石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
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(9)「完敗」と「最高」
投稿日時:2017/06/06(火) 08:41
日曜日の「神戸ボウル」、パナソニックとの試合は24-10。スコアだけでなく内容的にも完敗だった。当日、会場で応援していたファイターズファンに聞けば、10人が10人ともそのように答えられるだろう。
関学スポーツが伝えてくれる「試合後のコメント」を見ても、鳥内監督は「レベルに差があった。ライスボウルで勝負しょうと思うんやったら今のままではあかん」と発言されている。
実際に戦った選手の言葉はさらに厳しい。井若主将は「よい点も悪い点もあったが、全体的にめちゃくちゃ悪い。1対1でも負けている。レベルが低いと感じた」、松本副将は「実力の足りなさを痛感した」、QBの光藤君は「相手のスピードについて行けない。想定以上の速さに対応できなかった」といっている。それぞれが本音であろう。
けれども、僕はへそ曲がりである。試合は完敗だったと認めることはやぶさかではないが、それでもあえて「最高の試合だった」と主張したい。賛同は得られないだろうし、そんな甘ったれたことを言っているからダメなんだ、と叱られるかもしれない。けれども、たとえ負けゲームであったとしても、そこに光明を見つけるのが僕の役割だと思っているから、あえて自説を書かせていただく。ただの強がりといわれるかもしれないが、お読みいただければ幸いである。
1、随所に素晴らしいプレーがあった。
例えば、0-0で迎えた1Qの終盤、自陣21ヤード付近からの攻撃である。まずは光藤がWR松井に20ヤードのパスをヒット、次はRB山口が見事なカットで相手DBを抜き去り、25ヤード前進。次は光藤がランニングバックにボールを渡すと見せかけながら、そのままボールをキープして16ヤード前進。わずか3プレーで相手ゴール前20ヤードまで迫った。
残念ながら、この場面は最後の詰めが甘くFGの3点にとどまったが、社会人選抜といってよいほどの強力なメンバーを揃えた相手を驚かせるに値する攻撃だった。その主役がそれぞれ3年生。まだ大学では実質2年、けがなどで戦列を離れていた期間を考慮すれば、それ以下の経験しかない。そんなメンバーが経験豊富なスター軍団を相手に一歩もひけをとらないプレーを続けたことに、僕は大きな手応えを感じた。
2、オフェンスの下級生が踏ん張った。
この日の先発に名を連ねたOLは左から井若、森田、光岡、松永、村田。4年生は井若、3年生は光岡、残る3人は2年生である。これまた大学でプレーしたのは実質1年かそれ未満という顔ぶれだったが、それが強力な相手ディフェンスに立ち向かった。もちろんずたずたに切り裂かれ、QBがサックを受ける場面が何度もあったが、逆に味方のRBのために走路を空ける場面もあった。3Qの終盤、自陣23ヤードからRB高松が77ヤードを独走してTDに持ち込んだのがその一つである。真ん中のレーンがきれいに開いていたから高松のスピードが生かされ、独走TDに結びついた。いくら相手が強くても、ラインがやるべきことを完遂すれば、道は開けることを実証した場面であり、下級生は大きな手応えを掴んだはずだ。
3、レシーバー陣のブロックが素晴らしかった。
例えば、上記、高松が独走TDを決めた時のWR松井のブロック。独走する高松に左から追いすがろうとする相手DBを追いかけ、走路をふさいでいたが、もう一人のDBが右から俊足を飛ばして追いかけて来るのに気付いた瞬間、右にコースを変え、即座に横からの強力なブロックで相手を仕留めた。そのスピード、判断力、そして強力なブロック。その場面をrtvの画面で再確認したが、何度見てもしびれる。昨年の立命館との試合でWR池永君がTDを挙げた時にも、似たような場面があったが、今度は競り合う相手が信じられないようなスピードを持った外国人DBだっただけに、余計に彼のポテンシャルの高さが光った。ファイターズ史上、最高のレシーバーになると監督が期待している通りの活躍であり、このプレーを見ただけで溜飲が下がる思いをしたのは、僕だけではあるまい。
