石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

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(16)東鉢伏から

投稿日時:2019/08/14(水) 07:05

 先週末、仕事の隙間を縫って東鉢伏に車を走らせた。8日から始まったファイターズの合宿を見学するのが目的である。
 午前4時半過ぎに仁川の自宅を出発。辺りは薄暗いが、その分、行き交う車は少なく、普段は混雑している宝塚西トンネル付近も快調に走れる。赤松峠付近から舞鶴道に入ればさらに車が少なくなり、快適なドライブが続く。高速道路を降りると、コンビニに立ち寄ってサンドイッチと野菜ジュースを購入。ファイターズが合宿している「かねいちや」から1kmほど行き過ぎた場所にある県指定天然記念物「別宮の大カツラ」の駐車場で食べる。ここには高さ27mにも達するカツラの木が密集して生育し、その付近からこんこんと清流が流れている。その水で顔を洗い、口をすすいで見学の臨戦態勢を整える。
 しばらく時間を調整し、7時前には「かねいちや」に到着。宿舎のロビーで監督に挨拶した後、すぐに人工芝のグラウンドに向かう。すでにJVメンバーの練習が始まっている。
 毎年のことだが、夏合宿の朝は早い。まずはJVのメンバーが約1時間、パートごとの練習に取り組み、それが終わると朝食に向かう。入れ替わって、今度は準備運動を終えたVのメンバーが練習を始める。
 驚くのは、その取り組みの密度が年々濃くなっていること。初めてこの合宿を見学にきた十数年前も、さすが夏合宿、密度が濃いと感心したが、いまはそれに強度が上積みされている。以前は意識的に「寸止め」にするプレーが主体だったが、いまはオフェンスとディフェンスのメンバーが対抗心をむき出しにして渡り合う。
 しかし、練習密度が濃くなれば、その分、負傷する選手も増える。ホテルのロビーに立てかけられた練習メニュー表の隣には、日々、その日の練習に加わるメンバーが書き込まれるが、その中には「練習不可」とされている選手名が何人も見える。
 練習の密度を上げれば、負傷者も増える。しかし、間延びした練習では、実戦で使える動きは身につかない。双方の利害、得失を計算し、選手の疲労度を考慮したうえで、日々の練習メニューを決めていくのがチームの方針であろう。
 そんなあれこれを考えている間にも、グラウンドでは練習が続いている。けれども、時間を決めて休憩時間をとり、水分や栄養補給ゼリーを規則的に摂取させる時間は必ず設けている。グラウンドの両側にはチームの持ち込んだテントが何張も立てられ、休憩タイムの選手に日陰を提供する。
 合宿地は、冬場はスキー客で賑わう高原にあるが、下界と同様、日が昇れば強い日差しが照りつける。朝、車で走っているときは、高速道路脇の表示に「22.5度」とあったので、これは涼しいぞ、と思っていたが、太陽が照りつける時間になれば、気温はぐんぐん上がる。午前9時ごろには、木陰のない場所ではもう30度近くまで上昇しており、過去十数年の見学時には記憶がないほどの暑さである。
 しかし、そこは合理的な思考をするファイターズである。一番暑い時間帯には、グラウンドのチーム練習はすべてストップし、食事と昼寝、そして簡単なミーティングの時間に充てる。練習が再開されるのは午後3時。湿気の少ない高原なので、この時間になると、太陽が照りつけていても、風さえ通れば幾分暑さも緩和される。
 まずはJVのメンバーから始まり、より強度の上がるVチームの練習は4時から6時までと決めている。さらに合宿中には合計2日間、全員にグラウンドでの練習を休ませ、体力の回復に充てる日も設けている。
 体力を養い、新たなプレーを習得し、チームの士気を上げるための合宿だが、フルに練習プログラムを組むのではなく、途中に休憩時間や休息日を設けて、より安全に、より効率的にと心掛けているのがファイターズである。その発想は上ヶ原でも東鉢伏でも変わらない。
 変わりつつあると見えたのは、合宿に参加しているメンバーの気持ちの持ち方である。この日、僕が声を掛けたりその行動に接したりしたメンバーの名前や行動を具体的に挙げて、彼らがこの合宿にかける思いの強さを紹介したいところだが、いまは個々の名前を挙げる場面ではない。いつか別の機会にでも紹介したいと考えている。
 ただし、この合宿でチームの何かが変わりつつあるという印象を持ったことだけは伝えておきたい。僕はいま、その変化の行き着く場所に、大きな期待を持っている。

