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川田貴亮 全米大学オールスター戦に招待

1997/01/11

川田貴亮(当時4年、97年3月商学部卒業)が米・カリフォルニア州で開かれた全米大学オールスター戦・シュラインボウルに日本で唯一人招待されて、渡米。出場機会はキッキングが大半で守備ラインとしては2プレーだったが、本場の一級のフットボールを肌で感じる貴重な体験をしてきた。

コラム「HAND」

 今回、私が招待された第72回イースト・ウエスト”シュライン・クラッシック&ペイジェント”を通じて、「手」について感じたことを書かせて頂こうと思う。
 アメリカ社会での挨拶はお辞儀ではなく、シェイク・ハンドで行う。私は元々それが好きではなかった。手が汚れていたり、汗で濡れていたりすると相手に悪い印象を与えてしまうのではと気を使ってしまうからである。しかし、そんなことを言っていてはアメリカでコミュニケーションをとることはできない。面白いのはシェイク・ハンドにも何種類かあり、その中で私が一番気に入ったのは、学生同士、それも親友クラスで行うシェイク・ハンドである。それはたいてい三段階に分かれていて、最初の頃はその三つの形の順序がわからなくて笑われたりもしたが、三日も経てば、自分から「ウァッツ・アップ?」と「手」を出していた。黒人ヴァージョンでは、四段階に分かれている難しいものもある。
 現地入りしてから三日目、いよいよ練習が開始され、そのなにもかもに日本のフットボールとの違いを感じたが、その中でももっとも興味深かったのが「手」であった。本場のフットボールでは、ラインズのハンド・テクニックがかなり進化を遂げていて、ラインズは、どちらが内の「手」をとるかに命を懸けている。まさに相撲である。中でも一番ショッキングだったのは、OL全員が確実にジャージを掴んでくること。私は最初これに対して反則を犯されているのだと思い、二倍もデカイOLに対して突っかかっていったが、後で付き添いをしてくださったコーチ・ライダー(現関学OLコーチ)に、「タック、アメリカではOKなんだよ。」と教わり、これにはさすがに驚いた。滞在中、一番の飲み友達であったウィルコックス(TE・オレゴン大)にこの話をすると、「手を内に張ってジャージを掴むのは当たり前のこと。えっ?日本じゃ反則になるのかい!?」と逆に驚いていた。そんな彼は練習中に私のジャージを破った張本人である。一見、大ざっぱに見える彼らの「手」のファンダメンタルは実は繊細でこだわりを持ったものだったのである。
 試合当日、ウエストのキャプテンである私は、全員に「手」を挙げさせ、そして叫んだ。「ニシ、オン・3、1・2・3・ニシ!!」そしてキックオフ直前のハドルで、全員が「手」を握り合い、チームは一つになった。
 試合終了後、敵、味方、選手、コーチ関係なく、全員とシェイク・ハンドを交わした。その時にはもう、私のシェイク・ハンドをみて笑うものなど一人もいなかった。最後の親友のウィルコックスとの再会を誓い、何度となくシェイク・ハンドを繰り返しいた。
 この一週間で、アメリカン・フットボールと、アメリカ文化触れることができた。私の人生において、大切なものを「手」に入れることができたと確信している。

川田貴亮(1997年商学部卒)

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