石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

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(24)目頭が熱くなった

投稿日時:2017/10/10(火) 09:03

 関西リーグ4試合目。甲南大学との戦いは日曜日の午前11時半、キックオフ。今季初めての昼間の試合となった。開始直後は雲に覆われ、まだ涼しさを感じるゆとりがあった。けれども徐々に晴れ間が広がり、気がつけば真夏のような太陽が照りつけている。とても10月半ばとは思えないほどの陽気となったから、スタンドでさえバテてしまった。グラウンドで走り回る選手は大変だったろう。
 ファイターズが後半にレシーブを選択し、試合はディフェンスから始まる。その立ち上がり、甲南はランと短いパスを組合わせた攻撃で立て続けにダウンを更新。自陣23ヤードからハーフライン近くまで陣地を進める。これはやっかいなことになりそうかな、と思っている内に相手が反則。攻撃のリズムを自ら崩してしまう。
 替わってファイターズの攻撃は自陣10ヤード付近から。その第1プレーはQB西野からWR松井へのロングパス。それを見事にキャッチしてたちまち相手陣45ヤードまで迫る。こうなるとプレー選択の幅が広がる。WR中原への短いパスを決めると次はRB山口が15ヤードを走ってダウン更新。続く攻撃ではRB高松が3ヤードを走った次のプレーは再び松井への15ヤードのパス。残る8ヤードをスピードとパワーに優れた山口が走り切ってあっという間に2本目のTD。K小川のキックも決まって7-0とリードする。
 この間、ファイターズベンチはパス、パス、ラン、ショベルパス、ラン、パス、ランと組み立て、たたみかけるように攻め込む。相手守備陣は立ち止まって考えるゆとりがなく、ファイターズペースで試合が進む。相手陣42ヤードから始まった次のシリーズではTE対馬へのミドルパスと高松の18ヤードランで2本目のTD。キックも決め、相手守備陣を寄せ付けない。
 すごみを感じさせたのは、第2Qに入って最初のファイターズの攻撃。相手陣39ヤードから西野から前田耕作へのパスで9ヤード、西野のQBドローでダウンを更新すると、次は山口と高松のランで30ヤードまで前進する。相手守備陣にランを警戒させたうえで、次は西野が豪快にゴール右隅に投げ込む。これをスピードのある長身レシーバー松井が見事にキャッチし、TD。相手DBもよくカバーしていたが、松井の力と技が勝った。
 2Q終了間際には、西野から前田泰一へ短いパスを続けてゴール前に迫り、時間切れ寸前に小川がフィールドゴールを決めて24-0。
 ここまでは力強いファイターズ。攻撃も守備も要所で力を発揮し、完全にペースを握って相手に付け入る隙を与えない。さすがは優勝を争うチームならではの強さと安定感がある。日ごろの上ヶ原での練習に取り組む姿と合わせ、今季も順調に仕上がってきたと一安心した。
 ところが、後半に入り、攻守ともに1枚目のメンバーを少しづつ外し、交代メンバーを出してくると、様相は一変する。第3Q最初の攻撃シリーズこそ、QB光藤からTE荒木、WR長谷川へのパス、RB中村のランなど3年生中心の攻撃が機能し、相手ゴールに迫ったが、ハンドオフのミスなどがあって、結局は小川のFGで3点を挙げただけ。続くシリーズも、QB光藤が盛んにパスを投げたが、レシーバーとの呼吸が合わずに攻撃が続かない。
 ディフェンスも同様で、甲南の素早いパスと切れのよいランが止められない。じりじりと陣地を進められ、第3Q終了間際にはTDも許してしまった。