(15)いきなり学内合宿

投稿日時:2019/08/04(日) 22:13

 雨続きの梅雨が明けた瞬間、連日、熱射病になりそうな天気が続いている。体調維持のために、毎日、1万歩以上の速歩を自分に義務付けている僕にとっては、この暑さはけっこう厳しい。
 幸い、僕の働いている和歌山県田辺市の海沿いは、海からの風が通り、朝夕はそれなりに涼しく、夜の散歩も支障なくできる。しかし、週末、西宮に帰ると、そうはいかない。日中はもちろん、朝夕もとんでもなく暑い。ほんの15分も歩けば、汗が噴き出すし、のども渇く。太陽のある方向を常に確認し、日陰から日陰を伝うようなコースを選ばなければならない。それも、日陰があればオーケーとはならない。場所によっては風が通らず、蒸し風呂のような道路もあるから注意が必要だ。もちろん、歩道を走る自転車にも、常に注意しなければならない。
 たかが年寄りの散歩コースでさえ、ここまで考えなければならない。同じ西宮で夏季練習に励んでいるファイターズの諸君は、この時季の練習をどんな風に工夫しているのか。どのように熱中症から身を守っているのか。
 今回は、7月31日から本格的に始まった夏季練習の一端を報告しよう。ファイターズの合理的な発想を知るための一助としていただければ幸いである。
・夏季練習は前期試験が終わり、大学が夏季休暇に入った7月31日から始まる学内合宿からスタートする。この合宿は、途中に設けた1日の休養日を挟んで、2泊3日の日程で2度行われる。合宿では朝食前にグラウンドに集合し、午前7時から8時過ぎまで練習に取り組む。練習前には、アスリートパンとフルーツジュースを摂り、練習中には2度の休憩時間を設ける。
・8時過ぎに朝練を切り上げ、8時半ごろから朝食。その後、いくつかの班に分かれて交互にミーティングと仮眠。昼食を摂った後も、仮眠班と筋トレ班、ミーティング班に分かれてそれぞれの課題に取り組む。
・夕方はグラウンドの気温と湿度を計測した上で、その数値が基準内に下がっておれば午後5時から、そうでなければ午後6時からグラウンドで練習。夕方もまた1時間少々で練習(途中短い休憩時間を2度設けている)を切り上げ、その後は夕食とミーティング。
 こんな日程で2度に渡る2泊3日の合宿を続け、その後1日、休養日を設けた後、今度は鉢伏山の長い合宿に向かう。
 どうしてこのような短い練習時間しか設けないのに2度も学内での合宿をするのか。高校でも、夏休みには朝の9時過ぎに登校し(途中、筋力トレーニングなどの時間は設けていても)、夕方の8時過ぎまではグラウンドで練習というチームが少なくないというのに、大学のてっぺんを目指し、社会人とも渡り合おうとするチームがこんなに短い練習で成果が上がるのだろうか。そうした疑問を持つ人も少なくないはずだ。
 けれども、ここにファイターズの合理性というか工夫があるのだ。
 具体的にいえば、自宅通学者の往復に要する時間を省き、その時間をミーティングや筋トレ、仮眠の時間に充てる。炎天下の練習を避け、代わりに適度な睡眠・休養をとらせる。栄養バランスのとれた食事を全員に摂らせ、それが体に吸収される時間を確保する。グラウンドでの練習時間を短くしているのは、練習のための練習をだらだらと続けるのではなく、実戦を想定し、一つ一つのプレーに集中して取り組むためともいう。
 多少、プログラムに違いはあっても、近年、この時季にこうした取り組みを続けているのがファイターズである。全員が高い目的意識を持ち、短時間であっても、密度の濃い練習に集中的に取り組む。そのビデオを即座にチェックし、一つ一つのプレーについて問題点、反省点を明らかにし、プレーの精度を上げていく。そうした取り組みのために十分な時間を注ぎ込む。これはというプレーは夏合宿で完成させて実戦での武器とする。そのためには、この時期、時間はいくらあっても足りない。とりあえず大学と自宅を往復する時間だけでも有効に使いたいというのが、この時期、2度も連続して行われる学内合宿の目的となるのである。
 なんだか、理屈っぽい話になったが、要は「根性出せ」「死ぬ気で頑張れ」と気合いを入れるだけではなく、選手として、チームとして最高のパフォーマンスができるようにするためには何が必要か、それを身に付けるためにどうするか。そういったことを、コーチはもちろん、上級生もスタッフもトコトン突き詰めて考え、実戦に生かすための工夫をしているのが、この時期のファイターズである。大いなる成果を期待したい。
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