第55回ライスボウル(2001年度) コーチコラム(守備) -光の章-



     


Fighters-Dの肖像堀口 直親
― 光 ~折れない心を持った戦士たち~ ―

First Callタイムアウトを取るか・・・?4年生の思い入れ勇敢に光が見えたLast Fight

 

 

First Call

 Kick Off Return。オフェンスチームが入っていくのを確認するとベンチへ。いつもなら、 ここで何か言うんですが…この日は何を言ったのか覚えていません。何も言わなかったか もしれません。いつもと違うことをしないほうがいいとは思ったんですけど、特に言う必 要も感じず、ゲームプランどおり進めよう、成り行きを見詰めようと考えていました。
 ベンチの前で、座っている選手に背を向けながらも、時々目線を後ろへとずらします。 まだ何も始まっていないこの時に、選手たちは何を思っているんでしょうか。知りたいと 思う反面、そんなこと聞いたら余計に不安がるかもしれない…おそらく、誰も何も考えて いなかったんじゃないかと思います。真っ白。
 「サードダウン!」と誰かが叫びました。気合の入る瞬間です。首をコキコキと鳴らし、 肩をグルグルと回します。そこで歓声か悲痛な叫びか…第4ダウンになりパント。オフェ ンスの選手と入れ違いにパントチームが入っていきます。その波をかき分けるようにサイ ドラインへと向かいます。
 「あれ、えらい後ろやなぁ」…飲料の激しい守備に最初の攻撃は大きくロス。私は口を 真一文字にして何も発せず、ただボールが止まるのを待っていました。しかしボールは自 陣を脱することができませんでした。う~ん、最初から厳しい状況、どないしたろかいな …ブツブツ言っている間に、最初のコールを星田が聞きにきました。最初のコール…
 
「何でもいいっすよ」

 試合前、控え室の動きが慌しくなってきた頃。ボーっとして周囲の動きを見ていると、背後から誰かが私を呼び止めた。振り向こうとすると、そっと腕を肩に 回してきた。
 「今日、最初は何ですか?」
 平郡だった。なんか気になることでもあるんかなぁ…今日は試合前はなんにも言わないでおこうと決めていたのだが。
 「何がええ?」
 愚問…?サインを出すコーチが選手に希望を尋ねるとは。
 「何でもいいっすよ」
 とニッコリ…いや、少し緊張気味だったか。
 実はそれまで・・・・ゲーム直前というこの時まで、2つのうちどちらから入るべきか迷っていた。一つは無難なもの、もう一つは少しアグレッシブなもので、平郡がキーマンになる可能性が高いもの。顔をじっくり見ると、どこか晴れ晴れとしていた。強がっていたのかもしれないが、実に引き締まった顔だった。
 アグレッシブなコールで最初から勝負しようと思っていたが、最後の最後まで 何かが引っかかっていた。その引っかかりを、平郡が解消してくれた。
 First Callは後者となった。
 
タイムアウトを取るか…?

 Turn Overの後に点が入る…モメンタムの恐ろしさでしょうか、特に守備が乱れるわけ ではないのですが、なぜだかTurn Over(Interception, Fumble)の後にはズルズルと進 まれ得点されてしまうことがかなりの確率で起こるようです。それは私も先輩たちから教 えられ、自らも身をもって幾たびも経験しています。
 自陣でファンブル。その瞬間を私はサイドラインで見ていましたが、飲料の守備の選手 たちがボールを押さえたというゼスチャーをしていたので、すぐさまベンチにいる守備の 選手たちに声をかけました。
 ボールが置かれた地点へと歩きながら、(タイムアウト取るべきかなぁ)と考えています と、平郡が私に向かって何やら示してきました。動きから察するに、「落ち着いて」という 意味だったようです。私は(ヘグがハドルで「落ち着いていきましょう」と言うてくれる) と判断し、軽く手を振って(頼むで)と返しました。見れば、どこにも慌てた様子はなく、 ここが見せ場と思っているように感じました。
 