 上ヶ原のグラウンドでは、チームの練習が始まる前の恒例となっているQBとWRの自主練習で、先発メンバーや主な交代メンバー相手に快調にパスを決め続けている光藤の姿を見ているだけに「どういうことか、2枚目、3枚目相手ではタイミングが合わないのか」と心配になる。試合後、鳥内監督や大村コーチにこの点を確かめると、ともに「その通り。下級生は練習が足らん。授業があるから仕方がないが、この試合、この一球に対する思いも足りてない」「技術的にも大学のレベルには到達していない。ボールを見た瞬間にスピードを落とす悪い癖がついているから、一枚目相手なら通るパスが通らない」と厳しい言葉が並ぶ。
 レシーバーは華やかなポジションだから、ミスをすれば目立つ。しかし、ほかのポジションでも目立たない所で未熟なところが目についた。これを「2番手、3番手のメンバーだから仕方がない」といっていては、いつまで経っても成長は望めない。4年生が中心になって、普段から足りないところを注意していくしかない。
 立命館に敗れた2年前の悔しさを胸に抱き、ライスボウルで社会人の高いレベルを知って練習に励んでる上級生は何人もいる。そうしたメンバーが「チームに所属していれば立命に勝てる」「甲子園ボウルでも勝てる」と勘違いしている下級生の意識をどう変えていくか。ポイントはそこであり、そこを教訓にしてこそこの試合の収穫もある。
 その意味で、僕は第4Qの終盤、4年生LB鳥内のインターセプトで掴んだ相手陣42ヤード付近からの攻撃シリーズを注目した。普段の試合では、ほとんどベンチを温めている4年生が続々と登場したからである。いわば「卒業シリーズ」とでもいうような場面であり、QBには百田、RBには久保田が出ていた。
 第1プレーは期待通り百田から久保田へのハンドオフ。そこで久保田が見事なカットバックで約20ヤードを走る。続くプレーも同様、久保田のラン。残る3ヤードを百田から3年生長谷川へのパスでTD。わずか3プレーでTDにつなげたこと以上に、僕はいきなり起用された久保田が2度の出場機会を2度とも素晴らしい走りで締めくくってくれたことがうれしかった。目頭が熱くなった。
 彼は龍野高校の出身。身長167センチ、体重73キロ。高校時代はサッカーをやっており、フットボールは未経験だ。しかし、こつこつと練習を積み、選手として4年間をこのチームで過ごした。でも、試合に出してもらえることはほとんどなく、3年生の頃は主としてフレッシュマンの指導を担当、4年生になってからはLBやDBのメンバー相手に「仮想ランナー」の役割を務めていた。小柄で当たりの強さはないが、カットバックに優れているから、LBやDBを振り回す役割が適任と期待されたのだろう。
 チーム練習が始まる1時間も2時間も前から、彼は手の空いたLB、DBのメンバーの相手にそうした練習を続けている。時には早めに出てきた下級生RBをその練習に加え、RBにカットの切り方、走り方の指導も同時に務めている。
 けれども、1枚目、2枚目のRBには高松や山口がいる。下級生には伸び盛りの渡辺や鈴木、三宅らがいる。なかなか試合に出るチャンスはない。実際、チームタイムが始まっても、彼が攻撃メンバーとして参加しているのを見たことがない。
 そういう選手が、いわゆる「4年生シリーズ」で出場の機会を得た。そして2度の機会でともに20ヤードほどを獲得した。合計獲得ヤードは39ヤード。この日出場したファイターズのランニングバックでは一番の記録だった。彼の日ごろの役割、チームへの貢献振りを見てきた人間の一人として、目頭が熱くなったのも当然だろう。