以上、3つの例を見ただけでも、このチームが可能性に満ちていることが理解してもらえるだろう。さらにいえば、この日は主力をけがで欠き、どちらかといえば交代メンバーで揃えたDL陣の健闘も素晴らしかった。最後は相手の個人的な能力に対抗しきれなかったが、彼らが着実に力を付ければ選手層が厚くなる。秋のシーズンが深まるにつれて、選手層の厚さが勝敗を分けることを考えれば、これもまたうれしい知らせである。
問題は、試合の所々で垣間見たそうした素晴らしいプレーを、一つ一つの点で終わらせず、線にし、面にしていくことである。1対1でも勝ち、チームとしても勝つ。それをどのように実現していくか。チームの現在位置を明らかにし、これから進むべき道を明らかにしてもらえたと考えれば、「完敗」にも大きな意味がある。
何度もいうが、ファイターズは発展途上にある学生チームである。完成形に近い社会人チームに悔しい敗戦を喫したとしても、そこに光明が見つかれば、それは負けではない。その一筋、二筋の光明を手掛かりに、今後、チームをどのように鍛えて行くか、個人個人の能力をどう高めていくか。勝負はそこにかかっている。めげている余裕ない。
関学スポーツが伝えてくれる「試合後のコメント」を見ても、鳥内監督は「レベルに差があった。ライスボウルで勝負しょうと思うんやったら今のままではあかん」と発言されている。
実際に戦った選手の言葉はさらに厳しい。井若主将は「よい点も悪い点もあったが、全体的にめちゃくちゃ悪い。1対1でも負けている。レベルが低いと感じた」、松本副将は「実力の足りなさを痛感した」、QBの光藤君は「相手のスピードについて行けない。想定以上の速さに対応できなかった」といっている。それぞれが本音であろう。
けれども、僕はへそ曲がりである。試合は完敗だったと認めることはやぶさかではないが、それでもあえて「最高の試合だった」と主張したい。賛同は得られないだろうし、そんな甘ったれたことを言っているからダメなんだ、と叱られるかもしれない。けれども、たとえ負けゲームであったとしても、そこに光明を見つけるのが僕の役割だと思っているから、あえて自説を書かせていただく。ただの強がりといわれるかもしれないが、お読みいただければ幸いである。
1、随所に素晴らしいプレーがあった。
例えば、0-0で迎えた1Qの終盤、自陣21ヤード付近からの攻撃である。まずは光藤がWR松井に20ヤードのパスをヒット、次はRB山口が見事なカットで相手DBを抜き去り、25ヤード前進。次は光藤がランニングバックにボールを渡すと見せかけながら、そのままボールをキープして16ヤード前進。わずか3プレーで相手ゴール前20ヤードまで迫った。
残念ながら、この場面は最後の詰めが甘くFGの3点にとどまったが、社会人選抜といってよいほどの強力なメンバーを揃えた相手を驚かせるに値する攻撃だった。その主役がそれぞれ3年生。まだ大学では実質2年、けがなどで戦列を離れていた期間を考慮すれば、それ以下の経験しかない。そんなメンバーが経験豊富なスター軍団を相手に一歩もひけをとらないプレーを続けたことに、僕は大きな手応えを感じた。
2、オフェンスの下級生が踏ん張った。
この日の先発に名を連ねたOLは左から井若、森田、光岡、松永、村田。4年生は井若、3年生は光岡、残る3人は2年生である。これまた大学でプレーしたのは実質1年かそれ未満という顔ぶれだったが、それが強力な相手ディフェンスに立ち向かった。もちろんずたずたに切り裂かれ、QBがサックを受ける場面が何度もあったが、逆に味方のRBのために走路を空ける場面もあった。3Qの終盤、自陣23ヤードからRB高松が77ヤードを独走してTDに持ち込んだのがその一つである。真ん中のレーンがきれいに開いていたから高松のスピードが生かされ、独走TDに結びついた。いくら相手が強くても、ラインがやるべきことを完遂すれば、道は開けることを実証した場面であり、下級生は大きな手応えを掴んだはずだ。