「ディフェンスの見せ場やないか」

 関西リーグの途中だったか、それとも甲子園ボウル前だったか。不安と闘うのは構わないが、失敗を恐れたり止まらないことに怯えを感じているようなことがあった。それは普通なら止められるプレーであっても、余計なことをしたり硬く なり思うように動かなくなって、いくらでも進まれてしまうという悪循環を生む。 ディフェンスの作戦なんて万能ではない。ボールの動きを知っているオフェン スとは違い、ディフェンスは相手が動き出してから初めてボールの行方を推察す ることができる。だから何よりも選手たちの反応や判断の正確さ、迅速さにすべ ては委ねられる。恐れること、怯えることは、その何よりも大切な反応や判断力 を鈍らせてしまう。「己に勝て」とはよく言うが、勝負事に携わる者として、その言葉の意味は痛いほどよくわかる。
 だからこそ、難攻不落の強敵と相対する際には、きれいに止められるはずなどなく、刻まれてゴール前まで進まれることを覚悟する必要もある。進まれること を容認しているのではないが…
 何か心が窮屈になってきたとき、よく言ってきたのが「進まれてもかまへん、最後に止めたらええんや」である。それがもし何かの理由で自陣、Red Zone近く から始まったとすれば、Field Goalなら合格、Nice Defenseである。
 ゴール前1ヤード未満…ボール一つ分もないというところから4回の攻撃。通常なら止まるはずなどない、と誰もが思うだろう。Touch Downは必至である。 しかし、そこで何かを起こしてやろうとするのか、諦めてしまうのかで、後のことすべてが変わってくる。
  「これがディフェンスの見せ場やないか」 主将・石田力哉が甲子園ボウルでのゴール前の攻防で、他の選手にそう言って 聞かせた。ゴール前インチの攻防こそ、ディフェンスにとって一番おもしろいところ…そう思えた時、その守備は鉄壁となる。。

 2回目のダウン更新。Blastを力哉が見事に引っ掛けて止めた後、ここでタイムアウト か…そう思いました。流れとしてはタイムアウトをとるべきところだったでしょう。Field Goalでも先制されることは嫌なものです。しかもここまでくれば、中村多聞選手に続けて 持たせる可能性もあります。ただ、そう予測したことが、私の判断を普通とは違う方向へ と導いたようです。結果から言えば、誤った方向です。
 TAMONやと思うんやったら勝負したれ…タイムアウトはそこでは取らず、次のプレー を見てから、と決めました。
  中村多聞選手に平郡が絡みつきました。ランナーはすり抜け、結果的にミスタックルとなりました。平郡は私に「今の、俺です」のポーズを送ってきました。あのミスタックル の原因は(欲張ったな)と判断しました。ただその平郡の動きも他の選手たちの動きも、 特に焦っている様子もなくいつもどおりだったことや、ミスタックルと言ってもその後に すぐ矢野や財満がきていたので、その瞬間は気になりませんでした。
 これが落とし穴…でしたね。
 次のパスで第3ダウン、3ヤードほど残ったでしょうか。このパスについては私の読み違いなんですが、次は絶対に来る…予想は中村多聞選手のPowerかCounter。思い切って LB星田とSF矢野の二人を外からブリッツさせました。サインコール上は予想通りだった んですが…
 落とし穴、と言ったのは、平郡のミスタックルを(欲張った)と判断したことなど、どうにか止めたプレーであっても、実を言えば止め方が予定通りじゃなかった、それを見落 としてしまったんです。その前にBlastを止めたと言っても、ダウンは更新されたし、そ れとて力哉の超ファインプレーに救われただけ。
 Stop the TAMONの心意気だけは誰も忘れていませんでした。だからどこにも焦った様子はなかった…しかしHow to stopを誰もが忘れていた、子分の平郡からのシグナルもその奥底に何か別のものがあった…それに気づいてやれなかった私のミスでした。
 ぐぐぐぐ(奥歯を噛み締める音)…How to stopをもう一度言い直そう…言葉は悪いんですが、その時の心境は「クソったれ」でしたね。腹を立ててたわけではないんですが、とにかく「クソったれ」でした。ベンチで必死に止め方を再確認しました。
 冷静さを欠いていたとは思いませんが、中村多聞選手との勝負にこだわり過ぎましたね。逆に選手の方が冷静だった…嗚呼、なんと情けないコーディネーターだこと!
 
