先生によるお祈りで士気を高め、気持ちを新たにして秋のシーズンに向けての練習が始まる。僕は仕事のため参加できなかったけれども、部員たちが朝早くからグラウンドに集合し、先生の言葉を聞いている様子がホームページにアップされている。
 8月になったばかりだが、今季は27日に秋の初戦が始まる。途中に鉢伏高原での長い合宿を挟んでいることを考えれば、上ヶ原のグラウンドでの練習時間は限られている。上級生、下級生を問わず、その時間をフルに使って自らを鍛え、仲間と高めあって秋に備えてもらいたい。
 勝負の夏はしかし、上ヶ原のグラウンドだけではない。西宮市の某所では毎週金曜の夜、明日のファイターズを担ってくれるはずの高校生諸君が9月に迎える推薦入試に備えた勉強会を続けている。これは毎年、高校の1学期の期末試験が終わるのを待ってファイターズが開催。いわゆるスポーツ推薦やAO入試で関西学院を目指し、課外活動はファイターズと決めて挑んでくれる高校生を対象に、僕が講師となって小論文の書き方を指導する集まりである。
 勉強会では、決められた時間内に所定の字数で小論文を書かせ、それを持ち帰って添削し、簡単な講評を付けて返却する。その作業を毎週のように繰り返し、書くこと、表現することに多少とも自信を持って本番の入試に臨んでもらおうという仕組みである。
 2003年度卒業の池谷陽平君や平郡雷太君が高校3年の時、当時、リクルートも担当されていた小野宏コーチの提案で始めた勉強会だから、もうかれこれ20年近くになる。最初の年はこの2人だけで、僕もまだ朝日新聞で論説委員の仕事をしていたから、夕方、大阪・中之島の本社に来てもらって、マンツーマンで指導していた。
 50年間、ずっと新聞記者を続けてきたから、文章を書くことには慣れている。学生時代には高校の教員を志望し、国語の教員免許も取得していたから、教えることにも多少の自信はある。実際、いまも関西学院で「文章表現」の講座を担当しているくらいだ。
 けれども、当時は高校生を教えるなんて初めて。何のマニュアルもなく、全くの手探りだった。幸いその年は、教えられる側のレベルが高かったから、何の問題もなく勉強会は進行し、終了後は社内の喫茶室やビルの地下にある喫茶店でフルーツパフェやカレーを食べながらおしゃべりをしていた。
 そうこうするうちに、推薦入試の受験生は年々増え、いつの間にか10人を超えるようになった。その間に僕も新聞社を定年退職したから、今度はチームのスタッフに西宮市内に会場を借りてもらい、少しまとまった形で勉強会をするようにした。それが現在も続いており、毎年7月から8月末にかけては、この勉強会が僕の夏のメーン行事になっている。
 こんな風に書いていけば、なんだか大層な役割を果たしているようだが、実際はそうではない。どちらかと言えば、ファイターズを目指し、入学後はファイターズの屋台骨を背負ってくれる高校生と、文章の指導を通じてあれこれ話をしたり、同じ目標を持った彼らが仲間内で話していることを横から聞いたりしていることを楽しんでいるといった方が正しいかも知れない。
 70歳をとっくに過ぎたいまも、僕は新聞記者の仕事を続けている。毎週、コラムを書き、週に1本の社説も担当している。物事を観察する力には、それなりの自信もある。そんな人間が、普段、全く付き合いのない高校生の話の輪に加わり、あれこれと喜びや悩みについて聞かせてもらえるのだから、まさに「棚からぼた餅」である。ありがたいご褒美である。
 全く予備知識のない相手であっても、ほんの断片的な話をするだけで、相手の性格や気質について想像が広がり、入部後の姿が何となく浮かんでくる。人と出会い、話を引き出すのを仕事にしている人間にとって、こういう想像ほど楽しいことはない。それが普段、ほとんどつきあうことのない高校生、それも特定の高校ではなく、それぞれ背景の異なる高校で学んでいる少年たちとの会話の機会となると、お金を出しても買いたいくらいだ。
 本当は、この勉強会に参加している高校生一人一人の名前を挙げ、彼らの書いた文章を紹介したり、性格の素晴らしさを書き連ねたりしたい気分だが、そういうことは実際に入学すれば、いくらでも機会はある。
 いまは、ファイターズのコーチやリクルート担当者が今年もいい選手を各方面から見つけ出してくれたこと、ファイターズを志望してくれる彼らが毎週、しっかりと課題を仕上げていること、この集まりで初めて顔を合わせた者同士が旧知のように和気あいあいと過ごす時間を持っていること、それを報告するだけにしておきたい。彼らが入学できれば、きっと、ファイターズを支え、リーダーとして活躍してくれるに違いない。

