石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
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(23)難解な試合
投稿日時:2018/10/22(月) 23:29
18日の京都大学戦は、極めて評価の難しい試合だった。見る者の視点、立場によって正反対の採点がなされても、僕にはなんら不思議でないと思えた。
僕自身は「さすが京大。強かった」と思ったが、京大を応援する立場で考えると「せっかくあそこまで押し込んでいるのに、なぜ、TDが取れないんだ。もったいない」と不満が出るかもしれない。
逆に、ファイターズの関係者やファンの中には、今後、関大や立命と戦い、勝利するためには「あんな試合ではどうにもならん。もっともっと練習し、力をつけなくては」と奮起を促す声も多いはずだ。
結果は23-3。この数字だけを見れば、ファイターズが順当に勝利したと評価しても間違いではない。だが、現場で一つ一つのプレーに汗を握り、一瞬たりとも目を離さなかった僕からいえば「薄氷を踏む思い」という言葉がぴったりだった。
まずは得点経過から振り返ってみよう。ファイターズのレシーブで開始された第1シリーズ。いきなりQB奥野からWR松井への11ヤードパスがヒットしてダウンを更新。「さすが松井、今季初めてのスタメンなのに、エエ感じや」と喜んだが、喜びはそこまで。京大の強力な守備ラインに阻まれて、ランプレーが進まず、第3ダウンの短いパスも通らず、あっという間に攻守交代。
自陣35ヤード付近から始まった2度目のシリーズは、奥野からWR小田への20ヤードほどのパスが決まり、そこからRB山口、中村の粘り強い走りで陣地を進めた。しかし、相手ゴール前9ヤードからの攻撃が続かず、K安藤のFGによる3点にとどまった。
次の攻撃シリーズも、相手の反則などで陣地を進めながら攻撃がかみ合わず、またもやパント。4度目の攻撃シリーズも、RB渡邊のラン、WR阿部への長いパスで陣地を進めたものの、結局は安藤のFGによって3点を追加しただけ。京大に1本TDを決められただけで、即、逆転もというしんどい試合展開が続く。
逆に、京大守備陣は苦しい場面を2度、3度と跳ね返すことで徐々に調子を上げてくる。それに呼応して攻撃陣も奮起する。ライン同士のせめぎ合いで主導権を握り、RBがひたむきに陣地を稼ぐ。これはやばい、一本パスが通れば逆転されるぞ、と思っていたところでなんとか前半終了。
後半は京大のレシーブから。それを守備陣が3アンドアウトにしとめ、ファイターズの攻撃は自陣11ヤードから。今度も山口のランや松井へのパスで陣地を進めるが、結局はTDに持ち込めない。なんとかゴール前15ヤードから安藤が3本目のFGを決めて9-0。依然として油断できない状況が続く。
逆に、3度に渡ってゴール前まで攻め込まれながら、一度もTDを許さなかったことで京大の士気が上がる。案の定、次のシリーズは完全に京大ペース。ラインが押し込み、バックが走る。スタンドから見ていると、同じ画面の繰り返しのようなランプレーでひたすら攻め込み、4Qが始まったときには関学ゴール前3ヤード。そこから3度の攻撃は何とか守備陣が踏ん張って食い止めたが、それでもFGで3点を返し、再びTD1本で逆転という状況に持ち込む。
苦しいせめぎ合いの中で、突破口を開いたのがリターナーに入ったWR尾崎。自陣奥深くにけり込まれたパントを確保すると、一気に34ヤードをリターンし、絶好ポジションから攻撃陣にボールを託す。
奥野から交代していたQB西野がここで走り、小田への長いパスを決めてゴール前5ヤードに迫る。まずは突破力のある山口にボールを託して4ヤード。残る1ヤードを山口のダイブでTDに仕上げる。
この場面、一発で決まったと見えたが、相手DLも強力だ。空中で山口のダイブを止め、態勢を建て直して再度、右側から駆け込もうとする山口を止めにかかる。その瞬間、西野が山口の背後を押して無理矢理ゴールラインに押し込む。攻める方も守る方も一歩も譲らず、これぞ関京戦というプレーの応酬だ。わずかにファイターズ攻撃陣の意地が勝り、TDにつながったといってもよいだろう。