4年生の思い入れ

 第2Qに入りすぐさま逆転、その後のKick Off Cover。LB野田がリターナーの背後から思い切りのいいタックルを見せました。そしてボールは手からこぼれ落ち、フィールド上を転々としました。カバーしたのは3年生の田中。グググイッとモメンタムを引き寄せ るプレーとなりました。確かに、この野田という男、タックルだけは強かったんです。な かなかタックルするポイントまでいけなかったんですけど…この大一番で、魅せてくれましたね。
 2本目のTDをとった後の飲料オフェンスはBlastから来ました。この試合、どう見てもZoneではない、Power Playで勝負しにきている…第1QでFBのプレーを2回続けた 時にそう感じました。Zone対策として用意したものはこの時点ではもはや消えていました。 そのBlastに対しては力哉が「圧巻」と言うにふさわしいプレーをしています。差し込み 方、差し込む位置など。
 随所で「いやらしさ」を見せ付けていたのは星田でした。PowerやCounterなどPower Playに対してブロッカーをうまく交わしてランナーに絡みつく、まさに蛸の吸盤タック ルを連発していました。
 矢野のRunning Playに対する上がりの速さは申し分ありませんでした。Deepの責任で ありながらStop the TAMONの先陣を切っていた、そんな気がします。
 普段はすぐにふくらはぎがつって最後までもたないCB植田勘介。Man to Man勝負に挑み続けていたんですが、今のところその兆候はないようです。
 ファンブル…パスを通されダウンを更新された後のプレーでしたか。FBのダイブにDE の位置からタックルに向かった力哉が、ボールをもぎ取りました。そして転がったボール をSFの田尻が押さえました…って、なんでSafetyがそこにいるのか…この上がりの速さ は矢野に刺激されたものなのでしょうか。とにかく、この力哉のプレーこそ、今年の FIGHTERS-Dの思い入れを象徴するプレーだったと思います。また特筆すべきは、その ダイブに対して強固な壁を作りブロッカーをぶつけた2年生DT今東と、Gの前々をうま く交わしてCutbackのレーンを消したMLB平郡の「隠れたファインプレー」も見逃せま せん。こういった下級生のGood Jobも、4年生の思い入れが生み出したものなのでしょう。
 
「晋三くらいになってくれ」

 第1Q、TDを与えた後のシリーズだったか。サイドラインで次なる展開を予測していた時、WR山本耕司にパスが通り、サイドラインへと駆け抜けていった。それを追いかけてきたのが元愛弟子の山田晋三君だった。思わぬニアミス、しか し一声かけるわけにもいかず、ただじっと晋三の顔を見ていた。(ごっついLBに なりよったな)と思いつつも、その表情に焦りはなかったが、どこか疲れていそ うな気がした。
 そういえば、同じMLBをやっている平郡や田頭にこの晋三のプレーをよく見せたものだ。何がよくて何が悪いか…で、晋三がまだFIGHTERSの一員だった頃の話もした。平郡は2年で田頭はまだ1年。晋三が3年生の時のことやどんな主将 だったか、なんて話は、あるいはピンぼけしてしまうことだったかもしれない。 でも二人ともよく聞いてくれていたと思っている。
 晋三は今でも私のところに来ると、学生時代のことを話しては当時の顔になる。 今のような逞しさはまだ備えていなかった。でも4年生らしいプレーを随所に見 せていた。学生時代から素晴らしいLBだった。
 「平郡も田頭も晋三くらいになってくれへんかなぁ…」とは、ニアミスが起こった瞬間に思った本音である。。

