石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

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(10)悔しい引き分け

投稿日時:2025/10/16(木) 17:57

 13日の対戦相手は関西大学。ここ数年、厳しい戦いを強いられている相手だ。会場は京都・西京極のたけびしスタジアム京都。設備の整った立派なグラウンドだが、甲東園からは遠い。しかし、その遠さにもかかわらず、両サイドのスタンドに多くの観客が詰めかけている。多くのファンが来場してくれた今日のグラウンドで、初めて応援に来た人たちも堪能させるような戦いを繰り広げてくれ」という気持ちがさらに高まった。
 期待は裏切られなかった。双方が全力で攻め合い、守りあって、終わってみれば17―17。どちらにも軍配が上がらず「痛み分け」のような状態で試合を終えた。
先手を取ったのはファイターズ。相手が自陣40ヤード付近から投じた短いパスをDB加藤がインターセプトして攻撃権を奪取。相手陣46ヤード付近から始まった攻撃でRB平野、RB永井が立て続けに走って相手ゴール前。そこからRB井上が7ヤードを走ってTD。K大西のキックも決まって7―0と先手を取る。
 しかし、相手もひるまない。能力の高いQBのパスにランプレーを織り交ぜて陣地を進める。仕上げは長いパス。それが右サイドに決まってTD。キックも決めて同点に追いつく。
 これは、難しい試合になるぞ、と思った通り、双方ともに攻め合い、守り合っているうちに前半が終了。
 第3Qに入っても状況は変わらない。双方が攻め合い、守り合って互いに無得点。それでも先手を取ったのがファイターズ。第3Q終了間際にQB星野弟がWR小段へ21ヤードのパスを通して陣地を進める。4Qに入っても星野弟のキープ、小段へのパスであっという間に相手ゴール前。そこから星野弟がWR五十嵐に短いパスを決めてTD。14-7とリードを広げる。
 しかし、相手の士気は下がらない。果敢なパス攻撃で陣地を進め、ファイターズの反則でつかんだチャンスをFGに結びつけてまずは3点を獲得。次の攻撃シリーズでファイターズがFGで3点を返し、再び7点差を取り戻す。
 残り時間は2分。ファイターズの守備力を考えれば、そのまま逃げ切れるかも、という考えも浮かんだが、相手は全力で攻め込んでくる。時間との戦いもあって、パス攻撃しか選択肢がないような状況だったが、短いパスを次々と決めてゴールに迫り、終了間際に同点に追いついた。
 その粘り、その気迫、その結束。プレーヤーの技術にプラスしたそうした「資源」を総動員して引き分けに持ち込んだ相手の戦いぶりに、ファイターズの諸君も考えさせられることが多かったに違いない。こういう戦いを経験し、さらなる成長を続けてこそ、未来は開ける。
 引き分けという結果から学び、更なる向上につなげるなら、引き分けに持ち込まれた悔しさも穫(かて)になる。それを次なる神戸大戦で証明してもらいたい。

(9)激化する覇権争い

投稿日時:2025/09/30(火) 19:45

 今季4試合目の相手は京都大学。ひと昔前は、学生フットボール界の頂点を目指して互いにしのぎを削ったライバルである。
 古い話になるが、彼らがとてつもなく強かった時代(1990年代半ば)にチームを率いておられた水野監督に、当時、朝日新聞の社会部記者だった僕は、単独インタビューを申し込み、心よく引き受けていただいたことがある。その時に伺った選手を強化するための心得というか、秘訣ということに関する言葉が今も記憶に残っている。
 京都大学といえば、勉強に集中して入学した学生が大半と思えるのに、なぜ、学生アメフット界の頂点に立つチームが作れるのですか、という質問に対して、監督は次のような話をしてくださった。
 「1升瓶に1升の水を入れるのはだれでもできる。しかし、1升2合の水を入れるにはどうすればよいか」と僕は部員たちに問いかけるのです。無茶な質問ですが、学生たちは真剣に考え、それぞれの考えを話してくれましたという話だった。
 僕が「1升を超える2合は汗になって流れる。だから100%で満足せず、限界を超える120%の努力を」という意味に受け取ればいいのですか、と答えると、まあ、そんなことでしょう、と笑顔で答えられた。
 そういうチームの遺伝子を引き継いでいるのか、この日の京大は強かった。
 しかし、主導権を握ったのはファイターズ。第1Q早々にQB星野弟からWR百田へのミドルパスで先制。10分過ぎには自らキープして2本目、さらに平野の27ヤードランで3本目と畳みかけ、21ー0。2Qに入って京大が反撃し、FGを決めて食い下がったが、ファイターズは攻撃の手を緩めず、星野からWR棚田弟へのパス、TE川口へのパスで得点を重ね、前半終了時で35ー3。
 後半に入っても、その流れは変わらず、平野のラン、途中で交代したQB星野兄からWR棚田弟へのTDパスを決めて49ー3。
 メンバーの少ない京大は、終始劣勢だったが、それでも最後にTDを決め、伝統チームの意地を見せた。
 プロ野球が幅を利かし、高校野球やサッカー、テニス、バレーボールやラグビーなどがそれぞれのファンをもって、盛んに活動している日本のスポーツ界でにおいて、アメフットのファンは肩身が狭い。けれども、伝統のあるチームに加えて新しい力を結集したチーが台頭してくれば、必ずファンは増える。近年、関大や立命館を加えた関西学生リーグの覇権争いが激化しているのも、新しいファンを開拓するエンジンになるはずだ。
 その意味でも、次なる関大、立命との戦いを注目したい。
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