ここで16-3。残り時間も少なく、勝負の帰趨は見えた。こうなると、さすがの京大も緊張の糸が切れる。相手がファンブルしたボールをFS畑中が確保して攻守交代。渡邊が17ヤードのTDランを決めて勝負あった。
この結果をどう見るか。関学サイドに立てば、徹底したランプレーで攻め込む京大の攻撃を必死に食い止めた守備陣の健闘に注目する人もあるだろう。相手守備ラインに押し込まれ、思い通りにプレーできなかった攻撃陣に注文を付ける人もいるだろう。それでも死にものぐるいでTDを奪った攻撃陣の気力を称賛する声もあるはずだ。さらに、監督やコーチの立場に立てば、これから予定される関大や立命との戦いには、攻守とももう1段レベルアップを図る必要があると叱咤する声が挙がってもおかしくない。
京大サイドから見れば、ライン戦で一歩も引かなかった攻守のラインに「よくやった」という声が上がってもおかしくないし、RB陣の奮闘に注目する人も多いはずだ。大学に進学してからフットボールを始めたメンバーが多いのに、これだけのチームを創り上げた指導者を称える人もあれば、ラン一辺倒の攻撃に「もう少しパス攻撃で変化を付けられなかったのか」と残念がる人がいるかもしれない。
久々に手に汗握った伝統の一戦。それはスタンドから見れば、かくも難解な試合だった。
けれども、グラウンドで戦う選手諸君にはもうそれぞれの答が出ているはずだ。自分の力の及ばなかった点も、ここは通用するという手応えも、十分に実感したはずだ。それを徹底的に突き詰め、もう一段のレベルアップを図ろう。
手本になるのは、この日、けがから回復したばかりで出場。随所にさすがというプレーを見せた松井や山口、横澤らの闘魂である。その攻撃的な姿勢から学び、成長の糧にしてもらいたい。ピンチはチャンス。今が脱皮の時である。
僕自身は「さすが京大。強かった」と思ったが、京大を応援する立場で考えると「せっかくあそこまで押し込んでいるのに、なぜ、TDが取れないんだ。もったいない」と不満が出るかもしれない。
逆に、ファイターズの関係者やファンの中には、今後、関大や立命と戦い、勝利するためには「あんな試合ではどうにもならん。もっともっと練習し、力をつけなくては」と奮起を促す声も多いはずだ。
結果は23-3。この数字だけを見れば、ファイターズが順当に勝利したと評価しても間違いではない。だが、現場で一つ一つのプレーに汗を握り、一瞬たりとも目を離さなかった僕からいえば「薄氷を踏む思い」という言葉がぴったりだった。
まずは得点経過から振り返ってみよう。ファイターズのレシーブで開始された第1シリーズ。いきなりQB奥野からWR松井への11ヤードパスがヒットしてダウンを更新。「さすが松井、今季初めてのスタメンなのに、エエ感じや」と喜んだが、喜びはそこまで。京大の強力な守備ラインに阻まれて、ランプレーが進まず、第3ダウンの短いパスも通らず、あっという間に攻守交代。
自陣35ヤード付近から始まった2度目のシリーズは、奥野からWR小田への20ヤードほどのパスが決まり、そこからRB山口、中村の粘り強い走りで陣地を進めた。しかし、相手ゴール前9ヤードからの攻撃が続かず、K安藤のFGによる3点にとどまった。
次の攻撃シリーズも、相手の反則などで陣地を進めながら攻撃がかみ合わず、またもやパント。4度目の攻撃シリーズも、RB渡邊のラン、WR阿部への長いパスで陣地を進めたものの、結局は安藤のFGによって3点を追加しただけ。京大に1本TDを決められただけで、即、逆転もというしんどい試合展開が続く。
逆に、京大守備陣は苦しい場面を2度、3度と跳ね返すことで徐々に調子を上げてくる。それに呼応して攻撃陣も奮起する。ライン同士のせめぎ合いで主導権を握り、RBがひたむきに陣地を稼ぐ。これはやばい、一本パスが通れば逆転されるぞ、と思っていたところでなんとか前半終了。