(23)闘争心

投稿日時:2017/09/24(日) 17:51

 9月22日の京大戦を前に、主務の三木大己君がこのホームページ「主務ブログ」に「裏付けのある闘争心を持って目の前の1プレーに全力をぶつける」と書いていた。「気合いだ!」「闘争心だ!」と叫ぶだけでなく、どのように相手とぶつかるか、どのようにすれば目の前の相手を吹っ飛ばし、プレーを進めることができるか。その一つ一つに裏付けを持て、その裏付けを練習で確固たるものにせよ。そうすれば、試合では無心に戦うことができる。どんなに強い相手でも、怖れず臆せずぶつかっていける。そういう意味だろう。
 さすがは4年生、これでこそチームのリーダーだと感心し、よしっ、その心意気を存分に見せてもらおうと期待して、3時限目の授業が終わると同時に、雨の西京極スタジアムに足を運んだ。
 期待は裏切られなかった。立ち上がりからファイターズの守備陣が健闘。最初のシリーズはDL三笠、LB海崎の激しいタックルで相手攻撃を完封。簡単にパントに追いやる。
 攻撃陣も呼応する。相手の闘争心をいなすようにQB西野からWR前田へのパス、RB山口のランで陣地を進める。時にはRB鈴木へのパスで目先を変え、相手が混乱する隙にWR松井へのパスを通し、あっという間に相手陣34ヤード。
 ところが、ここからがいただけない。第1ダウンでゴールめがけて長いパスを投じたが、レシーバーが一人もいない。気を取り直して、今度はドロープレーで12ヤード前進したが、ここは反則で逆に5ヤードの罰退。あげくにスナップが乱れ、せっかくの先制点のチャンスを自ら放棄してしまう形になった。
 さらにファイターズのミスは続く。次の京大の攻撃シリーズを守備陣が完封し、第4ダウン4ヤード。パントの状況に持ち込んだのに、なんとファイターズは12人がプレーに参加してしまい、みすみす相手の攻撃を続けさせてしまう。
 ヤバイ、浮き足立っている。「闘争心」を強調する余り、「平常心」が失われてしまったのか。何とか落ち着いてくれ。そんな気持ちが通じたのか、DL三笠と今井が鋭い動きでQBを追い詰め、陣地を後退させて、ファイターズに流れを取り戻す。
 ここで今度は京大にお返しのようなミスが出る。パントを蹴る態勢でスナップされたボールがパンターのはるか上を越え、自陣のゴール前6ヤードまで転がってしまったのだ。気持ちがはやるあまりの出来事だろう。闘争心が裏目に出たということかもしれない。そういえば、ファイターズの最初の攻撃でも、京大の守備陣は意気込みが空回りした形でオフサイドの反則を犯している。これもまた、闘争心の制御に失敗したということだろう。
 ともかくチャンスである。ファイターズの攻撃は相手ゴール前6ヤードから。この好機にRB高松が鮮やかなステップでゴールまで切れ込みTD。K小川のキックも決まって7-0。ようやくファイターズの攻撃陣も落ち着きを取り戻す。
 こうなると、守備陣の安定しているファイターズは力が出る。相手がワイルドキャットの態勢から仕掛けてきたランプレーをDB小椋が強烈なタックルで仕留め、続くパスもDB畑中がはたき落とす。
 次のファイターズの攻撃は自陣8ヤードから。相手の長いパントでゴール前に追い込まれたが、ここで西野のビッグプレーが出る。RBに渡すと見せかけたボールをそのままキープ。一気に82ヤードを走ったのだ。
 この場面、ファイターズはゴールを背に2度のランプレーを選択したが、ともに進まない。もし、パントに追いやられるとしても、もう少しいい位置から蹴らしたい、という状況である。相手守備陣だけでなくぼくも中央のランプレーを予測していた。実際、3度目のプレーでも、西野の動きはその前の2回と同様、RBにボールを渡すように見えた。ところがこれが見事なフェイク。中央を固めた相手守備陣はそのフェイクにひっかかり、思わず西野へのマークが甘くなる。その隙を突いて西野が快足を飛ばし、一気に82ヤードを突っ走った。
 場内の興奮が頂点に達したところで次のプレーはRB山口へのハンドオフ。先ほどのプレーの残像が残っている京大守備はRBの動きに対応できず、簡単に中央を突破してTD。14-0とリードを広げる。
 次のファイターズの攻撃シリーズは、一転してパスが中心。松井、前田耕、阿部らのWR陣を次々と走らせ、あっという間にゴール前28ヤード。そこから高松が2度続けてボールを持ってTD。21-0とリードを広げる。
 激戦が予測された伝統の一戦だったが、ここまで点差が広がると、リードしている方は落ち着いてプレーできる。逆に、追い上げる方はどうしても無理が出る。そうなると、余裕のあるチームの方が実力を発揮できる。
 とりわけファイターズのような守備陣が安定しているチームは隙を見せない。1列目には柴田、寺岡、今井、三笠を並べ、2列目は松本、海崎、吉野、そして3列目には絶対的な守護神小椋を中心に木村、横澤、畑中が並ぶ。この日は、それぞれが鋭い出足とタックルで見せ場をつくった。インターセプトこそなかったが、ファンブルカバーで相手ボールも奪い取った。終わって見れば、京大がラン攻撃で得た陣地はわずか1ヤード。守備陣の活躍振りはいくら書いても書ききれないほどである。
 僕はこの日、2、3時限に授業があり、昼飯を正門前のスパゲティーの店で食べた。たまたま同じ店で昼食をしていた副将の松本君と小椋君に出合い、「体調は大丈夫か。頑張れよ。授業が終わり次第、飛んでいくから」と声を掛けた。
 「思いっきりやります」と口を揃えた彼らが目を見張るプレーを連発してくれた。攻撃陣の華やかな活躍の前で、ついつい見過ごされがちな守備の面々が存分に活躍してくれたことが、僕にはことのほかうれしかった。
 次の試合の前には、攻撃の面々と食事をしようか。再びいいことがあるかもしれない。
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