3、レシーバー陣のブロックが素晴らしかった。
例えば、上記、高松が独走TDを決めた時のWR松井のブロック。独走する高松に左から追いすがろうとする相手DBを追いかけ、走路をふさいでいたが、もう一人のDBが右から俊足を飛ばして追いかけて来るのに気付いた瞬間、右にコースを変え、即座に横からの強力なブロックで相手を仕留めた。そのスピード、判断力、そして強力なブロック。その場面をrtvの画面で再確認したが、何度見てもしびれる。昨年の立命館との試合でWR池永君がTDを挙げた時にも、似たような場面があったが、今度は競り合う相手が信じられないようなスピードを持った外国人DBだっただけに、余計に彼のポテンシャルの高さが光った。ファイターズ史上、最高のレシーバーになると監督が期待している通りの活躍であり、このプレーを見ただけで溜飲が下がる思いをしたのは、僕だけではあるまい。
以上、3つの例を見ただけでも、このチームが可能性に満ちていることが理解してもらえるだろう。さらにいえば、この日は主力をけがで欠き、どちらかといえば交代メンバーで揃えたDL陣の健闘も素晴らしかった。最後は相手の個人的な能力に対抗しきれなかったが、彼らが着実に力を付ければ選手層が厚くなる。秋のシーズンが深まるにつれて、選手層の厚さが勝敗を分けることを考えれば、これもまたうれしい知らせである。
問題は、試合の所々で垣間見たそうした素晴らしいプレーを、一つ一つの点で終わらせず、線にし、面にしていくことである。1対1でも勝ち、チームとしても勝つ。それをどのように実現していくか。チームの現在位置を明らかにし、これから進むべき道を明らかにしてもらえたと考えれば、「完敗」にも大きな意味がある。
何度もいうが、ファイターズは発展途上にある学生チームである。完成形に近い社会人チームに悔しい敗戦を喫したとしても、そこに光明が見つかれば、それは負けではない。その一筋、二筋の光明を手掛かりに、今後、チームをどのように鍛えて行くか、個人個人の能力をどう高めていくか。勝負はそこにかかっている。めげている余裕ない。
(8)一瞬の怖さ
投稿日時:2017/05/31(水) 06:31
5月28日は、関大との対決。チーム状態には関係なく、いつの年も気合いを入れて向かってくるライバルを相手に、ファイターズがどんな戦いをするか。けがからの回復途上にあり、今季はまだ出場機会のなかったメンバーの回復状況はどんな具合か。今季からスターターを務めるQB光藤がライバル心をむき出しにして向かってくる相手守備陣にどこまで通用するか。その前に、今季は再建途上にある下級生中心のオフェンスラインがしっかり機能するか。見所満載の試合である。
天気は晴れ、風は西から東に緩やかに流れている。夕方5時キックオフとあって、日中の暑さも多少は和らいでいる。絶好の観戦日和であり、スタンドには若い女性ファンの数が普段の多いように思える。
ファイターズのレシーブで試合開始。予想通り互いに闘志をむき出しにしたねじり合いが始まる。
自陣25ヤードからのファイターズの攻撃。最初のQBドローは進まなかったが、次のプレー、光藤からピッチされたRB高松が左サイドを駆け上がって26ヤード。一気にハーフラインまで陣地を進める。続いて光藤からWR前田へのパスで7ヤードを獲得。そこからRB山口、渡辺らのランプレーを3本続け、気がつけばゴール前25ヤード。そこで光藤からWR亀山へのTDパスがヒットする。K小川のキックも決まって7-0とファイターズがリードする。
この間、9プレー。進まなかったプレーも含めて一つとして無駄と無理のないプレーが続いた。オフェンス全体が集中力を高めて臨んだ結果だろう。
続く関大の攻撃も自陣25ヤード付近から。こちらも3年生のQBが速いテンポでパスを投げ、ぐいぐいと攻め込んでくる。光藤のリリースも速いが、関大のQBもそれに負けず劣らずの速さである。ファイターズのDB陣がカバーする前に素早いパスを投げ、合間にQBキープとRBの切れ味のよいランプレーを織り交ぜ、あっという間にファイターズのゴール前。ダウン更新まで1ヤード、ゴールまで2ヤードというところまで押し込んできた。