(15)愛されるチーム

投稿日時:2017/07/26(水) 18:15

 大学はいま前期の試験中。15日からスタートし、学生諸君は暑さにも負けずに机に向かっている。当然、試験前からチームとしての練習は休みである。もちろん、個人個人は試験の合間を縫って、筋トレとか走りモノと呼ばれるトレーニングに取り組んでいる。単位の取得が進んでいる上級生はミーティングや個人の課題克服にも余念がない。
 けれども、チームが全体で取り組む練習は休みだから、このコラムからもまた、グラウンドの消息が途絶えている。
 代わりに、ファイターズを取り巻くあれやこれやの話題を断片的にお伝えしている。小野ディレクターの講演会、コーチやスタッフとしてチームを支える「大人の力」、リクルート担当者の眼力、卒業生からの伝言……。今週もまた、先日、甲東園の居酒屋で開かれた「アメフト探検会」の様子とそこで抱いた僕なりの感慨をお伝えしよう。
 「アメフト探検会」のことは、このコラムでも毎年のように取り上げているから、古くからの読者にはおなじみだろう。関西学院大学の先生たち限定のサークルで、ファイターズとその部員をこよなく愛される先生方が多数参加されている。活動の詳細についてはまったく知らないが、断片的に聞こえてくるところでは「年に一度、総会を開き、ファイターズをサカナに大いに語り、愉快に飲む」のが目的の集まりらしい。
 参加者の中には「年間50回はファイターズのビデオを見る。ゼミ生にもそれを見せて授業を進める」と豪語される先生がいるし、もう少し控えめに「年に一度は必ず試合会場に出掛けて応援する。今季は少なくとも3回は応援に行く」「毎年一人はファイターズの部員をゼミに受け入れる」といった個人的な目標を立て、それを実行されている先生もいる。自己紹介で「ヨメさんがファイターズファンなので、それにつられて僕もファンになりました」といって拍手を浴びた新参の先生もいる。
 先日の集まりには、先生方が十数人、チームからは小野ディレクターや大村アシスタントヘッドコーチ、神田コーチが参加され、大いに盛り上がった。僕も、例年のようにゲストとしてお招きを頂き、酒も飲めないのに、大いに語り合った。
 「野原コーチは僕のゼミの卒業生」と毎年自慢される先生は「今年は○○君と○○君がいます。二人ともよく頑張っていますよ」と学生たちが可愛くて仕方がないという口調で話される。別の先生もまた、対抗するように「今年僕のゼミを卒業したマネジャーの○○君は留年生だったけど、後輩たちに溶け込んで、よく頑張ってくれました」と自慢される。中には「ファイターズの諸君は就職活動でも実績を残してくれるから、ゼミの評判もよくなる」と言われた先生もいる。
 こうしてファイターズの部員が部活を離れた勉学の場でも存在感を発揮し、卒業してからもなお先生方に強い印象を与えていることを知ると、聞いている方もなんだかうれしくなってくる。そして「ファイターズというのは、本当に多くの方に愛されているチームだなあ」と感慨を新たにする。
 先生方の応援だけではない。例えば、僕のこのコラムにも毎週のように「いいね」のサインが集まる。少ない時でも150件、多いときには200件、300件を超す。いま主将を務めている井若君が1年生の時、学生会館の更衣室のドアに「足下のゴミ一つ拾えないような人間に何ができましょうか……」と書いて張り出した話を紹介したときには、たしか800件前後の「いいね」が集まった。
 それは、僕の文章に対する「いいね」ではなく、そこで紹介しているファイターズというチームの在り方、たたずまいに対する「いいね」であると、僕は思っている。
 試合に勝った、負けたということだけではなく、それを超えて、ファイターズの選手たちがどのようにして成長し、そのためにどんな努力をしているのか。部員のがんばりに監督やコーチ、スタッフとして関わる周囲の「大人たち」がどのようにして応えているのか。その指導を部員がどのように受け止め、成長の糧にしているのか。上級生下級生、関係なく、仲間同士はどのように励まし合い、高め合っているのか。
 そうしたことを毎週のようにこのコラムを通じて問い掛け、チームの素顔を紹介していることに対する数多くの「いいね」。それはぼくの文章に対する評価というよりも、ファイターズという「毎年毎年、人を育てる。その営みを戦後一貫して続けてきた」組織に対する「いいね」であると理解しなければ、その本質を見失う。
 逆にいえば、そういう組織に対して、数多くの「いいね」が集まるというところに、ファイターズの素晴らしさがある。これもまた、このチームが多くの方々に愛されているチームであることの証明であり、「アメフト探検会」の先生方に愛されていることにも通じる話である。
 もう少し大きく言えば、今後、こういう組織が課外教育の主流になっていくことで、大学スポーツの一つの模範が形成されるのではないか。
 ファイターズをこよなく愛される先生たちとの談笑の中でも、ファイターズが課外教育の王道を歩んでいると確認できた。それが愉快でならない。
«前へ 次へ»

<< 2026年1月 >>

MONTUEWEDTHUFRISATSUN
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

ブログテーマ