石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

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(10)大学スポーツの魅力

投稿日時:2023/10/02(月) 20:57

 先週の土曜日、王子スタジアムで行われた神戸大学レイバンズとの試合は31-10でフィターズの勝利。スコアだけをみれば、ファイターズが順当に勝利したように思われるかもしれないが、現場で応援していた感覚ではまったく異なる。まずは試合の経過から追ってみよう。
 先攻のレイバンズが入念に準備したオフェンスでファイターズ守備陣を振り回し、わずか6プレーでTD。キックも決めて7-0。 ファイターズが試合開始早々、わずか2分足らずの間に得点されるなんて、全く想定していなかったし、その得点が相手が練りに練ったプレーを完遂した結果だと思えたから、二重に驚いた。
 前節、ファイターズが登場する前の京大戦で、変則的な攻撃で相手守備陣を振り回しているのを見ていたので、ファイターズとの試合でも、多彩な手法で攻めてくるだろうとは思っていたが、その想定を上回る大胆な攻めだった。
 幸いなことに、先攻されてすぐ、ファイターズもRB前島、伊丹のランとQB鎌田からWR鈴木へのミドルパスで相手ゴール前に迫り、最後はRB澤井が20ヤードを走り込んTD。大西のキックも決まって同点に。次のレイバンズの攻撃を完封し、センターライン付近から始まったファイターズの次の好撃は、鎌田からWR五十嵐への短いパスがたて続けに決まって相手ゴールに迫る。しかし、TDを奪うには至らず、大西のキックで10-7とようやくリードを奪う。
 しかし、これで落胆するような相手ではない。少々攻撃が手詰まりになっても、手を変え、品を変えて攻め込んで来る。並外れたスピードを持つWRやRBへの大胆なパス、QBの果敢なスクランブル、意表を突くランプレーなどを組み合わせ、少々のロスは平気で攻め込む姿勢が厄介だ。
 ファイターズファンに向けたFMラジオで解説と実況を担当されている小野ディレクターも、守備コーチとして経験の豊かな相手コーチがオフェンスコーチとなり、守る側にとっては厄介なプレーを次々と仕掛けている、その意図を実現する足の速いプレーヤーがいるし、何よりもファイターズに一泡吹かせてやろうというチームとしての意思が伝わってきます、と述べられている。
 コーチの気持ちが選手に乗り移ったのか、相手守備陣は懸命にフィターズの攻撃をしのぎ、攻撃は手詰まりになっても、常に一発ロングゲイン、一発TDを狙った攻めを仕掛けてくる。その積極的な攻めが実り、第2Q終了間際には、FGを決めて追いつき、10-10のままハーフタイム。
 短い休憩中に、双方共にさまざまなことを考えてきたせいか、第3Qは互いの守備陣が相手攻撃の芽を消し合って0-0。
 4Qに入って均衡を破ったのはファイターズ。RB伊丹のドロープレーなどで陣地を進め、仕上げはQB鎌田からWR小段への13ヤードパス。サイドライン際に投じられたパスを確保した小段が相手守備陣を振り切ってゴールに駆け込んだ。小段はこのシリーズの直前、相手パントを確保した際も、相手守備陣を交わしてセンターライン付近まで陣地を回復するなど、1年生とは思えないプレーを続けている。練習時から、常に「一球入魂」の姿勢で取り組んでいる成果が、このような競り合った試合でも実ったのだろう。
 1年生の活躍に刺激されたのか、守備陣も奮起。次の相手攻撃を完封。その次の相手攻撃もDB中野のインターセプトで封じ込める。
 攻撃陣もそれに応える。続く相手陣38ヤードからの攻撃では、RB前島が中央突破で陣地を進め、残る16ヤードをQB鎌田のラン、RB伊丹のランでTD。キックも決まって24-10。
 こうなると、さすがのレイバンズも息が上がり、攻撃が単調になる。それを守備陣が完封する。
 残り時間2分39秒からのファイターズ攻撃は、相手ゴール前29ヤードから。まずはQB鎌田がWR鈴木に短いパスを通し、RB前島、伊丹が交互に走り、仕上げは前島の中央ダイブ。キックも決まって31-10。
 このように試合の流れを回顧していくと、前半の苦しい戦いが嘘のように思えるが、心配性の僕は、とてもそんな気持ちにはなれなかった。前半、相手が積極的に投じてきたTD狙いのパスが、たとえ1本でも通っていたら、試合展開はがらりと変わっただろう。ファイターズの守備陣、特にLBやDBの対応が少しでも遅れていたら、局面は変わったろうし、フロントを固めるDLの圧力が少しでも弱まっていたら、そこにつけ込まれたに違いない。
 もちろん、それは部外者の勝手な思い込みであり、現場で対戦している選手諸君の感覚にはまた異なる点も多くあるだろう。チームとしては苦しい戦いであったとしても、自分のプレーが通用するという自信を付けたメンバーもいるだろうし、自ら改善しなければならない点があることを体感した者もいるだろう。
 その気づきを個人として、またチームとして、どう止揚していくか。それを考え、明日の試合につなげ、実行していくのが、大学生が集団で取り組むスポーツの魅力であり、神髄であると僕は考えている。