後半は京大のレシーブから。それを守備陣が3アンドアウトにしとめ、ファイターズの攻撃は自陣11ヤードから。今度も山口のランや松井へのパスで陣地を進めるが、結局はTDに持ち込めない。なんとかゴール前15ヤードから安藤が3本目のFGを決めて9-0。依然として油断できない状況が続く。
逆に、3度に渡ってゴール前まで攻め込まれながら、一度もTDを許さなかったことで京大の士気が上がる。案の定、次のシリーズは完全に京大ペース。ラインが押し込み、バックが走る。スタンドから見ていると、同じ画面の繰り返しのようなランプレーでひたすら攻め込み、4Qが始まったときには関学ゴール前3ヤード。そこから3度の攻撃は何とか守備陣が踏ん張って食い止めたが、それでもFGで3点を返し、再びTD1本で逆転という状況に持ち込む。
苦しいせめぎ合いの中で、突破口を開いたのがリターナーに入ったWR尾崎。自陣奥深くにけり込まれたパントを確保すると、一気に34ヤードをリターンし、絶好ポジションから攻撃陣にボールを託す。
奥野から交代していたQB西野がここで走り、小田への長いパスを決めてゴール前5ヤードに迫る。まずは突破力のある山口にボールを託して4ヤード。残る1ヤードを山口のダイブでTDに仕上げる。
この場面、一発で決まったと見えたが、相手DLも強力だ。空中で山口のダイブを止め、態勢を建て直して再度、右側から駆け込もうとする山口を止めにかかる。その瞬間、西野が山口の背後を押して無理矢理ゴールラインに押し込む。攻める方も守る方も一歩も譲らず、これぞ関京戦というプレーの応酬だ。わずかにファイターズ攻撃陣の意地が勝り、TDにつながったといってもよいだろう。
ここで16-3。残り時間も少なく、勝負の帰趨は見えた。こうなると、さすがの京大も緊張の糸が切れる。相手がファンブルしたボールをFS畑中が確保して攻守交代。渡邊が17ヤードのTDランを決めて勝負あった。
この結果をどう見るか。関学サイドに立てば、徹底したランプレーで攻め込む京大の攻撃を必死に食い止めた守備陣の健闘に注目する人もあるだろう。相手守備ラインに押し込まれ、思い通りにプレーできなかった攻撃陣に注文を付ける人もいるだろう。それでも死にものぐるいでTDを奪った攻撃陣の気力を称賛する声もあるはずだ。さらに、監督やコーチの立場に立てば、これから予定される関大や立命との戦いには、攻守とももう1段レベルアップを図る必要があると叱咤する声が挙がってもおかしくない。
京大サイドから見れば、ライン戦で一歩も引かなかった攻守のラインに「よくやった」という声が上がってもおかしくないし、RB陣の奮闘に注目する人も多いはずだ。大学に進学してからフットボールを始めたメンバーが多いのに、これだけのチームを創り上げた指導者を称える人もあれば、ラン一辺倒の攻撃に「もう少しパス攻撃で変化を付けられなかったのか」と残念がる人がいるかもしれない。
久々に手に汗握った伝統の一戦。それはスタンドから見れば、かくも難解な試合だった。
けれども、グラウンドで戦う選手諸君にはもうそれぞれの答が出ているはずだ。自分の力の及ばなかった点も、ここは通用するという手応えも、十分に実感したはずだ。それを徹底的に突き詰め、もう一段のレベルアップを図ろう。
手本になるのは、この日、けがから回復したばかりで出場。随所にさすがというプレーを見せた松井や山口、横澤らの闘魂である。その攻撃的な姿勢から学び、成長の糧にしてもらいたい。ピンチはチャンス。今が脱皮の時である。
(22)ファイターズと校訓
投稿日時:2018/10/16(火) 08:36
先週末、チームの練習を見せてもらって、素人目にも、何かが変わったという印象を受けた。どういうことか。思いつくままに書いてみよう。
一つは、ゲーム前の練習の密度が濃くなったように見えたことである。それは僕が見学した日だけかも知れないが、例えばQBとレシーバーの練習前の自主練では、QB3人が実戦を想定したパスを次々と投げ込み、それをレシーバーが全力でキャッチする。そのテンポとパスの精度が甲南戦の前よりもはるかによくなっていた。