第4ダウンショートの勝負手はゴール右隅へ走り込んだRBへのパス。一瞬通されたかと思ったが、ボールは相手の手の内からこぼれ、攻守交代。まさに「九死に一生」という場面であり、大げさに言えば、この一瞬が勝敗を分けたようなプレーだった。
しかし、ミスは相手だけではない。続くファイターズの攻撃でも、同じような暗転場面が現われる。自陣2ヤードから始まったファイターズの攻撃シリーズは前田への短いパス、山口や渡辺らのランで陣地を進め、自陣37ヤード付近から光藤がWR松井へ50ヤードのパスをヒット。一気に相手ゴール前に迫る。一気に突き放すチャンスだったが、光藤から松井へ通そうとしたTDパスが相手に奪われ、一瞬にして攻守交代。松井の長身とジャンプ力を生かし、空中戦でパスを通そうという試みだったが、弾道が意図したよりも低く、松井が競り合う前に相手DBに奪われ、せっかくのロングドライブが得点にならなかった。これまた一つ間違えば、勝敗を分けてしまうようなプレーだった。
似たような場面は後半、第3Qになってからも続く。関大は最初からノーハドルオフェンスで攻め込んで来たが、DB小椋が値千金のインターセプトで攻守交代。これまた一瞬のうちに場面が転換した。
ハーフライン付近から始まったファイターズの攻撃は、松井へのパスや高松、渡辺らのランであっという間にゴール前10ヤードまで進む。しかし、そこからの攻めが続かず、フィールドゴールを狙う。これを相手守備陣にブロックされ、せっかくの好機が無得点。
そのショックが尾を引いたのか、次の関大の攻撃では自分たちの得意とするショベルパスをRBに簡単に通され、それをカバーする選手もいないまま80ヤードの独走TDを許してしまった。これまたフィールドゴールをブロックされたショックを残したまま守備についた面々が、一瞬の隙を見せたということだろう。一瞬の隙が得点を左右し、勝敗の分岐点になるという見本のようなプレーであり、一瞬の油断、ちょっとしたミスが場面を暗転させてしまうフットボールの怖しさといってもよい。
幸いなことにファイターズは、前半、7-0とリードした後、悔しいターンオーバーにもめげず、山口のTDと小川のフィールドゴールで得点を重ね、17-0とリードしていたから助かったが、これが僅差で競り合った試合だったらどうなっていたか。考えるだけでも恐ろしい。グラウンドで戦う選手達にとっては、一つのプレーの失敗、一球のミスの恐ろしさが身に沁みたに違いない。
試合後、鳥内監督が「準備のイメージができていない。もっとうまく、強く、賢くならなアカン」と言われていたが、まさにその通りである。
シーズン当初に比べると、一つ一つのプレーの精度は上がっている。けがで戦列を離れていた井若主将、藤木、松本副主将も戦列に戻ってきた。心配されていた下級生中心のOLも関大ディフェンスに対抗出来るぐらいにまでは仕上がった。レシーバー陣は完璧だし、RB陣も揃っている。何よりQB光藤が試合ごとに成長している。
問題はその総力をどのように結集するか。次週に対戦するパナソニックは、関大よりはるかに強力な戦力を備えている。「社会人に勝つ」を目標にしているファイターズが、そんな強敵を相手にどんな戦いをするか。残された数日間に選手一人一人が覚醒し、一瞬のプレーに全知全能をしぼってくれることを期待している。
天気は晴れ、風は西から東に緩やかに流れている。夕方5時キックオフとあって、日中の暑さも多少は和らいでいる。絶好の観戦日和であり、スタンドには若い女性ファンの数が普段の多いように思える。
ファイターズのレシーブで試合開始。予想通り互いに闘志をむき出しにしたねじり合いが始まる。
自陣25ヤードからのファイターズの攻撃。最初のQBドローは進まなかったが、次のプレー、光藤からピッチされたRB高松が左サイドを駆け上がって26ヤード。一気にハーフラインまで陣地を進める。続いて光藤からWR前田へのパスで7ヤードを獲得。そこからRB山口、渡辺らのランプレーを3本続け、気がつけばゴール前25ヤード。そこで光藤からWR亀山へのTDパスがヒットする。K小川のキックも決まって7-0とファイターズがリードする。
