石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

(13)ヤマモモの木の下で

投稿日時:2009/07/01(水) 08:48rss

 関西学院大学の第3フィールドを見渡す小高い場所に、ヤマモモの木がある。2003年8月16日、夏合宿の最終日に、不慮の事故で亡くなった平郡雷太君を偲んで植えられた記念樹である。
 当初は上ケ原のグラウンドを見下ろす高台に植えられていたが、2006年春、第3フィールドの完成とともに、現在の場所に移された。初めは、きれいに樹形が整えられ、いかにも植木です、という風情だったが、年を重ねるに連れてぐんぐん成長し、ずいぶん大きくなった。これから、5年、10年と歳月を重ねると、グラウンドを睥睨(へいげい)する大木になりそうな予感さえする。
 梅雨晴れのひととき、照りつける日差しをさえぎるその木の下で、ファイターズの練習を眺めていると、なぜか平郡君が隣にいるような気がしてくる。あのはにかんだような笑顔やサラサラの髪が目の前に浮かんでくる。
 その木の下で、先週末は大阪学院大とのJV戦を観戦した。関大戦に続き、2週連続のホームグラウンドでの試合である。
 面白かった。なんといっても、普段、試合に出ることの少ない下級生がどんどん登場してくれるのが楽しい。その下級生がまた、次々と素晴らしいプレーを見せてくれる。ファンには、こたえられないゲームである。
 先発メンバーや得点経過は「試合結果」から確認していただくとして、まずは目に付いた選手の名前を並べていきたい。
 オフェンスでは、RBの稲村(3年)。春の試合に何度も出場している選手だから、JV戦で活躍するのは当然かもしれないが、バランスのとれた走りっぷりが素晴らしかった。43ヤードの独走TDランをはじめ、5回で93ヤード、格の違いを見せつけた。
 2番手のRB林(2年)も、7回ボールを持って45ヤード。RB陣は層が厚いから、1本目の選手を追い抜くのは大変だが、今後の成長に期待したい選手だった。
 注目のQBは前半が2年生の糟谷、後半途中から1年生の遠藤(啓明)が出場した。どんぴしゃのタイミングで投げたパスが相手の反則(インターフェア)で通らなかったり、レシーバーがぽろりと落としたりして、記録上はそんなに目立たなかったが、ともにファイターズのQBとして必須の資質であるパスを投げる能力は十分だった。
 レシーバー陣も先発した正林、渡辺(ともに3年)、赤松(2年)、それにタイトエンドで出場した1年生の榎(仁川学院)が潜在能力の高さを見せた。あとはしっかり練習を積んで、正確に捕球できるようにすることだ。このポジションも、1本目に高い能力を持った選手が多いから、そこに割り込むのは大変だろうが、これまた練習を重ねるしかない。
 ラインも同様である。対戦相手との力関係で、よくも悪くも見えるポジションだから、この日の出来は割り引いて考えなければならないが、それでもDLから移ってきた4年生の藤本をはじめ、3年生の村田や1年生の徳植(武蔵工大付)などは、1本目に割り込んでいけそうな可能性を感じさせてくれた。これまた、これからの練習次第だろう。
 ディフェンスは、目立った選手が目白押し。なかでも2年生のDB重田、1年生DLの梶原(箕面自由)、金本(滝川)の活躍が素晴らしかった。重田は強烈なタックルが魅力だし、なによりプレースタイルが熱い。試合を決定づけた2Q終盤のインターセプトTDは、いつも集中してプレーに取り組んでいる彼へのご褒美だったと思える。
 ラインの外側を守った梶原と金本は、ともに186センチの長身。それでいて、動きが素早い。相手主将に、一度ははねとばされながら、その力を利用してQBサックを決めた梶原のプレーや、正確性には欠けるが、毎回のように相手のラインを割っていく金本の動きを見ていると、ともに秋は先発メンバーかという期待さえ抱かされた。
 1年生では、ほかにもDLの早坂(法政二)やLB高吹(武蔵工大付)らが潜在的な能力の高さを見せてくれた。
 これにいまU19の日本代表として、アメリカに遠征中の2年生3人、1年生3人が戻ってくる。
 春はどの試合も、苦しい戦いを強いられたファイターズだが、こうして下級生までを視野に入れると、なかなか層が厚い。彼らが才能をどう伸ばすか。彼らの活躍に刺激を受けた1本目の選手たちが、どのように力を伸ばしていくか。それが秋のファイターズの成績に直結する。
 夏の合宿でしっかり鍛錬し、力を蓄えた彼らが秋のシーズンに登場する姿を想像しただけでワクワクする。
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