二つめは、練習開始となってからの動きの強度が一段と上がったように見えたこと。例えばレシーバーがダミーを持った選手を跳ね上げる場面。味方同士の練習であり、通常なら当たった瞬間に力を抜き、受け手のダメージを少なくするのだが、この日の4年生は全く力を抜かない。基本に忠実に、実戦通りのスピードで受け手にぶつかり、全力で押し上げる。
受けた方はあまりにも強い当たりを受けきれず、仰向けに倒れ、信じられないという表情をしている。これぞ、実戦を想定した練習である。その場面を目のあたりにした選手全員がその一瞬、凍りつき、グラウンドの空気がピーンと張り詰めた。サイドラインから見ていても分かるほどだから、当の選手たちは全員、練習のギアが一段と上がったことを身にしみて感じたに違いない。
三つめは、試合に出るメンバーとJVのメンバーが敵味方に分かれて進めるチーム練習である。それぞれの担当コーチやアシスタントコーチが一つ一つのプレーに口を出し、アドバイスを送る場面が一気に増えた。リーグ戦がスタートして4戦目までは、そこまでの緊迫感は見られなかっただけに、いよいよ決戦の時だとぞくぞくした。
もう一つある。これはチームの練習内容とは直結しないが、グラウンドに通じる階段が練習前に美しく掃き清められていることだ。知る人ぞ知る話だが、この階段は練習が終わった時にはいつも、恐ろしく汚くなる。グラウンドに敷き詰められている人工芝のピッチが選手のスパイクに付着し、それが階段に落ちるからだ。
それを練習前、丁寧に掃き清めているのが主務の安西君。先日、たまたま、練習開始の1時間半ほど前に出掛けたら、一人、黙々と掃除している姿を見掛けた。聞けば、みんなが気持ちよく練習に参加できるようにと思って、毎日、練習前の掃除を心掛けているそうだ。「幸い、単位も取れているので、授業に出る必要がない。主務の仕事をやりくりすれば、掃除の時間は捻出できますから」という話だった。
そういえば、先日、僕はこのコラムに「試合前の練習後には決まって部員全員がグラウンドのごみを拾う。グラウンドを美しくした上で試合に臨む」と書いた。その中に、溝の掃除を除いて、と書いているのを見つけた光藤主将が安西君を誘って、二人で溝掃除をしたそうだ。これもまた、日々、当たり前のようにグラウンドを使用できることに感謝している部員たちの気持ちの表れだろう。そういうことを下級生ではなく、チームのリーダーである4年生が率先して実行するところにファイターズの真実がある。
話は飛ぶが、関西学院のスクールモットーは「Mastery for Service」である。その言葉は通常「奉仕のための練達」と訳されるが、1915年、ベーツ先生(後に4代目院長に就任)は学生たちに向かって演説する中でその意味について「人は富や財産のためではなく、広く社会に奉仕するために生きている。そのためには自らを鍛え、強くあらねばならない。弱虫はいらない」といった説明をされている。
いま、ファイターズの諸君が日々、ストイックに取り組んでいることは、その校訓の実践に他ならない。そう僕は考えている。
主将が率先してグラウンドを周る溝を掃除し、主務が毎日のように箒を手にグラウンドへの階段を清掃する。試合に出る4年生のメンバーは、たとえ仲間内であっても本気の練習を普段から心掛ける。レシーバーもクォターバックも、練習開始のずっと前からグラウンドに出て営々と実戦練習に励む。
これらはすべて弱虫はいらない、強くあらねばならない、有能であらねばならない、という強い覚悟があるからこそではないか。その意味ではファイターズの諸君は日々、ベーツ先生の校訓を実践している面々であると言い切ってもよいだろう。
こういうストイックな取り組みを、当然のように実践できるところがファイターズの魅力であり、だからこそグラウンドでも躍動できるのだと僕は信じている。今週、金曜日の京大との戦い、それに続く関大、立命との戦いで、その成果を見せてもらいたい。健闘を期待する。
一つは、ゲーム前の練習の密度が濃くなったように見えたことである。それは僕が見学した日だけかも知れないが、例えばQBとレシーバーの練習前の自主練では、QB3人が実戦を想定したパスを次々と投げ込み、それをレシーバーが全力でキャッチする。そのテンポとパスの精度が甲南戦の前よりもはるかによくなっていた。