この間、9プレー。進まなかったプレーも含めて一つとして無駄と無理のないプレーが続いた。オフェンス全体が集中力を高めて臨んだ結果だろう。
続く関大の攻撃も自陣25ヤード付近から。こちらも3年生のQBが速いテンポでパスを投げ、ぐいぐいと攻め込んでくる。光藤のリリースも速いが、関大のQBもそれに負けず劣らずの速さである。ファイターズのDB陣がカバーする前に素早いパスを投げ、合間にQBキープとRBの切れ味のよいランプレーを織り交ぜ、あっという間にファイターズのゴール前。ダウン更新まで1ヤード、ゴールまで2ヤードというところまで押し込んできた。
第4ダウンショートの勝負手はゴール右隅へ走り込んだRBへのパス。一瞬通されたかと思ったが、ボールは相手の手の内からこぼれ、攻守交代。まさに「九死に一生」という場面であり、大げさに言えば、この一瞬が勝敗を分けたようなプレーだった。
しかし、ミスは相手だけではない。続くファイターズの攻撃でも、同じような暗転場面が現われる。自陣2ヤードから始まったファイターズの攻撃シリーズは前田への短いパス、山口や渡辺らのランで陣地を進め、自陣37ヤード付近から光藤がWR松井へ50ヤードのパスをヒット。一気に相手ゴール前に迫る。一気に突き放すチャンスだったが、光藤から松井へ通そうとしたTDパスが相手に奪われ、一瞬にして攻守交代。松井の長身とジャンプ力を生かし、空中戦でパスを通そうという試みだったが、弾道が意図したよりも低く、松井が競り合う前に相手DBに奪われ、せっかくのロングドライブが得点にならなかった。これまた一つ間違えば、勝敗を分けてしまうようなプレーだった。
似たような場面は後半、第3Qになってからも続く。関大は最初からノーハドルオフェンスで攻め込んで来たが、DB小椋が値千金のインターセプトで攻守交代。これまた一瞬のうちに場面が転換した。
ハーフライン付近から始まったファイターズの攻撃は、松井へのパスや高松、渡辺らのランであっという間にゴール前10ヤードまで進む。しかし、そこからの攻めが続かず、フィールドゴールを狙う。これを相手守備陣にブロックされ、せっかくの好機が無得点。
そのショックが尾を引いたのか、次の関大の攻撃では自分たちの得意とするショベルパスをRBに簡単に通され、それをカバーする選手もいないまま80ヤードの独走TDを許してしまった。これまたフィールドゴールをブロックされたショックを残したまま守備についた面々が、一瞬の隙を見せたということだろう。一瞬の隙が得点を左右し、勝敗の分岐点になるという見本のようなプレーであり、一瞬の油断、ちょっとしたミスが場面を暗転させてしまうフットボールの怖しさといってもよい。
幸いなことにファイターズは、前半、7-0とリードした後、悔しいターンオーバーにもめげず、山口のTDと小川のフィールドゴールで得点を重ね、17-0とリードしていたから助かったが、これが僅差で競り合った試合だったらどうなっていたか。考えるだけでも恐ろしい。グラウンドで戦う選手達にとっては、一つのプレーの失敗、一球のミスの恐ろしさが身に沁みたに違いない。
試合後、鳥内監督が「準備のイメージができていない。もっとうまく、強く、賢くならなアカン」と言われていたが、まさにその通りである。
シーズン当初に比べると、一つ一つのプレーの精度は上がっている。けがで戦列を離れていた井若主将、藤木、松本副主将も戦列に戻ってきた。心配されていた下級生中心のOLも関大ディフェンスに対抗出来るぐらいにまでは仕上がった。レシーバー陣は完璧だし、RB陣も揃っている。何よりQB光藤が試合ごとに成長している。
問題はその総力をどのように結集するか。次週に対戦するパナソニックは、関大よりはるかに強力な戦力を備えている。「社会人に勝つ」を目標にしているファイターズが、そんな強敵を相手にどんな戦いをするか。残された数日間に選手一人一人が覚醒し、一瞬のプレーに全知全能をしぼってくれることを期待している。
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