 中村多聞選手へのScreen…う~ん、パニックかなぁ、予定ではあいつがああなってあいつがこうなって…ゴール前の攻防では、正直な話、嫌な予感がしました。飲料の正重君は 私の性格を半分くらい知っています。彼が4年生の時、彼をSFにコンバートしました。 半年ほどなんですが、彼とは一緒にディフェンスを作ってきました。彼はその急激なコンバートに応えてくれ、4年生らしいタックルを決めていました。つまり、彼は私のディフ ェンスをそれなりに体感しているわけなんです。
 パスもある…本当に迷いました。ギャンブル的なディフェンスを敷いてくることを予想すれば、すれ違いざまにパスを投げるんじゃないか。ただ、私は(それでもTAMONに走られてTDをやる方が後々面倒なことになる)と決めて、思い切ってランを止めに行こう としました。
 …パスでした。TD。
 「せっこいやっちゃなぁ、もう…」
 しかし不思議と点を取られたという意識やダメージはありませんでした。選手からも 「Pass投げるんかいな」という思いが伝わってきました。パスでいかれるんやったらしゃぁない、そやけどTAMONだけは止める…そんな思いに、4年生が付き合ってくれたかのような気がしました。いや、4年生が私をうまく使ったんでしょう。
 おかしな話ですが、点を取られたことで気を引き締められたと同時に、プレー面はもち ろん、戦術面も精神面も決して負けていないと確信しました。
 
勇敢に

  久し振りでしたね、あれだけ熱くなったハーフタイム。心の底から叫んでしまいました。 別室で治療していた選手にまで聞こえたそうです、私の馬鹿みたいな大声。何を叫んだのか…それはFIGHTERSの人に聞いてみてください。私はあまり覚えていません。
 後半も特にGame Planを変えませんでした。前半は8割がたうまくいっていましたが、 だからと言って飲料が大きくプランを変えてくるとは思えなかったからです。力勝負に来 ている飲料に対するに、こちらの武器となるのはただの1つしかありませんでした。
「先に差し込んでしまえ」

 体格的に中村多聞選手と互角に当たりあえる、つまりタックルに向かえる選手と言えば、D-Line以外には力哉だけ。星田も平郡も比してか細く、財満は太いが小さい。DBでは中島のサイズは魅力的だが体重で10kg以上軽い。矢野にしても 田尻にしても勘介にしてもサイズ的に見劣りする。誰もがコンプレックスを持ってしまいそうな状態だった。
 戦術を理解しても、相手のプレーを迅速・正確に判断できるようになっても、 タックルできなければ話にならない。それは誰もがわかっていた。誰に聞かれても「タックルできるかどうかが問題」と答え、逆に言えばタックルすることがそ のままGame Planになる、そんな感じだった。
 ことLBレベルなら躊躇した受け身のタックルなど、元々が目指すところではな いし、「一撃必殺」を狙わないと結局は吹っ飛ばされて余計なゲインを与えてしま う。それがわかっているから、常に1対1でTAMONをタックルすることにこだ わり続けた。私の夢にまで、背中にTAMONと描いた男が現れた。
 「足を止めるな!」と言い続けた。思い切り原始的な教え方かもしれない。だ がそれが真理であることに間違いはない。ミスタックルが起きるのには様々な原 因がある。当たる前にランナーが振ってきたからと言って、こちらが足を止めて しまえば思う壺である。
 機先を制すること、それは何よりも大事だと誰もが知っている。しかし今一歩 踏み込めないでいる。誰もが躊躇してしまう瞬間に、「今やっ!」と叫ぶが、なかなかうまくいかない。
 「先に差し込んでしまえ!」
 いわゆる「串刺し」タックル、これは晋三が学生時代から見せ続けたもの。目 指すのはそこだった。そして瞬時にあと半歩踏み込もうとするかどうか、そこに 勇気が問われた。不可能を可能とするために。
 