(9)苦しい戦い

投稿日時:2023/09/23(土) 22:53

 甲南大との対戦の数日前、上ヶ原のでグラウンドで、厄介な話を聞いた。試合前だというのに、部員の間にインフルエンザの感染者が急増しているという。
 その時、「コロナ禍が落ち着いたと思ったら、次はインフルエンザか。厄介なことだ。なんとか食い止めて欲しい」と、思わず天を仰いだ。
 試合が始まる前、グラウンドで軽く練習するメンバーの背番号に目をこらす。人数が多いから、遠くスタンドから欠場者を確定するのは難しい作業だったが、レギュラークラスで姿の見えない選手が何人もいる。やばい。彼らの欠場が試合に影響しなければよいが、と祈るような気持ちでキックオフを待つ。
 結果は35-3でファイターズの勝利。前半だけで28-0とリードし、控えのメンバーを次々と投入した後半も相手の反撃をフィールドゴール1本に抑えた。
 スタンドから応援している方々には、順当な勝利と思えたかもしれないが、僕にとっては、不用意な反則の多さを含め、今ひとつ物足りない結果であり、反省点の多い試合だった。
 しかし、それは部外者がとやかくいうことではない。まずは試合の流れを見たままに追っていこう。
 ファイターズのレシーブで試合開始。第1シリーズはRB前島へのスイングパス、RB澤井のドロープレーでダウンを更新。次はQB星野からWR小段への短いパスで陣地を進める。しかし、相手陣に入ったところから攻めが続かず、攻守交代。
 相手陣奥深くから始まった甲南の攻撃は進まず、逆に第3ダウンで相手QBが投じたパスをDB東田がインターセプト。相手陣19ヤードという好位置からファイターズの攻撃。まずはRB澤井が中央を突いてダウンを更新。ゴールまでの距離が短くなったところで突破力のあるRB大槻が登場。その第1プレーで中央を突進してTD。初戦の龍谷大戦、同じような状況で中央を突破しながら、相手DBにボールをはじき出されて悔しい思いをした彼が、今度は見事に先制点を奪った。
 得点が入れば、チームは落ち着き、相手には焦る気持ちが芽生える。相手陣25ヤードから始まった甲南大の攻撃は進まず、あげくに第4ダウン、パントといういう状況で痛恨のスナップミス。そのボールをファイターズが押さえ、ゴール前1ヤードで攻守交代。
 この好機にRB澤井が中央を突いてTD。相手にプレゼントしてもらったような得点で14-0とリードを広げる。
 第2Qに入っても、ファイターズのリズムは崩れない。自陣21ヤードから始まった攻撃ではRB前島の10ヤードランから始まり、WR五十嵐、衣笠へのパスを立て続けに決めて敵陣深く迫る。仕上げも五十嵐へのパスでTD。大西のキックも決まって21-0。
 それでも相手は、WRのランなど工夫をこらした攻めで活路を開こうとする。しかし、DB東田のセンスあふれるプレーやDL林のQBサックなどで相手を押し込む。逆にファイターズは前半終了間際にRB澤井へのパス、伊丹のラン、WR百田へのパスなどで陣地を進め、仕上げはQB星野からWR五十嵐へ45ヤードのTDパス。大西のキックも決まって28-0。大きくリードを広げて前半終了。
 しかし後半になり、好守とも控えのメンバーが次々と登場するようになると、徐々に攻撃のリズムが崩れてくる。交代メンバーが限られていることもあったのだろうが、後半の得点は第3Q終了間際にQB星野からWR百田へパスを通し、ランプレーのシリーズを一つ挟んで、WR衣笠に26ヤードのパスを通して挙げた7点だけ。前節の龍谷大戦で84点を挙げて大勝したチームと同じチームとは思えないほどの苦しい戦いだった。
 もちろん、インフルエンザの感染者が急増した影響もあってのことだろう。しかし、チームにとっては、これからが本番。まずは神戸大との対戦が迫っている。先週、能力の高いQBと、それを支える強力なラインを擁する京大を相手に、一歩も引かず、真っ向から渡り合っていたチームである。その力はあなどれない。
 フィールドに立つメンバーはもちろん、控えのメンバーも一丸となって闘ってもらいたい。病床で苦しむ仲間の分まで頑張ってこそ「ファイター」である。
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