石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

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(5)またも「がっぷり四つ」

投稿日時:2024/06/11(火) 08:21

 9日は、立命館大学びわこ・くさつキャンパスでパンサーズとの交流戦。びわこ・くさつキャンパス開学30周年記念試合と名付けられ、立命館の総長や地元市長が来賓席に並ぶ厳粛な雰囲気の中での戦いだった。けれども、いざ試合が始まると、記念試合というよりも、この戦いがそのまま関西の覇権に直結するような厳しい戦いとなった。
 先手を取ったのはファイターズ。コイントスでレシーブを選択。自陣25ヤード始まった第1プレーは、1年生QBの星野弟から同じく1年生WR片桐へのパス。8ヤードを進めて気持ちを落ち着ける。2つ目のプレーはQB星野のキープ。右のライン際を鋭く駆け上がる。3つめはRB伊丹へのサイドパス。伊丹ならではの華麗な身のこなしで縦に切れ上がり、相手陣26ヤード付近まで前進。そこからランプレーを続けて陣地を進め、仕上げはリンスコットへの短いパスでTD。K大西のキックも決まって7-0。
 このように書けば、何もかもが計算通りと思われるかもしれないが、その主役を担ったのが今春入学したばかりの1年生。1軍の練習に加わってから、まだ1カ月ほどというWRとQBのコンビだから恐れ入る。
 もちろん、彼らを支えるOLやRBの適切な動きがあってこその活躍だが、同じくこの日も守備の1年生として唯一、先発メンバーに名前を連ねたDL田中志門を合わせ、それぞれ全く物怖じしないプレーが頼もしい。
 新しい守備のメンバーと言えば、今春から試合に出るようになった2年生DBの伊東や永井、油谷といった面々の動きも素晴らしかった。身体能力の高い立命のQBをはじめ、RBやWR陣の素早い動きに懸命に食らいつき、簡単には陣地を進めさせない。この日は守備陣のエースともいえる東田が欠場したが、その穴を全く感じさせないような動きで、能力の高い相手RBやWRの動きをカバーし続けた。
 その結果としての24-24。両軍が互いのプライドを分け合ったような結果で試合が終了した。
 先日の関大、そしてこの日の立命。春のシーズンを全く五分の戦いで終えた相手の力量は素晴らしい。それだけに、従来は「春の試合はオープン戦」というような感覚で受け止めていた私にとっては、驚天動地という二つの試合だった。
 もちろん、選手にとっては「全ての試合が本番」である。ライバルが本気で向かってきてくれたからこそ、そこから得られるもは大きい。100日の練習より1日の実戦という言葉があるのも、その辺の呼吸を表現しているのだろう。
 その言葉通りの試合を2戦連続で戦ったのが、今春のファイターズである。幸い、そこにはチームの未来を担う2年生や1年生が数多く含まれている。「春はオープン戦、本番は秋」という従来のような感覚ではなく、「練習の全てが本番につながる」という覚悟で練習に励み、自分を高め、仲間と高めあってもらいたい。
 新しいメンバーが数多く出場し、それぞれがキラリと光ったこの日の立命戦。試合は引き分けに終わり、チームとしては満足出来ない試合だったかもしれない。けれども、この試合から学べることは数多くある。それを見つけ、学び、自分の糧として秋に備えてもらいたい。
 現場に学び、仲間と共に明日への糧としていけるのが、チームスポーツの素晴らしいところである。先日の関大戦後に抱いた感想と全く同じような結論になってしまったが、ライバルに学び、その存在を自分を高めるための力にすることが出来るのが、学生スポーツの魅力である。