光が見えた

 最後の最後まで不安と闘い続けた連中です。タックルできないという不安を取り除こう と最後までタックルを練習し続けました。それでも不安は完全には消えません。そのため に動けなくなることもまた不安となります。解消していくには、もはや必死になって・・・・ いかなる辛苦も超越した心境になる以外に方法はありませんでした(言葉でどう表していいのか私にはわかりません)。
 それを今、目の前で誰もが実践しています。彼らの思い入れをプレーで具現化しているんです。
 D-Lineが飲料の重厚なライン相手に互角以上の闘いを挑んでいます。逃げることなく、たとえ弾き飛ばされても、また向かっていきます。どすこい西村、えらいうまなったやないか。イメージ通りの動きができて、どぉすこい西村も気を露わにします。そのどぉすこぉい西村に率いられてきた今東、佐岡、貴祐は、日本最強と言われていた飲料T平本選手にさえ堂々と挑んでいきました。学年や経験年数など関係ない、フィールドにいる者がチ ームを背負っている・・・・それだけの自覚と責任をもって挑み続けていました。彼らD-Line の勇敢な闘いに、私もまた勇気をもらいました。「強気でやり続ける」と。
 LBはそれぞれの持ち味をいかんなく発揮していました。QB桂君のスクランブルをソロタックル、中村多聞選手を掴んで放さず、ついにTAMON相手に串刺しを見せた平郡を見て、晋三に追いついたやないか、心でそうつぶやきました。LBらしい迫力を身にまとい始めました。財満の思い切り、星田の巧さ、力哉のパワーと気迫・・・・圧巻はやっぱり二人の4年生です。星田の技はおそらく教えてできるものではないでしょう。本人が自分の力量を知り、考え抜き、そこから生み出したオリジナルなんです。力哉はパワーで圧倒していました。ただ彼の本領はパワーにあるのではなく、嗅覚といいますか素早さといいます か、LBに必要なセンスをすべて持っている選手なのです。あの巨体で機敏、スピードも相当なもので平郡や星田と同じタイムなんです。そして「止めてやる」という思い入れの強さ。それが、中村多聞選手を吹っ飛ばすようなタックルを可能とした原動力なのです。
  最後までもたないかもしれない、と不安をもらしたはずの矢野が、もたないどころが最後まで持ち前のクイックネスを活かした動きで最後の砦を死守していました。First Play で見せた飲料WR梅田君への当たりは、まるでお手本のような素晴らしいものでした。最初に与えたTDを、さも自分の責任であるかのように思い、白い顔がさらに蒼白になっていたんですが、いつの間にか素早く正しい方向へと切り替えられるやつになっていたんです。その矢野の世話係としても頑張っていた田尻ですが、サイズのなさをモノともせず巨大な敵に真っ向勝負を挑み続けました。第4Q早々にいつものcrampが出てしまいました が、それまでのMM勝負ではいつものおどおどした動きなど微塵も見られず、(こいつもやっぱり4年生になったんやな)と知らしめた植田勘介。どこか安心して見ていられるようになりました。その勘介の代わりに入っていった高倉はまだ1年生。逆にハドルが締まったように見えました。ジマァ(=中島)、ビンゴせぇよ!(By RH)。
  普通の心理状態では勝てない相手だったかもしれません。タックルなど不可能なランナ ーだったかもしれません。でも、最大の困難に直面したときにこそ、人としての真価が問 われます。諦めずに挑み続けた連中が、光り輝き始めました。点差なんてどうでもいい、 ただひたすら「求めるもの」を捜し続ける冒険者のように、そして相手の方が強いとわかっていても真っ向勝負を挑む戦士のように、FIGHTERS-Dは強大な相手に立ち向かい続けました。
 
 その光は周囲の者をも照らし、すべてを輝かせていく。私も、その光に照らされて自信を持って強気で臨み続けた。 挑み続ける戦士たち。まるでその心が折れること、くじけることを知らないかのように。
 