二つめは、練習開始となってからの動きの強度が一段と上がったように見えたこと。例えばレシーバーがダミーを持った選手を跳ね上げる場面。味方同士の練習であり、通常なら当たった瞬間に力を抜き、受け手のダメージを少なくするのだが、この日の4年生は全く力を抜かない。基本に忠実に、実戦通りのスピードで受け手にぶつかり、全力で押し上げる。
受けた方はあまりにも強い当たりを受けきれず、仰向けに倒れ、信じられないという表情をしている。これぞ、実戦を想定した練習である。その場面を目のあたりにした選手全員がその一瞬、凍りつき、グラウンドの空気がピーンと張り詰めた。サイドラインから見ていても分かるほどだから、当の選手たちは全員、練習のギアが一段と上がったことを身にしみて感じたに違いない。
三つめは、試合に出るメンバーとJVのメンバーが敵味方に分かれて進めるチーム練習である。それぞれの担当コーチやアシスタントコーチが一つ一つのプレーに口を出し、アドバイスを送る場面が一気に増えた。リーグ戦がスタートして4戦目までは、そこまでの緊迫感は見られなかっただけに、いよいよ決戦の時だとぞくぞくした。
もう一つある。これはチームの練習内容とは直結しないが、グラウンドに通じる階段が練習前に美しく掃き清められていることだ。知る人ぞ知る話だが、この階段は練習が終わった時にはいつも、恐ろしく汚くなる。グラウンドに敷き詰められている人工芝のピッチが選手のスパイクに付着し、それが階段に落ちるからだ。
それを練習前、丁寧に掃き清めているのが主務の安西君。先日、たまたま、練習開始の1時間半ほど前に出掛けたら、一人、黙々と掃除している姿を見掛けた。聞けば、みんなが気持ちよく練習に参加できるようにと思って、毎日、練習前の掃除を心掛けているそうだ。「幸い、単位も取れているので、授業に出る必要がない。主務の仕事をやりくりすれば、掃除の時間は捻出できますから」という話だった。
そういえば、先日、僕はこのコラムに「試合前の練習後には決まって部員全員がグラウンドのごみを拾う。グラウンドを美しくした上で試合に臨む」と書いた。その中に、溝の掃除を除いて、と書いているのを見つけた光藤主将が安西君を誘って、二人で溝掃除をしたそうだ。これもまた、日々、当たり前のようにグラウンドを使用できることに感謝している部員たちの気持ちの表れだろう。そういうことを下級生ではなく、チームのリーダーである4年生が率先して実行するところにファイターズの真実がある。
話は飛ぶが、関西学院のスクールモットーは「Mastery for Service」である。その言葉は通常「奉仕のための練達」と訳されるが、1915年、ベーツ先生(後に4代目院長に就任)は学生たちに向かって演説する中でその意味について「人は富や財産のためではなく、広く社会に奉仕するために生きている。そのためには自らを鍛え、強くあらねばならない。弱虫はいらない」といった説明をされている。
いま、ファイターズの諸君が日々、ストイックに取り組んでいることは、その校訓の実践に他ならない。そう僕は考えている。
主将が率先してグラウンドを周る溝を掃除し、主務が毎日のように箒を手にグラウンドへの階段を清掃する。試合に出る4年生のメンバーは、たとえ仲間内であっても本気の練習を普段から心掛ける。レシーバーもクォターバックも、練習開始のずっと前からグラウンドに出て営々と実戦練習に励む。
これらはすべて弱虫はいらない、強くあらねばならない、有能であらねばならない、という強い覚悟があるからこそではないか。その意味ではファイターズの諸君は日々、ベーツ先生の校訓を実践している面々であると言い切ってもよいだろう。
こういうストイックな取り組みを、当然のように実践できるところがファイターズの魅力であり、だからこそグラウンドでも躍動できるのだと僕は信じている。今週、金曜日の京大との戦い、それに続く関大、立命との戦いで、その成果を見せてもらいたい。健闘を期待する。
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