(4)がっぷり四つの真剣勝負

投稿日時:2024/05/29(水) 08:03

 春のシーズンとは思えないような真剣勝負。26日、吹田市のMKタクシーフィールドエキスポで行われた関大との戦いは、互いに準備してきたプレーを次々と披露し、魂と魂をぶつけ合って、春のシーズンとは思えないような激戦になった。
 なんせ相手は昨秋、関西リーグ最終戦でファイターズを破りながら、それぞれ6勝1敗となった立命、関大、関学による抽選で甲子園ボウルの出場権を逃し、悔しい思いをしているチームである。春の試合といっても、その悔しさを晴らしたい、ライバルを叩きのめしたい、という強い気持ちでこの試合に臨んでいるのは間違いない。
 ファイターズのメンバーにとっても同様だだろう。昨秋の関西リーグは全勝で最終の関大戦を迎えながら16-13で敗れ、6勝1敗。同じく1敗の立命を加えた3校で抽選した結果、ファイターズが出場権を手にして甲子園ボウルに出場した。そこで関東代表を圧倒して史上初の6連覇を達成したが、その前史には、そういう悔しい敗戦が刻まれているのである。
 そんな因縁のある相手である。春の試合とはいえ、互いに今度は譲れないとの気持ちを前面に出し、激しく戦った。
 先攻はファイターズ。いきなり反則で5ヤードの罰退を受けて始まった。その第1プレーはQBリンスコットからWR片桐へのパス。それが通って16ヤード前進。続くプレーも同じ片桐へのサイドスクリーンパス。キャッチした片桐がセンターラインを超えて相手陣に進む。さらに相手のパーソナルファールで陣地を進め、相手ゴールまで38ヤード。
 パスに次ぐパスで攻め込んだ後、最初のランプレーはエースRB伊丹。相手を交わして走ろうとした瞬間、グラウンドに足をとられて転倒し、ノーゲイン。リンスコットがスクランブルで前進したが、ダウン更新には至らず、フィールドゴールを狙ったが、これも風に流されて得点ならず。
 0-0で迎えた第2Q。関大は絶妙のパスプレーで陣地を進め、仕上げはFGゴール。次の攻撃シリーズでもFGを決めて6-0とリードを広げる。関大はQBとレシーバーの呼吸がぴったり合って、ぐいぐいと陣地を進める。それに対抗するファイターズの守備陣も、それを食い止めようと身体を張って守るが、能力の高いQBとWRが相手では、なかなか思い通りにいかないようだ。
 それでも、なんとかTDを阻止してきた守備陣の頑張りで前半は0-6。
 その我慢が後半になって生きてくる。
 きっかけは第3Qの半ば。相手が自陣最深部から蹴ったパントがうまく当たらず、関大陣15ヤード付近からファイターズの攻撃。QBは1年生の星野太吾。エースQB星野秀太の弟で、兄と同じ足立学園から今春、ファイターズに入部したばかりである。
 最初のパスは相手にはじかれたが、次は伊丹のラン。3プレー目は同じく伊丹にスクリーンパス。それを受けた伊丹が素早い身のこなしでゴールまで駆け込んでTD。キックも決まって7-6。1年生とは思えないQBの細かいプレーと、伊丹の鋭い動きが逆転劇を呼び込んだ。
 しかし、相手の能力は高い。次のシリーズでは思い切ったパスプレーで陣地を進め、第4Qに入った最初のプレーにもFGを決めて逆転。得点は7-9。再び関大がリードを奪い、残り時間は12分弱。
 さて、ファイターズはどう攻めるか。目を凝らせたが、ファイターズの攻撃は基本に忠実。RB伊丹、澤井のランとWR片桐、百田らへの短いパスで陣地を稼ぎ、FGを決めて10-9。
 攻撃陣が点を取れるようになると、守備陣も落ち着いて相手の動きを注視できる。関大陣29ヤード付近から相手QBが投じたパスをDB酒井が「待ってました」というようなタイミングでインターセプト。あっという間に攻撃権を取り戻す。相手の動きに目が慣れてきたのか、それとも、残り時間から考えてここは勝負所という感覚が働くのか。ともかく経験を積んだ4年生ならではのプレーで、相手の反撃に手がかりを与えない。
 守備陣が頑張れば、オフェンスも呼応する。センターライン付近から始まったファイターズの次の攻撃。まずはRB伊丹が中央を走ってダウンを更新。次はQB星野の短いパス。続けてRB伊丹、澤井のランで時間と陣地を稼ぎ、仕上げは澤井のランでTD。キックも決まって17-9。
 最終盤。関大も懸命に追い上げた。交代メンバーが増えたファイターズはなかなか対応出来ず、TDを奪われたが、2ポイントコンバージョンを阻止し、最終的なスコアは17-15。
 薄氷を踏むような勝利だったが、それでも数多くのメンバー、とりわけ2年生で先発メンバーに名を連ねたWR百田、塚本、QBリンスコット、DL八木、DB永井、伊東、1年生のWR片桐、DL田中。そして交代メンバーとして司令塔を任されたQB星野たちにとっては、貴重な経験になったに違いない。
 今後、何度も立ち向かわなければならないこの相手と「真剣勝負」したこの日の経験を糧に、さらなる高みを目指して努力を続けてもらいたい。
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