Last Fight

 11:37ファンブルを押さえられました。まぁ見事なファンブルでしたね。
 06:33 30対20になった後…少し嫌な予感がしました。中村多聞選手のSweepでTD を与えたわけですが、このシリーズはTAMONが本来の力を完璧に発揮したシリーズだったことと、Touch Down Runを決められたことで、飲料が自力の差を見せ始めた、いや「本来の飲料」に戻してしまったか、と思えたからです。
 その予感は的中しました。
 02:02相手Goal前のBlast…誰もがTBに向かってしまいました。しかしボールはQB 桂君の手にあり、キーププレーで一気にゲインされてしまいました。それをバックサイドから止めにきた力哉が倒れたんです。重い身体をILBとして縦横無尽に走らせたことで、脚にかなりの負担がかかってしまったようです。大黒柱を失った…
 01:54力哉の代わりに山田(きやす)が入りました。今までどおりやろうと思ったんで すが、1-back Shot Gunという隊形を見て、すかさず山田(きやす)に「外へ出ろ!」と 叫びました。ちょうどいい具合にホイッスル、でプレー再開。しかし山田(きやす)は従来どおりの位置。あちゃちゃ…正確に伝えられませんでした。パス成功。
 01:43またパス成功。しかしインバウンズ…
 あかん、えらいみな消極的やないか…なに守勢に入ってんねん…
 時間をすべて使わせて最後に取られるのなら、どう考えても逆転はできなくなります。しかしこのペースだと一気にEnd Zoneまでいってしまう。守勢の今、そうなってしまえば時間を食うことなく4本目のTDを奪われる。もちろん2 pointでくるだろうが、既にみんな限界に達しようとしているこの時、時間を残され、もしオンサイドキックを決めら れれば、最悪の事態にもなりかねない。とにかく消極的になるんじゃなく勇猛果敢に攻め る気持ちを持たせてやろうとしました。このままでは、あの時と一緒になる…
 
「あの時みたいにしてたまるか」

 無難に止めようというコールを送れば、選手は自ずと無難に守ろうとする。それはオフェンスに対して何らプレッシャーもなく、意図どおりプレーを進めることも可能となる。
 パスラッシュが効き辛いと判断した。だからDBだけじゃなくLBも下げた。そしてパスを決められ、QBに走られた。切羽詰った時、ベンチもハドルも慌ててしまった。意図が正確に伝わらず、余裕をもって投じられたボールはEnd Zone内 で相手レシーバーの手に納まった。試合終了間際の逆転。
 1994年1月3日、東京ドーム、Rice Bowl。
 ヘッドセットの向こうに、今はコーチとしてDBを見ている大寺がいる。
 懸命にDBに指示を送っている。思わず、心の中で呟いた。
  「あの時みたいにしてたまるか」

 ミスタックルが続き一気にゴール前へ。そしてTD…ベンチは既に相手のオンサイドキックに対するため、スペシャルチームが集められていました。私は時計を見ました。確か、あと37秒。もう30秒、どうにか使わせたかったんですが…しかしこれでも上出来かもしれません。守備としては危ない展開だったのですが、その前のシリーズとその後のオフェンスで9分35秒も使っているんです。今から思えば、その攻守各1シリーズで時間を費やしたことが、最大の勝因かもしれません。刻まれるのはいい、一発だけはやるな…

 …もう誰も動けていなかった。力哉もフィールドに戻っていったけど、星田も 外からラッシュしたりバンプしにいったりしていたけど、矢野も懸命にボールに 反応していたけど、誰も本来の動きができていなかった。
  地力の差、かもしれない。社会人よりも先に動けなくなるのは情けないことか もしれないが、長い長いシーズンの最後、ほとんど休みもなく闘い続けた戦士たちに、限界が訪れようとしていた。
  それでも、「ここで負けてたまるか」「TDやってたまるか」の思いが身体を最後 まで動かし続けた。もはや気力のみで動いている。その思いが時間を使わせた。
  踏ん張れ、ここで負けてどないする、なんのためにここまで闘うてきたんや、疲れたら何もかも忘れるんか、バテたら終わりか、そんな小さい夢やったんかい、どないして止めよて言うてきた、動かさんかい、自分で自分を動かさんかい…負けてたまるか!

 5分以上使わせたシリーズでは、主将・力哉がとにかく超一流を遥かに超えるプレーを連発、星田の巧さも光り、財満も守勢に回らず、平郡も文句のつけようのないILBになっていました。「練習に入るだけで緊張するんです」と怪我から復帰したてで少しばかり弱気だった池谷ですが、ゴール前でパスを取られた瞬間にタックルするなど、「時間との闘い」に真っ向勝負を挑んでいました。
 最後にはどこか力尽きた感じも否めません。すべてを出し尽くした…あっさりと4つ目のTDを取られましたが、その前に誰もが半歩踏み込んで必死のディフェンスを続けた代償です。

 完全燃焼…そして新しい伝統の始まり
 

To be continued ……

 

 
 

 

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